ケアハウスのメリット・デメリットとおさえておきたい入居の流れ

「ケアハウスが気になるけどデメリットはないの?」「知っておくべきことがあったら教えてほしい」などと考えていませんか。
入居後の心配をしている方は多いでしょう。ケアハウスは、所得が低い方でも利用しやすい住まいです。ただし、施設の特徴を理解しておかないと、思わぬタイミングで退去を迫られる恐れがあります。
ここでは、ケアハウスの概要を解説するとともにメリット・デメリット、入居の流れなどを紹介しています。以下の情報を参考にすれば、目的に合っている施設かどうかがわかるはずです。利用を検討している方は確認しておきましょう。
ケアハウスとは
ケアハウスは、老人福祉施設に分類される軽費老人ホームのひとつです。軽費老人ホームは次のように定められています。
軽費老人ホームは、無料又は低額な料金で、身体機能の低下等により自立した日常生活を営むことについて不安があると認められる者であって、家族による援助を受けることが困難なものを入所させ、食事の提供、入浴等の準備、相談及び援助、社会生活上の便宜の供与その他の日常生活上必要な便宜を提供することにより、入所者が安心して生き生きと明るく生活できるようにすることを目指すものでなければならない。
引用元:e-GOV法令検索「平成二十年厚生労働省令第百七号 軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準」
原則として、60歳以上(60歳以上の配偶者と一緒に利用する場合は60歳未満でも可)で自立した生活を送ることに不安がある方を対象とします。
軽費老人ホームは以下の種類に分かれます。
類型 | 概要 |
A型 | 高齢などのため独立した生活に不安を感じている方で、家族から援助を受けられない方を入所させて、食事の提供・入浴の準備・相談援助などを提供 |
B型 | 要件はA型と同じで、自炊ができる方を入所させて、入浴の準備・相談援助などを提供 |
ケアハウス(C型) | 身体機能の低下などで自立した生活を送ることに不安を感じる方で、家族から援助を受けられない方を入所させて、食事の提供・入浴の準備・相談援助などを提供 |
都市型 | 既成市街地などに設置(原則)され、入所定員20人以下で、都道府県知事が指定した施設 |
B型のみ自炊が原則です。介護サービスを提供しているのは一部のケアハウスのみとなっています(その他の施設も外部の介護サービスは利用可)。A型とB型は新設が認められていません。現在は、ほとんどの軽費老人ホームがケアハウス(C型)に分類されます。
ケアハウスは、特徴により一般型(自立型)と介護型に分かれます。
一般型(自立型)
身体機能の低下などにより自立した生活を送ることに不安を感じる60歳以上(配偶者が60歳以上の場合は60歳未満でも可)方で、家族から援助を受けられない方が対象です(要支援認定・要介護認定を受けた高齢者を含む)。
無料または低額な料金で、食事の提供・入浴などの準備・相談援助など、社会生活上、日常生活上の便宜を供与・提供します(具体的なサービス内容は施設により異なることがあります)。
ただし、介護サービスは提供しません。介護保険法上、居宅として扱われるため、介護サービスを必要とする場合は、外部の事業者と個別に契約して訪問介護、デイサービスなどを利用することになります。
介護型
原則として、65歳以上で要介護度1以上の方、つまり包括的な介護サービスを必要とする方が対象であり、特定施設入居者生活介護の指定を受けている点が特徴です。特定施設入居者生活介護は、介護保険制度における居宅サービスのひとつです。
具体的には、特定施設(ここではケアハウス)に入居している方を対象に提供される食事・入浴・排泄などの介護、療養上の世話、機能訓練などを指します。つまり、介護型では施設が介護サービスを提供できます(施設の職員が作成した計画に基づき外部の事業者がサービスを提供することもあります)。
したがって、入居時よりも介護を必要とする度合いが高まっても、住み慣れた環境で生活を続けることが可能です。
ケアハウスと他の老人向け施設との違い
ここからは、ケアハウスと有料老人ホーム、グループホームの違いを解説します。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、高齢者を入居させて次のサービスのいずれかを提供する老人福祉施設など以外の施設です。 【サービス】
- 食事の提供
- 介護の提供
- 洗濯・掃除などの家事の提供
- 健康管理
有料老人ホームの類型と入居要件は次の通りです。
類型 | 入居要件 | 主なサービス |
