認知症の「弄便(ろうべん)」の原因と対策|便を壁に塗る行為への対応と介護者の負担軽減

  カテゴリー:
認知症の「弄便(ろうべん)」の原因と対策|便を壁に塗る行為への対応と介護者の負担軽減
24時間受付中!
施設探しのプロに無料で相談する
0120-177-250 無料相談

在宅介護において、ご家族が最も衝撃を受け、精神的な負担を感じる行為の一つが「弄便(ろうべん)」です。排泄物を手で触り、壁や寝具に塗りつけてしまうこの行為を目の当たりにすると、「なぜこんなことをするのか」「嫌がらせではないか」と悲しみや怒りを感じてしまうのは無理もありません。

しかし、弄便には認知症特有の原因があり、本人も決して悪気があって行っているわけではないのです。このコラムでは、弄便が発生するメカニズムや、発見した際の適切な掃除・対応方法、そして予防策について詳しく解説します。また、介護者の負担を減らすための環境づくりや専門家の頼り方についてもご紹介します。正しい知識を持つことで、介護の悩みや負担を少しでも軽減する手助けとなれば幸いです。

認知症による弄便(ろうべん)とはどのような症状か

認知症の介護において、多くのご家族が直面し、戸惑う症状の一つが「弄便」です。まずは、これが具体的にどのような行為を指すのか、そして医学的にどう位置づけられるのかを正しく理解することから始めましょう。

便を触る・こねる・壁に塗るなどの具体的な不潔行為

弄便とは、自分の排泄物を手で触ったり、こね回したりする行為のことを指します。さらに、手についた便を壁や床、寝具、自分の衣類などに塗りつけてしまうケースも少なくありません。

介護者にとっては「不潔行為」として映りますが、本人にとっては意味のある行動の結果である場合が多いです。例えば、オムツの中の不快感を取り除こうとした結果、手に便がついてしまい、それを拭き取ろうとして壁や布団になすりつけてしまうという一連の流れが、弄便として現れることがあります。

弄便は認知症の周辺症状(BPSD)の一つであり嫌がらせではない

非常にショッキングな光景であるため、介護者は「わざと困らせようとしているのではないか」「自分への当てつけではないか」と感じてしまうことがあります。しかし、これは大きな誤解です。

弄便は、認知症の中核症状(記憶障害や見当識障害など)に伴って現れる「行動・心理症状(BPSD)」の一つです。脳の機能低下により、判断力や認識力が低下した結果起こる症状であり、ご家族への悪意や嫌がらせで行っているわけではありません。まずは「病気の症状の一つである」と冷静に受け止めることが、対策の第一歩となります。

なぜ便を触ってしまうのか弄便が発生する主な原因

私たちが汚いと感じる排泄物を、なぜ手で触ってしまうのでしょうか。その背景には、身体的な不快感や認知機能の低下、心理的な不安など、複合的な要因が隠されています。

排泄後の不快感や便秘・下痢などの身体的要因

最も直接的な原因として挙げられるのが、排泄にまつわる身体的な不快感です。不快感の原因とその時の行動パターンは以下の通りです。

排泄物の付着による不快感
オムツの中に便が出たままの状態は非常に気持ちが悪いものです。その不快感を取り除こうとして手を入れた結果、便に触れてしまいます。
便秘による苦しさ
便が出そうで出ない、あるいはお腹が張って苦しい時に、無意識にお尻に手を持っていき、便を掻き出そうとすることがあります。
下痢による汚れ
下痢をしている場合、広範囲に汚れる不快感やかゆみから、手で拭おうとして弄便に至るケースがあります。

認知機能の低下により排泄行為や便自体を正しく認識できない

認知症が進行すると、「失認」と呼ばれる症状が現れることがあります。これは、目で見ているものが何であるかを正しく理解できなくなる状態です。

便を便と認識できない
自分の排泄物を見ても、それが「汚いもの」「捨てなければならないもの」と認識できず、泥団子や粘土、あるいは食べ物のように見えている場合があります。
排泄行為の失敗への対処不能
排泄をしたことはなんとなく分かっても、どう処理してよいか分からず、手で掴んで隠そうとしたり、誰かに渡そうとしたりすることがあります。

