パーキンソン病は治療可能?新しい治療の効果と注意すべきポイントとは
お役立ちコラム


パーキンソン病の治療に関する関心は高まっていますが、「完治するのか?」「治療の効果は?」といった疑問を抱く方も多いでしょう。本稿では、パーキンソン病の治療の現状と、今後の展望について解説します。 現段階では、パーキンソン病を根治させる治療法は確立されていません。しかし、薬物療法や外科手術などの多様な治療法が開発され、症状の緩和や生活の質の向上に貢献しています。 本稿では、パーキンソン病の治療法の基礎知識から、最新の治療動向、そして治療を受ける上での注意点までを網羅的にご紹介します。治療に関する理解を深め、最適な治療を選択するための参考資料としてご活用ください。
パーキンソン病ってどんな病気?
パーキンソン病は、手が震えるなど、体が思うように動かせなくなる病気です。国の医療費の助成対象になっており、特に50代から60代で発症しやすい病気です。しかし、20代など若い方でも発症することがあり、その場合は「若年性パーキンソン病」と呼ばれます。高齢化が進んでいるため、パーキンソン病の患者さんは増えています。では、なぜこの病気になるのか、どのような症状が出るのか、詳しく見ていきましょう。
なぜパーキンソン病になるの?
パーキンソン病は、脳の特定の神経細胞が徐々に損傷することで起こる病気です。この神経細胞は、私たちの体の動きをスムーズにするための大切な物質、ドパミンを作っています。しかし、パーキンソン病では、このドパミンを作る細胞が減ってしまうため、体が思うように動かなくなったり、震えが出たりするのです。 なぜ、この神経細胞が減ってしまうのか、その詳しい理由はまだわかっていません。 ただ、ある種のタンパク質が細胞内に溜まり、細胞を傷つけている可能性が考えられています。 まるで、車のエンジンオイルが減り、エンジンがうまく動かなくなるようなものです。 パーキンソン病も、脳のエンジンである神経細胞がうまく働かなくなることで、さまざまな不調が現れると考えられています。
パーキンソン病にはどんな症状があるの?
振戦(しんせん)
手足が小刻みに震える症状です。特徴的なのは、何もしていないときに特に強く現れることです。例えば、椅子に座ってリラックスしている時や、手を膝の上に置いている時などに、手が震えることがあります。しかし、何か作業を始めると、かえって震えが落ち着くこともあります。
動作緩慢(どうさかんまん)
動作が遅くなり、スムーズに動けなくなる症状です。立ち上がったり、歩いたりする動作が遅くなったり、表情が乏しくなって硬い印象を与えたりすることがあります。また、言葉がゆっくりになり、声が小さくなることもあります。
筋強剛(きんきょうごう)
筋肉がこわばり、動きが制限される症状です。腕や脚の関節を曲げたり伸ばしたりするときに、ギクシャクとした抵抗感があり、まるで歯車がひっかかるような感覚になることがあります。
姿勢反射障害(しせいはんしゃしょうがい)
体のバランスを保つことが難しくなる症状です。立ち上がったり、歩いたりする際にふらつきやすく、転倒のリスクが高まります。
これらの症状は、パーキンソン病の初期に現れる代表的なものです。しかし、パーキンソン病では、これらの4大症状以外にも、さまざまな症状が現れることがあります。例えば、夜中に寝ているときに夢の内容をそのまま行動に移してしまう「レム睡眠行動異常」、匂いが感じにくくなる「嗅覚障害」、不安や抑うつなどの精神的な症状などが、パーキンソン病を発症する数年前に現れることがあります。
パーキンソン病は治療できるの?