介護付き有料老人ホーム | 65歳以上・自立~要介護5 | 介護サービス |
住宅型有料老人ホーム | 60歳以上・自立~要介護5 | 生活支援サービス |
健康型有料老人ホーム | 60歳以上・自立~要支援程度まで | 食事などのサービス |
基本的には、在宅での生活に何かしらの不安を感じている高齢者を対象とします。サービス内容は類型や施設で異なりますが、ケアハウスに比べレクレーションやイベントは充実している傾向があります。また、費用面にも大きな違いがあります。初期費用と月額費用の目安は次の通りです。
施設の種別 | ケアハウス | 有料老人ホーム |
初期費用 | 0~30万円 | 0~数億円 |
月額費用 | 6~20万円程度 | 10~30万円程度 |
サービスは充実していますが、ケアハウスよりも費用は高くなりやすいといえるでしょう。
関連記事:有料老人ホーム10種類の特徴や費用を一覧解説!違いや選び方とは
グループホーム
認知症の方が家庭的な環境のもと入浴・排泄・食事などの介護と機能訓練を受けて、能力に応じた自立した生活を送る共同生活住居です(認知症対応型共同生活介護)。認知症の診断を受けた要支援2・要介護1以上の方が対象になり関連支援2の方は介護予防認知症対応型共同生活介護の対象)。
特徴は5~9人の入居者とスタッフでなじみの関係をつくり穏やかに過ごせるようにすることとスタッフのサポートを受けながら入居者ができる役割を担って持てる能力を維持・向上するように努めることです。
ケアハウスとは、目的や役割が異なる施設といえるでしょう。費用面にも多少の違いがあります。初期費用と月額費用の目安は次の通りです。
施設の種別 | ケアハウス | グループホーム |
初期費用 | 0~30万円 | 0~数百万円 |
月額費用 | 6~20万円程度 | 12~18万円程度 |
対象者の違いをおさえておくことが重要です。
関連記事:障害者グループホームとは?種類や費用相場・入居の流れについて
ケアハウスのメリット
主なメリットとして以下の点があげられます。
メリット①比較的費用を安く抑えられる
ケアハウスは老人福祉法第20条の6で以下のように定義されています。
軽費老人ホームは、無料又は低額な料金で、老人を入所させ、食事の提供その他日常生活上必要な便宜を供与することを目的とする施設(第二十条の二の二から前条までに定める施設を除く。)とする。
引用:e-GOV法令検索「昭和三十八年法律第百三十三号 老人福祉法」
したがって、費用は安く抑えられています。具体的な費用はケースで異なりますが、おおよその目安は次の通りです。
類型 | 利用者負担額 |
ケアハウス(一般型) | 6万円~12万円程度 |
ケアハウス(介護型) | 6万円~20万円程度 |
介護型は費用に介護保険サービス費を含むため、利用者負担額は施設や要介護度で異なります。月々の費用を抑えたい方にとっては、メリットの大きな施設といえるでしょう。
メリット②介護度が上がっても入居し続けられる
介護型は、包括的な介護サービスを必要とする低所得高齢者に向けた住まいです。該当する施設は特定施設入居者生活介護の指定を受けているため介護サービスを提供できます。
具体的には、入居者の課題や問題点を踏まえた計画を立案して、これに基づく入浴・排泄・食事などの介護、療養上の世話、機能訓練などを提供します。したがって、要介護度が高くなっても入居を継続できます。
看取りに対応している施設がある点も見逃せません。生活環境を変えたくない方にとっては、メリットのある選択肢といえるでしょう。
メリット③プライバシーが確保されている
軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準で、居室の定員について次のように定められています。
居室の定員は、一人とすること。ただし、入所者へのサービスの提供上必要と認められる場合は、二人とすることができる。
引用:e-GOV法令検索「平成二十年厚生労働省令第百七号 軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準」
居室は原則として個室となっているため、プライバシーを確保しやすいと考えられます。夫婦で入居する場合は、基本的に2人部屋が提供されます。
ちなみに、居室の床面積は21.6㎡以上(2人の場合は31.9㎡以上)です。畳数に換算すると13.33畳以上(2人の場合は19.69畳以上)になります。十分な広さを確保できる点も魅力です。
メリット④レクリエーションが豊富に用意されている
クラブ・サークル活動やレクレーション、イベントなどが行われる点もケアハウスの特徴といえます。参加すれば他の入居者と交流を図れるため、1人で暮らしいても寂しさを感じにくいといえるでしょう。
