認知症の「暴力・暴言」が止まらない…原因と家族ができる安全な対応策

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認知症の方に暴力や暴言の症状が現れる原因

認知症の方に見られる暴力や暴言は、決してご本人が家族を困らせようとして行っているわけではありません。脳の細胞が壊れることによって起こる「中核症状」と、ご本人の性格や環境、身体状況などが重なって現れる「BPSD(行動・心理症状)」が複雑に関係しています。まずは、「なぜ怒りっぽくなるのか」という背景を正しく理解することが、解決への第一歩となります。

脳の機能低下に伴う感情コントロールの喪失

私たちの脳には、感情を抑制し、社会的な理性を保つ機能が備わっています。しかし、認知症によって脳の前頭葉という部分の機能が低下すると、この抑制が効かなくなります。

これまでなら我慢できていた些細なことに対しても、感情が爆発しやすくなり、その衝動を抑えることができずに、手が出たり強い言葉を発したりしてしまうのです。これは脳の機能障害によるものであり、ご本人の意思とは関係なく起こる現象です。

感情の抑制が効かなくなる易怒性と前頭側頭型認知症

認知症にはいくつかの種類がありますが、その中でも特に感情のコントロールが難しくなるケースがあります。

易怒性(いどせい)
些細な刺激に対して過剰に反応し、すぐに怒り出してしまう状態を指します。脳血管性認知症などでよく見られ、「感情失禁」とも呼ばれるように、泣いたり怒ったりする感情の起伏が激しくなります。
前頭側頭型認知症
脳の前頭葉や側頭葉が萎縮することで発症します。このタイプは、社会的なルールを守れなくなったり、本能のままに行動したりする「脱抑制」という症状が特徴です。悪気なく暴言を吐いたり、万引きなどの反社会的な行動をとったりすることがあり、初期段階では認知症と気づかれにくいこともあります。

記憶障害や見当識障害による不安と混乱

アルツハイマー型認知症などで見られる「記憶障害」や、今がいつでここがどこかわからなくなる「見当識障害」も、暴力の引き金になります。

例えば、ヘルパーや家族がケアをしようと近づいた際、ご本人の記憶の中では「見知らぬ人が突然自分の領域に侵入してきた」と認識されることがあります。「誰だお前は!」「何をされるんだ!」という強い恐怖心や防衛本能が働き、自分の身を守るために必死で抵抗した結果が、暴力という形になって表れるのです。ご本人にとっては、正当防衛に近い心理状態であると言えます。

身体的な不調や痛みによるストレス

認知症が進むと、自分の身体の不調を言葉でうまく伝えられなくなります。この「伝えられないもどかしさ」が攻撃的な行動につながることがあります。

【身体的不調が暴力につながる例】
便秘・排泄トラブル お腹が張って苦しい、便が出なくて不快感があるが、それを言葉にできないためイライラして暴れる。
脱水症状・空腹 喉の渇きや空腹感を適切に認識・表現できず、不快な感覚だけが募り、感情が爆発する。
痛み・痒み 関節痛や皮膚の痒みなどがあっても「痛い」「痒い」と言えず、触られるのを拒否して叩いてしまう。

環境の変化や孤独感などの心理的要因

認知症の方は環境の変化に非常に敏感です。引っ越しや入院、あるいは部屋の模様替えといった物理的な変化だけでなく、介護者の交代や家族の対応の変化もストレス要因となります。

「自分は厄介者扱いされているのではないか」「誰も自分の言うことを信じてくれない」という孤独感や疎外感が募ると、その不安を打ち消すために攻撃的な態度をとることがあります。また、周囲が騒がしい、部屋が暑すぎる・寒すぎるといった不快な環境も、混乱を招く原因となります。

暴力や暴言が起きた瞬間の具体的な対応策

実際に目の前で暴力や暴言が起きたとき、介護者は動揺してしまいますが、冷静な対応が求められます。対応を誤ると、さらに興奮させてしまい状況が悪化する恐れがあります。ここでは、その場ですぐに実践できる対応策をご紹介します。

まずは介護者自身の身の安全を確保する

最も優先すべきは、介護者自身の安全です。「家族だから」「病気だから」と我慢して殴られ続ける必要はありません。

暴力が始まったら、まずは物理的な距離を取ってください。相手の手が届かない場所まで離れ、場合によっては別の部屋へ避難して鍵をかけることも必要です。危険な物(刃物、重い物、熱い物など)が近くにある場合は、さりげなく遠ざけておくことも重要です。身の危険を感じるレベルであれば、躊躇なく警察や救急に連絡することも想定しておきましょう。

