老人ホームの防災体制チェックリスト|地震・火災・停電時の対応と見学ポイント

「もし入居中に大きな地震や水害が起きたら、親は無事に避難できるのだろうか」と、老人ホームの防災面に不安を感じている方も多いのではないでしょうか?
近年は想定を超える規模の自然災害が相次いでおり、施設の防災体制は入居先を選ぶうえで見逃せないポイントです。この記事では、老人ホームの防災の基本知識から地震・火災・停電ごとの対応策までをわかりやすく整理しました。
見学で役立つチェックリストやご家族側でできる備えも取り上げています。読み終えたあとには、防災の視点で施設を比較・評価できる判断基準が身につくでしょう。
老人ホームに求められる防災体制とは
老人ホームには、自力での避難が難しい方が数多く暮らしています。地震や水害が発生したとき、施設の備えが入居者の安全を大きく左右します。
防災体制の整った施設を見極めるには、まず施設がどのような義務を負っているかを理解しておくことが必要です。ここでは、入居者が抱える災害リスクとBCPや避難確保計画の役割を解説します。
自力避難が難しい入居者が抱える災害リスク
老人ホームの入居者は、災害が発生した際に避難を終えるまで長い時間がかかる傾向があります。高齢や障がいにより、自力での歩行が困難な方が多く入居しているためです。
避難には職員の介助が不可欠ですが、夜間は少人数の体制になるため全員の移動に時間がかかります。停電でエレベーターが止まれば車いすや寝たきりの方を階段で搬送する場面も想定されます。
移動中の急な寒暖差で血圧が変動し、体調を崩す恐れも無視できない問題です。停電や断水が長引けば医療機器の停止や排泄介助への支障など、生活全体に影響が広がります。
こうしたリスクを踏まえると、入居先を決める段階で施設の避難体制を確認しておく価値は大きいでしょう。
BCP(事業継続計画)の役割と策定の義務
BCP(事業継続計画)は、災害や感染症が発生した際に介護サービスを止めず、入居者の生命を守るための計画です。利用者が日常的にケアを必要とする介護施設では、サービスの中断が命に直結します。
2024年4月からは、すべての介護施設でBCPの策定および研修・訓練の実施が完全義務化されました。未策定の施設は基本報酬が減算されるうえ、災害で被害が出れば安全配慮義務違反として損害賠償を求められる可能性も生じます。
見学の際にはBCPの策定状況を確認し、施設が危機管理にどれだけ力を注いでいるかを見極める材料にするとよいでしょう。
参考:介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修資料・動画|厚生労働省
参考:介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン(PDF)|厚生労働省
避難確保計画で定められる対策の範囲と対象
避難確保計画は、水防法や土砂災害防止法、津波防災地域づくり法等に基づき策定が義務付けられた防災計画です。対象は洪水・内水・高潮・土砂災害・津波の危険区域内にあり、市町村の地域防災計画にその名称と所在地が定められた施設です。
計画の中では避難経路や誘導手順、防災設備の整備方針、訓練の実施計画などが具体的に定められます。令和3年の法改正で訓練結果を市町村へ報告する義務も追加され、計画の実効性がより厳しく問われるようになりました。
対象施設は自治体から助言や勧告も受けるため、策定後も継続的な見直しが求められています。この計画の運用状況を確認すれば、施設の防災への本気度を測る手がかりになるでしょう。
参考:
過去に起きた老人ホームの災害事例
過去には、老人ホームが大規模な水害に見舞われ多くの入居者が犠牲になった痛ましい事例が報告されています。防災計画を策定していたにもかかわらず被害を防げなかったケースもあり、計画の実効性が問われました。
ここでは代表的な災害事例とその原因を振り返り、施設の防災体制を評価するうえで押さえておきたい教訓を整理します。
水害で施設が孤立し犠牲者が出た事例
大型台風や集中豪雨によって老人ホームが甚大な被害に遭い、入居者が犠牲になった事例が複数報告されています。浸水想定区域にある施設は、河川の氾濫で建物ごと孤立する恐れがあります。
平成28年の台風10号では、岩手県岩泉町にある認知症高齢者グループホームが暴風雨に襲われ多数の方が亡くなりました。令和2年7月豪雨でも、熊本県球磨村の高齢者施設が球磨川の氾濫に巻き込まれ14名が犠牲となっています。
