パーキンソン病と言えばこの4大症状!症状別に治療方法を詳しく解説
お役立ちコラム


「パーキンソン病」という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。特徴的な振戦などを伴う神経変性疾患であり、高齢者に多くみられます。本記事では、パーキンソン病の主な症状、疾患の重症度、そして現在の治療法について解説します。神経疾患に関心のある方や、ご自身の症状が気になる方は、ぜひご一読ください。
パーキンソン病の病因と主な症状
パーキンソン病は、中脳黒質のドーパミン神経細胞の変性により、ドーパミン神経伝達物質が欠乏することで生じる進行性の神経変性疾患です。特徴的な4大症状として、安静時振戦、動作緩慢、筋強剛、姿勢保持障害が挙げられます。これらの症状は、個々の患者さんによって現れ方や進行スピードが異なり、生活への影響も様々です。診断は、病歴聴取、神経学的検査に加え、脳画像検査などを総合的に行い、他の神経疾患との鑑別診断が重要となります。
パーキンソン病の4大症状
- 安静時振戦
- 動作緩慢(無動・寡動)
- 筋強剛(筋固縮)
- 姿勢保持障害(転倒しやすい)
パーキンソン病の症状とは?
運動症状と非運動症状
パーキンソン病の症状は、大きく運動症状と非運動症状に分類されます。
運動症状
安静時振戦: 特に安静時にみられる。 |
動作緩慢: 動作開始が遅延し、動作遂行が遅くなる。 |
筋強剛: 筋肉の緊張が増大し、関節可動域が制限される。 |
姿勢反射障害: 姿勢制御が困難となり、転倒のリスクが増大する。 |
これらの運動症状に加え、複動作不能、リズミカルな動作の障害などがみられます。
非運動症状
運動症状に加え、自律神経症状(便秘、頻尿、起立性低血圧など)、睡眠障害、嗅覚障害、精神症状(うつ、幻覚・妄想など)といった非運動症状も特徴的です。特に、非運動症状は運動症状に先立って出現することがあり、診断において重要な手がかりとなります。
パーキンソン病の重さを測る方法
パーキンソン病の重さを測るには、主に「ホーエン・ヤール重症度」と「生活機能障害度」の2つの指標があります。
ホーエン・ヤール重症度
この方法は、病気の症状が体のどの部分に現れているか、そしてどのくらい症状が進んでいるかなどを数値で表すものです。 これらの評価方法は、病気の進行具合を把握し、治療法を決めるために使われます。また、医療費の助成を受けるための条件を判断する際にも、これらの評価結果が参考にされます。
0度 | 病気の症状はありません。 |
1度 | 体の片側だけに症状が現れます。 |
2度 | 体の両側に症状が現れますが、日常生活に大きな支障はありません。 |
3度 | 歩行が難しくなり、転びやすくなります。 |
4度 | 日常生活の動作が難しくなり、多くのことを人に手伝ってもらう必要があります。 |
5度 | 車椅子やベッドの上で寝たきりになり、ほとんどすべてを人に手伝ってもらう必要があります。 |
生活機能障害度
この方法は、日常生活でどれくらい自分でできるか、どれくらい人の助けが必要かなどを3段階で評価します。
1度 | ほとんど一人で日常生活を送れます。 |
2度 | 日常生活の一部で人の助けが必要です。 |
3度 | 日常生活のほとんどで人の助けが必要です。 |
パーキンソン病がなぜ起こるのか
パーキンソン病は、脳の特定の場所で、ある種類の神経細胞が減ってしまうことが原因で起こります。この神経細胞は、体の動きをスムーズにするために大切な役割を担っています。
なぜ神経細胞が減ってしまうの?
なぜこの神経細胞が減ってしまうのか、その詳しい理由はまだわかっていませんが、あるたんぱく質が脳の中にたまることが原因の一つと考えられています。このたんぱく質が神経細胞を傷つけてしまい、数が減ってしまうのです。 一般的に、年齢を重ねるごとにパーキンソン病になる人が増えます。つまり、年齢もパーキンソン病の発症に関係していると考えられています。
遺伝も関係するの?
