認知症の「ひとり歩き(徘徊)」対策完全ガイド|理由・玄関の鍵・GPS活用法

ご家族が認知症と診断され、外出して戻れなくなる「ひとり歩き(徘徊)」の症状が出始めると、介護をするご家族は片時も目が離せず、精神的にも肉体的にも大きな負担を感じることになります。
しかし、この行動にはご本人なりの「理由」や「目的」が存在します。その心理を理解し、適切な環境づくりやGPSなどのツールを活用することで、リスクを減らし、安全を確保することは可能です。
本記事では、認知症によるひとり歩きの原因から、玄関の施錠などの具体的な防止対策、行方不明時の対応、そして在宅介護の限界を見極めるタイミングまでを網羅的に解説します。
大切なご家族を守るために、また介護者である皆様自身の生活を守るために、ぜひ参考にしてください。
認知症による「徘徊(ひとり歩き)」とは
認知症の方が、あてもなく歩き回っているように見える行動を一般的に「徘徊(はいかい)」と呼びます。
しかし近年では、ご本人にとっては「家に帰りたい」「仕事に行かなければならない」といった明確な理由や目的があることから、その意思を尊重して「ひとり歩き」という言葉が推奨されるようになってきました。
厚生労働省や自治体の啓発資料においても、「徘徊」という言葉が持つ「無意味に歩き回る」というネガティブな印象を避け、認知症の方の視点に立ったケアを行うために表現の見直しが進められています。
本コラムでは、検索の便宜上「徘徊」という言葉も使用しますが、基本的にはご本人の意思がある行動として「ひとり歩き」と捉え、その対策を考えていきます。
徘徊・ひとり歩きが起こる主な理由と心理
周囲からは不可解に見える行動でも、ご本人の内面では論理的な理由が存在します。
その行動の背景には、認知機能の低下だけでなく、不安や焦燥感、過去の記憶などが複雑に絡み合っています。理由を知ることは、適切な対策への第一歩となります。
記憶障害による場所や時間の見当識障害
認知症の中核症状である「見当識障害」により、今いる場所や時間がわからなくなることが、ひとり歩きの大きな原因の一つです。
- 1. 場所の見当識障害
- 自宅にいるにもかかわらず、「ここは自分の家ではない」と感じてしまい、本当の家を探して外に出て行こうとします。また、散歩に出かけたものの、帰り道がわからなくなり、結果として徘徊状態になるケースも多く見られます。
- 2. 時間の見当識障害
- 現在が昼か夜かの区別がつかなくなり、深夜であっても「朝が来たから出かけなければ」と思い込んで外出してしまうことがあります。
不安や焦燥感などの心理的要因
認知症の進行に伴い、自分の置かれている状況が理解できなくなることへの強い不安や、居場所がないと感じる焦燥感が、外へ向かう動機になることがあります。
「ここにいてはいけない気がする」「誰かに迷惑をかけているのではないか」という心理的ストレスが、「ここではないどこか」へ行こうとする行動を引き起こします。
過去の習慣や役割意識の再現
過去に長年勤めていた仕事や、家事・育児などの役割に対する記憶が鮮明に残っている場合、その記憶に基づいて行動することがあります。
- 1. 出勤の習慣
- 定年退職して久しいにもかかわらず、「会社に行く時間だ」と思い込み、スーツを着て家を出ようとすることがあります。
- 2. 家事や育児の記憶
- 「子供を迎えに行かなければならない」「夕食の買い物に行かなければ」といった、かつての日常的な役割意識が呼び起こされ、外出につながります。
本人への正しい接し方とNG対応
ひとり歩きをしようとしている場面に遭遇した際、ご家族は慌てて止めてしまいがちですが、対応の仕方によっては症状を悪化させる可能性があります。
信頼関係を崩さず、安全を確保するための接し方にはポイントがあります。
否定や制止をせずに気持ちに寄り添う
最も避けるべきなのは、頭ごなしに否定したり、力ずくで制止したりすることです。
「どこに行くの!」「ダメじゃない!」と強い口調で叱責すると、ご本人は「怒られた」という不快な感情だけが残り、不安や敵対心を強めてしまいます。
まずは「どうされましたか?」「お出かけですか?」と優しく声をかけ、ご本人の話に耳を傾ける姿勢を示すことが大切です。肯定的に受け止められることで、興奮が収まる場合もあります。
自尊心を傷つけない声かけのポイント
ご本人の「行かなければならない」という気持ちを尊重しつつ、うまく意識を逸らすような声かけが有効です。
- 1. 同調と提案
- 「仕事に行かなければ」という訴えに対し、「ご苦労様です。でも今日は日曜日なので会社はお休みですよ」や「出発する前にお茶でも飲みませんか」と、一旦受け入れてから別の行動へ誘導します。
- 2. 一緒に行動する
- 時間や体力に余裕がある場合は、「私も一緒に行ってもいいですか?」と同行し、しばらく一緒に歩いてから「そろそろ帰りましょうか」と促すことで、納得して帰宅できることもあります。
自宅でできる徘徊・ひとり歩きの防止対策と環境づくり
24時間365日、家族が常に見守り続けることは現実的に不可能です。
