ストーマ(人工肛門・人工膀胱)のケアと注意点|介護施設での生活や利用できる制度を解説
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病気や事故などが原因で、お腹に「ストーマ」を造設された方や、そのご家族は、日々のケアや生活上の変化に多くの不安や疑問を感じていらっしゃることでしょう。ストーマは、ご自身の体の一部となる「もう一つの排泄口」です。しかし、正しいケアの方法と知識を身につければ、手術前と変わらず、旅行やスポーツを楽しむなど、自分らしい生活を送ることが可能です。この記事では、ストーマの基本的な知識から、ご自身でできるセルフケアの方法、食事や入浴といった日常生活での注意点、利用できる公的な支援制度、そして介護施設での受け入れ状況まで、網羅的に解説します。ストーマとの上手な付き合い方を見つけ、安心して毎日を過ごすための一助となれば幸いです。
ストーマ(人工肛門・人工膀胱)とは
ストーマとは、ギリシャ語で「口」を意味する言葉です。病気などの治療のために、手術によってお腹に造られた便や尿の排泄口のことを指します。ストーマを造設した人のことを「オストメイト」と呼びます。
ストーマには、排泄をコントロールするための筋肉(括約筋)がないため、ご自身の意思で排泄を調整することはできません。そのため、「ストーマ装具(パウチ)」と呼ばれる袋を貼って排泄物を受け止めます。
ストーマ(オストメイト)の基本知識
ストーマは、消化管や尿路の一部を使って造られます。色は粘膜であるため赤く、痛みを感じる神経はないので、触っても痛みはありません。しかし、毛細血管が多いため、少しの刺激で出血することがありますが、通常は自然に止まります。ストーマの大きさや形は一人ひとり異なり、術後の時間経過によっても変化します。自分のストーマの状態を正しく理解することが、適切なケアの第一歩となります。
人工肛門(コロストミー・イレオストミー)と人工膀胱(ウロストミー)の違い
ストーマは、どの部分の腸管・尿路を体外に出すかによって、大きく3つの種類に分けられます。
- コロストミー(結腸ストーマ)
- 大腸(結腸)で造られるストーマです。比較的肛門に近いため、便は固形〜粥状で、排泄の回数も個人差はありますが、ある程度定期的です。国内のオストメイトで最も多いタイプです。
- イレオストミー(回腸ストーマ)
- 小腸(回腸)で造られるストーマです。消化酵素を多く含む水様性の便が、1日に何度も不定期に排泄されます。そのため、皮膚のただれ(びらん)が起こりやすく、脱水にも注意が必要です。
- ウロストミー(尿路ストーマ)
- 尿を排泄するために造られるストーマです。回腸の一部などを利用して尿の通り道を造り、お腹に出します。尿は常に排泄され続けるため、尿の逆流を防ぐための工夫がされた装具を使用します。
ストーマが必要になる主な疾患
ストーマは、様々な病気の治療過程で必要となります。一時的なものと、永久的なものがあります。
| 主な疾患の例 |
|---|
| 大腸がん、直腸がん |
| 膀胱がん |
| 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病) |
| 腸閉塞 |
| 先天性疾患(ヒルシュスプルング病など) |
| 事故による消化管・膀胱の損傷 |
日常生活で使用するストーマ装具(パウチ)の種類と特徴
ストーマからの排泄物を受け止めるストーマ装具は、皮膚を保護する「面板(めんいた、フランジ)」と、排泄物を溜める「ストーマ袋(パウチ)」で構成されています。様々な種類があるため、ご自身のストーマやライフスタイルに合ったものを選ぶことが大切です。
ワンピース(一体型)とツーピース(分離型)
ストーマ装具は、構造によって大きく2つのタイプに分けられます。
- ワンピース(一体型)
- 面板とパウチが一体になっているタイプです。薄くてかさばらず、しなやかで体にフィットしやすいのが特徴です。交換の際は、装具全体を剥がして新しいものに貼り替えます。
- ツーピース(分離型)