パーキンソン病には、家族の中で同じ病気の人がいる場合と、そうでない場合があります。
家族性パーキンソン病 | 家族の中に同じ病気の人がいる場合は、遺伝子の異常が原因となっていることがあります。 |
孤発性パーキンソン病 | 家族の中に同じ病気の人がいない場合は、遺伝子のほかに、生活習慣や環境など、さまざまな要因が複雑に絡み合って病気の発症に関わっていると考えられています。 |
パーキンソン病の治療薬について
パーキンソン病の治療には、さまざまな種類の薬が使われます。これらの薬は、脳の中のドパミンという物質の働きを補ったり、調節したりすることで、症状を改善することを目指します。 どの薬を使うかは、患者さんの年齢や症状、他の病気との組み合わせなど、さまざまな要因を考慮して医師が決定します。 一般的には、若い人や認知症がない人にはドパミンアゴニスト、高齢者や認知症がある人にはL-ドパが最初に処方されることが多いです。
主な治療薬
ドパミンアゴニスト | 脳の中のドパミンの働きを直接まねて、症状を改善する薬です。 |
L-ドパ | 脳の中でドパミンを作るための材料となる薬です。 |
COMT阻害薬、MAO-B阻害薬 | ドパミンの働きを長く持続させたり、効果を高めたりする薬です。 |
抗コリン薬 | 体の震えなどを抑える効果がある薬ですが、副作用が出やすいことがあります。 |
その他 | 塩酸アマンタジン、ドロキシロパ、ゾニサミド、アデノシン受容体拮抗薬など、さまざまな種類の薬があります。 |
他の薬との飲み合わせに注意が必要です
パーキンソン病の薬を服用している場合、他の病気の薬との飲み合わせに注意が必要です。特に、抗精神薬の中には、パーキンソン病の症状を悪化させる可能性があるものがあります。
パーキンソン病の治療方法
薬で症状をコントロールできない場合や薬の副作用が問題になる場合は、手術療法なども行われています。ここでは、薬物療法以外の治療方法を紹介します。
脳深部刺激療法
脳に埋め込んだ電極と胸に埋め込んだ刺激装置をワイヤーでつないで、脳に電気刺激を送り神経細胞の興奮を抑える治療法です。オフ状態でも身体を動かしやすくなる(オフ状態=薬の働きが弱まった状態)、薬を減らせる(L-ドパ)などの効果を期待できます。根治治療ではないため手術後も薬の服用は必要です。 脳深部刺激療法を行っている施設は少ないとされています。また、全ての方が治療を受けられるわけではありません。70歳以下、認知症ではない、L-ドパが有効などの基準が設けられています。
レボドパ・カルビドパ空腸投与ゲル
薬物療法で運動合併症のコントロールが難しくなったケースなどで用いられているデバイス治療です。具体的には、胃瘻空腸路を造設してゲル状のレボドパ製剤を送り込みます。この治療法のメリットは、薬の安定した吸収を可能にできることです。したがって、薬が効いている時間帯と効いていない時間帯(オン・オフ現象)の変動が小さくなります。また、薬が効きすぎて起こる不随意運動(ジスキネジア)も抑えやすくなります。
MRIガイド下収束超音波療法
MRI画像をみながら、脳に超音波を当てて狙った部位を熱凝固させる治療です。薬物療法で十分にコントロールできない運動症状の緩和を期待できます。特に、振戦に対して有効と考えられています。主なメリットは、治療で心身にかかる負荷が小さいことと条件を満たせば保険を適用できることです。ただし、治療を受けられる施設は多くありません。
パーキンソン病のその他の治療法
薬だけでは症状が十分にコントロールできない場合や、薬の副作用が気になる場合は、手術などの治療法も選択肢として考えられます。
脳深部刺激療法(DBS)
脳の特定の部位に電極を埋め込み、電気刺激を与える治療法です。この刺激によって、神経の働きを調整し、パーキンソン病の症状を改善します。
メリット
- 薬の量を減らすことができる場合がある
- 薬の効果が不安定になる「オン・オフ現象」を改善できる可能性がある
デメリット
- 全ての人が受けられるわけではない
- 電池交換が必要になる
レボドパ・カルビドパ空腸投与ゲル療法
薬を直接小腸に送り込む治療法です。これにより、薬が体内に吸収されるスピードを一定に保ち、薬の効果を安定させることができます。
メリット
- 薬の効果が安定しオン・オフ現象が改善される
- 不随意運動の改善が期待できる
デメリット
- 手術が必要
- 全ての人が受けられるわけではない
MRIガイド下収束超音波療法
MRIを見ながら、超音波を使って脳の特定の部位を治療する新しい方法です。
メリット
- 手術の負担が比較的少ない。
- 保険適用となる場合がある。
デメリット
- 治療できる施設が少ない。
- 効果が出るまでに時間がかかる場合がある。
パーキンソン病のリハビリテーション:体を動かし、生活の質を高めよう
パーキンソン病の治療には、薬物療法だけでなく、リハビリテーションも非常に重要です。リハビリテーションでは、運動機能を維持・改善し、日常生活をより快適に送れるようにサポートします。 パーキンソン病は、体の動きをスムーズにする神経が徐々に損なわれていく病気です。そのため、体が硬くなったり、動きが遅くなったり、バランスを崩しやすくなったりといった症状が現れます。リハビリテーションは、これらの症状を改善し、日常生活の質を高めることを目的としています。
パーキンソン病を把握して暮らしの中に治療を取り入れることが大切
パーキンソン病は、進行性の病気ですが、適切な治療を受けることで、症状をコントロールし、日常生活を送ることができます。病気について正しく理解し、医師や専門家と協力しながら、自分にとって最善の治療法を見つけていきましょう。 もし、パーキンソン病について何か心配なことがあれば、お気軽に医師にご相談ください。
監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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