いずれも浸水想定区域に位置する施設が被災した事例で、立地の確認がいかに大切かを物語っています。入居先を検討する際は、ハザードマップで施設周辺の浸水や土砂災害の危険度を確かめる視点が欠かせません。
参考:避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドラインに関する検討会(平成28年度)|内閣府
参考:令和2年7月豪雨災害を踏まえた高齢者福祉施設の避難確保に関する検討会|厚生労働省
避難確保計画が機能しなかった原因
令和2年7月豪雨では、避難確保計画を策定済みだった施設で多数の犠牲者が出てしまいました。計画を作成していたにもかかわらず被害を防げなかった事実が、避難の実効性を問い直すきっかけとなっています。
国はこの事態を重く受け止め、有識者検討会を立ち上げて制度の見直しに着手しました。結果として、避難訓練の実施結果を市町村へ報告する義務や、自治体が施設に助言・勧告を出せる制度が法律に新たに盛り込まれています。
計画を作成した段階で安心するのではなく、訓練で弱点を洗い出して改善を重ねる体制が整っているかどうかが問われます。見学の際には、訓練の実施状況や計画の見直し頻度を確認するとよいでしょう。
過去の教訓から学ぶ防災体制の重要性
近年は気候変動の影響もあり、想定を超える規模の自然災害が各地で起きています。過去の被災事例だけに頼った備えでは、新たな災害への対応に限界が出てきています。
過去の水害の教訓を踏まえ、警戒レベル3が発令された時点で速やかに入居者の避難を開始する「早めの判断」を徹底する動きが広がりました。定期的な避難訓練でPDCAサイクルを回し、計画の弱点を洗い出して改善を繰り返す仕組みも各施設で構築されつつあります。
災害リスクは年々高まっており、計画の更新と訓練を怠らない姿勢があるかどうかが施設選びの判断基準になります。過去の教訓をどの程度取り入れているか、見学時に具体的な取り組み内容を尋ねてみるとよいでしょう。
参考:避難情報に関するガイドラインの改定(令和3年5月)|内閣府
老人ホームで地震が発生したときの対応
地震は予測が難しく、揺れが起きた瞬間からの対応が入居者の安全を左右します。老人ホームでは自力で身を守れない方が多いため、職員による迅速な初動が命を守る要です。
ここでは、揺れを感じたときの安全確保から安否確認、避難の判断までの流れを順に解説します。
揺れを感じたら身の安全を最優先に確保する
地震の揺れを感じた瞬間や緊急地震速報が鳴ったとき、最優先すべきは入居者と職員全員の安全確保です。頭部を守り、落下物や転倒した家具から素早く距離を取る必要があります。
揺れが続いている間は職員自身も身の安全を確保し、無理に移動しないのが原則です。揺れが収まったあと、あらかじめ定めた役割に従い入居者の安全確認や落下物の除去に取りかかります。
状況を理解しにくい入居者に対しては、落ち着いた口調で声をかけて不安を和らげる配慮も欠かせません。初動の手順が職員全員に浸透しているかどうかは、施設の地震対応力を測る指標になるでしょう。
入居者の安否と建物の被害状況を確認する
揺れが収まったあとは、入居者の安否確認と建物の被害点検に速やかに取りかかる段階です。全員の状態を正確に把握し、二次災害を未然に防がなければなりません。
各担当職員が手分けして入居者の安否と負傷の有無を確認し、結果を総括責任者へ報告します。同時に建物の亀裂やガラスの飛散、棚の転倒、火元やガス漏れの有無も並行して点検する流れです。
負傷者がいれば救護班が速やかに応急処置にあたり、危険箇所には立入禁止の措置を講じます。確認した情報を災害対策本部に集約して共有できる体制が整っていれば、避難の要否判断もスムーズに進むでしょう。
屋内安全確保か施設外避難かを状況で判断する
安否確認と建物点検が終わったら、施設にとどまるか外へ避難するかを総括責任者が判断します。判断を誤れば入居者をかえって危険にさらす恐れがあるためです。
建物の倒壊や浸水のリスクがなければ、安全な上層階にとどまる「屋内安全確保(垂直避難)」を選ぶケースもあります。津波や土砂崩れの危険が迫っている場合は、可能な限り近くて高い場所や近隣の安全な建物など、状況に応じた避難先への移動が必要です。
判断には、BCPであらかじめ定められた基準や周辺環境の情報が活用されます。緊急時でも冷静に方針を決められる体制を備えている施設は、入居者の安全をより高い水準で守れるでしょう。
