養護老人ホームと介護保険の関係を解説!知っておきたい入居条件と月額費用
お役立ちコラム
「養護老人ホームって介護保険を利用できるの?」「入居条件や利用料も教えて欲しい」などと考えていませんか。特別養護老人ホームと名称が似ているため、気になっている方は多いでしょう。養護老人ホームは、さまざまな理由で独居が困難な65歳以上の方を対象とする施設です。介護保険法に基づく施設ではありません。ここでは、養護老人ホームと介護保険の関係、養護老人ホームの入居条件、費用、特別養護老人ホームとの違いなどを解説しています。全体像を理解したい方は、確認しておきましょう。
養護老人ホームについて
養護老人ホームは、老人福祉法に基づく高齢者施設です。具体的には、次のように定義されています。
養護老人ホームは、第十一条第一項第一号の措置に係る者を入所させ、養護するとともに、その者が自立した日常生活を営み、社会的活動に参加するために必要な指導及び訓練その他の援助を行うことを目的とする施設とする。
引用:e-GOV法令検索「昭和三十八年法律第百三十三号 老人福祉法」
第11条第1項第1号は次のとおりです。
六十五歳以上の者であつて、環境上の理由及び経済的理由(政令で定めるものに限る。)により居宅において養護を受けることが困難なものを当該市町村の設置する養護老人ホームに入所させ、又は当該市町村以外の者の設置する養護老人ホームに入所を委託すること。
引用:e-GOV法令検索「昭和三十八年法律第百三十三号 老人福祉法」
つまり、環境上の理由および経済的理由で、居宅で養護を受けることが難しい65歳以上の方を市町村が措置で入居させ、養護するとともにその方の自立した日常生活と社会活動への参加を支援する施設といえるでしょう。 措置は、市町村が必要性などを勘案して、利用するサービスなどを決定する行政処分を意味します。つまり、契約により利用者が自由に選択できるわけではありません。
ここでいう環境上の理由は、日常生活動作、精神の状態、家族の状況、住居の状況などで、在宅における1人暮らしが難しいと認められることです。また、以下の要件も含まれます。
【環境上の理由】
- 入院加療を要する病態ではない
- 伝染性疾患を患っていない(他の入居者にうつさない)
健康状態も、環境上の理由に含まれるといえるでしょう。
ここでいう経済的理由は、次のいずれかに該当することです。
【経済的理由】
- 本人が属する世帯が生活保護を受けている
- 本人および本人の生計を維持しているものの前年の所得にかかる市町村民税の所得割がない
- 災害、その他の理由で本人の属する世帯の生活状態が困窮している
経済的に困窮している方を対象とする施設といえるでしょう。
ちなみに、厚生労働省が発表している「令和4年社会福祉施設等調査の概況」によると、2022年10月1日時点における養護老人ホームの施設数は932施設、定員は6万1518人、在所者数は5万3011人です。
特別養護老人ホームとの違い
名称が似ているため、養護老人ホームと特別養護老人ホームの違いがわからず混乱している方は多いでしょう。老人福祉法における定義は次のとおりです。
特別養護老人ホームは、第十一条第一項第二号の措置に係る者又は介護保険法の規定による地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護に係る地域密着型介護サービス費若しくは介護福祉施設サービスに係る施設介護サービス費の支給に係る者その他の政令で定める者を入所させ、養護することを目的とする施設とする。
引用:e-GOV法令検索「昭和三十八年法律第百三十三号 老人福祉法」
11項第1項第2号は以下のとおりです。
六十五歳以上の者であつて、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難なものが、やむを得ない事由により介護保険法に規定する地域密着型介護老人福祉施設又は介護老人福祉施設に入所することが著しく困難であると認めるときは、その者を当該市町村の設置する特別養護老人ホームに入所させ、又は当該市町村以外の者の設置する特別養護老人ホームに入所を委託すること。
引用:e-GOV法令検索「昭和三十八年法律第百三十三号 老人福祉法」
つまり、以下の施設などを特別養護老人ホームといいます。
【特別養護老人ホーム】
- 身体上または精神上の著しい障害で常時介護を必要とするものの、これを居宅で受けられず、やむを得ない事由で介護保険サービスの地域密着型介護老人福祉施設、介護老人福祉施設に入居することが著しく困難な65歳以上の方を措置で入居させて養護する施設
- 介護保険法に基づく地域密着型介護老人福祉施設
- 介護保険法に基づく介護老人福祉施設
措置で入居するケースと介護保険法に基づき契約で入居するケースがあります。原則として介護保険が優先されます。また、常時介護を必要とする方を対象とする点も特別養護老人ホームの特徴です(要介護3以上)。これらの点が、養護老人ホームとの主な違いといえるでしょう。
ちなみに、厚生労働省が発表している「令和4年介護サービス施設・事業所調査の概況」によると、2022年10月1日時点における介護老人福祉施設の施設数は8,501施設、地域密着型介護老人福祉施設の施設数は2,510施設です。