パーキンソン病は、残念ながらまだ根本的な治療法は見つかっていません。しかし、適切な治療を受けることで、症状をコントロールし、より快適な生活を送ることができます。 治療の効果や病気の進行速度は、個人の体質や生活習慣など様々な要因によって異なります。 パーキンソン病は、まだ治る病気ではありませんが、適切な治療と生活習慣の改善によって、症状をコントロールし、より良い生活を送ることができます。もし、パーキンソン病と診断された場合は、医師とよく相談し、自分に合った治療法を見つけることが大切です。
パーキンソン病の治療方法について
パーキンソン病の治療は、薬を飲む、運動をする、手術を受けるなど、様々な方法があります。それぞれの治療法について、もう少し詳しく説明しましょう。
薬を飲む(薬物療法)
パーキンソン病の治療で最も一般的なのが、薬を飲む治療法です。薬には、脳の働きを良くする効果があり、震えや動きが遅くなるといった症状を改善する効果が期待できます。
L-ドパ: 脳の働きを助ける大切な物質を補う薬です。多くの患者さんに効果がありますが、長期間服用すると、効果が弱くなったり、意図しない動きが出ることがあります。 その他の薬: L-ドパ以外にも、様々な種類の薬があります。これらの薬は、L-ドパの効果を高めたり、副作用を軽減したりする効果があります。運動する(運動療法)運動療法は、薬物療法と並んで重要な治療法です。体を動かすことで、筋肉が強くなり、関節が硬くなるのを防ぐことができます。また、気分転換にもなり、生活の質の向上にもつながります。手術を受ける(外科的療法)薬を飲んでも症状が改善しない場合、脳に電極を埋め込む手術(深部脳刺激療法)が行われることがあります。この手術は、体の震えや動きにくさを改善する効果が期待できます。パーキンソン病に対する薬物療法による運動合併症のリスク薬物療法で以下の合併症を引き起こすことがあります。薬物療法の合併症
- ウェアリングオフ
- ジスキネジア
それぞれの概要は次のとおりです。気になる点がある方は、主治医に相談しましょう。ウェアリングオフ薬物療法の期間が長くなると、薬剤(Lドパ製剤)が効いている時間は少しずつ短くなります。薬剤の効果が切れて、急に体を動かしにくくなる、ふるえが生じる、気分が沈むなどの状態になることをウェアリングオフといいます。 ドパミン神経細胞の変性でドパミンを蓄えにくくなると、薬剤の効果は2~3時間程度で切れることがあります。1日の中に薬剤が効いている時間帯と薬剤が効いていない時間帯が現れるため、生活しづらさを感じるケースが少なくありません。 この運動合併症が引き起こされる原因は、時間の経過とともに治療の効果がでる血漿中Lドパ濃度の幅が狭くなるためです。治療の効果が現れない血中濃度の幅が広くなることで、症状が現れると考えられています。 ウェアリングオフには、薬の飲む回数を調整したり、Lドパ製剤の働きを助ける薬剤を使用したりして対処できることがあります。薬剤を服用しているのに体を動かしにくい時間帯があるなどに該当する場合は、できるだけ早く主治医に相談することが大切です。ジスキネジア薬物療法の期間が長くなると、ジスキネジアも現れやすくなります。ジスキネジアは、自分の意思とは無関係に体が動く不随意運動を指します。たとえば、薬剤を服用してしばらく経つと、クネクネと手や足が勝手に動いてしまう、モゴモゴと口や舌が勝手に動いてしまうなどが考えられるでしょう。 ジスキネジアの原因も、時間の経過とともに治療の効果がでる血漿中Lドパ濃度の幅が狭くなることです。薬剤が効きすぎる血中濃度の幅が広くなることで、症状が現れると考えられています。 ジスキネジアは、薬剤や用量の変更で対処できることがあります。気になる点がある方は、主治医に相談しましょう。薬を飲むと現れることがある、体の動きパーキンソン病の薬を飲み続けると、体に少し変わった動きが出る場合があります。これは、薬の副作用の一つで、ウェアリングオフやジスキネジアと呼ばれています。 これらの症状は、薬の濃度が体の中で大きく変動することが原因と考えられています。薬の濃度が低いと症状が出てしまい、高すぎると体が勝手に動き始めるのです。ウェアリングオフウェアリングオフは、薬の効果が切れて、体が動きにくくなったり、震えが出たりする状態です。薬を飲んだ直後は元気に動けるのに、時間が経つとまた体が動かなくなってしまう、というように、1日のうちに良い状態と悪い状態を繰り返すことがあります。ジスキネジアジスキネジアは、自分の意思とは関係なく、体が勝手に動いてしまう状態です。手足がクネクネと動いたり、顔がゆがんだりすることがあります。パーキンソン病の治療法の将来性パーキンソン病の治療は、日々研究が進められており、より良い治療法が期待されています。パーキンソン病の理想の治療とは?