パーキンソン病はなぜリハビリ療法をするの?代表的な症状とリハビリのポイントを解説
お役立ちコラム


パーキンソン病の治療において、薬物療法と並んで重要な役割を担うのがリハビリテーションです。薬物療法単独では、運動機能の低下や二次的な合併症のリスクを完全に回避することは困難です。リハビリテーションは、運動機能の維持・改善、生活の質向上を目的とし、薬物療法の効果を最大限に引き出すことを目指します。 本記事では、パーキンソン病の病態、代表的な症状、そしてリハビリテーションの種類について解説します。「リハビリテーションで何をすれば良いのか?」といった疑問をお持ちの方に向けて、具体的な内容を分かりやすくご紹介します。
パーキンソン病はなぜ起こるの?
パーキンソン病は、私たちの体をスムーズに動かすために必要な「ドーパミン」という物質が、脳で作られにくくなる病気です。ドーパミンを作る細胞が壊れてしまうことで、体が思うように動かなくなったり、震えたりするなどの症状が出てきます。 どうしてドーパミンを作る細胞が壊れてしまうのか、その理由はまだよくわかっていません。ただ、ある種類のたんぱく質が細胞の中にたまってしまうことが、細胞を壊してしまう原因の一つと考えられています。
パーキンソン病の主な症状
パーキンソン病の症状は、大きく運動症状と非運動症状に分かれます。特徴的な運動症状は以下の4つです。
安静時振戦
リラックスしているときにふるえが生じます。特徴は、左右に差が現れやすいことと動作を開始すると治まったり軽くなったりすることです。
動作緩慢
動きが遅くなります。歩くスピードが遅くなる、表情が乏しくなる、声が小さくなる、言葉に抑揚がなくなるなどの症状が現れます。
筋強剛
筋肉がこわばって固くなります。スムーズな動作を行いにくくなります。他人が本人の関節を伸ばしたり曲げたりすると、歯車が噛み合うようなガクガクした抵抗を感じます。
姿勢反射障害
体勢を崩したときに反射的に姿勢を保とうとする機能が障害されます。したがって、立ったり歩いたりするときなどに転倒しやすくなります。
初期に見られる症状は安静時振戦です。動作緩慢と筋強剛がこれに続きます。姿勢反射障害は、発症して数年経過してから現れます。 次に、主な非運動症状は次のとおりです。
精神症状
抑うつ、幻覚、妄想、認知機能障害など
自律神経障害
便秘、排尿障害、起立性低血圧、性機能障害など
睡眠障害
不眠、中途覚醒、レム睡眠行動異常など
感覚障害
嗅覚障害、痛み、しびれなど
その他の症状
よだれ、疲れやすいなど
嗅覚障害や便秘などの非運動症状は、運動症状より前に現れることが分かっています。
パーキンソン病の代表的な症状
運動症状と非運動症状とは?
パーキンソン病は、脳の病気で、体が思うように動かなくなったり、気持ちが落ち込んだりといった様々な症状が現れる病気です。この病気の症状は、大きく分けて体の動きに関する症状である「運動症状」と、体の動き以外の症状である「非運動症状」の2つに分けられます。
体の動きに関する症状「運動症状」
安静時振戦 | 随意運動を伴わない状態で出現するリズムカルな振戦で、四肢遠位部や顔面、声帯などにみられます。 |
運動緩慢 | 動作開始、動作遂行、動作切り替えの遅延、運動量の減少などがみられます。 |
筋強剛 | 筋肉の緊張が増大し、受動的な関節運動に対して「歯車様抵抗」が生じます。 |
姿勢反射障害 | 姿勢制御が困難となり、転倒を繰り返すことがあります。 |
これらの運動症状は、病期によって出現する症状やその程度が異なります。
体の動き以外の症状「非運動症状」
運動症状に加え、パーキンソン病患者は様々な非運動症状を伴うことがあります。 これらの非運動症状は、運動症状に先立って出現することが多く、QOLの低下に大きく関与すると考えられています。
精神症状 | うつ病、不安障害、認知機能障害、幻覚、妄想など |
自律神経症状 | 便秘、排尿障害、起立性低血圧、性機能障害など |
睡眠障害 | 不眠、レム睡眠行動異常症など |
感覚異常 | 嗅覚障害、疼痛、異感覚など |
パーキンソン病のリハビリテーションの種類
パーキンソン病の治療は、基本的に薬物療法と運動療法(リハビリテーション)を組み合わせて行います。効果的なリハビリのポイントは、運動時の負荷やきつさを調整することと継続して取り組むことです。ここでは、リハビリの種類を紹介します。
リハビリの種類①可動域を広げるための体操
パーキンソン病では、動作が遅くなったりバランスを取りにくくなったりするため、体を動かすことに消極的になっていきます。 しかし、体を動かさないと筋力が低下して関節が固くなってしまい、転倒のリスクがさらに高まります。リハビリに取り組んで、筋力を維持したり体の柔軟性を高めたりすることが大切です。次は、毎日の生活に取り入れたいリハビリを紹介します。
その場でできるリハビリ
病気の進行に伴い、表情が乏しくなることがあります。また、モノを飲み込む力が衰えていきます。これらを予防するため、口や舌のリハビリを行うことが大切です。
口もとのリハビリの手順
- 口を大きく空ける
- 口を閉じる
- 1~2を5回繰り返す
- 口をすぼめる
- 口角を引き上げて笑顔をつくる
- 4~5を5回繰り返す
ポイントは、やや大げさに口を動かすことです。
舌のリハビリの手順
- 舌を前に突き出す
- 舌を引っ込める
- 舌を突き出す
- 舌を左右に動かす
- 舌を上下に動かす