かゆみやオムツへの違和感から無意識に手を入れてしまう

肌トラブルやオムツそのものの不快感が引き金になることもあります。

高齢者の皮膚は乾燥しやすく、デリケートです。オムツの中が蒸れてかゆみが生じたり、オムツのギャザーが肌に食い込んで痛かったりすると、その違和感を解消しようとしてオムツの中に手を入れてしまいます。その際、偶然排泄物があった場合に、結果として弄便になってしまうのです。

不安や寂しさなどの心理的要因によるサイン

言葉でうまく感情を伝えられないもどかしさが、行動として現れている可能性もあります。

寂しさや構ってほしい気持ち
介護者の気を引こうとして、無意識に問題行動を起こすことがあります。過去に便を触った時に介護者が飛んできてくれた記憶が、誤った形で学習されている場合もあります。
環境への不安
部屋が暗い、寒い、あるいは孤独感などのストレスが、落ち着きのない行動(不穏)を引き起こし、手元にあるものを触る行為につながります。

弄便を発見した際の適切な対応と掃除・消臭方法

実際に弄便の現場に遭遇したとき、冷静でいることは非常に難しいものです。しかし、その場の対応次第で、その後の本人の状態や介護関係が大きく変わります。

自尊心を傷つけないよう決して叱らずに冷静な態度で接する

現場を見た瞬間、つい「何をしているの!」「汚い!」と大声を上げてしまいがちですが、叱責は逆効果です。

本人は「悪いことをした」という自覚がない場合が多く、怒られた恐怖や悲しみだけが記憶に残ります。これがストレスとなり、さらなるBPSD(周辺症状)の悪化を招く恐れがあります。「お腹が気持ち悪かったね」「きれいになろうね」と優しく声をかけ、本人の自尊心を傷つけないよう配慮しながら、淡々と対応することが重要です。

感染症を防ぐために本人の身体を洗い流し着替えを行う

弄便の対応で最優先すべきは、本人の清潔保持です。便には多くの細菌が含まれており、長時間皮膚に付着していると皮膚トラブルや感染症の原因になります。以下の手順で対応しましょう。

シャワーでの洗浄
浴室へ誘導し、手足やお尻についた便をシャワーで洗い流します。指の間や爪の中に入り込んでいることもあるため、丁寧に洗います。
清拭(せいしき)
浴室への移動が難しい場合は、温かいタオルや清拭剤を使って汚れを拭き取ります。その後、清潔な衣類に着替えさせます。

壁や床についた便の掃除手順と染み付いた臭いへの対策

本人がきれいになったら、部屋の掃除を行います。時間が経つほど臭いが染み付いてしまうため、迅速な対応が必要です。

固形物の除去
まずは新聞紙やキッチンペーパーなどで、目に見える便を取り除きます。こすり広げないように注意して拭き取ります。
消毒と消臭
便が付着していた場所は、次亜塩素酸ナトリウム希釈液(家庭用塩素系漂白剤を薄めたもの)などで消毒します。アルコールはノロウイルスなどには効果が薄いため、状況に応じて使い分けます。
臭い対策
換気を十分に行い、必要に応じて介護用消臭スプレーを使用します。壁紙に臭いが染み込んでしまった場合は、重曹水を吹きかけて拭き取るのも効果的です。

掃除を楽にするための防水シーツや防汚グッズの活用

頻繁に弄便がある場合、毎回完璧に掃除をするのは大変です。掃除の負担を減らすグッズを活用しましょう。

防水シーツ 布団やベッドマット全体を覆うタイプの防水シーツを使用すれば、寝具本体への浸透を防げます。
腰壁シート ベッド周りの壁に、汚れを拭き取りやすいビニール素材のシート(腰壁シート)を貼ることで、壁紙の張り替えや清掃の手間を省けます。

