認知症によるひとり歩き(徘徊)とは?原因から対策、予防、探し方まで家族ができることを解説

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認知症の家族が、いつの間にか家からいなくなっていた…。そんな経験に、肝を冷やした方も少なくないのではないでしょうか。「徘徊」は、介護するご家族にとって最も心配な症状の一つです。事故に遭わないか、無事に帰ってこられるかと、心休まるときがないかもしれません。しかし、一般的に「徘徊」と呼ばれる行動は、ご本人にとっては何の目的もない「うろつき」ではありません。その行動の裏には、ご本人なりの切実な理由や目的が隠されています。この記事では、認知症によるひとり歩き(徘徊)がなぜ起こるのか、その原因を深く掘り下げ、今日からできる具体的な対策や予防法、万が一のときの探し方まで、ご家族ができることを網羅的に解説します。ひとり歩きを正しく理解し、適切な備えをすることで、ご本人とご家族の双方の不安を和らげることができます。

認知症による「ひとり歩き(徘徊)」とは?本人には目的がある行動

ひとり歩きは目的のない「うろつき」ではない

「徘徊」という言葉は、あてもなくさまよい歩くという意味合いで使われがちですが、認知症の方の行動はそうではありません。ご本人にとっては、「会社に行かなければ」「家に帰って夕飯の支度をしないと」「忘れ物を取りに行く」など、はっきりとした目的や理由があって外に出ているケースがほとんどです。

しかし、認知症の中核症状である記憶障害や見当識障害によって、帰り道がわからなくなったり、自分がどこにいるのか認識できなくなったりしてしまいます。その結果、客観的に見ると「目的もなく歩き回っている」ように見えてしまうのです。近年では、本人の意思を尊重し、「徘徊」という言葉の代わりに「ひとり歩き」や「道に迷うこと」といった表現が使われることも増えています。

ひとり歩き(徘徊)によって起こりうるリスク|事故や行方不明の危険性

ひとり歩きには、命に関わるさまざまなリスクが伴います。道に迷うことで、以下のような危険な状況に陥る可能性があります。

交通事故
信号や周囲の車を認識できず、道路に飛び出してしまう危険性。
転倒・転落
足元がおぼつかなくなり、段差でつまずいて骨折したり、用水路や坂道から転落したりする危険性。
熱中症・低体温症
季節感の認識が難しくなり、真夏に厚着をしたり、真冬に薄着で出かけたりして、体温調節がうまくいかなくなる危険性。
脱水症状
長時間歩き続けることで、水分補給ができずに脱水症状に陥る危険性。
行方不明
自力で家に帰ることができなくなり、長期間行方不明になってしまうケース。

これらのリスクからご本人を守るためにも、ひとり歩きへの備えは非常に重要です。

データで見るひとり歩き(徘徊)による行方不明者の現状

ひとり歩きによる行方不明は、決して他人事ではありません。警察庁の発表によると、令和5年中に届け出があった行方不明者のうち、認知症が原因(またはその疑い)の人は18,729人にのぼり、統計を取り始めた平成24年以降で最多となっています。

行方不明になった方の多くは当日中に保護されていますが、残念ながら491人の方が死亡した状態で見つかっています。このような悲しい事態を防ぐためにも、社会全体で見守り、早期発見に繋げる体制づくりが求められています。

認知症でひとり歩き(徘徊)が起こる主な原因

ひとり歩きの背景には、認知症の中核症状と、ご本人が置かれている環境や心理状態が複雑に影響しています。

記憶障害によるもの

過去の記憶と現在の記憶が混同し、「若い頃の自分」に戻ってしまうことがあります。例えば、「子どもを学校に迎えに行かなければ」「会社に出勤しなければ」といった過去の習慣に基づいた目的で外に出てしまうケースです。ご本人にとっては、それが「今やるべきこと」なのです。

見当識障害によるもの

時間、場所、人物などを正しく認識できなくなる症状です。住み慣れた自宅にいても、ここが自分の家だと認識できず、「自分の家に帰らなければ」と外に出てしまうことがあります。また、外出先で自分のいる場所が分からなくなり、帰り道を探して歩き回っているうちにひとり歩きにつながることもあります。

