老人ホームの入居に必要とされる身元引受人の役割・義務と注意点
お役立ちコラム
高齢者の生活施設である老人ホームは、介護保険施設と高齢者向け施設(住まい)の2種類に区別されます。
対象となる高齢者は60〜65歳の自立〜要介護度が高い方や認知症、医療ケアが必要な方までを受け入れています。負担額の少ないタイプから分譲タイプや高級な老人ホームまで種類が豊富です。
この記事では、老人ホームの概要と種類、施設で受けられるサービスや入居に必要な手続き・費用を紹介します。
入居にあたり必要な「身元引受人(保証人)」について、どのような義務や責任を負うのか身元引受人になる場合の注意点や身元引受人がいないケースの対応についても取り上げています。
老人ホームの概要
老人ホームは、60〜65歳以上の高齢者が介護や生活支援を受けながら生活を送る施設です。
高齢者のための施設は、介護保険施設と高齢者向け施設(住まい)に分けられます。その中で老人ホームは「特別養護老人ホーム」「有料老人ホーム」「養護老人ホーム」「ケアハウス(軽費老人ホーム)」の4種類があり、それぞれ以下のような分類があります。
【4タイプの老人ホーム】
施設 | 分類 | 種類 |
特別養護老人ホーム | 公的施設 |
広域型・地域密着型(サテライト型) 地域密着型(単独型) 地域サポート型 |
有料老人ホーム | 民間施設 |
介護付き 住宅型 健康型 |
養護老人ホーム | 公的施設 | 養護 |
ケアハウス | 公的施設 |
A型 B型 C型(自立型) C型(介護型) 都市型 |
特別養護老人ホームは、入居者の居住地によって広域型とそれ以外に分けられます。地域密着型のうち、本体施設をもつ場合はサテライト型となり、本体施設をもたないものは単独型となります。在宅で介護を受ける方の元にサービスを提供する施設は地域サポート型と呼ばれています。
有料老人ホームは介護サービスが付帯する介護付きと、外部の介護事業者と契約する住宅型、自立者のための健康型に分けられます。
養護老人ホームは在宅生活が困難な高齢者を受け入れている公的施設で、介護ではなく養護を目的とし、一部では盲・聴覚に障害をもつ方を受け入れています。
ケアハウスはA型・B型ともに健康な高齢者を対象とし、食事の提供があるA型、提供がないB型に分けられます。C型は「ケアハウス」という名称でも知られ、自立型は自立者を中心に、介護型は要介護者を受け入れています。都市部では人員配置や居住面積の基準を緩和した都市型も運営されています。
老人ホームは、公的施設と民間施設の2種類に分けられます。公的施設は社会福祉法人や地方自治体などが運営する施設で、介護度の高い人や低所得者の支援が大きな目的です。
在宅復帰を目指すための「介護老人保健施設(老健)」とは異なります。「介護老人保健施設」は病気・障害・加齢といった理由で在宅での生活が難しい方を対象に受け入れています。
介護サービスを提供していない施設では、入居者に介護が必要になったときは外部の介護事業者と契約するか、または介護を行っている施設への転居を求めます。
施設ごとに対象者や退居の条件が決まっている点に注意が必要です。
老人ホームの種類
老人ホームは、老人という社会通念に当てはまる高齢者のための住宅(ホーム)ですが、すべての高齢者施設が老人ホームと呼ばれているわけではありません。
高齢者施設には、介護保険サービスが利用できる「介護保険施設」と、高齢者がケアやサービスを受けながら居住する「高齢者向け施設(住まい)」があります。
【高齢者施設の分類】
分類 | 介護保険施設 | 高齢者向け施設(住まい) |
名称 |
|
|
このうち、老人ホームと呼ばれる施設は次の4施設です。
【老人ホームの特徴】
施設 | 特別養護老人ホーム | 有料老人ホーム | 養護老人ホーム | ケアハウス |
基本的性格 | 要介護高齢者のための生活施設 | 高齢者のための住居 | 環境的・経済的に困窮した高齢者の入居施設 | 低所得高齢者のための住居 |
施設の設置主体 |
地方公共団体 社会福祉法人 |
限定なし |
地方公共団体 社会福祉法人 |
地方公共団体 社会福祉法人 知事認可を受けた法人 |
対象者 | 65歳以上で身体・精神に著しい障害があり常時の介護を必要とする人 | 高齢者※ | 65歳以上で環境および経済的理由により自宅で養護が受けられない人 | 60歳以上で家族からの援助を受けられず自立した生活に不安を抱える人 |