老人ホームで火災が起きたときの避難手順
火災は発生から短時間で煙や炎が広がるため、初動の速さが被害の規模を左右します。老人ホームでは、職員が役割分担に沿って迅速に動く連携体制が必要です。
ここでは、火元の確認から初期消火・入居者の避難誘導、消防通報とご家族への報告までの流れを解説します。
火元を確認して速やかに初期消火を試みる
火災を発見したら、火元の位置を確認しつつ速やかに初期消火へ取りかかります。炎が小さいうちに対処できれば、被害の拡大を大幅に抑えられるからです。
あらかじめ「消火班」に指名された職員が消火器や屋内消火栓を使い、可能な範囲で消火にあたります。天井まで炎が達した場合や煙が充満し始めた場合は、無理をせず避難誘導へ即座に切り替えなければなりません。
初期消火の成否は日ごろの訓練に左右されるため、消火器の操作に習熟しているかどうかは見逃せない確認ポイントです。見学時には消火訓練の実施頻度や内容を尋ねてみるとよいでしょう。
煙を避けて入居者を安全な場所へ誘導する
初期消火と並行して「避難誘導班」の職員が入居者を安全な場所へ移動させます。煙は上方へ広がる性質をもつため、姿勢を低くしながらの誘導が必要です。
避難の順番は、自力で歩ける方、車いすの方、寝たきりの方の順に段階的に進めるのが基本です。状態に応じた優先順位を事前に決めておけば、混乱を抑えながら効率よく避難を進められます。
火災時は煙で視界が悪くなるため、非常灯や誘導灯が正常に作動しているかどうかも避難の速度を左右します。防火扉や防煙設備の整備状況もあわせて確認しておくと、施設の火災対応力を判断する材料になるでしょう。
安全確保後に消防通報と家族への状況報告を進める
老人ホームでは、火災感知器と連動した火災通報装置により消防機関への自動通報が原則として義務付けられています。装置が正常に作動すれば、職員が手動で119番通報をする前に消防への通報が完了する仕組みです。
施設外の安全な場所に退避し、点呼で全員の無事が確認されたあとに、あらかじめ定められた方法でご家族へ状況を報告します。電話やメールの一斉送信など複数の手段が用意されていれば安心です。
ご家族への連絡は、入居者の安全確保が完了してから進めるのが基本です。見学時には、連絡のタイミングや手段を確認しておくとよいでしょう。
参考:認知症高齢者グループホーム等に係る消防法令等の概要|総務省消防庁
停電が起きたときの医療機器管理と体調ケア
停電は医療機器を使用する入居者にとって、命に関わる緊急事態です。照明やエレベーターが止まるだけでなく、空調の停止による体温管理の問題も見逃せません。停電が長引くほどリスクは高まり、施設の備えが問われる場面です。
ここでは、非常用電源への切り替えから体温管理の工夫、復旧までの情報収集と声かけの対応までを解説します。
非常用電源に切り替え医療機器の稼働を維持する
停電が発生した場合、人工呼吸器などの医療機器は内蔵バッテリーに自動で切り替わる機種が多く、まずは機器が正常に作動しているか確認するのが正しい初動です。
万が一バッテリーが切れた場合に備え、蘇生用バッグなど手動装置の準備も求められます。非常用電源(自家発電機やポータブル蓄電池)は施設全体の電力を補いますが、医療機器への直接接続は故障の原因になる場合があり注意が必要です。
専用バッテリーに充電してから使用するなど、機器ごとの正しい手順の把握が不可欠です。
BCPガイドラインでは3日間の連続稼働が推奨されており、この基準への対応状況を確認すれば施設の備えを判断する目安になるでしょう。
参考:介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン(PDF)|厚生労働省
空調停止時は体温管理で熱中症や低体温を防ぐ
停電で空調が止まると、室温が急変して入居者の体温調節が追いつかなくなる恐れがあります。高齢の方は温度の変化を感じ取りにくく、体調の異変に気づくのが遅れがちです。
寒い季節には断熱性の高い防災用ブランケットや使い捨てカイロを使い、入居者の体を冷やさないよう保温を図ります。暑い季節には経口補水液をこまめに提供し、うちわや携帯扇風機で体温の上昇を抑える工夫が必要です。
空調が止まる時間が長引くほど、体調悪化のリスクは増していきます。職員が定期的に巡回して入居者の体温や顔色、発汗の状態を観察する体制があれば、体調の急変にも素早く対処できるでしょう。
復旧までの情報収集と入居者への声かけを続ける
