介護保険はいつまでいくら払うの?制度や計算方法を解説

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介護保険はいつまでいくら払うの?制度や計算方法を解説

介護保険は、介護が必要な高齢者を社会全体で支えるための公的制度です。満40歳になると加入が義務付けられる介護保険ですが、保険料はどのくらいの期間納める必要があるのでしょうか。

本記事では、介護保険料をいつまで支払うのかについて解説します。いくら支払うのか、どうやって支払うのかなど介護保険の概要も説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。

介護保険料はいつまで支払う必要がある?

結論からいいますと、介護保険料は生涯払い続ける必要があります。介護保険料の納付期間は、満40歳に達したときから一生涯です。その代わり、公的介護サービスも期限なく受け続けることが可能です。

ただし、第2号被保険者と第1号被保険者では、以下のように介護保険料の取り扱いが変わります。

第2号被保険者は満64歳まで

介護保険における第2号被保険者とは、民間会社員や公務員、自営業者など、全国健康保険協会や国民健康保険に加入している人のことです。第2号被保険者は、「満40歳に達したときから満65歳に達したとき」まで健康保険料と一緒に健保組合などから介護保険料を徴収されます。

満40歳(満65歳)に達したときとは、40歳(65歳)の誕生日の前日です。

たとえば4月1日が誕生日の人の場合、40歳を迎える前日の3月31日が属する3月分より健康組合などによる介護保険料の徴収がスタートされ、64歳の3月分より徴収はなくなるわけです。

第1号被保険者は年金から天引き

介護保険における第1号被保険者とは、65歳以上の人のことを指します。後述しますが、介護保険料は満65歳に達したときより、原則市区町村からの年金天引きによって徴収されます。

たとえば4月1日が誕生日の人の場合、65歳の誕生日の前日は64歳の3月31日なので、3月分より健保組合などからの徴収は停止され、市町村による徴収が始まるかたちです。

第1号被保険者の納付期限は定められていないため、一生涯保険料の徴収は続きます。

介護保険の仕組み

私たちが必ず保険料を支払うことになる「介護保険」とは、そもそもどのような制度なのでしょうか。ここでは、介護保険制度の概要をみてみましょう。

介護保険制度とは

介護保険制度とは、介護が必要な方やその家族を社会全体で支えることを目的に、平成12年に創設された公的制度です。保険料を納めている加入者は、介護や支援が必要になったときに、自己負担割合1〜3割で介護サービスを利用できます。

介護保険制度では、加入者は以下の2種類に分類されます。

  • 満45歳から65歳未満の人:第2号被保険者
  • 65際以上の人:第1号被保険者

介護保険を運営するのは市区町村ですが、第2号被保険者は加入している健保組合などから保険料を徴収されます。財源は国や都道府県、市区町村からの公費が5割、保険料が5割です。

健康保険とは異なり、加入対象者が満40以上の方に限られる点が特徴的です。民間の介護保険は任意加入が可能ですが、公的な介護保険は強制加入となります。

なお、介護保険は無職の人でも加入する義務があります。基本的に、払わなくていい人はいないと考えておきましょう。ただし、災害により経済的被害が大きい方や、所得が著しく低い方は減免措置を受けられる可能性があります。

関連記事:介護保険とは?サービスの種類や保険料などわかりやすく解説

介護保険サービスの対象者

介護保険サービスの対象者と受給要件は以下の通りです。

 

対象者

受給要件

第1号被保険者

65歳以上の方

  • 要介護状態
  • 要支援状態

第2号被保険者

40歳以上65際未満の医療保険加入者

  • 老化に起因する疾病による要介護状態
  • 老化に起因する疾病による要支援状態

※出典:厚生労働省「介護保険制度について

第2号被保険者が介護サービスの対象となるのは、がん(末期)や関節リウマチなどの特定疾病である場合のみです。

介護保険サービスを利用する場合、利用者は介護サービス料の1割、一定の所得がある人は2〜3割を自己負担します。また、介護保険施設を利用する場合は、費用の1割(一定の所得がある人は2〜3割)に加え、食費や居住費などを負担することになります。

介護保険料はいくらかかる?

介護保険料の負担額は、人によって大きく異なります。ここでは、介護保険料としていくら支払えばいいのか、その目安を解説します。

第1号被保険者の場合

65際以上の第1号被保険者の介護保険料は、自治体ごとに決められた「基準額」と「本人や世帯の所得金額」によって算出されます。

基準額とは、自治体における介護給付額のうち、65歳以上の人が負担する分を、その自治地帯に居住する65際以上の人数で割った金額です。そのため、基準額は自治体によって異なります。

厚生労働省の資料によると、令和3年度から令和5年度における第1号被保険者の介護保険料は6,014円が平均であると判明しました。地域によって差があるため、保険料が3,000円台のところもあれば9,000円台のところもあります。

出典:厚生労働省「第8期計画期間における介護保険の第1号保険料について

第2号被保険者の場合

第2号被保険者の場合、介護保険料の計算方法は加入している健康保険によって違いが出てきます。

全国健康保険協会に加入している方の場合、「(標準報酬月額+標準賞与額)×介護保険料率」で介護保険料が決定されます。つまり、給料や賞与の金額によって介護保険料が決まるというわけです。ただし、第2号被保険者は介護保険料を雇用主と折半するため、実際に負担する金額は算出された金額の半分となります。

