【完全ガイド】老人ホームの資金計画|費用の内訳から捻出方法、使える制度まで専門家が解説

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【完全ガイド】老人ホームの資金計画|費用の内訳から捻出方法、使える制度まで専門家が解説

「親や自分自身が老人ホームに入居する場合、一体いくらかかるのだろう」「年金だけで足りるのか不安」など、老人ホームを検討する際に、費用の問題は誰もが直面する大きな壁です。安心して快適なセカンドライフを送るためには、入居前にしっかりとした資金計画を立てることが何よりも重要です。無計画のまま入居してしまうと、後々資金がショートしてしまい、退去を余儀なくされる「老後破産」に陥るリスクもゼロではありません。この記事では、後悔しない老人ホーム選びのために不可欠な「資金計画」について、専門家の視点から徹底的に解説します。費用の内訳や種類別の相場といった基本から、具体的な計画の立て方、万が一資金が不足した場合の捻出方法、利用できる公的制度まで、この1本で全てがわかります。

なぜ重要?老人ホーム入居前に資金計画を立てるべき3つの理由

漠然とした不安を解消し、納得のいく施設選びをするために、なぜ資金計画が重要なのでしょうか。その理由は大きく3つあります。

1. 老後の資金ショート(破産)を防ぐため
最も大きな理由は、入居後の資金繰りに困窮し、生活が立ち行かなくなる事態を避けるためです。老人ホームの費用は長期にわたって発生します。現在の資産だけで判断せず、将来の収入と支出を正確に予測し、無理のない計画を立てることが不可欠です。

2. 希望に合った施設を選べる選択肢を広げるため
資金計画を立てることで、自分たちがどのくらいの費用をかけられるのかが明確になります。予算がはっきりすれば、その範囲内で最も希望に近いサービスや設備、立地の施設を探すことができ、選択の幅が広がります。

3. 本人と家族が安心して生活するため
「いつまで費用を払い続けられるだろうか」という金銭的な不安は、本人だけでなく家族にとっても大きな精神的負担となります。事前に計画を立て、資金の目処をつけておくことで、入居後の生活を安心して送ることができます。

老人ホームの費用はいくら?種類別の相場と内訳を解説

老人ホームの費用は、大きく「初期費用」と「月額費用」の2つに分けられます。まずは、それぞれの費用の内容を正しく理解しましょう。

費用の内訳|初期費用と月額費用とは

初期費用(入居一時金など)

初期費用とは、施設に入居する際に支払う費用のことです。賃貸住宅でいう「前払家賃」のような性格を持つ「入居一時金」が代表的です。終身にわたる家賃やサービス費の一部をまとめて支払うことで、月々の負担を軽減する役割があります。

金額は0円から数千万円、施設によっては1億円を超える場合もあり、非常に幅広いです。近年は入居一時金0円のプランを用意する施設も増えていますが、その分、月額利用料が高くなる傾向があります。

月額費用(月額利用料)

月額費用は、毎月継続して支払う費用のことです。主に以下のような項目で構成されています。

費用項目 内容
居住費(家賃相当額) 居室や共用スペースの利用料です。施設の立地や居室の広さ、設備によって変動します。
管理費 共用部分の維持管理費、水道光熱費、事務スタッフの人件費などです。
食費 1日3食の食事提供にかかる費用です。
介護保険外サービス費 法律で定められた基準より手厚い介護・看護スタッフを配置するための費用(上乗せ介護費)や、個別の要望に応える生活支援サービス費などです。

月額費用に加えて必要となる費用

上記の月額利用料に加えて、以下の費用が別途自己負担となる点に注意が必要です。

  • 介護保険サービス費の自己負担分: 要介護度に応じて利用した介護サービスの費用の1割~3割を負担します。
  • 医療費: 持病の治療や薬代、通院・入院にかかる費用。
  • 日常生活費: 理美容代、おむつ代、クリーニング代、電話代、レクリエーションの参加費など。