パーキンソン病は、脳の特定の細胞が壊れてしまうことが原因で起こります。この壊れた細胞を元に戻したり、壊れないように守ることができれば、パーキンソン病の症状を改善したり、もしかしたら治せるかもしれません。例えば、震えが止まらなくなるといった症状を抑えたり、病気の進行を遅らせたりできるようになるかもしれません。しかし、今のところ、なぜこの細胞が壊れてしまうのか、その原因がはっきりとはわかっていません。そのため、この治療法を実現するためには、まだまだ多くの研究が必要です。注目されている治療法iPS細胞を使った治療パーキンソン病は、65歳以上の人のおよそ100人に1人がかかっている病気です。この病気の新しい治療法として、iPS細胞を使った治療が注目されています。iPS細胞とは、私たちの体のどんな細胞でも作り出すことができる特別な細胞のことです。このiPS細胞から、パーキンソン病で不足している脳の細胞を作り出し、患者さんの脳に移植する治療法が研究されています。この治療法が成功すれば、パーキンソン病の患者さんが、もっと自由に体を動かすことができるようになるかもしれません。 しかし、これらの治療法はまだ研究段階であり、実用化までには時間がかかることが予想されます。また、安全性や効果についても、まだ多くの課題が残されています。遺伝子治療遺伝子治療は、遺伝子の働きを変化させることで、病気の原因となる遺伝子を修復したり、新しい遺伝子を導入したりする治療法です。パーキンソン病の遺伝子治療では、脳の細胞に遺伝子を届けることで、脳が自分でドパミンを作れるようにする研究が行われています。パーキンソン病の治療中に気をつけたいことパーキンソン病の治療を受けるときは、いくつかの点に注意が必要です。基本のポイントとして、薬剤の服用を忘れないことがあげられます。症状が改善すると、薬剤の服用を忘れてしまうケースが少なくありません。悪化を招くため、スマホに記録するなどの対策を講じて、適切に管理することが大切です。 薬剤の用法や用量を自分で変更しないことも注意点としてあげられます。自己判断でこれらを変更すると、期待する効果を得られなかったり想定外の副作用が現れたりすることがあります。主治医の指示を守って服用しましょう。 薬剤の副作用を理解しておくことも欠かせません。飲み始めに現れやすい副作用として、食欲不振、立ち眩み、眠気などがあげられます。幻覚やむくみ、衝動的な行動に悩まされることもあります。ここでいう衝動的な行動は、ギャンブルへの依存や性欲の高まりなどです。以前は見られなかった衝動的な行動がみられる場合は薬剤の影響かもしれません。事前に副作用を確認しておくとともに、気になる症状が現れた場合は主治医に相談することが大切です。パーキンソン病の治療中に気をつけたいことパーキンソン病の治療は、薬を飲むことが中心となります。薬を正しく飲むことで、症状をコントロールし、快適な生活を送ることができます。しかし、治療を進める上で、いくつか注意すべき点があります。 症状が改善すると、薬を飲むのを忘れてしまうケースがありますが、カレンダーに記入したり、アラームを設定したりするなど、飲み忘れを防ぐ工夫をしましょう。 また薬の量は、医師が一人ひとりの症状に合わせて決めています。勝手に薬を止めたり、量を増やしたりすると、症状が悪化したり、思わぬ副作用が出たりすることがあります。 逆に薬を飲むと、吐き気や眠気、便秘などの副作用が出る場合があります。また、まれに、幻覚や衝動的な行動(ギャンブル依存など)が出ることもあります。これらの症状が出たら、すぐに医師に相談しましょう。 定期的に受診をして医師に診てもらうことで、薬の効果を確認し、必要に応じて薬の量を調整してもらうことができます。 疑問や異変をそのままにせず、専門家と二人三脚で服薬治療に取り組むことで、効果的に症状の進行を抑えるとこが期待できます。パーキンソン病と向き合い適切な治療でより良い生活へパーキンソン病は、まだ全ての謎が解明されたわけではありませんが、適切な治療を受けることで、症状をコントロールし、より快適な生活を送ることができます。 パーキンソン病の治療の目的は、ただ単に「生きていく」ということだけではありません。震えや体の動きが遅くなるといった症状を改善し、日常生活を送ることを楽にすること、そして、心身ともに健康で、充実した日々を送ることです。
運動例 | ウォーキング、ストレッチ、軽い筋力トレーニングなどがおすすめです。 |
運動の注意点 | 症状が強い場合は、無理のない範囲で行いましょう。専門家(理学療法士など)に相談することも大切です。 |
監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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