- 面板とパウチが別々になっており、はめ込んで使用するタイプです。面板を皮膚に貼ったまま、パウチだけを交換できるため、頻繁に排泄物を処理したい場合や、入浴時に小さなキャップに交換したい場合などに便利です。
面板(フランジ)の種類
面板は、ストーマ周囲の皮膚を排泄物から保護する非常に重要な部分です。皮膚の状態や腹壁の形状に合わせて選びます。
- 平面型
- お腹が平らな方向けの標準的な面板です。
- 凸面型(コンベックス)
- ストーマの周りにくぼみやシワがある方向けです。面板の中央部が凸状になっており、ストーマを軽く押し出すことで、排泄物の潜り込みを防ぎます。
また、面板には、あらかじめストーマのサイズに合わせて穴が開いている「プレカット」と、ご自身でストーマのサイズに合わせてカットする「フリーカット」があります。
ストーマ袋(パウチ)の種類
ストーマの種類によって、使用するパウチが異なります。
- 閉鎖型(クローズドパウチ)
- 主にコロストミーの方で、固形状の便が出る方が使用します。排泄物が溜まったら、パウチごと交換します。
- 開放型(ドレナブルパウチ)
- 主にイレオストミーの方や、軟便〜水様便の方、コロストミーでも便の量が多い方が使用します。パウチの裾に排出口があり、溜まったらトイレに流すことができます。
- ウロストミー用パウチ
- 尿を排出するためのコックが付いており、簡単に尿を捨てることができます。また、夜間などには、より容量の大きい採尿バッグに接続することも可能です。
ストーマの基本的なケア方法(セルフケア)
ストーマケアの基本は、ご利用者自身で行う「セルフケア」です。正しい手順を身につけることで、皮膚トラブルを防ぎ、快適な毎日を送ることができます。ケアの主体はあくまでご利用者ですが、高齢でご自身での管理が難しい場合は、ご家族や訪問看護師などがサポートします。
排泄物の処理とパウチの交換時期の目安
排泄物の処理は、パウチの3分の1から半分程度溜まったら行います。溜めすぎると、重みで装具が剥がれやすくなったり、臭いの原因になったりします。
装具全体の交換時期は、製品や個人の状態によって異なりますが、以下が一般的な目安です。
| 装具の種類 | 交換時期の目安 |
|---|---|
| ワンピース(一体型) | 1日~3日に1回 |
| ツーピース(分離型)の面板 | 3日~5日に1回 |
| ツーピース(分離型)のパウチ | 1日~3日に1回(または汚れた都度) |
ストーマ装具(パウチ・面板)の交換手順
装具交換は、時間に余裕のある時に行うのがおすすめです。特に、食後すぐや排泄が多い時間帯は避けましょう。交換をスムーズに行うため、あらかじめ必要な物品を手元に揃えておきます。
交換前に準備するもの
| 準備品 | 備考 |
|---|---|
| 新しいストーマ装具 | ワンピースまたはツーピース |
| ストーマサイズ測定定規(ストーマゲージ) | ストーマの大きさを測る |
| ハサミ | フリーカットの面板に使用 |
| 洗浄剤、ガーゼや不織布 | 皮膚の洗浄・乾燥用(微温湯でも可) |
| 剥離剤(リムーバー) | 古い装具を剥がす際に使用 |
| 皮膚保護剤 | パウダーやクリームなど |
| ゴミ袋 | 古い装具などを捨てる |
皮膚の洗浄と乾燥のポイント
古い装具を剥がす際は、剥離剤(リムーバー)を使いながら、皮膚を傷つけないように優しく剥がします。次に、ストーマ周囲の皮膚を洗浄します。よく泡立てた洗浄剤で優しく洗い、微温湯でしっかりと洗い流します。この時、ストーマを強くこすらないように注意しましょう。洗浄後は、ガーゼなどで優しく押さえるようにして水分を拭き取ります。皮膚が完全に乾いていることが、新しい装具をしっかり密着させるための重要なポイントです。
新しい装具の装着方法
まず、ストーマゲージでストーマの大きさを測り、面板の穴をストーマより2〜3mm程度大きくなるようにカットします(プレカットの場合は不要)。次に、必要に応じて皮膚保護剤を塗り、面板の剥離紙を剥がします。シワを伸ばすようにして、ストーマを中心に面板を皮膚にしっかりと貼り付けます。最後に、手で30秒〜1分ほど押さえて温めることで、より密着度が高まります。
ストーマ周りの皮膚トラブルと予防策
ストーマケアで最も重要なことの一つが、皮膚トラブルの予防です。
