在宅介護の費用負担を軽減する4つの制度|医療費控除の計算方法や確定申告を解説

在宅介護を続ける上で、多くの方が気になるのが「費用」の問題ではないでしょうか。介護保険サービスを利用しても自己負担が発生しますし、おむつ代などの雑費もかかります。「思ったより負担が大きい…」と感じている方も少なくないはずです。
しかし、諦める必要はありません。在宅介護の経済的な負担は、公的な制度をうまく活用することで軽減できます。この記事では、在宅介護の費用負担を安くするための代表的な4つの制度「高額介護サービス費」「医療費控除」「障害者控除」「扶養控除」について、一つひとつ丁寧に解説します。
特に、多くの方が利用できる可能性のある「医療費控除」については、対象となる介護サービスの一覧や、いくら税金が戻ってくるのか具体的な計算シミュレーションも交えてご紹介します。この記事を読めば、ご自身の家庭でどの制度が使えるのかが分かり、費用負担を賢く軽減するための具体的な方法が身につきます。
在宅介護にかかる費用の内訳とは
在宅介護にかかる費用は、大きく3つに分けられます。それぞれの内容を理解し、ご家庭の状況と照らし合わせることで、費用の全体像を把握しやすくなります。
介護保険サービスの自己負担費用
訪問介護やデイサービスなど、介護保険が適用されるサービスを利用した際にかかる費用です。ご利用者は、かかったサービス費用のうち、所得に応じて原則1割(一定以上の所得がある場合は2割または3割)を自己負担します。要介護度が高くなるほど利用するサービス量が増え、自己負担額も増加する傾向にあります。
介護保険外サービスの費用
介護保険の適用範囲外のサービスを利用した場合にかかる費用で、全額が自己負担となります。例えば、通院以外の外出の付き添いや、庭の草むしり、大掃除といった家事援助などがこれにあたります。介護保険サービスだけではカバーしきれない部分を補うために利用されます。
日常生活費や雑費
介護サービス費以外にも、日常生活を送る上で様々な費用が発生します。具体的には、食費、光熱費、おむつや尿取りパッドなどの消耗品費、医療機関の受診費や薬代などが挙げられます。これらの費用は介護保険の対象外であり、積み重なると大きな負担となることがあります。
公益財団法人生命保険文化センターの調査によると、在宅介護にかかる費用のうち、介護サービス以外の費用(日常生活費や雑費など)は月々平均で約3.4万円というデータもあります。
在宅介護の費用負担を安くする4つの公的制度
毎月の介護費用負担は決して軽いものではありませんが、利用できる公的な制度がいくつかあります。知っているかどうかで負担額が大きく変わる可能性もあるため、ぜひ内容を理解しておきましょう。
① 高額介護サービス費制度
高額介護サービス費制度とは、1ヶ月に支払った介護保険サービスの自己負担額の合計が、所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、その超えた金額が払い戻される制度です。これにより、介護費用が一時的に高額になっても、負担が一定額に抑えられます。対象となった方には、自治体から申請書が送付されるのが一般的です。
自己負担額の上限は所得によって異なる
自己負担の上限額は、世帯の所得状況によって区分が分かれています。ご自身の世帯がどの区分に該当するか確認してみましょう。
高額介護サービス費の負担上限額(月額)
| 課税所得の状況 | 負担上限額(月額) |
|---|---|
| 現役並み所得者に相当する方がいる世帯 課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 |
140,100円(世帯) |
| 課税所得380万円(年収約770万円)以上 | 93,000円(世帯) |
| 市区町村民税課税世帯 | 44,400円(世帯) |
| 世帯の全員が市区町村民税非課税 | 24,600円(世帯) |
| 上記のうち、前年の公的年金等収入金額とその他の合計所得金額の合計が80万円以下の方など | 15,000円(個人) |
| 生活保護を受給している方など | 15,000円(個人) |
※「世帯」とは、住民基本台帳上の世帯員で、介護サービスを利用した方全員の負担の合計の上限額です。「個人」とは、介護サービスを利用したご本人の負担の上限額を指します。
払い戻しの対象外となる費用
以下の費用は、高額介護サービス費の計算対象には含まれませんので注意が必要です。
- 福祉用具の購入費
- 住宅改修(リフォーム)の費用
- デイサービスやショートステイ利用時の食費・居住費・日常生活費
- 介護保険の支給限度額を超えて利用したサービスの費用
② 医療費控除
医療費控除とは、1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費が一定額を超える場合に、確定申告を行うことで所得税や住民税が還付・軽減される制度です。ご本人だけでなく、「生計を一にする」配偶者や親族のために支払った医療費も合算できます。在宅介護で利用したサービスの一部も、この医療費控除の対象となります。
税金が還付される仕組みと計算方法
医療費控除によって戻ってくる税金の額(還付金)は、以下の計算式で算出できます。支払った医療費がそのまま戻ってくるわけではなく、所得税率に応じた金額が還付される仕組みです。
