介護療養型医療施設(療養型病院)とは?2024年3月末で廃止、介護医療院との違いや費用、入居条件を解説
とは?.webp)
介護療養型医療施設は、長期的な医療ケアと療養が必要な高齢者の方々を受け入れてきた介護保険施設ですが、2024年3月末をもって原則廃止されました。この施設は、医療依存度の高い方にとって重要な役割を担っていましたが、国の施策により、より生活の場としての機能も備えた「介護医療院」への転換が進められています。この記事では、介護療養型医療施設がどのような施設であったのか、そして廃止の背景や、新たな受け皿となる介護医療院との違い、費用、入居条件について詳しく解説します。医療ケアが必要な方の今後の施設選びの参考になれば幸いです。
介護療養型医療施設(療養型病院)とは
介護療養型医療施設は、病院や診療所の一部として運営され、長期にわたる療養と医療ケアを必要とする要介護高齢者の方々を受け入れてきた介護保険施設です。一般的な病院とは異なり、長期的な入所を前提として、医療だけでなく介護サービスも提供していました。
長期療養と医療ケアに特化した介護保険施設
介護療養型医療施設は、病状が安定しているものの、引き続き医学的な管理やケアが必要な方が利用できる施設として位置づけられていました。例えば、経管栄養や喀痰吸引、インスリン注射など、日常的に医療的な処置が必要な方が主な対象でした。長期的な視点での医療管理と、生活支援を兼ね備えた施設であることが特徴です。
2024年3月末で原則廃止、新たな受け皿「介護医療院」へ
介護療養型医療施設は、2024年3月末をもって原則廃止されました。これは、高齢化の進展に伴い、医療と介護のニーズが多様化する中で、より「生活の場」としての機能を強化する必要性が高まったためです。廃止後、その受け皿として設立されたのが「介護医療院」です。介護医療院は、医療ニーズが高い方を受け入れるだけでなく、日常生活の支援や看取り機能も充実させています。
制度改正の背景と今後の動向
介護療養型医療施設の廃止と介護医療院への転換は、国が進める「地域包括ケアシステム」の構築とも深く関連しています。地域包括ケアシステムは、住み慣れた地域で医療や介護サービスを受けながら、安心して生活できる社会を目指すものです。介護療養型医療施設が持つ医療機能は維持しつつ、より地域に根差した生活支援の場としての役割を介護医療院が担うことが期待されています。
介護療養型医療施設の入居条件
介護療養型医療施設は廃止されましたが、以前は特定の条件を満たす方が入居対象でした。ここでは、どのような方が対象であったのか、その主な条件について解説します。
対象者は原則「要介護1」以上
介護療養型医療施設に入居できるのは、原則として要介護認定で「要介護1」以上の認定を受けた方でした。これは、日常生活において何らかの介護が必要と判断された方が対象であることを意味します。自立した生活を送れる方は対象外でした。
医学的管理が必要な方が優先される
要介護認定を受けていることに加え、介護療養型医療施設は、長期的な医学的管理や治療、看護、介護が必要な方が優先的に入居できる施設でした。例えば、病状が安定していても、継続的な点滴や褥瘡(じょくそう)の処置、人工呼吸器の管理など、専門的な医療ケアが必要な方々が主な対象でした。
介護療養型医療施設の費用
介護療養型医療施設は介護保険が適用される施設でしたので、費用の大部分は介護保険から給付され、利用者は自己負担分を支払っていました。ここでは、廃止前の費用の仕組みと、介護医療院など他の施設と比較する上での参考として、その目安について解説します。
費用の仕組みと月額料金の目安
介護療養型医療施設の利用費用は、介護保険の自己負担割合(1割~3割)、居室の種類、所得状況、医療処置の必要性などによって異なりました。一般的に、月額の自己負担額は数万円から十数万円程度が目安でした。
月額費用の内訳
月額費用には、以下の項目が含まれていました。
費用項目 | 説明 |
---|---|
施設サービス費 | 医療ケアや介護サービスにかかる費用で、介護保険が適用される部分です。 |
居住費 | 居室の利用にかかる費用です。 |
食費 | 食事にかかる費用です。 |
その他日常生活費 | 理美容代や特別なレクリエーション費用など、個人的な費用です。 |
入居一時金は不要
