要介護3とは?利用できるサービスや高齢者向け施設を解説

 

お役立ちコラム

要介護3とは?利用できるサービスや高齢者向け施設を解説

自力で歩行や食事といった生活が送れなくなると、介護や支援が必要になる「要介護状態」となります。

「要介護状態」とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態のことです。

ここでは、高齢者向け介護施設への入居条件である「要介護3」について、入居できる施設や受けられるサービス、かかる費用を紹介します。

参考元:厚生労働省「要介護認定に係る法令」

「要介護3」とは

要介護3とは、起き上がり・起立・歩行といった日常生活に必要な行動が自力でできず、介助を必要とする状態です。

要介護度は1から5までの5段階あり、要介護3以上になると常時の介護が必要となり、介護度が重くなるほど日常生活の中で多くのサポートを必要とします。

厚生労働省による要介護認定基準は、以下の5つの介護にかかる時間を「基準時間」として規定し、何分以上の時間を要するかによって要介護度を判定しています。※1

【要介護認定基準時間の5分野】

項目 内容
直接生活介助 入浴・排泄・食事等
間接生活介助 掃除・洗濯等の家事援助
問題行動関連行為 徘徊時の探索・不潔な行為の後始末
機能訓練関連行為 歩行訓練・日常生活訓練等の機能訓練
医療関連行為 輸液管理・褥瘡処置等に伴う診療の補助

【要介護認定等基準時間の分類】

要介護度 基準時間
要支援 5分野の基準時間が25〜32分未満またはこれに相当する時間
要介護1 5分野の基準時間が32〜50分未満またはこれに相当する時間
要介護2 5分野の基準時間が50〜70分未満またはこれに相当する時間
要介護3 5分野の基準時間が70〜90分未満またはこれに相当する時間
要介護4 5分野の基準時間が90〜110分未満またはこれに相当する時間
要介護5 5分野の基準時間が110分以上またはこれに相当する時間

上記の基準時間に当てはめながら、2002年度の老人保健健康増進等事業の報告で示された、以下の3つの状態も参考にして要介護度を判定します。※2

【要支援または要介護の状態像】

区分 状態像
自立 日常生活の基本的動作を自分で行える。電話利用や薬の内服も自力で行える
要支援 日常生活の基本的動作を自分で行えるが、日常生活動作の介助や現在の状態の防止のために支援が必要な状態
要介護 日常生活の基本的動作が自分で行えない。何らかの介護を要する状態

上記すべてを踏まえると、要介護3は「起立や歩行、入浴や着替えといった日常生活にかかわる部分について70分〜90分未満の介護を必要とする、日常生活の基本的動作が行えない状態」と判断できます。

参考元:厚生労働省「参考(3) 介護保険制度における要介護認定の仕組み」

要介護4との違い

要介護4は、5分野の介護にかかる時間が90〜110分未満で、要介護3よりも多くの支援を必要とする状態です。

自力での歩行も難しく、日常生活のほとんどに介護を必要とします。介護度は徐々に進行するため、要介護3と4のあいだに明確な違いはありません。

ただし、人によっては認知機能の低下や理解力の低下が認められる場合もあります。徘徊や妄想、不潔行為といった問題行動が要介護3の段階からある方は、要介護4になるとさらに行動が顕著になることがあります。

日常生活のほとんどの行動が次第に難しくなっていくのも要介護4の特徴です。寝たきりになる(自力での健康維持が難しい)・嚥下機能の低下といった状態もみられます。

要介護2との違い

要介護2は、5分野の介護にかかる時間が50〜70分未満で、介護を必要とはするものの、支援を受けながら自力で行動ができる状態です。

要介護3と同じく、自力での歩行が難しかったり日常生活の中で介護を必要としたりする状態です。

妄想や不潔行為もなく生活を送り、人とも会話を楽しめる状態の方が多くみられますが、要介護1で認知症を発症し、要介護2に認定されるケースもみられます。

目安として、食事や排泄といった日常生活の動作では、部分的な介助を必要とします。身の回りのことがスムーズに行えなくなり、「要介護1では一人暮らしをしていたが、難しくなってきた」といった方もみられます。

要介護3で自立生活は可能?