※「高齢者」は、有料老人ホームの根拠法である老人福祉法で定義されていないため、社会通念における「老人」の方が対象です。
4施設はすべて高齢者を受け入れていますが、介護を必要とする方が優先される施設もあります。
高齢者の多い地域や人気が高い施設は入居までの待機期間が発生する場合も。入居を希望する方の健康状態や要支援・要介護度に合った施設を選びましょう。
老人ホームで受けられる主なサービス
老人ホームで受けられるサービスは次のとおりです。
【老人ホームのサービス】
- 介護
- リハビリテーション
- 生活支援
- 食事の提供
- その他
介護には、起き上がり・歩行といった移乗・移動などの介助や、入浴や排泄の介助、食事の配膳やスプーンを口に運ぶといったサポートが含まれます。
機能訓練を必要とする方には、専門の作業療法士などが利用者ごとのメニューを組んでリハビリテーションを実施します。
生活支援には、掃除・洗濯・片付け・採光・換気・見守り・声掛け・来訪者への対応といった、生活にかかわるサポート全般です。
食事の提供は、多くの老人ホームで実施しているサービスです。朝・昼・夕の一日三回、既往症や嚥下機能に合わせた食事が提供されます。3時にはおやつの時間があり、行事食としてイベントがある日には特別なメニューが用意されます。
その他のサービスとして、送迎・買い物代行・緊急時対応・外部の事業者との連絡も含まれます。
老人ホームに入居するメリット
老人ホームへの入居には、いくつかのメリットが挙げられます。入居者・身内・その他に分けて、期待できるメリットをみていきましょう。
入居者のメリット
入居者の多くは、60歳以上の高齢者です。既往症、認知症といった健康上の不安を抱えたまま在宅で過ごしていると、万が一ご自身にトラブルが発生した場合に対処が遅れる可能性もあります。
専門医や介護スタッフが常勤している施設では見守りやコミュニケーション、生活支援といった必要なサービスが受けられるため、すべてのことを一人でこなすプレッシャーや負担がありません。
同じ施設に住む入居者と交流したり、家族や知人が面会にやってきたりと、一人きりにならない工夫で毎日を楽しく過ごせる点もメリットです。
身内へのメリット
要介護度が高くなるほど介護の負担が大きくなります。身内の方が介護やケアを担当する場合、自分の時間を使って対応にあたらなければなりません。
しかし、施設に入居することで直接介護の必要はなくなります。金銭的な援助や面会といった間接的な関わり方へ変化し、自分のために時間が使えるようになるので、仕事や日常生活への負担が少なくなるでしょう。
その他のメリット
高齢者の孤立による孤独死・火事・害虫の発生といった問題は、高齢化社会の課題となっています。
自宅に住んでいた高齢者が亡くなり、相続人の存在や所在が分からないまま建物だけが残される「空き家問題」も同様です。
家の持ち主である高齢者ご自身が、自宅を適切に処分して施設に入ることで、相続や空き家の問題が解消され、孤独死のリスクも予防できます。
参考元:厚生労働統計協会「法医剖検例からみた高齢者死亡の実態と背景要因」
老人ホームの入居に必要な手続きや費用
老人ホームは、地方公共団体や社会福祉法人が運営する公的施設と、民間の企業・団体が運営する民間施設に分けられます。費用については、自治体からの援助を受けないため民間施設のほうが高額になります。
老人ホームへ入居するまでの流れと手続きは次のとおりです。
【老人ホームに入居する流れと手続き】
- 施設のリサーチ・説明会への参加
- 希望条件の整理と決定
- 施設の絞り込み・資料請求
- 施設の見学・説明会への参加
- 体験入居・仮申込み
- 必要書類の準備
- 施設側との面談
- 審査
- 契約
- 入居
はじめに施設の情報を集めて、申し込む施設を絞り込みます。パンフレットや資料を取り寄せ、説明会や見学会に参加します。施設へ見学を申し込み、直接訪問して説明をきくこともできます。
体験入居では、実際に施設で寝泊まりができます。入居してからの暮らしがイメージできるため、健康状態をみて仮申込みの前に参加するとよいでしょう。
入居申し込みでは、事前審査のために書類を用意します。
【入居に必要な書類】
- 入居申込書
- 住民票
- 戸籍謄本
- 印鑑証明
- 健康診断書
- 診療情報提供書
- 介護保険被保険者証
- 介護保険負担限度額認定証
- 診療情報提供書・看護サマリー
- 所得証明書
※上記は一例です。