介護療養型医療施設は、特別養護老人ホームなどと同様に、入居一時金や権利金のような初期費用は原則として不要でした。月々の利用料を支払う形が一般的です。
自己負担額を軽減する制度
所得が低い方には、介護保険の自己負担額を軽減する制度が適用される場合がありました。主なものとして、以下のような制度がありました。
- 高額介護サービス費
- 1ヶ月に支払った介護サービス費の合計が、世帯の所得に応じて定められた上限額を超えた場合、超えた分が払い戻される制度です。
- 特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)
- 低所得者の方を対象に、居住費と食費の自己負担額が軽減される制度です。利用には市区町村への申請が必要です。
これらの制度は、現在の介護保険施設でも同様に適用されるものがありますので、ご自身の状況に合わせて確認することが大切です。
サービス内容と人員・設備基準
介護療養型医療施設は、長期的な医療ケアと療養を目的とした施設であったため、提供されるサービスや人員・設備基準も、その目的に沿ったものでした。
提供されるサービス
介護療養型医療施設で提供されていた主なサービスは、以下の通りです。
医療ケアと看護
日常的な健康管理に加え、以下のような医療処置やケアが提供されていました。
- 経管栄養
- 口からの食事が困難な方に対し、チューブを用いて栄養を補給する医療行為です。
- 喀痰吸引
- 呼吸が困難な方に対し、気道内の痰を取り除く医療行為です。
- 褥瘡(じょくそう)の処置
- 長時間同じ体勢でいることでできる床ずれの治療や予防を行います。
- 酸素療法
- 呼吸が困難な方に対し、酸素を供給する療法です。
- 疼痛管理
- 痛みを和らげるための処置や薬の管理を行います。
- 看取り
- 終末期の医療ケアや精神的なサポートも提供していました。
リハビリテーション
身体機能の維持・向上を目指し、理学療法士や作業療法士などによるリハビリテーションが提供されていました。
- 身体機能訓練
- 寝たきりの予防や、日常生活動作(ADL)の維持・向上を目指します。
- 生活リハビリ
- 食事や着替え、排泄など、日常生活の中でできる動作を取り入れたリハビリです。
日常生活の介護(生活支援)
医療ケアと並行して、以下のような日常生活の介護も提供されていました。
- 食事の介助
- 食事の準備や摂取のサポートを行います。
- 入浴の介助
- 身体の清潔を保つための入浴や清拭をサポートします。
- 排泄の介助
- トイレへの誘導や排泄後の処理などを行います。
- 着替えの介助
- 衣類の着脱をサポートします。
人員基準|手厚い医療・看護体制
介護療養型医療施設は、医療機関としての機能も併せ持っていたため、手厚い医療・看護体制が義務付けられていました。
医師・看護師・介護職員の配置基準
主な人員配置基準は以下の通りです。
職種 | 配置基準(入所者数に対する割合) |
---|---|
医師 | 入所者48人に対し1人以上 |
看護師 | 入所者6人に対し1人以上 |
介護職員 | 入所者6人に対し1人以上 |
※上記は一般的な基準であり、施設の状況や病棟の種類によって異なる場合があります。
設備基準|療養生活に適した環境
療養生活に適した環境が整備されていました。
- 療養室
- 個室または多床室があり、プライバシーに配慮しつつ、必要な医療設備が整えられていました。
- 診察室
- 医師による診察が行われる場所です。
- 機能訓練室
- リハビリテーションを行うための設備が整えられていました。
- 食堂
- 入所者が食事を摂るためのスペースです。
- 談話室
- 入所者が交流できる共同スペースです。
- 浴室
- 入浴介助のための設備が整えられていました。
介護療養型医療施設のメリット・デメリット
介護療養型医療施設は、医療依存度の高い方にとって重要な役割を担っていましたが、廃止された背景にはいくつかのメリットとデメリットがありました。
メリット|医療体制の充実と費用の安さ
介護療養型医療施設には、以下のようなメリットがありました。
- 充実した医療体制
- 医師や看護師が24時間常駐しているため、急な体調変化にも迅速に対応できる点が最大のメリットでした。医療依存度の高い方や、持病を抱える方にとって、安心して生活できる環境でした。