かぶれ・かゆみの原因と対策
主な原因は、汗や、装具を剥がす際の物理的な刺激です。対策としては、通気性の良い装具を選んだり、剥離剤を正しく使用したりすることが挙げられます。また、面板を貼る前に皮膚保護剤を使用することも有効です。
ただれ・びらんが起きた時の対処法
ただれやびらんの主な原因は、排泄物が皮膚に付着することです。面板の穴がストーマのサイズに合っていないと、隙間から排泄物が漏れ出て皮膚に付着し、炎症を起こします。定期的にストーマのサイズを測定し、面板の穴の大きさが適切か確認することが最も重要です。ただれができてしまった場合は、皮膚保護パウダーを使用し、傷んだ皮膚を保護してから装具を装着します。症状が改善しない場合は、専門のストーマ外来や皮膚科を受診しましょう。
ストーマのある方の日常生活における注意点
ストーマを造設しても、日常生活で制限されることはほとんどありません。いくつかのポイントを押さえることで、より快適に過ごすことができます。
食事で気をつけること
基本的に、食事制限はありません。バランスの取れた食事をよく噛んで食べることが大切です。ただし、食べ物によっては便の状態や臭い、ガスに影響することがあります。
便秘や下痢を防ぐ食事の工夫
便秘を防ぐためには、適度な水分と食物繊維を摂ることが有効です。下痢の場合は、消化の良いものを中心に、体を冷やさない食事が推奨されます。特にイレオストミーの方は、脱水を起こしやすいため、意識的な水分と塩分の補給が重要です。
ガスや臭いを抑えるためのポイント
ガスを発生させやすい食品(芋類、豆類、炭酸飲料など)や、臭いが強くなる食品(ニンニク、ニラ、アスパラガスなど)を一度にたくさん食べると、ガスや臭いが気になることがあります。ご自身の体調を見ながら、食べる量や頻度を調整しましょう。パウチにガス抜きフィルターが付いている製品や、消臭潤滑剤の使用も効果的です。
入浴時の注意点と入浴方法
ストーマがあっても、毎日入浴できます。公衆浴場の利用も問題ありません。
ストーマ装具をつけたまま入浴する場合
ほとんどの方が、装具をつけたまま入浴します。装具は防水性があるため、お湯が入る心配はありません。ガス抜きフィルターが付いている場合は、濡れると機能が低下するため、専用のシールで保護します。入浴後は、装具を優しく拭いて乾かします。
ストーマ装具を外して入浴する場合
装具交換のタイミングに合わせて、外した状態で入浴することも可能です。ストーマや周囲の皮膚をきれいに洗えるというメリットがありますが、入浴中に排泄がある可能性も考慮しておく必要があります。
外出・旅行の準備と持ち物
事前の準備をしっかりすれば、外出や旅行も安心して楽しめます。万が一のトラブルに備え、交換用の装具一式を常に携帯しましょう。持ち物は専用のポーチなどにまとめておくと便利です。
オストメイト対応トイレの探し方
オストメイト対応トイレには、装具の洗浄ができるシャワー(汚物流し)や汚物入れなどが設置されています。公共施設や商業施設、高速道路のサービスエリアなどで設置が進んでいます。スマートフォンのアプリや、公益社団法人日本オストミー協会のウェブサイトなどで検索することができます。
衣服(服装)選びの工夫
基本的に、服装の制限はありません。体を締め付けすぎない、ゆとりのあるデザインの服を選ぶと快適に過ごせます。ベルトの位置をストーマに当たらないように調整したり、サスペンダーを利用したりする工夫も有効です。オストメイト専用の下着や、腹帯(ストーマベルト)などもあります。
ストーマの介護と利用できる公的支援
高齢になってセルフケアが難しくなった場合や、ご家族が介護の中心となる場合、様々な社会資源や制度を活用することができます。
在宅介護でご家族ができるサポート
ご家族は、まずご利用者の気持ちに寄り添い、ストーマを正しく理解することが大切です。装具交換の手順を一緒に覚えたり、物品の在庫管理を手伝ったり、皮膚の状態を一緒に確認したりするなど、ご利用者が安心してセルフケアを続けられるようなサポートが求められます。
訪問看護の活用方法
