ALS(筋萎縮性側索硬化症)でも入居できる老人ホームとは?選び方と必要なケアを解説
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ALSでも入れる老人ホームはある?施設選びのポイントから公的支援まで解説
「ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断された家族の介護を、自宅でどこまで続けられるだろうか」「痰の吸引や人工呼吸器など、専門的なケアが必要になったら、もう施設では受け入れてもらえないのでは…」ALSという進行性の難病を前に、ご本人だけでなくご家族も、将来への大きな不安を抱えていらっしゃることでしょう。特に、24時間体制での介護が必要になる中で、老人ホームへの入居は切実な選択肢の一つです。
結論から申し上げますと、ALSのように手厚い医療的ケアが必要な方でも、受け入れ可能な老人ホームは存在します。ただし、そのためには専門的なケアを提供できる体制が整った施設を、慎重に見極めることが不可欠です。この記事では、ALSという病気の基礎知識から、受け入れ可能な施設の種類、施設選びで失敗しないための重要ポイント、そして施設で受けられる具体的なケアや公的支援制度までを網羅的に解説します。この記事を最後までお読みいただくことで、ALSと共に生きる上での不安が少しでも和らぎ、ご本人とご家族が希望を持ってこれからの生活を考え、最適な施設探しに臨むための一助となれば幸いです。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)とはどんな病気?
筋肉が徐々に動かなくなる進行性の神経難病
ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは、体を動かすための神経系である運動ニューロンが障害される病気です。脳からの「体を動かせ」という司令が筋肉に伝わらなくなることで、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉が、徐々に痩せて力が弱まっていきます。筋肉自体が悪いわけではなく、筋肉を動かす神経の病気である点が特徴です。進行性の病気であり、原因は不明で根本的な治療法は確立されていません。そのため、日本では国が定める「指定難病」の一つとされています。
ALSの初期症状と進行
ALSの症状の現れ方には個人差がありますが、多くは以下のいずれかの症状から始まります。
- 上肢型(じょうしがた)
- 手指の使いにくさや、腕の筋力低下といった症状から始まります。
- 球麻痺(きゅうまひ)型
- 話しにくさ(構音障害)や、食べ物の飲み込みにくさ(嚥下障害)といった症状から始まります。
- 下肢型(かしがた)
- 足の筋力低下により、歩きにくさやつまずきやすさといった症状で始まります。
どのタイプから始まっても、やがて症状は全身の筋肉に広がり、最終的には呼吸をするための筋肉(呼吸筋)も麻痺し、自力での呼吸が困難になります。病気の進行速度は人それぞれで、数年で急速に進行するケースもあれば、10年以上にわたりゆっくりと進行するケースもあります。
保たれることが多い機能
ALSでは全身の筋力が失われていく一方で、比較的末期まで保たれる機能があることが知られています。これはご本人とコミュニケーションをとる上で非常に重要です。
- 知能・精神機能
- 思考力や記憶力、判断力は基本的に保たれます。(一部、認知症を合併する場合もあります)
- 感覚機能
- 視力、聴力、味覚、嗅覚、触覚などの五感は正常に機能します。
- 眼球運動
- 眼球を動かす筋肉は最後まで保たれることが多く、意思伝達の手段として活用されます。
- 膀胱直腸機能
- 排尿や排便をコントロールする筋肉は、比較的末期まで機能が保たれます。
体が動かせなくなっても、意識や感覚ははっきりしているという事実を周囲が理解し、ご本人の尊厳を守る関わりを続けることが極めて大切です。
ALSと筋ジストロフィーの違い
ALSと混同されやすい病気に「筋ジストロフィー」がありますが、この二つは原因が根本的に異なります。
- ALS(筋萎縮性側索硬化症)
- 筋肉に命令を伝える「運動神経」が障害される病気です。
- 筋ジストロフィー