- 介護保険適用で費用が安い
- 介護保険が適用されるため、民間の有料老人ホームなどと比較して費用負担が抑えられる傾向にありました。
デメリット|廃止に伴う転換とプライバシーの問題
一方で、以下のようなデメリットも指摘されていました。
- 原則廃止に伴う転換
- 2024年3月末の原則廃止により、多くの施設が介護医療院への転換を進めました。これにより、入所者の方々は環境の変化に適応する必要が生じました。
- 生活の場としての機能が不十分な場合も
- 医療機関としての側面が強かったため、生活の場としての快適性やプライバシーの確保が十分ではない場合もありました。多床室が中心の施設も多く、個人の空間が限られることもありました。
他の介護施設との違いを比較
介護療養型医療施設は廃止され、新たな施設として介護医療院がその役割を引き継いでいますが、他の介護施設とどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、代表的な介護施設との違いを比較します。
「介護医療院」との違い
介護医療院は、介護療養型医療施設の後継施設として設立されました。
項目 | 介護療養型医療施設(廃止前) | 介護医療院 |
---|---|---|
目的 | 長期療養と医療ケアの提供 | 長期療養と医療ケアに加え、生活の場としての機能強化、看取り41 |
医療機能 | 医療機関併設で手厚い医療ケア | 医療機能を維持しつつ、生活の場としての機能も強化 |
生活環境 | 医療色が強く、生活空間の確保が課題の場合も | より生活環境に配慮し、居住性向上を目指す |
看取り機能 | 提供される場合があった | 積極的に看取り機能を提供する |
設置形態 | 病院・診療所に併設 | 単独型、病院・診療所からの転換型など |
介護医療院は、医療ニーズが高い方の受け入れに加え、日常生活の支援や看取り機能の充実を図ることで、より「生活の場」としての機能を強化しています。
「特別養護老人ホーム(特養)」との違い
特別養護老人ホーム(特養)は、原則として要介護3以上の高齢者が入居できる施設で、日常生活の介護を中心に提供します。
項目 | 介護療養型医療施設(廃止前) | 特別養護老人ホーム(特養) |
---|---|---|
主な目的 | 長期療養と医療ケア | 生活の場としての介護、看取り |
医療体制 | 手厚い医療ケア、医師・看護師常駐 | 基本的な健康管理、医療処置は外部医療機関と連携 |
入居条件 | 要介護1以上、医学的管理が必要 | 原則要介護3以上 |
費用 | 介護保険適用、入居一時金不要 | 介護保険適用、入居一時金不要 |
待機状況 | 比較的少ない | 入居希望者が多く、待機期間が長い傾向 |
特養は医療ケアよりも生活介護が中心であり、医療依存度の高い方には対応が難しい場合があります。
「介護老人保健施設(老健)」との違い
介護老人保健施設(老健)は、病状が安定し、リハビリテーションを必要とする方が、自宅復帰を目指すための施設です。
項目 | 介護療養型医療施設(廃止前) | 介護老人保健施設(老健) |
---|---|---|
主な目的 | 長期療養と医療ケア | 在宅復帰支援(リハビリテーション中心) |
入居期間 | 長期入所が可能 | 原則3ヶ月程度の短期入所 |
医療体制 | 手厚い医療ケア | 医師・看護師常駐、リハビリ専門職が手厚い |
費用 | 介護保険適用、入居一時金不要 | 介護保険適用、入居一時金不要 |
老健はあくまで一時的な滞在施設であり、長期入所を前提とした介護療養型医療施設とは目的が異なります。
「介護付き有料老人ホーム」との違い
介護付き有料老人ホームは、民間企業が運営する施設で、介護サービス付きの住まいを提供します。
項目 | 介護療養型医療施設(廃止前) | 介護付き有料老人ホーム |
---|---|---|
運営主体 | 医療機関 | 民間企業 |
主な目的 | 長期療養と医療ケア | 居住と介護サービス |
医療体制 | 手厚い医療ケア | 提携医療機関との連携が主、常駐医師は施設による |
入居条件 | 要介護1以上、医学的管理が必要 | 自立~要介護まで幅広く対応、施設による |
費用 | 介護保険適用、入居一時金不要 | 入居一時金が必要な場合が多い、月額費用も高め |
