パーキンソン病が進むとどうなる?重症度分類と治療方法をご紹介

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パーキンソン病が進むとどうなる?重症度分類と治療方法をご紹介

パーキンソン病は、神経変性疾患の一つとして、運動機能障害を主な特徴とする難治性の疾患です。本疾患は徐々に進行し、日常生活に大きな影響を与える可能性があります。しかしながら、現代の医療は、パーキンソン病の病態解明が進み、多様な治療法が開発されることで、患者のQOL(Quality of Life)向上に大きく貢献しています。 本記事では、パーキンソン病の病状進行に伴う症状の変化、重症度分類、そして各段階に適した治療法について解説します。パーキンソン病患者の方、ご家族の方、あるいは医療従事者の方々にとって、本疾患に対する理解を深める一助となれば幸いです。

パーキンソン病はなぜ体が動きにくくなるのか?

パーキンソン病は、脳の特定の神経細胞が少しずつ減っていく病気です。この神経細胞から作られる「ドーパミン」という物質が不足すると、体の動きをスムーズにコントロールすることが難しくなり、様々な症状が現れます。

パーキンソン病の主な症状

震え 手足が震えるのが特徴です。特に、何もしていない時に震えやすいという特徴があります。
動作の遅延 歩くスピードが遅くなったり、ボタンをかけたりするのが難しくなったりします。
筋肉の固さ 筋肉が硬くなり、体が動きにくくなります
バランスの悪さ 転びやすくなったり、姿勢を保つのが難しくなったりします。

これらの症状は、必ずしも左右対称に現れるとは限りません。また、運動機能だけでなく、心の状態にも影響を与えることがあります。 パーキンソン病は治る病気ではありませんが、治療によって症状をコントロールし、快適な生活を送ることができます。 薬物療法や運動療法など、様々な治療法があり、患者さんの状態に合わせて最適な治療法が選択されます。 パーキンソン病は、50代から60代で発症することが多いですが、若いうちに発症することもあります。高齢化社会の進展とともに、患者数が増加することが懸念されています。

パーキンソン病の症状は体の動きと心の変化が起こる

パーキンソン病の症状は、体の動きに現れる「運動症状」と、心の状態や感覚に現れる「非運動症状」に大きく分けられます。 ただしパーキンソン病の症状は、人によって現れる症状やその程度が異なります。すべての症状が必ず現れるわけではありません。

体が思うように動かなくなる運動症状

パーキンソン病の代表的な症状として、次の4つが挙げられます。 これらの症状は、必ずしも左右対称に現れるとは限りません。また、症状の進行とともに、日常生活に支障が出てくることがあります。

安静時振戦

パーキンソン病の振戦は、特に何もしていないときに手足などがふるえる症状です。リラックスしている時によく見られ、何か動作を始めると落ち着くことが多いです。

動作緩慢

動作緩慢は、動作の開始が遅れ、動作が遅くなることを指します。表情が乏しくなり、モノトーンな話し方になることも特徴です。歩行は、小刻みな歩みとなり、前かがみの姿勢で歩くことが多くなります。

筋強剛

筋強剛は、筋肉の緊張が亢進し、関節の動きが制限される状態です。受動運動時、歯車のような抵抗感(ギ齿様抵抗)が触知されることが特徴です。

姿勢反射障害

姿勢反射障害は、姿勢制御の障害であり、体幹のバランスを保つことが困難になる状態です。そのため、立ち上がりや歩行時にふらつきや転倒をきたしやすくなります。

精神面に様々な変化が起こる非運動症状

パーキンソン病では、運動症状だけでなく、心の状態や感覚にも様々な変化が現れることがあります。 そしてこれらの非運動症状は、運動症状に先立って現れる場合もあります。

精神症状

うつ状態、不安感、幻覚、妄想などがみられることがあります。

自律神経症状

便秘、頻尿、立ちくらみなどがみられることがあります。

睡眠障害

不眠、レム睡眠行動異常などがみられることがあります。

感覚障害

嗅覚の低下、痛みなどがみられることがあります。

その他

疲れやすい、体重が減るなどがみられることがあります。

パーキンソン病はなぜ起こるの?