- 遺伝子の異常により、筋肉の細胞そのものが壊れやすくなる病気です。
原因となる場所が「神経」なのか「筋肉」なのかという点が、大きな違いです。
ALSの診断と現在の治療法
診断のために行われる主な検査
ALSの診断は、似たような症状を示す他の病気の可能性を一つひとつ否定していく「除外診断」という方法がとられます。
- 針筋電図検査
- 診断において非常に重要な検査です。筋肉に細い針を刺して電気的な活動を記録し、運動ニューロンが障害されているALSに特徴的な波形が見られるかを確認します。
- MRI検査・血液検査など
- 首の骨の異常(頸椎症)や脳腫瘍、多発性硬化症、筋炎といった他の病気の可能性を除外するために、頭部や脊髄のMRI検査、血液検査、髄液検査などが行われます。
病気の進行を遅らせる治療と症状を和らげるケア
残念ながら、現時点でALSを根本的に治す治療法は見つかっていません。しかし、病気の進行を遅らせることを目的とした薬物療法(リルゾール、エダラボンなど)は存在します。現在の治療の主体は、病気の進行に伴って現れる様々な症状を和らげる「対症療法」と、身体機能の維持を目指す「リハビリテーション」です。これらにより、患者さんのQOL(生活の質)をできるだけ長く保つことを目指します。
ALS患者を受け入れ可能な老人ホームと選び方のポイント
在宅での介護が限界に近づいたとき、施設への入居は重要な選択肢となります。ALSのように専門的な医療ケアが必要な方を受け入れられる施設は限られますが、確かに存在します。
受け入れ可能な介護施設の種類
ALS患者の受け入れ先として考えられるのは、主に以下の2種類の施設です。
- 介護付き有料老人ホーム(看護師24時間常駐)
- 最も現実的な受け入れ先となるのが、医療体制の整った「介護付き有料老人ホーム」です。特に、看護師が24時間常駐している施設であれば、夜間の痰の吸引や体位交換、緊急時の対応も可能となり、安心して生活を送ることができます。
- 難病患者向け施設
- 数は限られますが、ALSやパーキンソン病といった特定の難病の方を専門的に受け入れる施設もあります。こうした施設では、難病ケアに関する専門知識や経験豊富なスタッフが配置されており、より手厚いケアが期待できます。
施設選びで確認すべき5つの重要ポイント
ALSの患者さんが入居する施設を選ぶ際には、以下の5つのポイントを必ず確認しましょう。
- ポイント1:看護師の24時間常駐と医療的ケアの対応実績
- 最も重要なポイントです。ALSは症状が進行すると、昼夜を問わず痰の吸引などが必要になります。そのため、日中だけでなく夜間も看護師が必ず施設内にいる「24時間常駐体制」が必須条件です。また、これまでALS患者の受け入れ実績がどのくらいあるか、具体的なケアの経験について確認することも大切です。
- ポイント2:人工呼吸器や痰の吸引に対応可能か
- 病状が進行し、自発呼吸が困難になった場合に備えることが重要です。人工呼吸器を装着した状態での生活に対応できるか、頻回な痰の吸引を適切に行える体制があるかは、生命維持に直結する重要な確認事項です。
- ポイント3:リハビリテーションの体制
- ALSのケアにおいて、リハビリテーションは身体機能の維持、関節が固まる「拘縮」の予防、痛みの緩和のために不可欠です。理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)といったリハビリの専門職が配置され、ご本人の状態に合わせたプログラムを継続的に提供してくれるかを確認しましょう。
- ポイント4:コミュニケーション支援の経験
- 進行に伴い発話が困難になっても、ご本人の意思を尊重し続けるためにコミュニケーション手段の確保は極めて重要です。文字盤や透明文字盤、スイッチ、視線入力装置など、様々な意思伝達装置の活用経験が施設にあるか、スタッフがそうした支援に前向きに取り組んでくれるかは、ご本人のQOLを大きく左右します。
- ポイント5:緊急時の医療連携体制
- 急な呼吸状態の悪化や体調の急変に備え、協力医療機関との連携体制がしっかり構築されているかを確認しましょう。特に、神経内科の専門医と定期的に連携が取れる体制があると、より安心です。
老人ホームで受けられるALS患者への具体的なケア方法
専門的なケア体制の整った老人ホームでは、ALS患者に対して以下のような多岐にわたるケアが提供されます。