停電が長引く場合、復旧までの見通しを正確に把握するための情報収集が求められます。情報連絡班は電池式ラジオやスマートフォンを活用し、電力会社の復旧情報や自治体の災害情報を随時確認する役割です。
入居者は、暗い環境やいつもと違う雰囲気に強い不安を感じる場合があります。特に認知症の方は混乱を起こす恐れもあるため、職員がこまめに声をかけて状況を伝え安心感を与える姿勢が必要です。
得られた情報を入居者にもわかる言葉で丁寧に共有し、孤立感を少しでも和らげる対応を継続できるかどうかは、施設の力量を測る指標になるでしょう。
災害時に入居者が直面しやすいリスク
災害そのものの被害に加え、避難後の環境変化が入居者の健康を脅かす恐れがあります。持病の悪化や体力の低下、精神面の不調など、高齢者には特有のリスクが存在します。
ここでは、災害時に入居者が直面する代表的なリスクを整理し、施設にどのような備えが求められるかを確認していきましょう。
環境変化で持病が悪化しやすくなる
災害時のストレスや生活環境の急変は、入居者の持病を悪化させる要因になります。普段は安定している症状でも、災害を機にバランスを崩す入居者は一定数いるのが実情です。
たとえば急な寒暖差で血圧が大きく変動したり、環境の変化で体調を崩したりする場面が想定されます。入居者ごとの持病の予備薬やお薬手帳のコピーを施設が備蓄しておけば、医療機関との連携もスムーズに進むでしょう。
けが人の救護だけでなく、持病を抱える入居者の体調変化にも目を配れる体制が整っているかどうかは、施設の対応力を見極めるうえで確認すべきポイントです。
避難所の生活に適応できず体力が低下する
施設外への避難が必要になった場合、慣れない環境での生活が入居者の体力を急速に奪ってしまう恐れがあります。指定緊急避難場所では、施設の入居者に適切な支援を提供できない可能性があるためです。
バリアフリー設備が整っていない場所では、移動や排泄の負担が増して体調を崩してしまう原因になります。福祉避難所の利用や系列施設への一時的な受け入れなど、高齢者に適した避難先を事前に確保しておく動きが広がっています。
入居者の要介護度や障がいの特性に応じた避難先を独自に用意しているかどうかは、施設の危機管理力を見極める大切な判断材料になるでしょう。
参考:福祉避難所の確保・運営ガイドラインの改定(令和3年5月)|内閣府
精神的ストレスで落ち着きを失いやすくなる
災害の混乱や生活リズムの乱れは、入居者の精神面にも大きな影響を及ぼします。特に認知症の方は環境の変化に敏感で、普段と異なる反応を見せやすい傾向があるでしょう。
たとえばいつもと違う雰囲気を察知して落ち着きがなくなったり、不安からパニック状態に陥ったりする場面が想定されます。職員が個々の状態にあわせた声かけや見守りを丁寧に続けられるかが、精神面のケアを大きく左右する要素です。
認知症ケアの経験が豊富な職員が在籍し、災害時のマニュアルにも精神面への配慮が盛り込まれている施設であれば、入居後の安心感は高まります。
老人ホーム見学で使える防災チェックリスト
施設の防災体制を見極めるには、見学時に具体的な質問を準備しておくのが効果的です。漠然と見るだけでは、防災面の違いはなかなかわかりません。
ここでは、見学の際にチェックしておきたい7つの項目を紹介します。老人ホームの防災体制を比較する際の判断材料として活用してみましょう。
建物の耐震基準とハザードマップ上の立地
施設の建物が十分な耐震性を備えているかどうかは、地震対策を評価するうえで基本的な確認ポイントです。耐震性に不安がある建物では、大きな揺れで倒壊や損壊が起きる危険が高まります。
確認の目安として、建築確認日が1981年6月以降の「新耐震基準」を満たしているかどうかを尋ねるとよいでしょう。旧耐震基準の場合でも、耐震補強工事が完了していれば一定の安全性は確保されています。
施設周辺のハザードマップもあわせて確認し、洪水・土砂災害・津波の危険区域に該当しないかを事前に把握しておけば、立地のリスクを客観的に判断できます。
非常用電源の種類と稼働可能な時間の目安
停電時に施設の機能を維持できるかどうかは、非常用電源の有無と能力にかかっています。医療機器や照明、エレベーターが止まれば入居者の安全に直接的な影響が出るからです。
自家発電機や蓄電池がどの設備をカバーし、連続で何時間稼働できるかを見学時に尋ねてみましょう。BCPガイドラインでは3日間の連続稼働が推奨されており、この基準にどの程度まで対応できているかが施設を評価する際の目安のひとつです。