自営業などの国民健康保険加入者は、以下のようにさまざまな要素を加味して介護保険料が決定されます。

  • 所得割額
  • 均等割額
  • 平等割額
  • 資産割額

被保険者本人の所得はもちろん、世帯の資産なども介護保険料の算出に影響する点がポイントです。

介護保険料の支払い方法

介護保険の支払い方法は、第1号被保険者と第2号被保険者で異なります。ここでは、介護保険料の支払い方法を解説します。

第1号被保険者の場合

第1号被保険者は、以下の2つの方法で介護保険料を納めます。

  • 特別徴収
  • 普通徴収

それぞれの方法について詳しくみてみましょう。

特別徴収

公的年金を受給していて、年間支給額が18万円以上の方は、原則特別徴収となります。

特別徴収とは、公的年金から介護保険料を天引きして徴収することです。介護保険料のみならず、住民税や国民保険料にも特別徴収が適用されることがあります。

特別徴収に切り替わるときは、事前に市区町村から通知が届きます。この際、自分で何か手続きをする必要はありません。

普通徴収

公的年金が年間18万円未満の場合は、普通徴収で介護保険料を納めることになります。また、年度の途中で65歳になった人や他の市区町村へ移転した人、保険料が減額になった人などは、普通徴収で保険料を納付することになります。

普通徴収とは、納付書や口座振替によって保険料を支払うことです。自治体によってはキャッシュレス決済で支払うことも可能です。納付書で振り込むか口座振替にするかは、被保険者本人が選べます。

第2号被保険者の場合

第2号被保険者は、会社員と自営業で介護保険料の納付方法が変わります。それぞれの納付方法を詳しくみてみましょう。

会社員

会社員として給与を受け取っている人は、介護保険料は健康保険料と一緒に天引きされます。「共済組合」や「船員保険」など健康保険の名称が異なる場合がありますが、給与をもらっている人が天引きで納付することは共通しています。

会社が手続きをしてくれるため、被保険者が特別な手続きをする必要はありません。また、介護保険料は会社と折半して支払うことになります。

自営業

自営業の人も、「健康保険料と一緒に介護保険料を納める」という基本の考え方は一緒です。しかし、給与から天引きされるシステムではないため、自分で保険料を納付する必要があります

会社員とは違い、自営業の人は全額自己負担で介護保険料を納付しなければいけません。納付額は、毎年6月ごろに送付される国民健康保険料の納付案内で確認できます。

介護保険料を支払わないリスク

介護保険は、強制加入の保険です。そのため、支払わない場合は相応のリスクが生じることになります。

ここでは、介護保険料を支払わないときの3つのリスクを紹介します。

延滞料が発生する

介護保険料を滞納すると、延滞料が発生します。

介護保険料を納付しないと、納付期限の20日以内に督促状が郵送されてきます。納付期限の翌月以降は、納付にかかった日数に応じて延滞料が加算されるため注意が必要です。

なお、延滞料の計算方法は自治体によって異なります。

介護保険サービスの利用が制限される

滞納期間が1年を超えると、介護保険サービスの利用が制限されるようになります。

関連記事:介護保険サービスとは?サービスの種類・料金・利用の流れを解説

滞納期間が1年以上の場合

滞納期間が1年以上の場合、介護保険サービスの利用方法が変わります。

介護保険を利用するとき、通常は利用したサービス費用の1~3割のみの負担で済みます。しかし、滞納をしている場合は一旦全額を負担し、滞納分の保険料を納付することで、支払った料金の7~9割の返還を受ける必要が出てくるのです。

返還時は市区町村の窓口に領収書を提出しないといけないので、通常より余計な手続きの手間がかかることになります。

滞納期間が1年6か月以上の場合

滞納期間が1年6か月以上の場合は、介護保険の給付が一時ストップとなります。被保険者は介護保険サービス費用の全額を支払い、給付がストップされた介護保険給付額は、滞納している介護保険料に充当されることになります。

この場合、たとえ申請をしたとしても、支払った介護保険サービス費用の7~9割は戻ってきません。

滞納期間が2年以上の場合

滞納期間が2年以上の場合、介護保険サービス費用の自己負担金額が引き上げられます。自己負担割合が1割と2割の人は3割に、3割の人は4割になります。

また、高額介護サービス費の支給が受けられなくなるため、自己負担額が一定額を超えたときも払い戻しを受けることはできません。さらに、この期間中は高額医療合算介護(予防)サービス費の対象とならないため注意が必要です。

関連記事:介護保険の負担割合とは?介護サービスごとの自己負担額を解説

財産を差し押さえられる

介護保険を滞納していると、最悪の場合、保険料を徴収するために財産が差し押さえられることもあります。厚生労働省の発表によると、令和3年度に介護保険滞納による差し押さえが決定された人数は、21,624人にも上ることがわかりました。

差し押さえと聞くと現実味がないように思われるかもしれませんが、実際に財産を差し押さえられている人は多く存在しています。

出典:厚生労働省「令和3年度介護保険事務調査の集計結果について

介護保険料をいつまで支払うのか正しく把握しよう

介護保険料は、満40歳以上になると支払義務が生じ、生涯支払い続ける必要がある費用です。支払い方法やいくら支払うのかについては、被保険者の状況や年収によって異なるため、制度を正しく理解しておくことが大切です。

また、介護保険料を滞納すると、介護保険の給付を受けられなくなったり財産差し押さえになったりするリスクが高くなります。介護が必要になったときに困ることがないよう、介護保険料はしっかりと納付しましょう。

監修者

花尾 奏一(はなお そういち)

保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

有料老人ホームにて介護主任を10年 
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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