- リハビリテーションによる身体機能の維持
- 関節が固まるのを防ぐストレッチや、残された筋力の維持を目指す運動療法を、リハビリ専門職の指導のもとで行います。無理のない範囲で体を動かすことは、全身の血行を促進し、痛みの緩和や褥瘡(床ずれ)の予防にもつながります。
- 嚥下状態に合わせた食事のサポート
- 飲み込む力(嚥下機能)の低下に合わせて、むせや誤嚥を防ぐために、食事にとろみをつけたり、ミキサー食やソフト食といった食べやすい食事形態に調整したりします。口からの食事が難しくなった場合は、医師の判断のもと、胃ろうなどの経管栄養に移行することもあります。
- 疼痛緩和のケア
- ALSでは筋肉のつっぱりや、体を動かせないことによる圧迫などで痛みが生じることがあります。定期的な体位交換、クッション等を用いた安楽な姿勢の保持、温罨法(おんあんぽう)やマッサージなどで痛みを和らげます。必要に応じて、医師の指示のもと鎮痛薬を使用することもあります。
- 呼吸サポートと口腔ケア
- 呼吸筋の機能低下に対しては、呼吸リハビリテーションや、必要に応じた人工呼吸器の管理を行います。また、痰が絡みやすくなるため、定期的な吸引が欠かせません。口から食事をしなくなっても、誤嚥性肺炎を予防するために、口の中を清潔に保つ口腔ケアは非常に重要です。
- 意思伝達装置などを活用したコミュニケーション支援
- 体が動かせなくなり、言葉を発することができなくなっても、ご本人の意思を最大限に尊重するためのコミュニケーション支援は不可欠です。眼球運動を利用した文字盤や、センサーを用いた意思伝達装置など、ご本人の状態に合わせて最適なツールを選定し、スタッフが根気強くコミュニケーションを図ります。
ALS患者が利用できる公的な経済支援制度
ALSの療養生活には、経済的な負担も伴います。利用できる公的制度を積極的に活用しましょう。
- 特定医療費(指定難病)助成制度
- ALSは指定難病のため、この制度を利用することで医療費の自己負担分の一部が助成されます。世帯の所得に応じて自己負担上限額が定められており、それを超える医療費と介護費が助成の対象となります。申請はお住まいの市区町村や保健所で行います。
- 介護保険(特定疾病)
- ALSは介護保険制度における「特定疾病」に指定されています。そのため、40歳から64歳までの方でも、要介護認定を受けることで介護保険サービスを利用できます。訪問介護や福祉用具のレンタル(車椅子や特殊寝台など)が、所得に応じた自己負担割合(原則1割、一定以上の所得者は2割または3割)で利用可能です。
- 身体障害者手帳
- 身体の障害の程度に応じて、身体障害者手帳を取得できます。手帳を取得することで、補装具(車椅子、意思伝達装置など)や日常生活用具の購入費用の助成、税金の控除、公共料金の割引など、様々な福祉サービスを受けることができます。申請はお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で行います。
まとめ
ALSは、ご本人とご家族にとって計り知れない困難を伴う病気です。しかし、進行性の難病だからといって、施設への入居を諦める必要は決してありません。重要なのは、ALSという病気の特性を理解し、専門的な医療ケアを提供できる体制が整った施設を慎重に選ぶことです。特に、以下の3つのポイントは、施設選びにおいて極めて重要です。
- 看護師の24時間常駐体制
- 痰の吸引や人工呼吸器といった医療的ケアの実績
- 意思伝達装置などを活用したコミュニケーション支援への姿勢
在宅介護が困難になったとき、これらの条件を満たす施設は、ご本人とご家族の双方にとって心強い支えとなります。公的な支援制度も活用しながら、早い段階から情報収集を始め、納得のいく施設選びを進めていきましょう。
ALSの受け入れが可能な老人ホーム探しは「笑がおで介護紹介センター」へ
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このコラムの監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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