サービス付き高齢者向け住宅の問題点と入居前におさえておきたい対策
お役立ちコラム


「サービス付き高齢者向け住宅を利用する前に問題点を把握しておきたい」「安心して利用する方法があれば教えてほしい」などと考えていませんか。生活の場になるため、トラブルを心配している方は多いでしょう。残念ながら、同施設では囲い込みなどの問題が発生しています。
ここでは、サービス付き高齢者向け住宅で起こりやすい問題とその対策、利用前におさえておきたいポイントなどを解説しています。以下の情報を参考にすれば、どのような点に注意して利用すればよいかがわかるはずです。入居を検討している方は参考にしてください。
サービス付き高齢者向け住宅について
サービス付き高齢者住宅は、高齢者に相応しい環境のもと専門家による見守りサービスを提供している高齢者向けの賃貸住宅です。具体的には、一定の面積と一定の設備を備えたバリアフリー構造の住宅で専門家による状況把握サービスならびに生活相談サービスを受けられます。
対象は、60歳以上の方または要支援・要介護認定を受けた40歳以上の方です(具体的な入居基準は施設で異なります)。同住宅は、その特徴により一般型と介護型に分類されます。それぞれの特徴は次の通りです。
一般型
自立度の高い高齢者を主な対象とするタイプです。見守りサービスは提供する一方で、介護保険法に基づく介護サービスは提供していません。
介護サービスが必要になった場合は、外部の事業者と契約してサービスを受けます。医療サービスについても同様です。手厚い介護や医療を期待している場合は適していないといえるかもしれません。
主な強みは専門家の見守りを受けながら、これまでのライフスタイルを維持しやすいことといえるでしょう。例えば、好きな時間に食事を食べたり、好きな時間にお風呂に入ったり、気分転換したいときに外出できたりすることが少なくありません。家事援助のオプションサービスを用意している施設がある点も見逃せません。施設によっては、日常生活の負担を小さくすることも可能です。
介護型
要介護度が高い高齢者にも対応しているタイプです。見守りサービスを提供しつつ、介護保険制度の特定施設入居者生活介護の指定を受けている点が特徴といえるでしょう。特定施設入居者生活介護は、特定施設に入居している要介護者に対して行われる食事・排泄・入浴などの世話、機能訓練、療養上の世話です(介護サービス)。
ここでいう特定施設は、有料老人ホーム・軽費老人ホーム・養護老人ホームを指します。有料老人ホームの要件(老人福祉法)である「食事の提供」「介護の提供」「家事の提供」「健康管理」のいずれかを行っているサービス付き高齢者向け住宅は有料老人ホームとみなされるため特定施設に該当します。
したがって、介護型は特定施設入居者生活介護の指定を受けて介護サービスを提供できるのです。所定の人員基準や設備基準を満たしているため、要介護度が高い高齢者にも対応できます。ただし、キッチンや浴室などを共用としているところ、一般型よりも居室が狭いところが多くなります。
関連記事:サービス付き高齢者向け住宅と有料老人ホームの特徴と違い
サービス付き高齢者向け住宅の利点
メリットを感じやすい点として以下のものがあげられます。
入居しやすい
高齢者は賃貸物件を借りにくくなる傾向があります。貸主が健康面や金銭面のリスクを考えるためです。サービス付き高齢者向け住宅は「高齢者の居住の安定確保に関する法律」で、高齢者を入居させて福祉サービスを提供する事業と定められています。
出典:e-GOV法令検索「平成十三年法律第二十六号 高齢者の居住の安定確保に関する法律」
したがって、高齢者であっても入居しやすいと考えられます。長期入院などを理由として、事業者側の都合で一方的に契約を解除できない点も魅力といえるでしょう(退去条件の確認は必要です)。
生活しやすい環境が整えられている
高齢者にとって生活しやすい環境が整えられている点も魅力です。段差を解消する、手すりを設置するなど、住宅はバリアフリー構造になっています。また、規模・設備は以下の基準が定められています。
床面積 | 原則25㎡以上(居間・食堂・台所などが共同利用するための十分な面積を有する場合は18㎡以上) |