要介護3は、日常生活の多くの場面で助けを必要とします。70〜90分のサポートを受ける必要がある状態なので、立ち上がり・歩行・座るといった基本的な行動が難しくなっています。

家族や知人、施設のスタッフからサポートを受けなければ日常生活が送れない状態ともいえます。一人で買い物に出かけたり趣味を楽しんだりといった活動はもちろん、自立した生活が容易ではない状態です。

日常生活における動作が難しく、歩行に杖や歩行器のような福祉用具を使用する方も少なくありません。一人きりでは自立した生活を送ることが難しいため、周囲のサポートが必要になります。

要介護3で受けられるサービス

要介護3の方は、訪問サービスや通所サービスといったサポートが受けられます。それぞれの内容を詳しくみていきましょう。

訪問サービス

訪問サービスは、自力での生活が難しく家族の支援も受けられないときに、ホームヘルパーが居宅を訪問してサービスを提供するものです。

訪問型のサービスは次のようなものがあります。

【訪問サービスの種類】

  • 訪問介護(ホームヘルプ)
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 夜間対応型訪問介護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
  • 訪問入浴介護
  • 居宅療養管理指導

訪問介護(ホームヘルプ)は、一人ひとりに定められたケアプランに沿ってサービスの内容と時間を決め、ホームヘルパーから生活援助と入浴・排泄・食事の身体介護、通院時に車への乗降介助を受けられるサービスです。 生活援助は介護以外の生活サポート全般を指しています。サービス利用者が日常生活を営めるように支援するサービスです。

【生活援助の種類】

  • 掃除
  • 洗濯
  • 調理
  • 整理収納
  • ゴミ出し
  • 薬の受け取り

※訪問介護サービスの範囲は、自治体によって異なる場合があります。上記の内容は一例です。

生活援助は、サービス利用者が生活を送るために必要とする家事をホームヘルパーが代行することです。ケアマネージャーが作成したケアプランに沿って実施されます。

ふだんの生活で頻繁に行う必要がない行動(大掃除・庭の手入れ・家具・家電の修理)や、ペットの世話・嗜好品の買い物などは、生活援助の基本内容に含まれません。

訪問看護は看護師や保健師が既往症の病状を観察し、医療的ケアを実施します。訪問リハビリテーションは言語聴覚士や作業療法士が医師の指示に基づいてリハビリテーションを居宅で実施します。

夜間対応型訪問介護は夜間(18~8時)に定期的に訪問を受け、排泄介助や安否確認のサービスを受けます。夜間に突然体調が悪くなったときにも、救急車の手配や訪問介護員を呼ぶことができます。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、訪問介護員が24時間体制で健康管理や介護支援を行うサービスです。定期巡回等計画書にもとづき、一日の中で繰り返し訪問を受けられます。訪問入浴介護は、移動入浴車や簡易浴槽を使用して入浴介助が受けられるサービスです。

居宅療養管理指導は医師・看護師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士が居宅を訪問し、医学的な管理指導を行います。

通所サービス

通所サービスは、施設に通って介護やリハビリテーションを受けるサービスです。

通所型のサービスには次のようなものがあります。

【通所サービスの種類】

  • 通所介護(デイサービス)
  • 通所リハビリテーション(デイケア)
  • 認知症対応型通所介護
  • 地域密着型通所介護
  • 療養通所介護

通所介護(デイサービス)は、日帰りの施設に通って食事の提供や入浴介助を受けます。健康チェックやレクリエーション、機能訓練も受けることができます。

通所リハビリテーション(デイケア)は、医療施設や介護老人保健施設で食事の提供や日常生活の支援、リハビリテーションが受けられるサポートです。

地域密着型通所介護は、その地域に住む要介護1以上の高齢者が利用する小規模タイプの通所介護サービスです。

療養通所介護も地域密着型サービスのひとつで、医療デイサービスとも呼ばれています。難病やがんを抱えている方、気管切開を行った方などを対象とし、医療的ケアと日常生活の世話、リハビリテーションを併用したサービスです。