入居にかかる費用には、初期費用として敷金や一時入居金が、毎月の暮らしにかかるお金として月額費用が請求されます。
老人ホームと、その他の高齢者施設の入居費用は次のとおりです。
【老人ホームの入居費用】
施設 | 初期費用 | 月額費用 |
特別養護老人ホーム | 0円 | 5〜15万円 |
介護老人保健施設 | 0円 | 8〜20万円 |
介護医療院 | 0円 | 9〜15万円 |
健康型有料老人ホーム | 0~数億円 | 10〜40万円 |
養護老人ホーム | 0円 | 0~14万円 |
ケアハウス | 0~30万円 | 6〜20万円 |
グループホーム | 0~数百万円 | 12〜18万円 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 0~数千万円 | 10〜40万円 |
上記は目安ですが、公的施設は初期費用が発生しないケースが多く、民間施設は規模や設備・サービスの程度によって費用に幅があります。
身元引受人(保証人)とは
身元引受人(保証人)とは、入居者に何かが起きたときに手続きを行う人です。
介護などを行う高齢者施設では、身元引受人の役割として荷物や身柄の引き取りを担う人を指し、施設の運営者が株式会社のような法人の場合は、支払いが滞った場合に債務を担う意味もあります。
身元引受人(保証人)の義務・責任
身元引受人(保証人)は、緊急時の連絡先となり入居者自身に代わる意思決定を行います。特に認知症を抱えている方は、症状の進行にともなって認知機能が低下する可能性があるため、身元引受人が代わりに判断や手続きを行います。
入居者の事故・ケガ・病状の悪化・救急搬送・死亡時には身元引受人に連絡が入ります。また、賃貸住宅の契約における「保証人」としての役割を負うケースでは、滞納時の支払い義務が生じます。
身元引受人(保証人)がいない場合はどうしたらよい?
身元引受人(保証人)不在の場合は、保証会社を利用するか、身元引受人不要の施設を選びましょう。
保証会社を活用する
保証会社とは、入居者の身元保証・口座管理・死亡時の対応を身内に代わって行う会社です。
事前にケアマネジャーやソーシャルワーカーに依頼し、入居先の施設担当者とケアプランを策定するタイミングで、保証会社とも同意書をかわします。
身元引受人(保証人)不要の施設を選ぶ
事前に保証金(預り金)を納入し、身元引受人なしで入居できる施設を選ぶことができます。ただし保証金は高額かつまとまった金額を支払わなくてはならないため、成年後見人制度の活用も検討しましょう。
成年後見人制度とは、金融資産の管理や手続きを第三者に代行してもらう制度です。入居者自身またはその家族、市区町村が申し立てを行い、家庭裁判所によって選任された人が後見人として身元引受人や緊急時の連絡対応を行います。
身元引受人(保証人)になる場合の注意点
身元引受人(保証人)になるときは、一定以上の所得や資産状況が確認される事もあります。施設や病院側の定めたルールで、3親等以内の親族や65歳以下といった年齢の基準が定められている場合もあります。
条件をクリアしている方は、本人確認証明書(顔写真付き)や住民票、印鑑証明書を提出し、正式に本人であると証明します。その後、施設と面談や審査を実施して身元引受人としての意思確認や負担・義務内容についての説明があります(説明がない場合は確認が必要です)。
身元引受人の役割を知って依頼や検討を行う
今回は、老人ホームの種類やサービス、身元引受人について紹介しました。
高齢者施設ではさまざまなサービスが提供されていますが、サービスを受けるためには手続きが必要になります。認知機能が低下した方は自身で正しく判断ができないケースも多く、身元引受人の存在が必要です。
施設への入居を検討するときは、入居にかかる手続きや費用とあわせて身元引受人・保証人が必要かどうかを確認し、必要な場合は早めに家族や知人に依頼するか、保証会社の活用を検討してください。
「笑がおで介護紹介センター」では、老人ホーム探しから、入居のためのアドバイスまで幅広く対応しています。関西で入居を検討されているなら、ぜひ私どもにご相談ください。予算に合わせてご紹介させていただきます。
監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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