専用部分の設備 | 台所・浴室・洗面設備・水洗便所・収納設備(共用部分に台所・浴室・収納設備を備えることで各専有部分にこれらを備える場合と比べ住環境が同等以上になる場合は各戸に備えなくても可) |
以上の環境下で、ケアの専門家による見守りサービスを受けられます。高齢者の不安を解消しやすい住宅といえるでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅の問題点
入居を検討する際に知っておきたい問題点もあります。代表的なものは次の通りです。
入居費用が高額
同じ立地条件・面積・グレードの賃貸住宅と比べると費用は高くなる傾向があります。建物がバリアフリー構造になっているうえ、見守りサービスをはじめとする生活支援サービスを提供しているためです。
サービスが伴っている場合は問題点といいにくいですが、理解しておきたいポイントであることは間違いありません。また、施設数の急増に伴い、サービス品質にばらつきが生じている点にも注意が必要です。ちなみに、入居費用の相場は、比較対象になりやすい有料老人ホームより安いと考えられています。具体的な入居費用はケースで異なりますが、高齢者向けの施設の中で費用が際立って高いというわけではありません。
関連記事:老人ホームの入居にかかる費用は?相場と安く抑えるポイント
介護サービスが不十分
国土交通省が発表している「情報提供サービス付き高齢者向け住宅の現状等」によると、令和2年8月時点で介護保険に基づく特定施設入居者生活介護等の指定を受けている施設(介護型)は全体の8.1%です。
出典:厚生労働省「情報提供 サービス付き高齢者向け住宅の現状等」
多くの施設は、十分な体制・設備を整えておらず、また十分な介護サービスも提供できません。
国土交通省が発表している「サ高住の供給状況等に係るデータ」によると、入居者の16.2%が「職員の数が少ない」、9.3%が「サービスを提供する職員のレベルが低い」、8.5%が「生活支援サービス(家事、安否確認、生活相談など)の内容が不満」と回答しています。
空室を解消したい事業者の希望で、自施設では対応しきれない要介護度の高齢者を受け入れる施設もあるといわれています。介護の必要性が生じる場合は、入居前に体制・設備・受けられるサービスなどをよく確認しておくことが大切です。
囲い込みの横行
系列の介護サービスを強制的に利用させることを囲い込みといいます。本人が望んでいない介護サービスを利用させられることもあるようです。一部のサービス付き高齢者向け住宅は囲い込みを行っています。
中には、家賃などを低額に抑えて、高齢者を集めている施設があるといわれています。介護保険の特徴は、利用者が自らの希望で事業者を選択して、契約を締結したうえで介護サービスを受けられることです。囲い込みは、介護保険の理念を踏みにじる行為と考えられます。現在は対策が講じられているため、囲い込みは減っていると考えられますが、それでも注意は必要といえるでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅を取り巻く問題への打開策
以上の問題点などに対応するため、さまざまな取り組みが行われています。代表的な取り組みは以下の通りです。
監視の強化
囲い込みに対処するため、国は監視体制を強化しています。介護サービスの利用実績から不適切な行為を抽出して、自治体の立ち入り調査などにつなげる仕組みを導入しているのです。
具体的には、毎月の利用限度額に対して一定の割合以上の介護サービスを利用しているなどの条件で介護計画を抽出して、囲い込みへの関わりが疑われる介護支援事業所を特定できるようにしています。
令和3年度の介護報酬改定で、事業所指定の際の条件付けが行われた点も見逃せません。これにより指定権者が、利用者の一定割合以上を併設施設以外の利用者にしなければならないなどの条件を設けられるようになりました。悪質な囲い込みは行いにくくなっているといえるでしょう。
行動規範遵守宣言確認書の発行
一般社団法人高齢者住宅協会は、サービス付き高齢者向け住宅に入居する高齢者の尊厳や自己決定権を守り、外部サービスを適切に活用し施設を運営していくため、事業者が守るべき行動規範を策定しています。さらに、2019年度から行動規範遵守宣言を行った施設を「適切に運営を行うサ高住運営事業者」として支援する取り組みも行っています。行動規範の内容は次の通りです。
