うつ病という怖い病<うつ病の真実|和田秀樹の「介護の誤解」vol.7

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高齢者はうつ病になりやすい

ここしばらく、高齢者の老化や介護を予防するために意欲を保つ重要性を論じてきた。 高齢者の意欲を、がくっと落とすものがある。 それがうつ病だ。 意欲だけでなく、食欲も落とすので、やせこけてしまい、高齢者の場合、体力も大幅に落としてしまう。 あるいは、高齢者がうつ病になると、一気に老け込むということもある。 顔の張りもなくなり、皺が増えるだけでなく、化粧やおしゃれをしなくなるから、外見の老け込みもひどい。 以前、若々しさの象徴のような俳優の高島忠夫さんがうつ病に罹患したと報じられたが、老け込んだ容姿に驚いた人もいるかもしれない。しかし、我々、精神科医はそのようなうつ病の高齢者を診ることは少なくない。 前にも述べたが、高齢になるほどセロトニンという神経伝達物質が減る。 そのため、高齢者はうつ病になりやすい。 アメリカの地域住民調査では、65歳以上の人口の約5%がうつ病だという。一般的には人口の3%というから、それだけ高齢になるほど増えるということだ。 イメージがわきづらいかもしれないが、高齢者のうつ病はそれほど珍しい病気ではないのだ。とくに高齢者は入院したり、施設に入ったりした際にうつ病になりやすい。これもアメリカの調査だが、高齢の入院患者の約20%がうつ病だという調査報告もある。 このくらいありふれた病気なので、うつは心の風邪という人もいるが、高齢者にとって風邪というのは意外に命取りの病気である。風邪をこじらせて肺炎になる人は実に多い。おそらく、毎年1~2万人の高齢者が風邪をこじらせて亡くなっている。コロナはただの風邪とかいうと、袋叩きにされていた時期があったが、実際には、風邪もコロナと同じくらいの高齢者の命を奪っているのである。 うつ病も、実は命を奪う病気だ。 まず、うつ病がどんどん悪化すると自殺という形で命を奪う。 実際、2019年の統計では日本の自殺者の4割以上が70歳以上だ。おそらくそのかなりの部分がうつ病によるものだろう。 長年、高齢者を診ている経験では、高齢になって食欲不振になると簡単に脱水を起こしてしまい、肺炎などほかの病気にかかりやすくなって死んでしまうことも珍しくない。 脱水というのは、身体の中から水分が少なくなることだ。若いころは体重の60%が水分なのだが、高齢になるとそれが50%に下がっているから、ちょっと水分が減るだけで脱水が起こりやすい。 この脱水で問題になるのが血管内脱水といって血液の中の水分がへる状態だ。血圧が急に下がるだけでなく、血が濃くなるから脳梗塞や心筋梗塞も起こりやすくなる。 ついでにいうと、最近の精神神経免疫学の考え方では、ストレスが免疫機能を落とすことが知られている。とくにふだんかかる病気や身体にできたできそこないの細胞(これを放っておくとがんになってしまう)を殺してくれるNK細胞の活性が如実に落ちる。そのため、風邪をこじらせて死ぬとか、先々、がんになるリスクが高くなる。実際、奥さんに先立たれて、うつになると夫が数年後にがんで亡くなるというケースは意外に多い。 若い人であればうつ病で死ぬというと自殺ということになるが、高齢者の場合、このように脱水を起こしたり、体力が衰えたり、感染症が重くなったり、あるいは将来がんで亡くなるというという形で死につながる。 こころの風邪という場合、ありきたりの病気だという意味では正しいが、こじらせたら風邪と比べ物にならないくらい命を奪うことも知っておきたい。