養護老人ホームの設備について
養護老人ホームは、具体的にどのような施設なのでしょうか。ここでは、設備について解説します。同施設は、次の設備の設置を義務づけられています。
設備 | 主な設備基準 |
居室 |
1人あたりの床面積10.65平方メートル以上 地階は不可 |
静養室 |
原則として1階に設け、寝台などを備える 医務室または職員室と近接して設ける |
洗面所 |
居室のある階ごとに設ける |
便所 | 居室のある階ごとに男子用と女子用を設ける |
医務室 |
入居者の診療のために必要な医薬品、医療機器を揃える 必要があれば臨床検査設備も揃える |
調理室 | 火気を使用する場所は不燃材料を使用する |
職員室 | 居室のある階ごとに居室と近接して設ける |
以上のほか、次の設備も設置を義務づけられています。
【設備】
- 食堂
- 集会室
- 浴室
- 宿直室
- 面談室
- 洗面室または洗濯場
- 汚物処理室
- 霊安室
- 事務室その他運営用必要な設備
ただし、他の社会福祉施設などの設備を利用することで、施設の効果的な運営を期待でき、入居者の生活に支障がない場合は、一部の設備を設けないことができます。また、廊下の幅を1.35メートル以上にすること(中廊下の幅は1.8メートル以上)、廊下、便所、その他必要な場所に常夜灯を設けること、階段の傾斜を緩やかにすることも設備の基準として定められています。
参考:厚生労働省「養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」
養護老人ホームのサービス
養護老人ホームは、環境上の理由および経済的理由で居宅において養護を受けることが難しい方を対象とする施設です。常時介護を必要とするなどの規定はありません。原則として自立している方を対象とするため、施設から介護サービスは受けられません。
ただし、約4割の施設は介護保険法に基づく外部サービス利用型特定施設入居者生活介護の指定を受けています。外部サービス利用型特定施設入居者生活介護は、特定施設(養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム)に入居している要介護者に対して、特定施設が作成したケアプランに基づき、委託を受けた外部の事業者が提供する日常生活の世話、機能訓練、療養上の世話などです。したがって、介護サービスを受けられる施設もあります。
養護老人ホームの目的は、入居者を養護することと入居者の自立をサポートすることです。また、社会的活動に参加するための必要な指導と訓練などを行うことも目的とします。これらの目的を踏まえたさまざまな支援を受けられる点が特徴です。具体的には、食事の提供、規則正しい生活を促すクラブ活動、レクレーション、家族関係の調整、金銭管理、その他の相談援助など、幅広い生活支援を受けられます。支援の結果、自立した生活を送れるようになれば、原則として退居を目指す点もポイントです。
養護老人ホームのメリット・デメリットとは
養護老人ホームに入居する主なメリットとデメリットは次のとおりです。
①メリット
代表的なメリットは、経済的な負担を抑えやすいことです。詳しくは後述しますが、養護老人ホームの費用は前年度の収入などにより変わります。収入が少ない場合は、自己負担なしで利用できることもあります。また、一部の老人ホームのように入居一時金もかかりません。経済的な不安を抱えている方にとっては、利用しやすい老人ホームといえるでしょう。
夜間および深夜の時間帯に1人以上の職員を配置している点も魅力です。1日を通じて職員が配置されているため、何かしらのトラブルが起きたときに迅速に対応してもらえる可能性があります。1人暮らしに不安を感じている方であっても安心して暮らせるはずです。
②デメリット
養護老人ホームは措置で入居する施設です。つまり、市町村が必要性を判断して、入居の可否を決定します。一定の条件を満たせば契約で入居できるわけではありません。また、入居の難しさ(入居の基準)が市町村によって異なる点にも注意が必要です。お住まいの地域によっては、入居が非常に難しいことも考えられます。
原則として、終身利用ではない点もデメリットとしてあげられます。前述のとおり、入居者の社会復帰や自立支援を目的とします。したがって、入居後の状況によっては退居を求められることがあります。また、介護施設ではないため、要介護度が高くなった場合も別の施設などへ転居をすすめられることが考えられます。
養護老人ホームへの入居条件や費用
ここからは、養護老人ホームの入居条件と費用を解説します。
①条件
老人福祉法に記載されている入居条件は以下のとおりです。
【入居条件】
- 65歳以上
- 環境上の理由および経済的理由により居宅で養護を受けることが困難
環境上の理由は在宅における1人暮らしが難しいと認められることなど、経済的理由は生活保護を受けている、市町村民税の所得割が非課税、災害などの理由で世帯の生活状況が困窮しているいずれかに該当することです。 具体的に、どのような方が入居の対象になりうるのでしょうか。入居者の例を紹介します。