非常用電源の種類と規模を見学の場で具体的に把握しておけば、停電時の対応力を施設ごとに客観的に比較できるでしょう。
参考:介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン(PDF)|厚生労働省
備蓄品の量・種類と食事形態への対応状況
災害時に必要な物資が十分に備蓄されているかどうかは、施設の防災レベルを測る大きなチェックポイントです。高齢者には一般的な非常食が合わない場合もあり、食事形態への配慮が求められます。
見学時に確認しておきたい備蓄の項目は、以下のとおりです。
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飲料水と食料が最低3日分あるか
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ソフト食やゼリー飲料の備えがあるか
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大人用おむつが十分にストックされているか
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簡易トイレの準備が整っているか
できれば1週間分の備蓄があると安心です。こうした備蓄の充実度を比較すれば、災害時にも入居者の生活を守れる施設かどうかを見極める手がかりになるでしょう。
避難訓練の実施頻度と夜間想定の訓練内容
避難訓練を定期的に実施しているかどうかは、防災計画が現場で機能するかを測る指標です。消防法では消火・避難訓練を年2回以上実施する義務が定められており、特に夜間は職員が少なく日中とは大きく異なる対応が必要になります。
見学時に確認しておきたい訓練のポイントは、以下のとおりです。
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消火・避難訓練を年2回以上実施しているか
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夜間を想定した訓練を取り入れているか
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訓練後に計画の見直しを進めているか
夜間想定の訓練まで取り入れている施設は、少人数でも入居者を安全に避難させる手順を確立している可能性が高いといえるでしょう。
参考:認知症高齢者グループホーム等に係る消防法令等の概要|総務省消防庁
災害時の家族への連絡手段と通知の仕組み
災害が起きた際、施設からご家族へ迅速に状況が伝わる仕組みが整っていると安心です。通信インフラが途絶えた場合に備え、複数の連絡手段を確保しなければなりません。
見学時に確認したい連絡手段の例は、以下のとおりです。
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電話による個別連絡
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メールやSMSの一斉送信
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専用の安否確認システム
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SNSや衛星回線のバックアップ
連絡のタイミングやフローが整理されている施設であれば、災害時にもご家族との双方向の情報共有がスムーズに進みます。第一報がいつ届くのか、どの手段で連絡が入るのかを見学時に具体的に尋ねておくとよいでしょう。
地域の医療機関や他施設との連携体制
大規模な災害が起きた場合、施設単独での対応には限界があります。近隣の医療機関やほかの介護施設、自治体と連携できる体制が整っているかどうかが入居者の安全を大きく左右するでしょう。
たとえば「災害時相互応援協定」を結んでいれば、被災した際に入居者を別施設へ受け入れてもらえたり、物資や人員の融通を受けたりできます。系列施設が複数ある法人では、グループ内で迅速に応援を回せるのも強みのひとつです。
見学時に連携先の有無や協定の具体的な内容を確認しておけば、万が一のときにどこまで支援が期待できるかを判断する材料になります。