また、身体を動かしたり頭を使ったりするため、身体機能や認知機能の維持・向上に役立つ可能性もあります。具体的な内容はケースで異なりますが、体操、将棋、ゲームなど、さまざまな取り組みが行われています。もちろん、参加を強制されることはありません。
ケアハウスのデメリット
入居前に理解しておきたいデメリットは次の通りです。
デメリット①共同生活に馴染めない場合がある
個室で生活できるうえ、生活の自由度も高いといわれるケアハウスですが、利用する方の価値観や性格などによっては共同生活に馴染めないことがあります。例えば「会話が合わないため他の入居者と顔を合わせたくない」、「気ままに生活したいためレクレーションに参加することが面倒」などが考えられます。
過去に行われた調査によると、軽費老人ホームの入居者の平均年齢は84.0歳(男性81.6歳・女性85.0歳)です。[2]調査により若干の差はありますが、平均年齢は80歳前後と考えてよいでしょう。入居する方の年齢が若いと、戸惑うことがあるかもしれません。
デメリット②退去させられる場合もある
同じケアハウスであっても、一般型と介護型では特徴が異なります。一般型は低所得高齢者のための住まい、介護型は要介護認定を受けた低所得高齢者のための住まいと位置づけられています。
介護サービスを提供していない一般型(外部サービスの利用は可能)は、入居してから要介護度が高くなると退去を求められることがあります。このようなケースでは、新たに入居する施設を探さなければなりません。入居の目的に合わせて、利用する類型を選択することが大切です。また、入居前に退去要件を確認しておくことも欠かせません。
デメリット③入居までに時間を要する
申し込み後、すぐに入居できないケースが多い点にも注意が必要です。具体的な待機期間はケースで異なりますが、申し込みから入居まで1年以上かかることもあります。できるだけ早く入居したいなどの希望がある場合は、複数の施設で相談してみるとよいかもしれません。あるいは、比較的安価とされるサービス付き高齢者向け住宅などを候補に加えるとよいでしょう。
ケアハウスのサービス詳細
一般型と介護型で受けられるサービスは異なります。一般型の基本的なサービスは以下の通りです。
【サービス】
- 食事の提供
- 入浴の準備
- 掃除・洗濯をはじめとする生活支援
- 相談および援助
- 緊急対応
日常生活に関連する幅広いサービスを受けられるといえるでしょう。また、生活上の困りごとを相談することもできます。職員による見守りや緊急時の対応を受けられる点もポイントです。自立した生活に不安を感じていた高齢者が安心して暮らせるように配慮されています。
ただし、介護サービスは提供していません。介護が必要になった場合は、外部サービスの利用を求められます。
介護型は、一般型のサービスに加え特定施設入居者生活介護を提供できます。主なサービスは以下の通りです。
【サービス】
- 食事・排泄・入浴など日常生活における介護
- 療養上の世話
- リハビリテーションをはじめとする機能訓練
以上に加え、医療的ケアを受けられる施設もあります。介護サービスを提供できるため、要介護度が高くなっても生活を継続できる点が魅力です。ただし、具体的な対応状況は施設で異なります。詳細については入居前に確認が必要です。
ケアハウスへの入居条件
入居条件も一般型と介護型で異なります。それぞれの入居条件は次の通りです。
一般型の場合
以下の条件などを満たす方を対象とします。
【条件】
- 身体機能の低下などで自立した日常生活を送ることに不安がある
- 家族による援助を受けることが難しい
- 60歳以上(夫婦で入居する場合はどちらかが60歳以上)
要支援・要介護認定を受けていない方でも上記の条件に当てはまれば入居できます(要支援・要介護認定を受けている方も入居可)。また、所得制限はありません。
介護型の場合
介護型の基本的な入居条件は次の通りです。
【条件】
- 身体機能の低下などで自立した日常生活を送ることに不安がある
- 家族による援助を受けることが難しい
- 65歳以上
- 要介護度1以上
一般型よりも条件は厳しいですが、介護を必要とする高齢者を対象とするため、入居後に要介護度が高くなった場合も施設での生活を継続できます。介護型も所得制限はありません。
ケアハウスへの入居費用
入居でかかる主な費用は以下の通りです。
入居時費用
支払い方式は、住居費の全部または一部を前払いする「前払い方式」と居住費を毎月支払う「月払い方式」に分かれます。