うつ病は症状が老化と思われやすい

あと、もう一つの問題は、うつ病というのはつらい病気だということだ。 私が、究極の選択として、歳をとって認知症になるのがいいのか、うつ病になるのがいいのかと問われたら、間違いなしに認知症を選ぶ。 認知症というのは、初期のころはともかくとして、進んでくると自分がぼけていると思わないし、さらに進んでくると、どんどん嫌なことを忘れるせいか、ニコニコしていることが多い。もちろん、本人にとって嫌なことをされれば、たとえばオムツを交換されるときなどは、本人にとってはパンツをはぎ取られるようなものなので、泣き叫んだり蹴っ飛ばしたりするが、その後は機嫌が治るものだ。 周囲はともかくとして、本人にとっては幸せな病気なのだと私は考えている。 しかし、うつ病は、その逆だ。 自分がダメになったと思ったり、自分が重病になったと思って、ほとんど一日中苦しむ。あるいは、過去のことを悩んだり、周囲に迷惑をかけていると思って、罪悪感で押しつぶされそうになる。 また、身体もとてもだるい。 うつ病の重いものになった人に聞くと、39度の熱を出したときと同じくらいだるいそうだ。食欲もわかないし、何をする気にもなれない。それが来る日も来る日も続き、いつ終わるかわからないのだから、死にたくなるのももっともだという人もいる。 いずれにせよ、本人にとってかなり不幸な病気だということは言えるだろう。 ということで、歳をとってからもっともなりたくないうつ病だが、意外に気づかれず、私の見るところ、かなりの老人性のうつ病の患者さんが治療を受けないまま亡くなられている。 一つには、症状が老化と思われやすいことがある。 我々精神科医が、うつ病が疑われる患者さんに、まず確実に聞くのは、食欲が落ちていないかと(あるいはつい過食をしてしまうかと)、夜中に何回も目が覚めることがないか、明け方に目が覚めてそのあと眠れないことはないかということである。 一般的に不眠には、寝つきが悪い入眠困難と、眠りが浅くなる熟眠障害があるが、うつ病の場合、後者が多い。 ということで、中高年までの人が食欲が落ちて、夜中に何回も目が覚めるなら、うつ病の可能性がかなり高いと考えるのだが、お年寄りが以前より食が細くなった、夜中に何回も目が覚めると訴えた場合、歳のせいでと片付けられることが多い。 また、認知症と誤診されることも多い。 実は、高齢者のうつ病では物忘れが目立つことが多い。 たとえば、6か月ぶりに実家に帰った際に、昨日電話したのに、今日来ることを親が忘れていたとしよう。その際に、昔はおしゃれな人だったのに着替えもしていないようだし、部屋も荒れ散らかっているし、さらに風呂も入っていないらしくにおいもするというような状態なら、ほとんどの人は認知症になったと思うだろう。 しかし、我々高齢者を専門とする精神科医からみると、認知症の場合、物忘れが始まってから着替えをしなくなり、風呂に入らなくなるまでに3~5年はかかる。物忘れと着替えをしないことが、ほぼ同時期に始まったのなら、うつ病の可能性のほうが高い。 実は、物忘れという症状があっても、75歳くらいまでは、認知症の有病率より、うつ病の有病率が高い。 そして、重要なポイントは、認知症は進行を遅らせることができても、治すことは原則的にできないが、うつ病は治療によって治ったり、改善する可能性が高いことだ。

うつ病という病気は早期発見、早期治療が大切

前述のように高齢になるほどセロトニンという神経伝達物質の分泌が減るので、高齢になるほどうつ病になりやすくなるのだが、逆にいうと原因がセロトニン不足のことが多いので、薬が効きやすいのだ。 私の印象では8割くらいの高齢者のうつ病は薬で治療できる。それで本人の主観的な苦しみもとれ、元気になるのなら、やはり医者にいったほうがいいことがわかるだろう。 ただ、実は、このうつ病という病気は早期発見、早期治療が大切だ。 というのは、最近の研究では、うつ病というのは脳内のセロトニンが足りなくて起こる病気ではなく、そのために神経栄養因子というものが足りなくなって、そのせいで神経が短くなり、神経と神経のつなぎ目が広がることで起こる病気と考えられるようになっている。ここでセロトニンを足してあげると、神経栄養因子が増えて、神経が伸びるのでつながりがよくなるが、逆に足りない状態を放っておくと、神経がどんどん傷んでしまう。 実際、うつ病を長く患っていた人は認知症になりやすいという報告が多い。 そういう意味で早期発見早期治療をしたほうが治るのが早いが、逆に放っておくと治りにくくなるし、脳も傷んでくる。 あと、このうつ病というのは悪循環が起こりやすい病気とされている。 うつ病になると悲観的になるが、悲観的になるとうつ病が悪くなる。この悪循環を繰り返すうちに悲観が絶望と変わり自殺につながってしまう。 またうつ病で食欲不振になるとさらにセロトニン不足になりやすくなる。 うつ病で睡眠不足になると、さらにセロトニンが減るとされている。 うつ病という病気をきちんと認識して、不幸な老後につながらないようにしたい。

著者

和田 秀樹(わだ ひでき)

国際医療福祉大学特任教授、川崎幸病院顧問、一橋大学・東京医科歯科大学非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック院長。

1960年大阪市生まれ。1985年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科、老人科、神経内科にて研修、国立水戸病院神経内科および救命救急センターレジデント、東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院である浴風会病院の精神科医師を歴任。

著書に「80歳の壁(幻冬舎新書)」、「70歳が老化の分かれ道(詩想社新書)」、「うまく老いる 楽しげに90歳の壁を乗り越えるコツ(講談社+α新書)(樋口恵子共著)」、「65歳からおとずれる 老人性うつの壁(毎日が発見)」など多数。

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