弄便を繰り返さないための具体的な予防策と環境づくり

弄便は「起こってから対応する」のではなく、「起こらないように予防する」ことが重要です。原因を取り除くことで、症状を減らせる可能性があります。

排泄リズム(排便パターン)を記録しトイレ誘導のタイミングを図る

「いつ排便があるか」を把握することが、最も有効な予防策の一つです。

カレンダーや介護ノートに、排便の時間帯や状態(硬さ、量)を記録してみましょう。「朝食後に出ることが多い」「3日に1回のペースだ」といったリズムが見えてくれば、そのタイミングを見計らってトイレに誘導することができます。トイレで排泄できれば、オムツ内の不快感がなくなり、弄便のきっかけそのものを無くすことができます。

トイレの場所を分かりやすくしポータブルトイレも活用する

トイレに行きたいけれど、場所が分からない、あるいは間に合わないためにオムツにしてしまい、その後の不快感から弄便に至るケースもあります。

トイレの表示 トイレのドアに「トイレ」と大きく書いた張り紙をしたり、夜間でも場所が分かるように照明を工夫したりします。
ポータブルトイレ ベッドサイドにポータブルトイレを設置することで、移動の手間をなくし、排泄の失敗を防ぎます。すぐに排泄できる環境は、本人の安心感にもつながります。

食物繊維や水分摂取を見直し便の状態をコントロールする

便秘や下痢は、弄便の大きな要因です。良い状態の便が出るように、食事や水分摂取を見直しましょう。

便秘解消
食物繊維の多い野菜や海藻類、ヨーグルトなどの発酵食品を積極的に取り入れます。また、こまめな水分補給も便を柔らかくするために不可欠です。
下痢予防
冷たい飲み物の摂りすぎに注意し、消化の良い食事を心がけます。体調の変化を観察し、下痢が続く場合は食事内容を調整します。

医療機関へ相談し薬の調整や便秘薬の処方を検討する

食事や環境整備だけでは改善しない場合、医療的なアプローチが必要です。

かかりつけ医に相談し、便秘薬(緩下剤)を処方してもらうことで、排便コントロールがしやすくなります。また、現在服用している薬の副作用で便秘や認知機能への影響が出ている可能性もあるため、薬の飲み合わせや量の調整についても相談してみると良いでしょう。

介護用つなぎ服の使用におけるメリットと注意点

弄便対策として「介護用つなぎ服(拘束着)」という選択肢があります。これは、本人が自分では脱ぎにくい構造になっている衣服です。使用には慎重な判断が求められます。

オムツの中に手を入れることを物理的に防ぐつなぎ服の効果

つなぎ服の最大のメリットは、物理的にオムツの中に手を入れるのを防げることです。

ファスナーにロック機能がついていたり、留め具が手の届かない位置にあったりするため、本人が勝手にオムツを外したり、手を入れたりすることが難しくなります。これにより、弄便を未然に防ぎ、介護者の掃除や洗濯の手間を劇的に減らすことができます。夜間のみ使用するなど、時間を限定して活用する家庭もあります。

身体拘束にあたる可能性と本人のストレスを考慮した使用判断

一方で、つなぎ服の使用は「身体拘束(スピーチロックやドラッグロックと同様に行動を制限する行為)」に該当する可能性があります。

安易な使用は、本人の「自由」を奪い、大きなストレスを与えることになります。ストレスがたまると、かえって認知症の症状が悪化したり、別の問題行動を引き起こしたりするリスクもあります。使用を検討する際は、あくまで「緊急やむを得ない場合の一時的な手段」と考え、医師やケアマネジャー、家族間で十分に話し合い、本人の尊厳を守る形での運用を心がける必要があります。