滞在サービス

滞在サービスは、施設に通って介護やリハビリテーションを受けるサービスです。滞在型のサービスには次のようなものがあります。

【滞在サービスの種類】

  • 短期入所生活介護(ショートステイ)
  • 短期入所療養介護(ショートステイ)

短期入所生活介護はショートステイという名称でも知られ、要介護者を一泊以上施設で預かり、介護や食事・入浴といったケアを提供するサービスです。

短期入所療養介護もショートステイの一種で、こちらでは要介護者のうち看護やリハビリが必要な方のために、機能訓練や医学的ケアを介護・生活支援とともに提供します。

複合サービス

複合サービスは、居宅・通所・宿泊といったサービスを組み合わせたものです。

複合型のサービスには次のようなものがあります。

【複合サービスの種類】

  • 小規模多機能型居宅介護
  • 看護小規模多機能型居宅介護

小規模多機能型居宅介護は、利用者の選択を尊重し施設へ通うことを中心に、宿泊や訪問を組み合わせて日常生活のサポートと機能訓練を行うサービスです。

看護小規模多機能型居宅介護は小規模多機能型居宅介護と同じ介護サービスに加えて、看護を提供します。ケアプランに沿って点滴やカテーテルの交換、人工肛門管理、床ずれケアといった処置を行います。

要介護3で入居できる老人ホーム・介護施設

要介護3になると、要介護1,2では入居できなかった施設への入居が認められるようになります。

入居が認められる種類として、介護老人保健施設・特別養護老人ホーム・介護付き有料老人ホーム・住宅型有料老人ホームについてみていきましょう。

介護老人保健施設

介護老人保健施設(老健)は、介護保険サービスが受けられる公的施設のひとつです。

介護を必要としており、入院治療の必要がない方を対象に、リハビリテーションや栄養管理、日常生活のサポートを併せて提供し、在宅復帰を目指します。

要介護1の方から入居できますが、施設では滞在サービスのほかに通所・居宅・地域密着型のサービスも提供しています。

特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホーム(特養)は、介護保険制度では「介護老人福祉施設」と呼ばれ、常時介護を必要とする要介護3以上の方に介護や生活支援サービスを提供する施設です。

常時の介護を必要とするため、自宅で生活することが難しい方のための生活の場であり、24時間体制で介護サービスを提供しています。

広域型・地域密着型・地域サポート型の3種類に分けられ、定員30名以上の広域型がもっとも多くの入居者を受け入れています。定員30名以下は地域密着型と呼ばれ、地域サポート型は在宅介護を受けている方への見守りサービスを行っています。

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは、民間の事業者などが運営する有料老人ホームの一種です。

有料老人ホームには介護付き・住宅型・健康型の3種類があり、介護付きは介護スタッフが24時間体制で介護サービスを提供しています。

介護付き有料老人ホームにも種類があり、「介護専用型」と「混合型」があります。混合型は自立した状態からでも入居できますが、介護専用型は要介護1以上の認定が必要です。

住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは、介護付き有料老人ホームと同じく民間の企業が運営することが多い、高齢者向けの居住施設です。

介護付きのように24時間介護スタッフが常駐しておらず、介護が必要な場合は外部の介護サービス事業所と契約し、老人ホーム内で訪問介護を受けます。

介護の提供はありませんが、掃除・洗濯・食事の提供といった生活支援サービスや健康管理、相談や見守りが受けられます。

要介護3になった場合にかかる想定費用

介護保険制度では、要介護度ごとに介護サービスの限度額が決められています。利用者はサービスにかかった利用料金の1割(一定以上所得者の場合は2割または3割)を負担します。