(1) サービス付き高齢者向け住宅の入居者の尊厳と、「外付けサービス」である介護・医療サービス等の提供において利用者が事業者の選択・変更できる権利を守ります。
(2) サービス付き高齢者向け住宅の必須サービスとしての「生活支援サービス」と「外付けサービス」は区別します。
(3) サービス付き高齢者向け住宅の入居に際し、サービス付き高齢者向け住宅運営事業者が運営する介護・医療サービス事業所が併設・隣接していても、利用者が入居前から受けていた介護・医療サービスを継続利用できる権利を守ります。
引用:一般社団法人高齢者住宅協会 行動規範遵守宣言書
行動規範遵守宣言を行った施設は、適切運営の証になるロゴマークをホームページやパンフレットに使用できます。業界団体も運営適正化に向けた取り組みを進めているといえるでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅入居前後に留意しておきたいポイント
続いて、入居前におさえておきたいポイントを紹介します。
入居条件の見直しを行う
現在の状況をもとに、施設の入居条件を確認しておくことが大切です。基本的な入居条件は次のようになります。
【入居条件(本人)】
- 見守りサービスなどを受けながら自立した生活を送れる60歳以上(または要介護・要支援認定を受けている40歳以上)
※要介護度が高い高齢者を受け入れているところもあります。
【同居人】
- 配偶者
- 60歳以上の親族
- 要支援・要介護認定を受けている親族
- 特別な事情で同居が必要と知事が認めるもの
以上の入居条件はあくまでも基本です。具体的な条件は施設により異なることが少なくありません。対応できる要介護度、認知症への対応などは違いが現れやすいポイントといえるでしょう。
また、退去条件にも施設による違いがあります。現在の状況、予想される状況と入居条件・退去条件を照らし合わせて施設を選ぶことが重要です。
別の選択肢を用意しておく
入居する施設が決まっても、完全に安心することはできません。要介護度が上がったり、体調が悪化したりすると、退去を求められることがあるためです。別の選択肢を用意しておくと、このようなケースに備えられます。
介護サービスを提供していない一般型は、要介護度の上昇などにより退去しなければならないことが少なくありません。繰り返しになりますが入居時に退去条件を確認して別の選択肢を用意しておくと、安心して生活を送りやすくなります。 例えば、認知症に備えたい場合は、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)を探しておくとよいかもしれません。
介護サービスを活用する
多くの施設は介護サービスを提供していません。したがって、体制や設備も整備されていない傾向があります。入居後に介護が必要になった場合は、外部サービスの利用を検討しましょう。
具体的には、訪問介護やデイサービスの利用などが考えられます。身体機能などが衰えると、施設が提供するサービスだけでは快適に過ごしにくくなります。ケアマネージャーなどと相談しつつ、柔軟に対処することが大切です。
家族で連携する
介護サービスを利用すると自己負担が発生します。サービス付き高齢者向け住宅の費用とは別にかかるため、経済的な負担が大きいと感じる方もいるでしょう。家族の協力を得られれば、この費用を軽減できる可能性があります。
例えば、週に1回、着替えや排せつなど、身の回りの世話をしてもらうなどが考えられます。ポイントは、双方の負担にならないように気をつけることです。ケアマネージャーと相談しつつ検討を進めると、無駄のないスケジュールを組めます。
サービス付き高齢者向け住宅の入居費用の目安
公益社団法人全国有料老人ホーム協会が発表している資料によると、一般型における平均利用料金は月額142,215円です。
出典:公益社団法人全国有料老人ホーム協会「高齢者向け住まいにおける運営形態の多様化に関する実態調査研究報告書」
内訳は以下のようになっています。
項目 | 金額 |
居住費用(前払い金考慮後家賃) | 61,344円 |
月額利用料金 | 86,403円 |
前払い金を考慮しない家賃は58,901円です。月額利用料金は以下の項目で構成されます。
【月額利用料金】
- 共益費・管理費:19,023円