舌を大きく動かすように意識します。
座って行うリハビリ
座ったまま行えるリハビリを紹介します。
座って行うリハビリの手順
- 椅子に深く座る
- 頭の後ろで両手を組む
- 2の状態を維持したまま上半身を前に倒す
- 1の状態に戻る
- 体を左右に回転させる
体のバランスを保ちにくい場合は、ひじ掛けなどに手を置いてもかまいません。その場合は、手の力を使わずに、体を倒したり身体を捻ったりしましょう。
立って行うリハビリ
続いて、立って行うリハビリを紹介します。
立って行う上半身のリハビリの手順
- 肩幅程度に足を開いて立つ
- 1の状態から上半身を前に倒す
- 1の状態に戻る
- 体を左右に回転させる
呼吸を止めずに、上記の動作を行います。
リハビリの種類②アメリカ考案の「LSVT®LOUD&BIG」
LSVT®LOUD&BIG (Lee Silverman Voice Treatment®LOUD&BIG)はパーキンソン病患者のために考案されたリハビリです。LSVT®LOUDは声を大きくすること、LSVT®BIGは動きを大きくすることを目的としています。つまり、パーキンソン病の発話障害と運動障害に焦点をあてたリハビリです。 LSVT®LOUDではコミュニケーション能力の改善、LSVT®BIGでは歩行スピードの向上やバランスの改善などが期待できます。LSVT®LOUD&BIGは、認定を受けたセラピストのみが実施できます。興味がある方は、医療機関やリハビリ専門施設、パーキンソン病に対応した介護施設などで相談するとよいでしょう。
パーキンソン病のリハビリで体を動かしましょう
パーキンソン病の治療には、お薬だけでなく、リハビリもとても大切です。リハビリでは、体を動かすことで、筋肉の衰えを防ぎ、関節の動きを良くし、転倒を予防することができます。 ここでは、毎日の生活に取り入れやすいその場でできるリハビリをご紹介します。
口と舌の運動
口を大きく開けたり閉じたり、舌を色々な方向に動かしたりする運動です。これにより、表情が豊かになり、食べこぼしを防ぐことができます。 効果としては、表情が豊かになり、飲み込みがスムーズになることが期待できます。
口もとのリハビリの手順
- 口を大きく空ける
- 口を閉じる
- 1~2を5回繰り返す
- 口をすぼめる
- 口角を引き上げて笑顔をつくる
- 4~5を5回繰り返す
ポイントは、やや大げさに口を動かすことです。
座ってできるリハビリ
椅子に座って、上体を前後に倒したり、左右にひねったりする上半身の運動です。これにより、姿勢が改善し、呼吸が深くなるので、肩や背中のこわばりをほぐし、上半身のバランスを良くすることができます。
座って行う上半身のリハビリの手順
- 椅子に深く座る
- 頭の後ろで両手を組む
- 2の状態を維持したまま上半身を前に倒す
- 1の状態に戻る
- 体を左右に回転させる
体のバランスを保ちにくい場合は、ひじ掛けなどに手を置いてもかまいません。その場合は、手の力を使わずに、体を倒したり身体を捻ったりしましょう。
立ってできるリハビリ
立って、上体を前後に倒したり、左右にひねったりする全身の運動です。これにより、バランス感覚が向上し歩行が安定するので、転倒予防につながります。
立って行う上半身のリハビリの手順
- 肩幅程度に足を開いて立つ
- 1の状態から上半身を前に倒す
- 1の状態に戻る
- 体を左右に回転させる
呼吸を止めずに、上記の動作を行います。
より専門的なリハビリ「LSVT®LOUD&BIG」
パーキンソン病の方のために開発された特別なリハビリ方法です。これらのリハビリは、専門のセラピストのもとで行うことが大切です。
LSVT®LOUD | 声を大きく出す練習をすることで、コミュニケーションが円滑になります。 |
LSVT®BIG | 大きな動きをする練習をすることで、歩行がスムーズになり、バランスが安定します。 |
リハビリを続けるコツ
リハビリは、ご自身のペースで、楽しく続けることが大切です。 もし、リハビリについて何か疑問点があれば、主治医や理学療法士にご相談ください。
無理のない範囲で行う | 体に合わない運動はせず、少しずつ慣れていくことが大切です。 |
毎日続ける | 毎日少しの時間でも続けることが、効果を出すコツです。 |
楽しい気持ちで行う | 音楽をかけながら行ったり、仲間と一緒に取り組んだりするのも良いでしょう。 |
リハビリはパーキンソン病と上手に付き合うための鍵
パーキンソン病の治療には、お薬を飲むだけでなく、リハビリもとても大切です。リハビリでは、体を動かすことで、筋肉の衰えを防ぎ、関節の動きを良くし、転倒を予防することができます。 パーキンソン病は、体が思うように動かなくなる病気です。しかし、体を動かさないでいると、ますます体が硬くなり、日常生活が難しくなってしまいます。リハビリは、そんな体の変化に立ち向かい、少しでも快適な生活を送るためのサポートをしてくれるのです。 パーキンソン病と診断されても、諦める必要はありません。リハビリを通して、積極的に体を動かし、生活の質を向上させることができます。 もし、リハビリについて何か疑問点があれば、主治医や理学療法士にご相談ください。
監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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