実行機能障害・判断力の低下によるもの

計画を立てて物事を順序よく実行することが難しくなる症状です。例えば、「買い物に行く」という目的で外に出ても、途中で道に迷ったときに「人に道を尋ねる」「地図を見る」といった適切な行動をとることができません。その結果、ただひたすら歩き続けてしまうことがあります。

不安やストレスなどの心理的な要因

認知症の方は、常に漠然とした不安の中にいることがあります。その不安やストレスが、外に出る引き金になることも少なくありません。

環境の変化によるストレス
引っ越しや入院、デイサービスの利用開始など、環境が大きく変わると、ご本人は強いストレスや混乱を感じます。慣れない環境から逃げ出し、「元の安心できる場所」に帰ろうとしてひとり歩きにつながることがあります。
役割を失ったことによる焦り
定年退職や、これまで担ってきた家事などを家族が代わりに行うようになったことで、「自分はもう必要のない人間だ」と感じ、自分の居場所や役割を探し求めて外に出ることがあります。
身体的な不調
頭痛、腹痛、便意、頻尿、体の痛みやかゆみといった身体的な不快感を、うまく言葉で表現できないことがあります。その不快感から逃れるために、落ち着かずに歩き回ることがあります。特にトイレの場所が分からず、探して歩き回っているケースは多く見られます。

前頭側頭型認知症の常同行動

前頭側頭型認知症の症状の一つに、同じ行動を何度も繰り返す「常同行動」があります。目的があるわけではなく、毎日決まった時間に決まったコースを歩き続ける「周徊(しゅうかい)」と呼ばれる行動も、ひとり歩きの一種と考えられています。

今日からできるひとり歩き(徘徊)への対策と予防法

ひとり歩きは、日頃の関わり方や環境を工夫することで、予防したり、症状を軽減したりすることが可能です。

ひとり歩きが起きた時の基本的な対応

ご本人が外に出ようとしているときに、どのように対応すればよいのでしょうか。

まずは本人の話を聞き、気持ちを受け止める
「どこかへ行くのですか?」「何かお探しですか?」と優しく声をかけ、まずはご本人の話に耳を傾けましょう。「家に帰らないと」と言うのであれば、「お家に帰りたいのですね」と、その気持ちを一度受け止めることが大切です。
頭ごなしに否定したり叱ったりしない
「ダメ!」「どこにも行かないで!」と頭ごなしに否定したり、叱りつけたりするのは逆効果です。否定されると、ご本人は混乱し、不安や不信感が強まって、さらに外に出ようとしてしまう可能性があります。
気をそらして関心を別のことに向ける
ご本人の気持ちを受け止めたうえで、関心を別のことに向けてみましょう。例えば、「お茶でも飲んでからにしませんか?」「好きなテレビ番組が始まりますよ」などと誘い、外出したいという気持ちを忘れるきっかけを作ります。
安全を確認したうえで少し歩いてもらう
どうしても外に出たいという気持ちがおさまらない場合は、無理に引き留めるのではなく、ご家族が付き添って少しだけ一緒に散歩するのも一つの方法です。少し歩くことで気分が落ち着き、満足して家に戻れることがあります。

ひとり歩き(徘徊)を未然に防ぐための工夫

日頃の生活の中で、ひとり歩きのきっかけを減らす工夫も重要です。

本人が安心できる環境を整える
ご本人が混乱しないよう、静かで落ち着ける環境づくりを心がけましょう。馴染みのある家具や写真を置いたり、トイレや寝室の場所が分かりやすいように貼り紙をしたりするのも有効です。過度な騒音や人の出入りは、不安を煽る原因になります。
生活リズムを整え、日中の活動を促す
昼間に体を動かす機会が少ないと、体力が余ってしまい夜間のひとり歩きにつながることがあります。散歩やラジオ体操、趣味活動など、日中に適度な活動を取り入れ、心地よい疲労感を得られるようにしましょう。規則正しい生活は、体内時計を整え、夜間の不眠やせん妄の予防にもなります。
役割や生きがいを持ってもらう
「洗濯物をたたむ」「食卓を拭く」など、簡単なことでよいので、ご本人に何かしらの役割をお願いしてみましょう。自分が誰かの役に立っていると感じることは、自信や生きがいにつながり、心の安定をもたらします。
デイサービスなどの介護サービスを利用する
デイサービスなどを利用し、ご本人以外の人と交流したり、レクリエーションに参加したりすることも、良い刺激となりひとり歩きの予防につながります。また、介護するご家族の休息(レスパイトケア)の時間を確保する意味でも、介護サービスの活用は非常に重要です。