弄便による介護者の精神的苦痛と向き合うために

弄便の介護は、肉体的な疲れ以上に、精神的なダメージが大きいものです。「いつまた汚されるか分からない」という緊張感は、介護者を追い詰めます。

在宅介護だけで抱え込まず専門家やケアマネジャーに相談する

「家族の恥だから」と、弄便の悩みを誰にも言えずに抱え込んでしまう方がいらっしゃいますが、これは絶対に避けるべきです。

ケアマネジャーや医師、訪問看護師などの専門家は、同様のケースを数多く経験しています。相談することで、具体的な対策のアドバイスがもらえたり、適切な介護サービスを提案してくれたりします。「自分だけではない」と知るだけでも、心は軽くなります。

介護うつを防ぐためのレスパイトケアやショートステイの利用

介護者が倒れてしまっては、元も子もありません。定期的に介護から離れる時間を作ることは、長く介護を続けるために必須です。

ショートステイ(短期入所生活介護)
数日から数週間、施設に宿泊して介護サービスを受けることができます。夜間の弄便対応から解放され、介護者がゆっくり睡眠を取るための貴重な時間となります。
デイサービス(通所介護)
日中を施設で過ごしてもらうことで、日中の介護負担を減らし、気分転換を図ってもらうことができます。

在宅介護の限界を感じたら施設入居も選択肢の一つ

あらゆる対策を講じても改善が見られず、介護者の心身が限界に近いと感じたら、施設入居を検討するタイミングかもしれません。

認知症ケアに特化したグループホームや老人ホームの検討

認知症の方を受け入れている施設、特にグループホームなどは、認知症ケアの専門知識を持ったスタッフが常駐しています。

家庭では対応が難しい弄便や不潔行為に対しても、プロの視点から原因を探り、適切なケアを提供してくれます。環境が変わることで本人の不安が解消され、症状が落ち着くケースも珍しくありません。

プロの介護スタッフに任せることで保てる家族の良好な関係

介護のプロに「下の世話」を任せることで、家族は「介護者」から「家族」の立場に戻ることができます。

排泄ケアという精神的負担の大きい部分を手放すことで、面会時に笑顔で接することができるようになり、本人との良好な関係を取り戻せたという声は非常に多く聞かれます。施設入居は「家族を見捨てること」ではなく、「お互いが笑顔で過ごすための前向きな選択」なのです。

認知症の介護や施設探しでお悩みの方は「笑がおで介護紹介センター」へ

弄便をはじめとする認知症の症状にお悩みの方、あるいは在宅介護の限界を感じて施設を探し始めている方は、ぜひ私たちにご相談ください。

関西エリアの施設情報に精通した相談員が最適な施設をご提案

「笑がおで介護紹介センター」は、大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山、滋賀、三重といった関西エリアを中心に、数多くの老人ホーム・介護施設をご紹介しています。

地元の施設情報に精通した相談員が、認知症ケアに力を入れている施設や、弄便などの症状があっても温かく受け入れてくれる施設を厳選してご提案します。ネット上の情報だけでは分からない、施設の雰囲気やスタッフの対応についても詳しくお伝えします。

入居金や月額費用など予算に合わせた無料の施設探しサポート

施設選びにおいて重要な費用面についても、ご相談に応じます。

予算に合わせた提案
入居一時金や月額利用料など、ご家庭の経済状況に合わせた無理のないプランをご提案します。
完全無料のサポート
相談から施設見学の手配、入居に至るまで、お客様からの費用は一切いただきません。

お一人で悩まず、まずは「笑がおで介護紹介センター」にお声がけください。経験豊富な相談員が、ご家族とご本人にとって一番の「笑がお」が見つかるよう、全力でサポートいたします。

24時間受付中!
施設探しのプロに無料で相談する
0120-177-250 無料相談

このコラムの監修者

花尾 奏一(はなお そういち)

保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

有料老人ホームにて介護主任を10年 
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

無料で簡単診断

老人ホーム・介護施設を探す

都道府県をクリックすることで選択したエリアの市区町村や駅・路線などから老人ホームを探すことができます。

スタッフ満足初めての老人ホームの選び方