- 医療費控除額の計算式
- (実際に支払った医療費の合計額 - 保険金などで補てんされる金額)- 10万円
※総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額となります。 - 還付金の計算式
- 医療費控除額 × あなたの所得税率
所得税率は、課税される所得金額によって5%から45%まで段階的に定められています。
確定申告の手続きと必要書類
医療費控除を受けるためには、原則として翌年の2月16日~3月15日の間に、税務署へ確定申告を行う必要があります。主な必要書類は以下の通りです。
- 確定申告書
- 医療費控除の明細書(医療費の領収書を元に作成)
- 源泉徴収票(給与所得者の場合)
- マイナンバーカード(または通知カードと本人確認書類)
医療費の領収書は、提出の必要はありませんが、ご自宅で5年間保管する義務があります。
③ 障害者控除
介護を受けているご本人または扶養している親族が、所得税法上の「障害者」に当てはまる場合に受けられる所得控除です。年末調整や確定申告で申請することで、所得税や住民税の負担が軽減されます。
控除額と対象者の要件
障害者控除の額は、障害の程度によって異なります。
障害者控除の控除額
| 区分 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 障害者 | 27万円 | 26万円 |
| 特別障害者 | 40万円 | 30万円 |
| 同居特別障害者 | 75万円 | 53万円 |
身体障害者手帳などをお持ちでなくても、65歳以上で寝たきり状態であったり、認知症の症状があったりする場合、お住まいの市区町村に申請して「障害者控除対象者認定書」の交付を受けられれば、障害者控除の対象となることがあります。詳しくは、自治体の高齢福祉担当窓口にお問い合わせください。
④ 扶養控除・社会保険料控除
お子さまが親御さんの介護費用を負担している場合、一定の要件を満たせば、税制上の扶養親族とすることで「扶養控除」を受けられ、税負担を軽減できます。また、親御さんの社会保険料を支払った場合は「社会保険料控除」の対象となります。
別居している親を扶養に入れる条件
親御さんと別居していても、以下の要件をすべて満たせば扶養控除の対象とすることができます。
- 親の年間の合計所得金額が48万円以下であること
- 親御さんの収入が公的年金のみの場合、65歳未満なら年金収入108万円以下、65歳以上なら年金収入158万円以下が目安です。
- 納税者(子ども)と「生計を一にしている」こと
- 常に生活費や療養費などの仕送りをしている事実があれば、「生計を一にしている」と認められます。送金の事実がわかるように、手渡しではなく銀行振込などを利用するのがよいでしょう。
- 親が青色申告者・白色申こく者の事業専従者でないこと
- 親御さんが自営業を営むお子さまの事業を手伝い、給与を受け取っている場合は対象外です。
【一覧】医療費控除の対象となる在宅介護サービス
医療費控除は、すべての介護サービスが対象になるわけではありません。国税庁の定めにより、対象となるサービス、条件付きで対象となるサービス、対象とならないサービスに分かれています。
医療費控除の対象になるサービス
以下のサービスは、看護師などによる医療的なケアが含まれるため、単独で利用した場合でも自己負担額が医療費控除の対象となります。
- 訪問看護
- 介護予防訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 介護予防訪問リハビリテーション
- 居宅療養管理指導
- 介護予防居宅療養管理指導
- 通所リハビリテーション(デイケア)
- 介護予防通所リハビリテーション
- 短期入所療養介護(医療型ショートステイ)
- 介護予防短期入所療養介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用する場合)
- 看護小規模多機能型居宅介護
医療系サービスと併用する場合のみ対象になるサービス
以下のサービスは、それ単独では医療費控除の対象になりませんが、上記の「医療費控除の対象になるサービス」とあわせて利用した場合に限り、自己負担額が控除の対象になります。
- 訪問介護(ホームヘルプ)(※生活援助中心型を除く)
- 夜間対応型訪問介護
- 訪問入浴介護
- 介護予防訪問入浴介護
- 通所介護(デイサービス)
- 認知症対応型通所介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 短期入所生活介護(福祉型ショートステイ)
- 介護予防短期入所生活介護
ご自身が利用したサービスが対象になるかどうかは、サービス事業者から受け取る領収書に「医療費控除対象額」として金額が記載されているかで確認できます。
医療費控除の対象にならないサービス
以下のサービスは、医療との関連性が低いとされ、医療費控除の対象にはなりません。
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 特定施設入居者生活介護(有料老人ホームなど)
- 福祉用具のレンタル(貸与)や購入費
- 住宅改修の費用
おむつ代が医療費控除の対象になるケース
大人用のおむつ代も、一定の条件を満たせば医療費控除の対象になります。