【種類別】老人ホームの費用相場一覧

老人ホームは種類によって提供されるサービスや設備が異なり、費用も大きく変わります。ここでは、代表的な施設の種類ごとの費用相場をご紹介します。

施設の種類 初期費用(相場) 月額費用(相場) 特徴
介護付き有料老人ホーム 0円~数千万円 15万円~30万円 介護スタッフが24時間常駐し、食事や入浴などの介護サービスを施設内で受けられる。
住宅型有料老人ホーム 0円~数百万円 13万円~20万円 生活支援サービスが中心。介護が必要な場合は外部の訪問介護などを個別に契約する。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) 0円~数十万円 10万円~30万円 バリアフリー対応の賃貸住宅。安否確認と生活相談サービスが必須。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) 0円~数十万円 15万円~20万円 認知症の高齢者が5~9人のユニット単位で共同生活を送る。
軽費老人ホーム(ケアハウス) 0円~数十万円 7万円~20万円 自立生活に不安がある高齢者が比較的低料金で利用できる。

※上記はあくまで一般的な目安です。費用は施設の所在地、居室タイプ、サービス内容によって大きく異なるため、必ず個別の施設にご確認ください。

失敗しない資金計画の立て方5ステップ

それでは、実際にどのように資金計画を立てていけばよいのでしょうか。以下の5つのステップに沿って進めることで、具体的で現実的な計画を作成することができます。

ステップ1:現在の資産と収入をすべて洗い出す

まずは、入居者本人の資産と収入を正確に把握することから始めます。漏れがないように、すべて書き出してみましょう。

  • 金融資産: 普通預金、定期預金、株式、投資信託、生命保険(解約返戻金)など。
  • 不動産資産: 現在住んでいる自宅や土地など。売却や賃貸に出す場合の想定価格も調べておきましょう。
  • 定期収入: 公的年金(国民年金・厚生年金)、個人年金など。毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」や年金証書で受給額を確認します。

ステップ2:入居後の総費用をシミュレーションする

次に、老人ホームに入居してから生涯にわたって必要となる費用の総額を試算します。大まかな計算式は以下の通りです。

(月額利用料 × 12ヶ月 × 平均余命) + 初期費用 = 生涯に必要な施設費用

「平均余命」とは、ある年齢の人があと何年生きられるかという統計的な期待値です。厚生労働省の「令和5年簡易生命表」によると、主な年齢の平均余命は以下のようになっています。この数値を参考に、入居予定期間を想定しましょう。

  • 80歳の平均余命:男性 8.78年 / 女性 11.45年
  • 85歳の平均余命:男性 6.55年 / 女性 8.52年
  • 90歳の平均余命:男性 4.82年 / 女性 6.13年

ステップ3:収支を計算し、過不足を確認する

ステップ1、2を元に、具体的な収支シミュレーションを行います。

【シミュレーション例】

  • 前提条件: 85歳女性、平均余命約8.5年で入居を想定|資産:預貯金1,500万円|収入:年金 月15万円|入居希望施設:初期費用300万円 / 月額利用料25万円
  • 支出の計算:
    • 月々の不足額:25万円(月額利用料) - 15万円(年金) = 10万円
    • 年間の不足額:10万円 × 12ヶ月 = 120万円
    • 入居期間(8.5年)の総不足額:120万円 × 8.5年 = 1,020万円
    • 必要な総額:1,020万円 + 300万円(初期費用)= 1,320万円
  • 判定: 1,500万円(資産) > 1,320万円(必要な総額) → このケースでは、資産で費用をまかなえる見込みが立ちます。

ステップ4:資金が足りない場合の捻出方法を検討する

シミュレーションの結果、資金が不足することが判明した場合は、その差額をどのように補うかを検討する必要があります。後述する「資金不足を補うための具体的な方法」を参考に、複数の選択肢を考えましょう。

ステップ5:予算内で最適な老人ホームを探す

最終的に準備できる資金の総額(予算)が確定したら、その範囲内で希望条件に合う老人ホームを探します。予算を明確にすることで、無理なく暮らし続けられる施設を見つけやすくなります。