前払い方式は入居金がかかります。おおよその目安は数十万円(数百万円かかることもあります)です。月払い方式は入居金がかかりません。代わりに、敷金(または保証金)がかかります。
敷金は、住居費を支払えないときや退去時の原状回復に備えて施設に預けておくお金です。おおよその目安は0~30万円程度といえるでしょう。原状回復などが不要の場合は退去時に返還されます。
関連記事:老人ホームの入居にかかる費用は?相場と安く抑えるポイント
月額費用
居住費・生活費・サービス提供費・介護サービス提供費などで構成される月額費用もかかります。一般型の目安は6~12万円です。介護型はケースで異なります。
居住費
居住費(居住に要する費用)は家賃と管理費で構成されます。入居金を支払っている場合、居住費はここから支払われます。早期に退去した場合、入居金の返却を受けられますが、その金額は償却率、償却期間で変動します。事前に確認しておくことが大切です。
生活費
生活費は食材料費と共用部の光熱水費で構成されます。基本的には、食事にかかる費用がメインになると考えればよいでしょう。詳細については施設で確認が必要です。
サービス提供費
入居者の所得の状況、その他の事情を勘案して、徴収するべき費用として都道府県知事が定めた額をサービス提供費(サービスの提供に要する費用)として徴収されます。「入居者の所得の状況を勘案」と記載されていることからわかる通り、入居者の前年の所得により徴収額が変動します。所得に応じて徴収額が高くなる点がポイントです。徴収額の例を抜粋して紹介します。[2]
【徴収額】
- 対象収入150万円以下:1万円(月額)
- 対象収入200万1円以上210万円以下:3万円(月額)
- 対象収入250万1円以上260万円以下:5万7,000円
- 対象収入300万円1円以上310万円以下:9万3,000円
- 対象収入330万1円以上340万円以下:11万7,000円
- 対象収入340万1円以上:全額
自治体によっては、寒冷地加算などが含まれる点にも注意が必要です。
介護サービス提供費
介護型は介護サービス提供費もかかります。この費用は、介護保険サービスの本人負担分です。負担額は利用する介護サービスと自己負担割合で異なります。自己負担割合は、所得に応じて1~3割となっています(原則1割)。また、一般型も外部事業者の介護サービスを受ける場合は別途この費用が発生します。
入居手続きの流れ
ここからは入居の流れを紹介します。
①資料請求
入居手続きを進めたい施設を探します。インターネット検索のほか、自治体や地域包括支援センターの窓口で情報を集められます。入居を検討したい施設が見つかったら、公式サイトや電話で資料を請求しましょう。
②入居申し込み
入居したい施設が決まったら、利用申込書に必要事項を記入して提出します。施設選びで悩むときは見学や体験入居をするとよいかもしれません。実際の雰囲気を確認すると候補を絞り込みやすくなります。
③訪問・面談
申し込み手続き後に、施設の職員と面談を実施します。面談場所は、施設または申込人宅が基本です。来訪になることもあれば訪問になることもあります。面談では、入居者の心身の状況や入居の意思などを確認します。難しい内容は聞かれないため構える必要はありません。
④必要書類の提出
必要書類を提出して入居に関する契約を締結します。提出を求められる主な書類は次の通りです。
【書類】
- 所得証明書
- 健康診断書
- 住民票
ここまでの情報と必要書類をもとに入居審査が行われます(面談・必要書類の提出・審査の順番は前後することがあります)。
⑤入居
審査に通れば入居となります。ただし、必ずしも空き室があるわけではありません。空き室がない場合は待機期間が発生します。長期に及ぶこともあるため、事前に確認しておくことが重要です。
ケアハウスのメリット・デメリットを理解してから選択
ここでは、ケアハウスについて解説しました。費用を抑えやすいなどのメリットがある一方で、入居まで時間を要することがある、要介護度が高くなると退去を求められることがあるなどのデメリットも存在します。
介護型であれば、要介護度が高くなってからも入居を続けられます。特徴を理解して、入居の目的に合っている施設を選ぶことが大切です。入居の検討を進めたい方は、専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
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監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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