生活を送るにあたり、介護以外にも、施設に入居した場合と、施設以外で訪問介護などを受ける場合の想定費用をみていきましょう。

施設(特養)に入居した場合

公的施設である特別養護老人ホームでは、個室または多床室が選べます。多床室はひとつの部屋に複数名の利用者がベッドを置いて生活するスタイルです。

施設の利用にかかる金額の例は、一割負担で次のとおりです。

【施設入居の費用例】

項目 金額
居住費 約2万1,000円
食費 約4万4,000円
生活費 約1万円
サービス費 約2万8,000円
合計 約10万3,000円

※上記は一例です。施設によって料金プランが異なり、多床室よりも個室のほうが居住費は高くなります。

在宅で訪問介護を受ける場合

訪問介護は、持ち家などの居宅に介護スタッフが訪問するスタイルのため、介護にかかった時間で料金が変わります。

また、サービス内容や住んでいる地域が属する地域区分(1級地~7級地、その他)などによっても料金が異なります。

サービスには公的介護保険が適用されるため、利用者負担は、介護サービスにかかった利用料金の1割(一定以上所得者の場合は2割または3割)となります。実際の負担割合は、市区町村が交付している負担割合証で確認しましょう。

【訪問介護の費用例】

サービス 時間・回数 単位 利用料金 自己負担
1割 2割 3割
身体介護 20分未満 167 1,670円 167円 334円 501円
20分以上30分未満 250 2,500円 250円 500円 750円
30分以上1時間未満 396 3,960円 396円 792円 1,188円
1時間以上1時間半未満 579 5,790円 579円 1,158円 1,737円
生活援助 20分以上45分未満 183 1,830円 183円 366円 549円
45分以上 255 2,550円 255円 510円 765円
通院等乗降介助 1回あたり 99 990円 99円 198円 297円

※1単位=10円として算出

参考:厚生労働省 概算料金の試算 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」

 

上記のほかに訪問リハビリテーションや訪問看護、夜間対応や定期巡回型の訪問看護にも料金が設定されており、利用者の健康状況に合わせてサービスが提供されています。

訪問介護を受けた回数や提供されるサービスに応じて料金が加算されていきますが、施設への入居ではないため居住費は発生しません。

上記の利用料金はあくまで目安のため、実際にかかる利用料金は訪問介護(ホームヘルプ)の事業所などにお問い合わせください。

要介護3における区分支給限度基準額

区分支給限度基準額とは、在宅で介護保険サービスを利用するときに使える限度額のことです。

【区分支給限度基準額】

要支援度 区分支給限度基準額
要支援1 5万320円
要支援2 10万5,310円
要介護1 16万7,650円
要介護2 19万7,050円
要介護3 27万480円
要介護4 30万9,380円
要介護5 36万2,170円

要介護3は27万480円までの限度額が設定されており、この範囲内で介護保険サービスが利用できます。限度額を超えた場合は自己負担になります。

要介護3の方に合うサービスや施設を探す

今回は、要介護3の状況や他の要介護度との違い、受けられるサービスの種類や費用について紹介しました。

1ヶ月の生活にかかる費用は、利用する施設やサービスの種類・回数によって変化するため、制度や施設ごとの料金設定を検討して決めることが大切です。

要介護3の状態を押さえ、施設を利用する場合は日中だけではなく夜間や休日のサポート体制も受けられるかを確認し、介護を受ける方に合うサービスの利用を検討してください。

「笑がおで介護紹介センター」では、老人ホーム探しから、入居のためのアドバイスまで幅広く対応しています。関西で入居を検討されているなら、ぜひ私どもにご相談ください。予算に合わせてご紹介させていただきます。

監修者

花尾 奏一(はなお そういち)

保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

有料老人ホームにて介護主任を10年 
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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