職員の役割分担と夜間の人員配置
災害時に誰がどの役割を担うかが事前に決められていれば、緊急時にも大きな混乱なく対応を進められます。夜間は特に職員数が限られるため、少人数での対応手順がきちんと整備されているかが見逃せない確認ポイントです。
防災計画で定められる代表的な役割分担は、以下のとおりです。
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指揮・統括(全体のまとめ役)
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情報連絡(通報・ご家族への報告)
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消火(初期消火の対応)
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避難誘導(入居者の移動支援)
夜間の配置人数や有資格者の有無もあわせて確認し、少人数の体制でも入居者を安全に避難させる具体的な手順が組まれているかを見極めましょう。
家族ができる老人ホーム入居後の防災対策

施設に任せきりにするのではなく、ご家族側でもできる備えは数多くあります。日ごろから施設との連携を深めておけば、万が一の状況でも慌てずに動く準備が整うでしょう。
ここでは、持ち出し品の準備から連絡手段の確認、防災訓練への参加まで、入居後にご家族が取り組める具体的な防災対策を3つ紹介します。
持ち込み品リストを作成して施設と共有する
入居者が日常的に使用する個人物品を整理し、災害時に必要なものを施設側と共有しておくと安心です。老眼鏡や補聴器、入れ歯などは入居者ごとに異なるため、ご家族が情報を正確に伝えておく必要があります。
共有しておきたい代表的な項目は、以下のとおりです。
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老眼鏡・補聴器・入れ歯の種類や予備の有無
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着替え一式と防寒用の上着のサイズ
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ご本人確認書類のコピー
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服用中の薬の情報(お薬手帳のコピー)
薬は施設の看護スタッフが一元管理するのが原則のため、ご家族が個別に保管するのではなく施設側に預ける形が基本です。季節や体調の変化にあわせてリストの内容を定期的に更新しておきましょう。
災害時の連絡手段と集合場所を事前に決める
施設が被災して外部への避難が必要になった場合を想定し、ご家族と施設の間で連絡手段や引き渡し場所を事前に取り決めておく必要があります。災害時は通信が混乱して連絡が取りにくくなるからです。
電話以外にもメールやSNSなど複数の手段を確認しておけば、いずれかが使えなくなっても別の方法で連絡を取れます。引き渡し場所についても地図を使って双方で共有し、入居時の書面に明記しておくと安心です。
取り決めの内容を文書として残しておけば、担当者が変わった場合にも情報が引き継がれます。万が一の場面でも、ご家族と施設の双方が落ち着いて行動に移せるでしょう。
施設の防災訓練や家族向け説明会に参加する
施設が実施する避難訓練やご家族向けの説明会には、積極的に参加するのが効果的です。避難経路や集合場所を直接確認でき、緊急時の備え方が具体的にイメージできます。
訓練にはご家族の参加が推奨されており、職員だけでなく地域住民も加わる施設もあります。参加を通じて施設の防災体制や職員の動きを肌で感じ取れるのは大きなメリットです。
実際に避難の流れを体験しておけば、万が一のときにも冷静に状況を受け止めて対応できる心構えが身につきます。日ごろから防災に関わる姿勢をもつ経験は、ご家族自身の安心にもつながるでしょう。
老人ホームの防災でよくある質問
老人ホームの防災に関して、入居を検討しているご家族からよく寄せられる質問をまとめました。
「訓練はどのくらいの頻度で実施しているのか」「災害時にご家族への連絡はどう届くのか」など、気になるポイントを確認しておきましょう。施設選びや備えを考えるうえで参考になるはずです。
老人ホームで防災訓練を実施する頻度は?
