パーキンソン病症状はどう進む?最も特徴的な運動合併症の進行の流れを解説

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パーキンソン病症状はどう進む?最も特徴的な運動合併症の進行の流れを解説

パーキンソン病は、その進行速度が個人差が大きい神経疾患です。残念ながら、重症化するにつれて日常生活動作が困難となり、寝たきりになるケースもございます。 「病気がどのように進んでいくのか」「どんな症状が出現するのか」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。 本記事では、パーキンソン病の病状進行過程を段階的に解説し、特に注意すべき運動合併症について詳しくご説明します。 これを読まれることで、ご自身の状態をより深く理解し、今後の生活に役立てていただければ幸いです。

パーキンソン病はドパミン神経の減少が引き起こす運動障害

パーキンソン病は、中枢神経系の変性疾患の一つです。脳内の黒質に存在するドパミン神経細胞が選択的に脱落することで、ドパミン神経伝達物質が不足し、運動機能障害をきたします。 初期症状としては、安静時の振戦、筋固縮、動作緩慢などが挙げられます。病気が進行すると、歩行障害、姿勢不安定性、自律神経症状などが加わり、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。 発症原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因と環境要因の複合的な作用が考えられています。また、年齢とともに発症リスクが高まることも知られています。 パーキンソン病は進行性の疾患ですが、薬物療法や外科手術など、様々な治療法が開発されており、症状の改善や生活の質の向上を目指した治療が行われています。

パーキンソン病の進行と治療:それぞれの段階でできること

パーキンソン病は、人によって症状の進み方が少しずつ違います。一般的には、初期の「ハネムーン期」と呼ばれる時期と、症状が進んでいく「進行期」に分けられます。

初期(ハネムーン期)

病気の初期には、薬がよく効き、日常生活に大きな支障が出ないことが多いです。この期間は、まるで「新婚旅行」のように穏やかに過ごせることから「ハネムーン期」と呼ばれています。

初期の治療

様子を見る まずは、薬を使わずに様子を見ることもあります。
薬を始める 薬を始める場合は、L-ドパという薬が一般的です。この薬は、脳の不足している物質を補う働きがあり、症状を改善する効果が期待できます。
他の薬 L-ドパの副作用が気になる場合は、他の種類の薬(ドパミンアゴニスト、MAO-B阻害剤など)を選ぶこともあります。

進行期

時間が経つと、薬の効果がだんだん弱くなってきます。薬を飲んでもすぐに効果が出なかったり、効果が持続しなかったりすることがあります。 薬の効果が弱まるにつれて、体が思うように動かなくなる「運動合併症」が現れることがあります。

進行期の治療

薬の工夫 薬の種類や飲み方を変えたり、薬の量を調整したりします。
貼り薬や注射 薬を飲み込むのが難しい場合は、貼り薬や注射を使うこともあります。
デバイス治療 最近では、体の奥に小さな装置を埋め込む「デバイス治療」という方法もあります。

パーキンソン病の症状について

パーキンソン病になると、様々な症状が現れます。大きく分けると、体の動きに直接関わる「運動症状」と、それ以外の「非運動症状」があります。ここでは、代表的な運動症状について解説します。

運動症状

無動

無動とは、体が思うように動かせなくなる症状です。具体的には下記のような症状が起こります。

動作の遅延 何かをする際に、動作が遅れてしまいます。
動作の小ささ 動作の幅が狭くなり、ぎこちない印象を与えます。
表情の乏しさ 顔の筋肉が動きにくくなり、表情が乏しくなります。
書字の困難 字が小さくなったり、書きにくくなったりします。
発声の変化 声が小さくなったり、聞き取りにくくなったりします。

振戦

振戦とは、手足などが震える症状です。特に、何もしていない時に震えが顕著に見られます。この震えは、何か作業をしていると一時的に止まる特徴があります。パーキンソン病の患者さんの半数以上に見られる代表的な症状です。

固縮

固縮とは、筋肉が硬くなり、体がこわばる症状です。このため、スムーズな動きが妨げられます。症状が徐々に進行するため、本人が気づきにくい場合もあります。

姿勢反射障害

姿勢反射障害は、バランスを保つ機能が低下し、転びやすくなる症状です。具体的には下記のような症状が起こります。

後方への押しに反応できない 後ろから押された時に、自然に足が出ずにバランスを崩しやすいです。
歩行の開始・停止の困難 一度歩き出すと止まれない、または、立ち止まる時にふらつくことがあります。
姿勢の異常 猫背になったり、前かがみになったりすることがあります。

非運動症状

パーキンソン病では、体の動きだけでなく、心の状態や体の機能にも様々な影響が出ることがあります。これらの症状を「非運動症状」と呼びます。運動症状よりも先に現れることが多く、生活に大きな影響を与えることがあります。

脂漏性顔貌

顔が脂っぽくなる症状です。自律神経のバランスが崩れることで、皮脂の分泌が増えてしまうことが原因と考えられています。

嚥下障害

飲み込むことが難しくなる症状です。食べ物が食道にうまく送られず、むせる、食べこぼすといったことが起こることがあります。誤嚥性肺炎につながる可能性もあるため、注意が必要です。

起立性低血圧

急に立ち上がった時などに、血圧が低下してふらついたり、めまいがする症状です。自律神経のバランスが崩れることで、心臓から送り出される血液量が一時的に減少することが原因です。

便秘

腸の動きが遅くなり、便が出にくくなる症状です。自律神経の異常や、薬の副作用などが原因として考えられています。

排尿障害

おしっこが出にくい、頻繁におしっこに行きたくなる、おねしょをしてしまうなど、排尿に関する様々なトラブルが起こることがあります。膀胱の機能低下や、神経の異常が原因として考えられています。

パーキンソン病の運動合併症

パーキンソン病が進行すると、薬の効果が一定に保てなくなり、様々な運動のトラブルが起こることがあります。これを「運動合併症」と呼びます。代表的なものに、「ウェアリングオフ現象」と「ジスキネジア」があります。

ウェアリングオフ現象

薬の効果が切れてしまい、再び症状が現れることを「ウェアリングオフ現象」といいます。

症状 手足の震え、動作の遅延、表情が乏しくなる、意欲が低下するなど、パーキンソン病の初期症状が再び現れます。
原因 病気の進行により、脳内のドパミンが不足しやすくなるためです。
特徴 薬を飲んだ後、数時間すると症状が現れ、再び薬を飲むと症状が改善するのを繰り返します。

ジスキネジア

薬の効果が強すぎて、体が勝手に動いてしまうことを「ジスキネジア」といいます。

症状 手足がねじれたり、体がくねくねと動いたり、顔面がゆがんだりします。
原因 薬の量が多すぎることで、脳内のドパミンが過剰になってしまうためです。
特徴 ウェアリングオフ現象を改善するために薬を増やした結果、起こることが多いです。

進行の流れを把握して症状や段階に応じた対応が重要

パーキンソン病は進行性の病気ですが、適切な治療とリハビリを行うことで、症状の進行を遅らせ、QOL(生活の質)を維持することができます。 このコラムでは、パーキンソン病の主な症状や、進行に伴って現れる運動合併症について解説しました。これらの情報を参考に、ご自身の状況を医師に相談し、自分に合った治療法を見つけていきましょう。 パーキンソン病の患者会やサポートグループに参加するのも、情報交換や悩みを共有する上で有効な手段です。一人で悩まず、周りの人に相談することも大切です。

監修者

花尾 奏一(はなお そういち)

保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

有料老人ホームにて介護主任を10年 
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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