パーキンソン病は、脳の特定の神経細胞が少しずつ減っていく病気です。この神経細胞から作られる「ドーパミン」という物質が不足すると、体の動きをスムーズにコントロールすることが難しくなり、様々な症状が現れます。 なぜ神経細胞が減ってしまうのか、その詳しい原因はまだ完全には解明されていません。 しかし、最近の研究では、「αシヌクレイン」というタンパク質が脳内にたまることが、パーキンソン病の発症に関わっていると考えられています。このタンパク質が神経細胞に悪影響を与え、細胞を死滅させてしまうのです。 パーキンソン病には、大きく分けて次の2つのタイプがあります。

孤発性パーキンソン病 家族にパーキンソン病の患者がいない場合に発症するタイプです。全体の90%以上を占める最も一般的なタイプです。
家族性パーキンソン病 家族にパーキンソン病の患者がいる場合に発症するタイプです。遺伝子の異常が原因と考えられています。

孤発性パーキンソン病の原因

孤発性パーキンソン病の原因は、まだ完全に解明されていません。しかし、年齢や生活習慣などの環境要因が、遺伝的な要因と組み合わさって発症すると考えられています。

年齢 高齢になるほど発症リスクが高まります。
生活習慣 喫煙、農薬への曝露、頭部への外傷などが、リスクを高める可能性が指摘されています。

家族性パーキンソン病の原因

家族性パーキンソン病は、遺伝子の異常が原因と考えられています。しかし、複数の遺伝子が関与していると考えられており、まだ解明されていない部分も多くあります。

パーキンソン病の診断ではどんな検査を受けるの?

パーキンソン病の診断は、まず、患者さんの症状について詳しくお話を伺うことから始まります。その上で、他の病気の可能性を調べるために、CTやMRIといった画像検査や血液検査を行います。これらの検査では、パーキンソン病特有の異常が見つかるわけではありませんが、他の病気が原因で症状が出ているかどうかを確認することが大切です。 その後、パーキンソン病の薬であるL-ドパを飲んでいただき、症状が改善するかどうかをみます。L-ドパは、脳の働きを良くする効果がある薬です。 これらの検査や治療の経過などを総合的に判断し、パーキンソン病と診断されます。パーキンソン病の症状は人によって様々なので、診断には時間がかかることもあります。

パーキンソン病の診断では、主に以下の検査が行われます

画像検査(CT、MRI)

脳の画像を詳しく調べることで、脳腫瘍や脳血管障害などの他の病気の可能性を調べます。

ダットスキャン

脳のドーパミン神経細胞の働きを調べる検査です。パーキンソン病では、この神経細胞が減っているため、その程度を評価することができます。

MIBGシンチグラフィー

心臓の神経の働きを調べる検査です。パーキンソン病では、この神経の働きも低下していることが多いため、診断の補助として行われることがあります。

血液検査

他の病気の可能性を調べるために、血液検査を行うこともあります。

パーキンソン病の進行度合いとは?症状の重さを測る指標

パーキンソン病は、残念ながら少しずつでも進行していく病気です。病気の進行度合いを測るために、「ホーエン・ヤール重症度分類」という指標が用いられます。

ホーエン・ヤール重症度分類とは?

この分類は、パーキンソン病の症状の重さを、0度から5度までの6段階に分けて表すものです。

0度 まだパーキンソン病の症状はありません。
1度 体の片側だけに症状が現れます。
2度 体の両側に症状が現れます。
3度 姿勢を保つのが難しくなり、転びやすくなりますが、まだ一人で歩けます。
4度 症状がかなり進み、歩くのも難しくなります。
5度 ほとんど寝たきり状態になります。