「おむつ使用証明書」が必要
おむつ代を医療費控除として申告するためには、医師が発行する「おむつ使用証明書」が必要です。これは、病気の治療上おむつの使用が必要であることを証明する書類です。2年目以降の申告では、医師の証明書の代わりに、市区町村が発行する要介護認定に関する書類で代用できる場合があります。
【具体例】所得税の医療費控除でいくら戻ってくるか計算シミュレーション
実際に医療費控除でいくら還付されるのか、課税所得が異なる2つのケースでシミュレーションしてみましょう。
課税所得300万円の場合
- 条件
-
- 課税所得金額:300万円(所得税率10%)
- 年間の医療費(控除対象の介護サービス費含む):50万円
- 保険金による補てん:なし
- 計算
-
- 医療費控除額の計算: 50万円(医療費) - 10万円 = 40万円
- 還付される所得税額の計算: 40万円(医療費控除額) × 10%(所得税率) = 4万円
この場合、所得税が4万円還付されます。さらに、翌年度の住民税も4万円(医療費控除額40万円×税率10%)安くなります。
課税所得500万円の場合
- 条件
-
- 課税所得金額:500万円(所得税率20%)
- 年間の医療費(控除対象の介護サービス費含む):50万円
- 保険金による補てん:なし
- 計算
-
- 医療費控除額の計算: 50万円(医療費) - 10万円 = 40万円
- 還付される所得税額の計算: 40万円(医療費控除額) × 20%(所得税率) = 8万円
この場合、所得税が8万円還付されます。さらに、翌年度の住民税も4万円(医療費控除額40万円×税率10%)安くなります。
在宅介護の費用に関する注意点
費用負担を軽減する制度を利用する際には、いくつか注意すべき点があります。
領収書は必ず保管しておく
高額介護サービス費の申請や医療費控除の確定申告では、領収書の提出は不要な場合が多いですが、支払いの事実を証明する重要な書類です。税務署から提示を求められることもあるため、医療費や介護サービス費の領収書は必ず5年間保管しておきましょう。
控除の申告は5年以内に行う
「医療費控除のことを知らずに、確定申告していなかった」という場合でも、過去5年分までさかのぼって申告(還付申告)することができます。諦めずに、過去の領収書を確認してみましょう。
高額療養費制度との違いを理解する
高額介護サービス費とよく似た制度に「高額療養費制度」があります。これは医療保険(健康保険など)の制度で、病院や薬局で支払った医療費の自己負担額が上限を超えた場合に、超えた分が払い戻されるものです。介護保険と医療保険、それぞれの制度で自己負担額を軽減できることを覚えておきましょう。
在宅介護と施設介護の費用を比較
在宅介護を続けるか、施設への入居を検討するかを考える上で、費用の比較は重要な要素です。
在宅介護の月額費用の目安
公益財団法人生命保険文化センターの「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、在宅介護にかかる月々の費用の平均は約4.8万円です。これには、介護保険サービスの自己負担額と、その他の雑費が含まれます。
施設入居にかかる費用の目安
一方、施設介護の場合、同調査によると月々の平均費用は約12.2万円となっています。ただし、この金額は施設の種類によって大きく異なります。
施設種類別の費用目安(月額)
| 施設の種類 | 費用の目安(月額) |
|---|---|
| 特別養護老人ホーム(公的施設) | 5万円 ~ 15万円 |
| 介護老人保健施設(公的施設) | 5万円 ~ 15万円 |
| 有料老人ホーム(民間施設) | 15万円 ~ 30万円以上 |
※上記はあくまで目安であり、施設の設備やサービス、居室のタイプ、要介護度によって変動します。また、民間施設の場合は入居一時金が必要な場合も多くあります。
費用だけで判断せず総合的に検討することが重要
費用だけを見ると在宅介護の方が安く見えますが、ご家族の介護負担やご本人の精神的な安定、24時間の安心感など、数字だけでは測れない要素も多くあります。在宅介護に限界を感じたり、ご家族の負担が大きくなりすぎたりした場合は、施設入居も有力な選択肢です。双方のメリット・デメリットを比較し、ご本人やご家族にとって最も良い形を総合的に判断することが大切です。
在宅介護の費用でお困りなら「笑がおで介護紹介センター」へ
「公的制度を調べたけれど、自分の場合はどうなるのかよく分からない」「在宅介護と施設入居、費用面も含めてどちらが良いか相談したい」など、介護の費用に関するお悩みや疑問は尽きないものです。
そのような時は、ぜひ私たち「笑がおで介護紹介センター」にご相談ください。関西エリア(大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山、滋賀、三重)の介護施設情報に精通した専門の相談員が、皆様の経済的なご状況やご希望を丁寧にお伺いし、最適な施設探しや介護の選択肢について、無料でアドバイスさせていただきます。どうぞお気軽にお問い合わせください。

このコラムの監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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