【入居者の例】
- 家族などから虐待を受けている高齢者
- 無年金で経済的に困窮している高齢者
- 1人暮らしをしている高齢者
- 賃貸住宅から立ち退きさせられた高齢者
- ホームレスの高齢者
参考:公益社団法人全国老人福祉施設協議会「高齢者を守る養護老人ホーム」
幅広い高齢者が入居の対象になりうるといえるでしょう。ただし、実際の判断は市町村が行います。
②費用
養護老人ホームの費用は月額0~14万円です。具体的な金額は、前年度(または前々年度)の収入で変わります。前年度(または前々年度)の収入額から租税、医療費、社会保険料などの必要経費を差し引いた金額(対象収入額)を階層区分と照らし合わせて月額利用料を算出します。対象収入額と月額利用料(徴収金月額)の関係は次のとおりです(一部を抜粋)。
対象収入額 | 徴収金月額 |
0~27万円 | 0円 |
40万1円~42万円 | 1万800円 |
52万1円~54万円 | 2万800円 |
64万1円~68万円 | 3万800円 |
80万1円~84万円 | 4万1800円 |
100万1円~104万円 | 5万1800円 |
116万1円~120万円 | 6万2400円 |
132万1円~138万円 | 7万3100円 |
144万1円~150万円 | 8万1100円 |
150万1円~ | 8万1100円+150万円超過額×0.9÷12カ月(100円未満切り捨て) |
たとえば、年間の年金収入が80万円で必要経費が12万円であれば、徴収金月額は3万800円と考えられます(対象収入額:64万1円~68万円)。前述のとおり、入居一時金はかかりません。
養護老人ホームに介護保険は適用される?
ここまで説明してきたとおり、養護老人ホームは原則として介護サービスを提供していません。また、介護保険に基づく介護保険施設ではなく、老人福祉法に基づく老人福祉施設です。原則として、介護保険は適用されないといえるでしょう。
しかし、同施設のなかには、介護保険法に基づく外部サービス利用型特定施設入居者生活介護の指定を受けているところがあります。この指定を受けている施設では、施設が作成するケアプランに基づき、施設が委託する外部の事業者から介護サービスを受けられます。また、この指定を受けていない施設などでは、入居者が外部の事業者と契約を締結して、介護保険サービスを利用することもできます。
養護老人ホーム入居までの流れ
入居の基本的な流れは次のとおりです。
【入居の流れ】
- 市区町村の窓口、地域包括支援センター、養護老人ホームなどで相談
- 市区町村の窓口で申し込みを行う
- 必要項目についての調査
- 3の結果などをもとに入居(措置)の要否を判定
- 4の結果を受けて市区町村長が措置の要否を決定
- 入居
入居の要否を判定するため調査を行う点がポイントです。具体的には、本人の心身の状況、養護の状況、生計の状況などを調査します。この結果などをもとに、入居判定審査委員会で入居の要否を判定します。入居を希望する方は、市区町村窓口や地域包括支援センターなどで相談するとよいでしょう。
養護老人ホームと類似した施設
入居の流れを見てわかるとおり、希望すれば誰でも養護老人ホームへ入居できるわけではありません。入居条件に合致しない方などは、他の施設も検討するとよいでしょう。よく似た施設としてサービス付き高齢者向け住宅とケアハウスがあげられます。それぞれの特徴は次のとおりです。
施設名 | サービス付き高齢者向け住宅 | ケアハウス(一般型) |
概要 | 高齢者に相応しい構造や設備と見守りサービスを備えた高齢者向けの賃貸住宅 | 無料または低額な料金で、自立した日常生活を送ることに不安を感じていて、家族から援助を受けられない高齢者を入居させ、食事の提供、相談援助などを提供する施設 |
入居条件 |
原則60歳以上 60歳未満で要介護認定を受けている |
原則60歳以上 身寄りがないなどの理由で自立して生活することが難しい |
利用方法 | 契約 | 契約または措置 |
入居一時金 | 0~数千万円 | 0~30万円 |
月額利用料 | 10~40万円 | 6~12万円 |
選択肢を広げて、自分に合っている施設を探すとよいでしょう。
養護老人ホームは入居のハードルが高い
ここでは、養護老人ホームと介護保険の関係などについて解説しました。介護保険施設ではないため、契約で利用することはできません。環境面や経済面の理由で、在宅において1人で暮らすことが難しいなどの要件を満たし、措置で入居する必要があります。入居条件に合致しない方などは、他の老人ホームを選択肢に加えるとよいでしょう。よく似た施設として、サービス付き高齢者向け住宅やケアハウスがあげられます。
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監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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