生活機能障害度も参考にされます

パーキンソン病の進行度合いを見るもう一つの指標として、「生活機能障害度」があります。これは、日常生活を送る上でどれくらいの介助が必要かという度合いを表します。

1度 日常生活はほぼ一人で送れます。
2度 日常生活の一部に介助が必要です。
3度 日常生活のほとんどに介助が必要です。

進行度合いによって変わる生活

パーキンソン病の進行度合いによって、日常生活でできることが変わってきます。例えば、3度以上になると、一人で歩くのが難しくなり、外出する際には誰かの助けが必要になることがあります。

パーキンソン病の症状に合わせて治療法を選ぶ

パーキンソン病の根本的な治療法はまだ見つかっていないため、現在の治療は、主に現れている症状を和らげ、生活の質を向上させることを目的としています。

薬と運動を組み合わせる「初期の治療」

パーキンソン病の初期の治療では、主に薬物療法と運動療法を組み合わせて行います。

薬物療法

薬の種類や量は、患者さんの症状や体質に合わせて医師が決定します。

L-ドパ製剤 脳内でドーパミンに変化し、パーキンソン病の症状を改善する効果があります。
ドーパミンアゴニスト ドーパミンの働きを直接的に強める薬です。L-ドパ製剤よりも効果が長く続くという特徴があります。

運動療法

パーキンソン病が進行すると、薬の効果が薄れてきたり、新たな症状が現れたりすることがあります。このような場合、治療法の見直しが必要になることがあります。

有酸素運動 体力を維持し、心肺機能を向上させます。
ストレッチ 関節の動きを良くし、筋肉の柔軟性を高めます。
リハビリテーション 運動機能の改善を目的としたリハビリテーションも重要です。
病気が進むと 治療法の変更も

運動合併症への対応

これらの症状に対しては、薬の種類や量を調整したり、新しい薬を追加したりするなど、様々な治療法が検討されます。

ウェアリングオフ: 薬の効果が切れて症状が急に悪化する状態。 ジスキネジア: 薬の副作用で、体が勝手に動いてしまう状態。外科療法病気が進行し、薬だけでは症状がコントロールできなくなった場合、外科療法が検討されることがあります。パーキンソン病の進行を遅らせるためにできることパーキンソン病の進行を遅らせるために、できることがあります。ここでは、体を動かすことと心の状態の2つの側面からご紹介します。体を動かす心の状態を良くするなぜ体を動かすことが大切なの?体を動かすことで、脳への血流が改善され、新しい神経細胞が生まれる可能性が高まります。また、運動によって分泌される物質が、脳の働きを活性化させる効果も期待できます。パーキンソン病の治療ではあなたに合った治療を探ることから始めましょうパーキンソン病は、進行性疾患ですが、適切な治療を受けることで、症状をコントロールし、より快適な生活を送ることができます。 パーキンソン病は、決して諦める病気ではありません。適切な治療を受けることで、症状をコントロールし、より快適な生活を送ることができます。 もし、パーキンソン病と診断された場合は、一人で悩まずに、医師や専門家にご相談ください。 パーキンソン病と診断された方も、ご家族の方も、決して一人で悩まないでください。専門家と一緒に、この病気と向き合い、より良い未来に向かって進んでいきましょう。

脳深部刺激療法(DBS) 脳に電極を埋め込み、電気刺激を与えることで症状を改善する治療法です。
経腸療法 薬を直接腸に送り込む治療法です。
大勢の運動 腕を大きく振ったり、体をねじったりするなど、大きな動きを伴う運動がおすすめです。
顔の体操 口を大きく開けたり、目を大きく見開いたりするなど、顔の筋肉を動かす運動も効果的です。
日常動作 家事や散歩など、日常生活の中で体を動かすことも大切です。
パーキンソン病向けのアプリ 多くのアプリで、パーキンソン病患者向けの体操や運動が紹介されています。
前向きな気持ち 落ち込むと、脳内のドーパミンが減ってしまう可能性があります。
やる気を持つ 積極的に運動に取り組むことで、意欲を高めることができます。
周囲のサポート 家族や友人からの励ましは、大きな力になります。

監修者

花尾 奏一(はなお そういち)

保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

有料老人ホームにて介護主任を10年 
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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