- 生活支援・介護サービス費、基本サービス費:19,011円
- 食費:45,877円
- 光熱水費:1,566円
※中位90%を対象に算出した平均値であるため小計と合計は一致しません。
入居時費用(前払金月額換算)は0円、敷金・保証金(参考)は96,756円となっています。ただし、具体的な入居費用は施設で大きく異なります。月額換算した総額費用が10万円未満の施設がある一方で、30万円以上の施設もあります。最も割合が高いのは14.3%の12~14万円未満です。入居費用については個別の確認が必要といえるでしょう。
関連記事:サービス付き高齢者向け住宅でかかる初期費用と月額費用の内訳
【介護度別】介護保険の自己負担額
介護保険に基づく介護サービスを利用する場合、所得に応じて1~3割(原則1割)の自己負担が発生します。要支援・要介護度別の利用限度額と自己負担額(利用限度額まで利用した場合)は次の通りです。[4]
要支援・要介護度 | 利用限度額 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
要支援1 | 50,320円 | 5,032円 | 10,064円 | 15,096円 |
要支援2 | 105,310円 | 10,531円 | 21,062円 | 31,593円 |
要介護1 | 167,650円 | 16,765円 | 33,530円 | 50,295円 |
要介護2 | 197,050円 | 19,705円 | 39,410円 | 59,115円 |
要介護3 | 270,480円 | 27,048円 | 54,096円 | 81,144円 |
要介護4 | 309,380円 | 30,938円 | 61,876円 | 92,814円 |
要介護5 | 362,170円 | 36,217円 | 72,434円 | 108,651円 |
利用限度額を超えた分は全額自己負担になります。また、月あたりの利用者負担が上限額を超えた場合は超えた分の払い戻しを受けられます(高額介護サービス費)。詳しくは、ケアマネージャーなどに相談するとよいでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅への入居後に後悔しないために
入居後に後悔しないため確認しておきたいポイントとして次の点があげられます。
サービス
必ず提供されるサービスは状況確認と生活相談の2つです。買い物などの生活支援サービスや入浴介助などの介護サービスの有無は施設により異なります。また、一部のサービスがオプションになっていることもあります。必要なサービスを受けられないなどのトラブルを防ぐため、入居前にサービス内容の確認が必要です。
スタッフ
スタッフの配置状況、有資格者の在籍状況、夜間の勤務体制は施設により異なります。少数ですが、夜間は職員を配置していない施設もあります(緊急通報で対応)。サービスの質などを評価するため、スタッフの配置状況などを確認しておくことも大切です。
医療・介護への対応
対応できる医療・介護のニーズも施設で異なります。これらが必要になったときに備えて、対応状況を確かめておくことも欠かせません。退去条件に加えて、過去の退去理由を調べておくと具体的な状況をイメージしやすくなります。
サービス付き高齢者向け住宅は問題点を理解してから利用
ここでは、サービス付き高齢者向け住宅の問題点とその対策などについて解説しました。主なポイントとして「入居費用が高くなりやすい」「介護サービスが不十分」「一部で囲い込みが行われている」があげられます。
囲い込みに関しては、監視を強化するなどの対策がとられています。他の2つは、施設を慎重に選ぶことや外部サービスを活用することで対処できるでしょう。施設の選択肢を知りたい方は、老人ホーム検索サイトなどを活用してみてはいかがでしょうか。
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[5]出典:厚生労働省「2019年度介護報酬改定」
監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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