消防法により、消火訓練と避難訓練を年2回以上実施する義務が老人ホームには課されています。水防法等に基づく訓練も原則年1回以上の実施と市町村への結果報告が求められる決まりです。
年2回の法定義務にとどまらず、独自に自主訓練の機会を増やして取り組んでいる施設もあります。訓練の回数が多い施設ほど職員一人ひとりの動きがスムーズになり、緊急時にも的確な対応が期待できるでしょう。
見学時には訓練の実施頻度に加え、直近の訓練内容やそこで見つかった課題と改善点を具体的に尋ねてみると、施設の防災意識を正確に測る手がかりになります。
災害が起きたとき施設から家族への連絡手段は?
多くの施設では、電話や一斉送信メール、安否確認システムなどを通じてご家族へ連絡を入れます。通信インフラが使えなくなるリスクに備え、複数の手段を確保しておく必要があるからです。
衛星回線やSNSをバックアップ手段として用意している施設もあります。連絡は通常、入居者の安全が確保されたあと(避難完了後など)のタイミングで実施される流れです。
どの手段で第一報が届くのか、入居者の安全確認後にどのような流れでご家族へ連絡が入るのかを見学時に確認しておくと、万が一のときにも落ち着いて連絡を待てる準備が整うでしょう。
老人ホームと在宅介護で防災の安全性に差はある?
老人ホームでは、法律に基づくBCPや避難確保計画の策定が義務付けられており、組織的な防災体制が整備されています。在宅介護では個人の備えが中心になるため、同じ水準の防護体制を整えるのは容易ではないでしょう。
複数の職員が役割を分担して夜間にも対応できる体制が組まれ、自家発電機や3日~1週間分の食料・介護用品の備蓄も進められています。介護施設にはスプリンクラーの設置も原則義務付けられている状況です。
施設入居のメリットを防災の面から考える際にも、こうした組織的な対応力は大きな安心材料になります。
参考:スプリンクラー設備の技術上の基準の細目(PDF)|総務省消防庁
防災体制が整った施設をお探しの方へ
『笑がおで介護紹介センター』では、防災対策に力を入れている施設も紹介しています。以下は、防災体制が充実した施設の一例です。
スーパー・コート宇治大久保(京都府宇治市):RC造3階建ての住宅型有料老人ホームで、防災設備・避難設備を完備しています。看護師が24時間常駐し、夜間の緊急時にも迅速なケアが受けられる体制が整っている施設です。
まとめ
この記事では、老人ホームの防災に関する基本知識から見学時のチェックリストまでを整理しました。BCPや避難確保計画の有無、非常用電源や備蓄の整備状況などが、施設を比較する際の判断基準になります。
まずはハザードマップで候補施設の立地を確認し、見学の際にはチェックリストの項目を一つずつ質問してみましょう。ご家族側でも持ち込み品リストの作成や連絡手段の確認を進めておけば、災害への備えが一層強まります。
施設選びの過程で不安や疑問が出てきた場合は、『笑がおで介護紹介センター』に相談するのもひとつの方法です。プロのアドバイザーがあなたの状況に合った施設を一緒に探し、防災面でも安心できる入居先選びをサポートいたします。

このコラムの監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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