ご本人の安全を守るためには、住宅の設備や環境を工夫し、物理的に外出が難しい状況を作ることや、外出に気づける仕組みを導入することが重要です。
玄関や窓の施錠・鍵の工夫
最も直接的な対策は、出入り口の鍵に対策を施すことです。
認知症の方は、目線の高さにある鍵は開けられても、普段と違う位置や操作方法の鍵には対応できない傾向があります。
手が届きにくい位置への補助鍵の設置
既存の鍵に加えて、認知症の方の視界に入りにくい場所や、手が届きにくい場所に「補助鍵」を設置します。
- 1. 鍵の設置位置
- ドアの最上部や、足元の最下部などに設置することで、鍵の存在に気づかれにくく、操作も困難になります。
- 2. 工事不要のタイプ
- 賃貸住宅などでも利用できる、強力な両面テープで貼り付けるタイプや、ドア枠に挟み込むタイプの補助錠も市販されており、手軽に導入できます。
内側から開けにくいサムターン回し防止カバー
玄関の鍵のつまみ(サムターン)にカバーを取り付けることで、内側からの解錠を防ぐ方法です。
本来は防犯用ですが、認知症対策としても有効です。鍵を持っていなければ回せないタイプや、特定の操作をしないと回らないカバーを利用することで、ふらっと外に出てしまうのを防ぎます。
センサーやチャイムなど防止グッズの活用
ご本人が動き出した際に、すぐに家族が気づけるようにする感知システムの導入も効果的です。
介護保険の「福祉用具貸与」の対象となる機器もありますので、ケアマネジャーに相談してみましょう。
離床センサーや人感センサーの設置
ベッドから起き上がった時や、部屋から出ようとした時に反応するセンサーです。
- 1. 離床センサー
- ベッドの横に敷くマットタイプや、ベッド柵に取り付けるクリップタイプなどがあり、起き上がりや端座位を検知してナースコールのような受信機に通知します。
- 2. 人感センサー
- 赤外線などで人の動きを検知します。廊下や玄関に向け設置することで、通過したタイミングでチャイムを鳴らし、家族に知らせます。
玄関マット式センサーによる外出検知
玄関マットの下に薄型のセンサーを設置し、踏むと家族に通知が届く仕組みです。
ご本人には普通のマットに見えるため、違和感なく設置できます。無線タイプであれば、配線を気にする必要もありません。
生活環境の見直しと工夫
設備機器だけでなく、日々の生活環境を少し変えるだけでも、ひとり歩きの予防につながる場合があります。
夜間の足元灯設置と転倒防止
夜間にトイレに行こうとして、そのまま方向がわからなくなり外へ出てしまうケースがあります。
寝室からトイレまでの動線に、人が近づくと自動で点灯する足元灯を設置することで、安全にトイレへ誘導し、混乱を防ぐ効果が期待できます。これは転倒予防の観点からも推奨されます。
外出着や靴を目につかない場所へ収納
外出するための準備ができない環境を作ることも一つの方法です。
- 1. 靴の隠蔽
- 玄関に靴を出したままにせず、靴箱の中にしまって見えないようにしたり、介護者が別の場所に保管したりします。
- 2. 洋服の整理
- コートや帽子、カバンなど、外出を連想させるものを目につく場所に置かないようにします。視覚的な刺激を減らすことで、外出衝動を抑えられる場合があります。
行方不明を防ぐためのGPS活用と捜索ネットワーク
万が一、ご本人が外に出て行ってしまった場合に備え、早期発見・保護のための準備をしておくことが命を守ることにつながります。
テクノロジーの活用と地域社会との連携の両面から対策を講じましょう。
GPS機器の種類と選び方
GPS(全地球測位システム)端末を利用すれば、ご本人の現在地をスマートフォンやパソコンで確認できます。
ご本人が持ち歩くのを忘れないよう、形状や携帯方法を工夫した製品が多く登場しています。
靴や杖に内蔵するタイプ
認知症の方は、見慣れない機械を持たされることを嫌がったり、どこかに置き忘れてしまったりすることがあります。
- 1. GPS内蔵シューズ
- いつも履いている靴の底などに小型のGPS端末を埋め込むタイプです。靴を履いて外出すれば必ず位置情報を把握できるため、成功率が高い方法と言えます。
- 2. 杖への取り付け
- 日常的に杖を使用している方であれば、杖に取り付けるタイプも有効です。ただし、杖を忘れて歩いてしまう可能性も考慮する必要があります。
お守りやペンダント型の携帯タイプ
普段から持ち歩いているものに似せたGPS端末です。
- 1. お守り袋タイプ
- 普段持ち歩くカバンや、杖、シルバーカーなどに「お守り」としてぶら下げておくことで、違和感なく携帯してもらえます。
- 2. 衣服への縫い付け
- 小型の端末を、普段着る上着の内ポケットなどに縫い付けてしまう方法もあります。
地域や行政の支援サービスの利用
家族だけの力ではなく、行政や地域のネットワークを活用することも非常に重要です。
高齢者見守りSOSネットワークへの事前登録
多くの自治体では、警察、消防、タクシー会社、郵便局、地域包括支援センターなどが連携した「SOSネットワーク」を構築しています。