興奮している本人を落ち着かせるための接し方

ご本人が興奮している最中に、真正面から説得しようとしても逆効果です。火に油を注がないためのコミュニケーション技術が必要です。

真正面から向き合わず一定の距離を保つ

人と人が真正面から向き合う姿勢は、興奮状態にある人にとって「対決」や「威圧」と受け取られがちです。

立ち位置の工夫
真正面には立たず、斜め前や横並びの位置を取るようにしましょう。視線を少しずらすことで、圧迫感を減らすことができます。
パーソナルスペースの確保
少なくとも相手の手が届かない距離(1.5メートル以上)を保ちます。これは安全確保のためだけでなく、相手に「攻撃されない」という安心感を与える効果もあります。

否定や説得をせずに驚かせない声掛けを行う

暴言の内容が事実無根であっても(例:「財布を盗んだだろう!」など)、その場で否定したり論理的に説得しようとしたりしてはいけません。「盗んでいない」と言えば言うほど、「嘘をついている」と捉えられ、怒りが増幅します。

肯定と受容の姿勢
「財布がなくて困っているんだね」「心配だね」と、まずは相手の感情(困っている、怒っている)を受け止めます。
声のトーンとスピード
大きな声を出さず、低めのトーンでゆっくりと話しかけます。早口や高い声は興奮を助長させます。

その場の状況を変えて本人の気を逸らす

ある程度話を聞いて受け止めたら、話題や環境を変えて気分転換を図るのが効果的です。認知症の方は、直前の出来事を忘れてしまうことも多いため、意識を別の方向に向けることで怒りが収まることがあります。

場面転換
「喉が渇きましたね、お茶でも飲みませんか?」と提案し、別の部屋へ誘導する。
好きな話題への切り替え
ご本人の趣味や、昔の得意だったことの話を振ってみる。
一時的な退室
介護者が「トイレに行ってきますね」などと理由をつけてその場を離れ、視界から消えることで興奮が冷めるのを待つ。

症状を緩和させるための医療的なアプローチ

家庭での対応だけでは改善が見られない場合、医療の介入が必要です。暴力や暴言は「病気の症状」ですから、適切な治療によって緩和できる可能性が高いです。

早めにかかりつけ医や専門医へ相談する

症状が出始めたら、できるだけ早くかかりつけ医に相談しましょう。必要に応じて、認知症専門医(精神科、心療内科、脳神経外科、神経内科など)を紹介してもらうことも大切です。

受診の際は、以下の情報をメモにまとめて医師に渡すと、診断や処方がスムーズになります。

きっかけ
どのような状況や時間帯で怒り出すか
行動内容
叩く、物を投げる、暴言の内容など具体的な行動
生活状況
食事や排泄、睡眠のリズム
服薬情報
現在服用している薬の内容

薬による治療の効果と副作用の確認

認知症の周辺症状(BPSD)に対しては、抗精神病薬や気分安定薬、漢方薬(抑肝散など)が処方されることがあります。これらの薬は、興奮を鎮め、気持ちを穏やかにする効果が期待できます。

ただし、薬には副作用のリスクも伴います。例えば、鎮静作用が効きすぎて一日中ボーッとしてしまったり、足元がふらついて転倒のリスクが高まったり、嚥下機能(飲み込む力)が低下したりすることがあります。「暴れるよりはマシ」と安易に強い薬を使うのではなく、効果と副作用のバランスを医師とよく相談しながら調整していくことが不可欠です。

非薬物療法による生活環境の調整

薬だけに頼らず、生活環境やケアの方法を見直す「非薬物療法」も重要です。

生活リズムの改善
日中に散歩などの適度な運動を取り入れ、夜間の良質な睡眠を促すことで、情緒の安定を図ります。
役割の創出
簡単な家事(洗濯物たたみ、食器拭きなど)を手伝ってもらい、「自分は役に立っている」という自信を持ってもらうことで、不安やストレスを軽減します。
環境の整備
部屋の照明を明るすぎないように調整したり、不快な騒音を遮断したりして、リラックスできる空間を作ります。

介護に疲れた家族が共倒れしないために

暴力や暴言のある介護は、出口の見えないトンネルのようなものです。真面目なご家族ほど「自分がなんとかしなければ」と抱え込み、心身ともに疲弊してしまいます。最悪の場合、介護者自身がうつ病になったり、カッとなって高齢者に手をあげてしまう「虐待」につながったりするケースもあります。

介護疲れやストレスを一人で抱え込まない

介護における「共倒れ」を防ぐためには、意識的に介護から離れる時間を作ることが大切です。「介護を休むこと」は手抜きではありません。

デイサービスやショートステイなどの介護サービスを利用して、物理的に離れる時間を作ってください。ご本人がデイサービスを嫌がる場合でも、ケアマネジャーやスタッフが上手に誘導してくれることもありますので、諦めずに相談しましょう。