ひとり歩き(徘徊)に備えるための環境整備と見守りグッズ

ひとり歩きを100%防ぐことは困難です。万が一に備えて、安全対策を講じておくことがご本人とご家族の安心につながります。

GPS(全地球測位システム)の活用

GPS機能のある端末を持ってもらうことで、万が一、行方が分からなくなった際に、スマートフォンやパソコンから現在の位置情報を確認できます。

GPS端末の種類と選び方
キーホルダー型、ペンダント型、靴に内蔵できるタイプなど、さまざまな種類のGPS端末があります。ご本人が抵抗なく身につけられるものを選びましょう。選ぶ際は、バッテリーの持続時間や位置情報の精度、操作のしやすさなどを比較検討することが大切です。
自治体のGPSレンタル・購入費助成制度
多くの自治体で、ひとり歩きの可能性がある高齢者を対象に、GPS端末のレンタルや購入費用の一部を助成する制度を実施しています。例えば、初期費用の助成や月額利用料の補助などを行っている場合があります。お住まいの市区町村の高齢福祉課や地域包括支援センターに問い合わせてみましょう。

衣類や持ち物への名札・連絡先の添付

ご本人がよく着る服や持ち物(帽子、カバン、杖など)に、名前と連絡先を記した名札やラベルをつけておきましょう。保護された際に、速やかに身元が判明します。衣類のタグや内側に縫い付けるタイプや、アイロンで接着できるQRコード付きの見守りシールなどもあります。

玄関や窓の工夫

ご本人が一人で外に出たことに、家族がすぐに気づけるような工夫も有効です。

センサーチャイムの設置
玄関のドアや窓に、開閉を知らせるセンサーチャイムを設置します。ご本人が外に出ようとしたときに音で知らせてくれるため、すぐに対応することができます。
補助錠やスマートロックの活用
通常の鍵に加えて、ご本人が開けにくい高い位置や低い位置に補助錠を取り付ける方法があります。ただし、閉じ込めることはご本人のストレスを高める可能性もあるため注意が必要です。最近では、スマートフォンで施錠・解錠を管理できるスマートロックも活用されています。

地域との連携で見守り体制を築く

ご家族だけで24時間見守り続けるのは限界があります。地域社会の力を借りることも大切です。

近隣住民への声かけと協力依頼
日頃から近所の方々とコミュニケーションを取り、ご本人の状況を伝えておくことで、ひとり歩きをしている姿を見かけた際に声をかけてもらったり、連絡をもらえたりする可能性が高まります。「いつもお世話になっています」と挨拶を交わす関係づくりが、いざというときの助けになります。
地域の見守り・SOSネットワークへの登録
多くの自治体で、警察や地域の協力機関(介護事業所、郵便局、コンビニなど)が連携して行方不明者を早期に発見する「見守り・SOSネットワーク」という仕組みがあります。事前に名前や写真、身体的特徴などを登録しておくことで、行方不明になった際に協力機関へ情報が一斉に配信され、地域ぐるみでの捜索が可能になります。