介護保険や医療保険を利用して、訪問看護師に自宅に来てもらうことができます。訪問看護師は、ストーマケアの専門知識を持っており、装具の交換、皮膚トラブルの観察と処置、セルフケア方法の指導・助言、日常生活での悩み相談、医療機関との連携といったサポートを提供します。
利用できる社会資源や制度
ストーマを造設された方は、経済的な負担を軽減するための公的な支援制度を利用できます。
身体障害者手帳の申請
ストーマを造設すると、身体障害者福祉法に基づき、身体障害者手帳(内部障害)の交付対象となります。手帳を取得することで、様々な福祉サービスが受けられるようになります。申請は、お住まいの市区町村の福祉担当窓口で行います。
ストーマ装具の給付制度(日常生活用具給付事業)
身体障害者手帳を取得すると、障害者総合支援法に基づく「日常生活用具給付事業」の対象となり、ストーマ装具の購入費用が助成されます。市区町村から「給付券」が交付され、原則1割の自己負担で装具を購入できます(所得に応じた上限額あり)。
医療費控除について
ストーマ装具の購入費用は、所得税の医療費控除の対象となります。1年間の医療費の合計が一定額を超えた場合、確定申告をすることで税金が還付される可能性があります。
障害年金の対象になる場合
ストーマの造設により、日常生活や就労に著しい支障が出ている場合は、障害年金の受給対象となることがあります。詳しくは、お近くの年金事務所や、社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
ストーマのある方の介護施設の受け入れと選び方のポイント
ご自宅での生活が難しくなり、介護施設への入居を検討する際、ストーマがあることで入居できる施設が限られるのではないかと心配される方も多いでしょう。
介護施設でのストーマケアの対応状況
ストーマケアは、看護師による管理が必要な「医療行為」に分類されることがあります。そのため、施設の看護体制が受け入れの可否を判断する上で最も重要なポイントとなります。
看護師が常駐している施設の重要性
ストーマの管理には、定期的な装具交換だけでなく、皮膚トラブルの観察や緊急時の対応など、専門的な知識と技術が必要です。そのため、日中だけでなく、夜間も看護師が常駐している施設を選ぶとより安心です。
- 受け入れ可能性が高い施設
- 介護付き有料老人ホーム、介護老人保健施設(老健)、介護医療院など、看護師の配置が手厚い施設。
- 受け入れが難しい場合が多い施設
- グループホーム、一部の住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など、看護師の配置が義務付けられていない、あるいは日中のみの配置の施設。
施設による受け入れ基準の違い
最終的な受け入れの可否は、各施設の基準や、ご利用者のセルフケア能力によって異なります。ご自身で完全にケアができる場合は、受け入れの幅が広がります。一方で、全面的な介助が必要な場合は、看護体制が充実していることが必須条件となります。
ストーマのある方が介護施設を選ぶ際の確認事項
施設見学や相談の際には、ストーマケアについて具体的に確認することが大切です。入居後のミスマッチを防ぐため、以下のような点を確認しましょう。
- ストーマのある方の受け入れ実績はありますか?
- ストーマケアの経験が豊富な看護師はいますか?
- 夜間や緊急時に皮膚トラブルなどが起きた場合、どのような対応をしてもらえますか?
- 現在使用している装具を、入居後も継続して使用できますか?
- 装具の在庫管理や発注は、施設側で手伝ってもらえますか?
入居費用とストーマ装具の費用負担について
介護施設に入居した場合でも、ストーマ装具の購入費用は、原則として自己負担(日常生活用具給付事業を利用)となります。施設の月額利用料には含まれていないことがほとんどですので、事前に費用負担についてもしっかりと確認しておきましょう。
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監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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