事前に行方不明になる恐れがある方の名前、写真、身体的特徴などを登録しておくことで、万が一の際に関係機関へ一斉に情報が配信され、早期発見につなげる仕組みです。
自治体が配布する見守りシールの活用
QRコードが印刷された「見守りシール」を配布している自治体も増えています。
このシールを衣服や靴、杖などに貼っておきます。保護した人がQRコードをスマートフォンで読み取ると、家族の連絡先が表示されたり、専用の伝言板を通じて家族とやり取りができたりします。
個人情報を直接記載しなくて済むため、プライバシーにも配慮されています。
もしも行方不明になってしまった場合の対応と探し方
対策をしていても、ふとした瞬間に姿が見えなくなってしまうことはあります。
その時は、一刻も早い初動対応が重要です。パニックにならず、以下の手順で行動してください。
警察への行方不明者届の提出
「少し探せば見つかるかもしれない」「警察沙汰にするのは気が引ける」と躊躇せず、すぐに警察へ連絡してください。
認知症による行方不明は、時間が経つほど移動距離が伸び、交通事故や脱水症状など命の危険が高まります。
警察庁の統計でも、認知症の行方不明者は年々増加傾向にあり、早期の届け出が無事な発見につながることが示されています。
近隣やよく行く場所の捜索ポイント
警察への連絡と並行して、ご本人が向かいそうな場所を捜索します。
闇雲に探すのではなく、過去の言動や習慣から推測することが大切です。
- 1. 馴染みのある場所
- 以前住んでいた家、通っていた職場、よく利用していた喫茶店やスーパー、公園などを優先的に探します。
- 2. 直進する傾向
- 認知症の方は、一度歩き出すと脇目も振らずに直進し続ける傾向があると言われています。自宅から主要な道路をまっすぐ進んだ方向を探すのも一つの手です。
- 3. 危険な場所
- 線路内への立ち入りや、用水路、河川敷などは事故のリスクが高いため、早急に確認する必要があります。
地域包括支援センターやケアマネジャーへの連絡
担当のケアマネジャーや地域包括支援センターにも連絡を入れましょう。
介護事業所や地域のネットワークを通じて、目撃情報を集められる可能性があります。また、デイサービスなどの利用日に施設に行っていないかなどの確認もスムーズに行えます。
在宅介護での対応が限界と感じる前に
認知症のひとり歩きへの対応は、終わりが見えない戦いになりがちです。
責任感の強いご家族ほど、自分たちだけで抱え込んでしまい、共倒れになってしまうリスクがあります。
夜間の対応や常時見守りによる介護者の疲弊
ひとり歩きは昼夜を問わず発生するため、介護者は夜も安心して眠れない日々が続きます。
慢性的な睡眠不足や、「いつまた居なくなるか」という精神的な緊張状態は、介護うつや虐待の原因にもなりかねません。
「まだ頑張れる」と思っているうちに、心身は限界に達していることがあります。
老人ホーム・介護施設への入居を検討するタイミング
在宅介護の継続が難しいと感じたら、施設入居は「介護放棄」ではなく、「ご本人と家族双方の安全と生活を守るための選択」です。
以下のような状況にあれば、入居を検討すべきタイミングと言えます。
安全確保が難しく命の危険がある場合
鍵の工夫やセンサーの設置を行っても外出を防げない、交通量の多い道路に出てしまう、線路に立ち入ろうとするなど、生命に関わる危険が回避できない場合は、専門的な見守り体制がある施設への入居が推奨されます。
介護者の心身の健康が損なわれている場合
介護者自身が体調を崩したり、イライラしてご本人にきつく当たってしまったりするようになったら、限界のサインです。
共倒れを防ぐためにも、プロの手に委ねることを検討してください。
関西の老人ホーム探しなら「笑がおで介護紹介センター」へ
「笑がおで介護紹介センター」は、大阪・兵庫・京都・奈良・和歌山・滋賀・三重の関西エリアに特化した、老人ホーム・介護施設の検索・紹介サイトです。
認知症の方の受け入れ実績が豊富な施設のご提案も得意としています。
認知症ケアに強い施設の提案が可能
ひとり歩きなどの周辺症状がある場合、施設によっては受け入れが難しいこともあります。
当センターでは、認知症ケアに特化したグループホームや、見守り体制が充実した有料老人ホームなど、ご本人の症状や行動特性に合わせた最適な施設をご紹介いたします。
予算や希望エリアに合わせた無料相談と見学同行
ご予算やご希望の地域、医療依存度などの条件を詳しくヒアリングし、数ある施設の中からベストな選択肢をご提案します。
相談は無料です。また、不安な施設見学にも専門の相談員が同行し、プロの視点でチェックポイントをアドバイスいたします。
在宅介護でお悩みの方は、限界を迎える前に、ぜひ一度「笑がおで介護紹介センター」へご相談ください。

監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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