もし家族が行方不明になったら|早期発見のための探し方

万全の対策をしていても、行方不明になってしまうことはあり得ます。その際は、パニックにならず、迅速に行動することが早期発見の鍵です。

まずは落ち着いて探すべき場所を考える

闇雲に探し回るのではなく、可能性の高い場所から効率的に探しましょう。

自宅の敷地内や周辺

意外と多いのが、自宅の敷地内(庭、物置、車の中など)や、家のすぐ近くの路地裏などにいるケースです。まずは落ち着いて、家の周りをくまなく確認しましょう。

本人の習慣や過去の記憶に関わる場所

ご本人の行動は、過去の記憶や習慣に基づいていることが多いため、以下のような場所は重点的に探しましょう。

  • 以前住んでいた家やその周辺
  • 退職した職場やその通勤路
  • よく行っていたお店、公園、趣味の場所
  • 実家や親戚の家があった方向

警察への通報と捜索願の提出

自宅周辺を探しても見つからない場合は、ためらわずにすぐに110番、または最寄りの警察署に連絡してください。早期の通報が、早期発見に直結します。「もう少し待てば帰ってくるかも」と時間を置くのは危険です。

伝えるべき情報と本人の特徴

警察に連絡する際は、以下の情報をできるだけ正確に伝えられるよう、日頃からまとめておくとスムーズです。

基本情報
名前、年齢、性別
当日の様子
いなくなったときの服装、靴、持ち物
顔写真
本人の顔がはっきりとわかる最近の写真
身体的特徴
身長、体格、髪型、ほくろ、あざなど
健康状態
持病や服用している薬
行動
口癖や行動の癖
行き先
考えられる行き先

地域包括支援センターやケアマネジャーへの連絡

警察への連絡と同時に、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターにも連絡を入れましょう。見守り・SOSネットワークに登録している場合は、そこから協力機関への捜索依頼を発信してもらえます。

在宅介護が難しいと感じたら介護施設の利用も検討

ひとり歩きの頻度が多く、ご家族の心身の負担が大きくなったり、ご本人の安全確保が難しくなったりした場合は、介護施設の利用を検討することも大切な選択肢です。

ひとり歩き(徘徊)の症状がある場合に受け入れ可能な介護施設

ひとり歩きの症状があっても受け入れ可能な施設には、主に以下のような種類があります。それぞれの特徴を理解し、ご本人に合った施設を選びましょう。

施設の種類 主な特徴 ひとり歩き(徘徊)への対応例
グループホーム
(認知症対応型共同生活介護)
認知症の方を専門に受け入れる少人数制の施設。家庭的な雰囲気で、専門スタッフによる手厚いケアが特徴。 本人の気持ちに寄り添い、行動を制限するのではなく、安全な環境で見守りながら柔軟に対応する。
介護付き有料老人ホーム 24時間介護スタッフが常駐し、手厚い介護サービスを提供。施設によっては認知症専門フロアや見守りセンサーが充実。 施錠管理やセンサーによる通知システム、安全な散歩コースの設置など、ハード・ソフト両面からの対策が整っている場合が多い。
住宅型有料老人ホーム 比較的自立度の高い方向け。生活支援サービスが中心で、介護が必要な場合は外部の訪問介護などを利用。 施設のセキュリティ体制やスタッフの見守り体制、提携する介護事業所の対応力を確認する必要がある。

介護施設におけるひとり歩き(徘徊)への対応

専門の介護施設では、単に玄関を施錠して閉じ込めるのではなく、さまざまな工夫で対応しています。例えば、敷地内に安全な散歩コースを設けて外出欲求を満たしたり、日中のレクリエーションを充実させて活動の場を提供したりすることで、穏やかに過ごせるよう支援します。専門スタッフによる見守りの下、ご本人の尊厳を守りながら安全な暮らしを実現します。

関西の老人ホーム・介護施設探しは「笑がおで介護紹介センター」へ

ひとり歩きの症状があると、受け入れてくれる施設探しが難航することもあります。また、ご家族だけではどの施設がご本人に合っているのか判断するのは難しいものです。そんなときは、ぜひ私たち「笑がおで介護紹介センター」にご相談ください。

介護の専門知識を持つ相談員が、ご本人の症状やご家族の希望を丁寧にお伺いし、ひとり歩きの症状があっても安心して生活できる関西エリアの老人ホーム・介護施設を無料でご紹介します。施設の見学予約や同行もサポートし、ご家族が納得できる施設選びを最後までお手伝いいたしますので、一人で抱え込まず、まずはお気軽にご連絡ください。

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このコラムの監修者

花尾 奏一(はなお そういち)

保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

有料老人ホームにて介護主任を10年 
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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