緊急時に警察や救急車を呼ぶべき判断基準

家庭内での暴力であっても、生命の危険がある場合は躊躇なく外部の助けを呼んでください

警察(110番)を呼ぶケース
刃物を持ち出した場合、家族や本人自身に怪我をさせる恐れがある場合、制止できないほど暴れている場合など。警察には「認知症の介護中であること」を伝えましょう。
救急車(119番)を呼ぶケース
ご本人や家族が怪我をした場合、ご本人が興奮して意識状態がおかしい場合など。

ケアマネジャーや地域包括支援センターへの相談

介護の悩みは、担当のケアマネジャーに包み隠さず相談してください。「こんなことを言ったら施設に入れられるのではないか」と不安に思う必要はありません。ケアマネジャーは、状況に応じたサービスプランの変更や、利用できる社会資源の提案をしてくれます。

また、まだ介護認定を受けていない場合や、どこに相談してよいかわからない場合は、お住まいの地域の「地域包括支援センター」が窓口となります。

在宅介護が困難な場合の施設入居や入院の検討

あらゆる対策を講じても暴力や暴言が収まらず、在宅での生活維持が限界だと感じたら、施設入居や入院を検討する時期かもしれません。それは「家族を見捨てる」ことではなく、「お互いの安全と生活を守るための前向きな選択」です。

精神科病院への入院が必要となるケース

症状が激しく、緊急性が高い場合は、認知症疾患医療センターや精神科病院への入院が必要になることがあります。

医療保護入院
ご本人の同意がなくても、精神保健指定医の診察と家族等の同意があれば入院できる制度です。専門的な治療を集中的に行い、症状の安定を目指します。
入院の目的
あくまで治療のための入院であり、終の棲家ではありません。通常は3ヶ月程度を目安に、症状が落ち着けば退院し、自宅や施設へ戻ることになります。

暴力や暴言がある方の受け入れが可能な介護施設

一般的な老人ホームでは、他の入居者への影響を考慮して、暴力行為がある方の入居を断るケースも少なくありません。しかし、中には認知症ケアに特化し、困難な事例も受け入れている施設があります。

グループホームや有料老人ホームの特徴

【主な施設タイプと特徴】
グループホーム 認知症の診断を受けた方が対象の小規模施設(1ユニット9名)。家庭的な雰囲気の中で、なじみのスタッフと共同生活を送ります。環境の変化に弱い方に適していますが、医療依存度が高い場合や、暴力が重度の場合は対応が難しいこともあります。
介護付き有料老人ホーム 24時間の介護体制があり、看護師が常駐している施設も多いです。人員配置が手厚い施設(例:入居者1.5〜2人に対しスタッフ1人など)であれば、個別対応がしやすく、BPSDのある方でも受け入れ可能な場合があります。
特別養護老人ホーム(特養) 公的な施設で費用が安いですが、待機者が多くすぐに入れないことが一般的です。また、集団生活が基本のため、他害行為がある場合は入居が難しいことがあります。

専門スタッフによるケアで症状が落ち着く可能性

驚かれるかもしれませんが、自宅では手がつけられなかった方が、施設に入居した途端に穏やかになるケースは珍しくありません。

プロの対応
認知症ケアの訓練を受けたスタッフは、興奮させない距離感や声掛けを熟知しています。
環境の変化
家族という甘えられる関係から離れ、適度な距離感のある他者との生活になることで、社会性が働き、行動が落ち着くことがあります。
規則正しい生活
食事や睡眠のリズムが整い、栄養バランスが改善されることで、精神状態が安定します。

関西で夫婦入居可能な老人ホーム探しなら「笑がおで介護紹介センター」へ相談

認知症による暴力や暴言がある場合、施設探しは難航することが予想されます。「断られたらどうしよう」と不安に思われるご家族も多いでしょう。そんな時は、ぜひ「笑がおで介護紹介センター」にご相談ください。

暴力や暴言の症状に対応できる施設を無料で提案

私たちは関西エリア(大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山、滋賀、三重)に特化した老人ホーム紹介センターです。地域の施設情報を網羅しており、「認知症ケアに力を入れている施設」「精神科との連携が強い施設」「人員配置が手厚い施設」など、ご本人の症状や状況に合わせた受け入れ先をご提案できます。

一般的な検索サイトでは分からない、「現場の受け入れ態勢」や「過去の対応事例」などのリアルな情報を持っています。相談料や紹介料は一切かかりません。

見学同行や入居後の生活まで見据えた親身なサポート

施設選びで重要なのは、パンフレットの情報だけではありません。相談員が施設見学に同行し、専門的な視点でチェックを行います。また、ご家族が施設側に伝えにくいこと(暴力の頻度や具体的な内容など)も、私たちが間に入って正確に伝え、入居後のミスマッチを防ぎます。

在宅介護の限界を感じたら、まずは私たちにお話をお聞かせください。ご家族とご本人が、再び穏やかな笑顔で過ごせるよう、全力でサポートいたします。

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監修者

花尾 奏一(はなお そういち)

保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

有料老人ホームにて介護主任を10年 
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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