介護付き有料老人ホームは、医療体制の充実度は施設によって異なり、入居一時金が必要な場合が多い点が大きな違いです。
入居までの流れと探し方の注意点
介護療養型医療施設は廃止されたため、現在は介護医療院や他の介護施設を検討することになります。ここでは、一般的な施設を探し、入居するまでの流れと注意点について解説します。
入居までの基本的な手続き
施設入居までの一般的な流れは以下の通りです。
- 情報収集と相談
まずは、インターネットやパンフレットなどで情報を収集し、いくつかの候補施設を絞り込みます。同時に、地域包括支援センターや専門の相談窓口に相談し、ご自身の状況に合った施設の種類や条件についてアドバイスをもらうことが大切です。 - 見学
興味のある施設があれば、実際に見学に行き、施設の雰囲気や設備、提供されるサービスなどを確認します。可能であれば、入居者の方々の様子や職員の対応も見ておきましょう。 - 申し込み・契約
入居したい施設が決まったら、申し込み手続きを行い、契約を締結します。契約内容をよく確認し、不明な点は必ず質問するようにしましょう。 - 入居
契約が完了すれば、いよいよ入居となります。
主な相談窓口
介護施設の選び方や手続きで困ったときは、以下の相談窓口を利用しましょう。
相談窓口 | 概要 |
---|---|
地域包括支援センター | 高齢者の総合的な相談窓口です。介護保険サービスの利用支援や施設の情報提供を行います。 |
ケアマネジャー | ケアプランの作成や介護サービスの手配を行います。施設選びの相談にも乗ってくれます。 |
各市区町村の介護保険課 | 介護保険制度に関する情報提供や申請手続きの相談ができます。 |
民間の介護施設紹介センター | 専門の相談員が希望に合った施設を紹介してくれます。 |
廃止に伴う施設探しのポイント
介護療養型医療施設が廃止された今、特に医療ニーズの高い方が施設を探す際には、以下の点に注意することが重要です。
- 介護医療院の検討
- 介護療養型医療施設の受け皿となった介護医療院は、医療ニーズと生活の場の両方を兼ね備えています。まずは介護医療院を優先的に検討すると良いでしょう。
- 医療体制の確認
- 医療ケアが必要な場合は、検討する施設の医療体制をしっかりと確認しましょう。常駐の医師や看護師の有無、提携医療機関、緊急時の対応など、具体的に質問することが大切です。
- 看取りケアの有無
- 終末期を見据えた施設選びの場合は、看取りケアに対応しているかどうかも確認しておきましょう。
- 費用と負担軽減制度
- 月々の費用はもちろんのこと、利用できる自己負担軽減制度についても確認し、経済的な負担を考慮に入れることが重要です。
まとめ
介護療養型医療施設は、長期的な医療ケアと療養を必要とする高齢者のための施設として重要な役割を担っていましたが、2024年3月末に原則廃止されました。その役割は、より生活の場としての機能を強化した「介護医療院」に引き継がれています。
介護施設選びは、ご自身の状況や必要な医療・介護サービスによって大きく異なります。特に医療ニーズが高い方は、施設の医療体制や人員配置、提供されるサービス内容をしっかりと確認することが大切です。今回の記事が、皆さまの施設選びの一助となれば幸いです。
医療ケアが充実した施設探しは「笑がおで介護紹介センター」へご相談を
医療ケアが必要な方や、どの施設を選べば良いか迷っている方は、「笑がおで介護紹介センター」へぜひご相談ください。
専門の相談員が無料で施設探しをサポート
「笑がおで介護紹介センター」では、介護施設に関する知識が豊富な専門の相談員が、皆様の施設探しを無料でサポートさせていただきます。医療ニーズの有無に関わらず、どのような些細な疑問でもお気軽にご相談ください。
ご希望条件に合う施設をご提案します
ご本人様の健康状態やご希望、費用面など、細かな条件を丁寧にヒアリングし、関西エリア(大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山、滋賀、三重)の豊富な提携施設の中から、最適な介護施設をご提案いたします。見学の手配や入居に関するご相談も承っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
この記事の関連記事