資金不足を補うための具体的な方法

シミュレーションで資金不足が見込まれる場合でも、諦める必要はありません。不足分を補うための様々な方法が存在します。

自宅資産を活用する方法

リバースモーゲージ

自宅を担保にお金を借り入れ、契約者が亡くなった際に自宅を売却するなどして一括返済する仕組みです。社会福祉協議会が実施する不動産担保型生活資金や、金融機関が提供する商品があります。

マイホーム借上げ制度

一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)が提供する制度です。50歳以上の方が所有する家をJTIが終身にわたって借り上げ、子育て世帯などに転貸します。空室が発生しても最低保証賃料が支払われるため、安定した収入を見込めます。

リースバック

自宅を不動産会社などに一度売却し、その後、賃貸契約を結んで家賃を払いながら同じ家に住み続ける方法です。まとまった売却資金を一度に得られるメリットがあります。

公的な負担軽減制度を活用する

国や自治体には、介護や医療にかかる費用の負担を軽減するための制度が用意されています。

高額介護サービス費制度

1か月に支払った介護保険サービスの自己負担額が、所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。

特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)

所得や資産が一定基準以下の人が介護保険施設(特養、老健など)やショートステイを利用した場合に、食費や居住費の負担が軽減される制度です。申請には「介護保険負担限度額認定証」が必要です。

医療費控除

1年間に支払った医療費や、対象となる介護サービス費が一定額を超えた場合に、確定申告をすることで所得税や住民税が還付される可能性がある制度です。

老人ホームの資金計画に関するよくある質問

年金だけで入居できる施設はありますか?

はい、あります。公的施設である「特別養護老人ホーム」や、比較的費用が安い「ケアハウス」は、年金の範囲内で利用できる可能性があります。ただし、所得や資産に制限があるほか、特養は待機者が多いなど、誰でもすぐに入居できるわけではありません。

途中で費用が払えなくなったらどうなりますか?

まず、すぐに退去を迫られることは稀です。多くの施設では、連帯保証人や身元引受人と相談の上、支払い計画の見直しや、より費用の安い部屋への移動、公的制度の活用などを検討します。それでも支払いが困難な場合は、特別養護老人ホームなど、より負担の少ない施設への転居を勧められることもあります。

入居一時金は戻ってきますか?(償却について)

入居一時金は、施設が定める「想定居住期間」内に退去した場合、未償却分が返還されるのが一般的です。契約前に償却のルールを必ず確認しましょう。

償却(しょうきゃく)
入居一時金を、想定される居住期間にわたって、月々の家賃などに充当していく会計上の処理のことです。
初期償却(しょきしょうきゃく)
入居時に、入居一時金の一定割合(例:20%~30%)を一度に償却するルールです。この分は短期で退去しても返還されません。施設が独自に設定する平均的な入居期間のことです。この期間を超えて住み続けても、追加の家賃請求などはありません。

親の介護費用は誰が負担すべきですか?

民法では、直系血族(親子、祖父母と孫など)及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務があると定められています(民法第877条)。しかし、これはあくまで「自身の生活を維持した上で、余力があれば援助する」という範囲の義務です。まずは親自身の年金や資産で費用をまかなうのが大原則です。それでも不足する場合に、兄弟姉妹で話し合い、公平に分担して援助するのが望ましい形と言えるでしょう。

まとめ:資金計画に不安があれば専門家への相談が近道

老人ホームの資金計画は、将来の安心を左右する非常に重要なプロセスです。しかし、費用の計算や様々な制度の理解、資金の捻出方法の検討など、専門的な知識が必要な場面も多く、ご自身やご家族だけで進めるのは大変な作業です。

もし資金計画に少しでも不安を感じたら、一人で抱え込まずに専門家に相談することをお勧めします。専門家に相談することで、複雑な情報を整理し、ご自身の状況に合った最適なプランを見つける近道になります。

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介護業界と地域の情報に精通した経験豊富な相談員が、お一人おひとりの資産状況やご希望を丁寧にお伺いし、無理のない予算で安心して暮らせる施設探しを、親身になってお手伝いします。複雑な費用や制度についても、分かりやすくご説明いたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

監修者

花尾 奏一(はなお そういち)

保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

有料老人ホームにて介護主任を10年 
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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