【和田秀樹コラム】テレビを信じ切る人の不幸|「80歳の壁」著者が語る「介護の誤解」vol.45

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【和田秀樹コラム】テレビを信じ切る人の不幸|「80歳の壁」著者が語る「介護の誤解」vol.45

報道されない多剤併用の危険性と日常に潜むリスク

前回、薬の多剤併用の危険性を論じていたが、日本の怖いところは、それをテレビでは絶対に報じないことだ。多くの国民が薬の害についてほとんど知らされていないから、少し検査結果がおかしければ、医者が当たり前のように薬を出しても、検査データが正常になれば健康になれると思って、ありがたくそれを飲んでしまう。そうこうするうちにほかのデータに異常が出ても、また薬が出され、多剤併用が当たり前のように行われるのだが、それを危険なこととは思わないし、仮に体調が悪くなっても薬のせいだと疑うこともないことが多いだろう 。そして、前回、問題にしたように、そのせいで転倒し、骨折し、最悪、歩けなくなっても薬のせいだと思うことはまずない。そのせいで交通事故を起こしたとしても、歳のせいとか、その人の運転の問題で片付けられてしまう。

磐越道のバス事故に見る「異常な運転」の記録

そう感じさせられた事故が磐越道で高校生が犠牲になった事故だ。この半年ほどで、急にヨボヨボしてきたことが明らかになっていて、この2ヶ月だけで6,7回も事故を起こしていたとのことだ。4月末に自分の車で事故を起こし、その2日後に今度は修理業者の代車で衝突事故、さらに4日後にも事故を起こし、磐越道の事故は3回目の事故の5日後だったとのことである。この事故の際も、バスは車体後部を左右に振りながら車道左側の外側線を大きく逸脱し走り続け、トンネルやガードレールに接触するかと思う場面もあった。「あの運転は、あまりに異常だった」と振り返る証言もあった。これに対して、テレビで解説していた交通事故鑑定人の熊谷宗徳氏は、「正常な意識状態とはちょっと思えませんね」という。ところがこの運転手は、2022年度から3年間、市の会計年度任用職員としてイベント時などに市のバスを運転。「無事故で問題はなかった。次の仕事が決まったと2024年度末でやめた」と市の担当者は説明しているとのことだ。

処方薬が引き起こす意識障害と「パーキンソン歩行」の可能性

もともと、普通に運転できていた人間が、急に運転が下手になり、意識障害のようなことを起こすとしたら、まともな医者なら通常は薬害の影響を考える。今回の事故では、交通事故鑑定人はテレビに呼ばれても、医師が呼ばれて解説したことはなかったようだ。これも薬害の隠蔽のためなのかもしれない。この運転手は、「俺は糖尿病でもうダメだ」と言っていたことがテレビで報じられていたし、持病の椎間板ヘルニアもあったようだ。糖尿病を急に指摘され、服薬を始めたとすると、血糖値が下がりすぎたりして、意識障害を起こすことは珍しくない。多くの糖尿病薬が運転禁止薬に指定されている。椎間板ヘルニアの痛み止めによく使われるプレガバリンは意識障害の副作用の多い薬だ。製薬会社の能書にもめまい(20%以上)、傾眠(20%以上)、意識消失(0.3%未満)の頻度で、これらの症状が起こっている。また、よたよた歩きで杖を使用し、前傾姿勢すり足で歩いていたことも明らかになっている。テレビでも歩く姿勢が映し出されていたが、私も神経内科の認定医だが、教科書に出てくるようなパーキンソン歩行だ。池袋の事故もパーキンソンの治療を受けていたことが明らかになっているが、パーキンソン病の治療薬の多くも運転禁止薬で、幻覚、妄想、意識障害の副作用がかなり多い。要するにこの運転手はそうでなくても危険な薬を多剤併用していた可能性が高いのだ。それが一切テレビでは報じられない。

相次ぐ事故の背景にある薬物影響への疑念

そうかと思うと、14日には観光バスが、「電柱にぶつかって電柱が倒れている。運転席が潰れている」と目撃者から110番通報があったとのことだ。幸い、乗客は乗っていなくて、運転手も救出されたそうだが、この事故の直前に道路沿いの樹木にこすれたような跡があり、路上にはバスのドアとみられる部品が落ちていたとのことだ。やはり、事故前から意識障害を起こしていた可能性が高い。やはり薬物の影響だろう。

日米における運転障害薬への認識差と「5剤併用」の転倒リスク

アメリカでは運転障害薬に指定されている薬を飲んでの運転をやめるように道路交通安全局が訴え続けているようだが、日本では総務省が運転禁止薬を2700種類も発表していてもテレビは、それを啓発するどころか隠蔽を続けている。実際、アメリカで10年間にわたって12万件の高齢者の大事故を追跡調査したところ、なんとその8割は運転障害薬を飲んでいることがわかった。これもテレビでは隠蔽され続けている。もちろん警察もその危険を訴えない。前回問題にしたことだが、運転禁止薬でなくても、5剤以上の薬を併用すると40%以上の高齢者が転倒している。頭がぼんやりしているのか、足がふらついてなのかだろうが、どちらにしても運転には危険な状態だ。要するに高齢ドライバーは免許を返納する前に薬のチェックをしたほうがいい。ちなみに運転禁止薬については、スマホがあれば簡単に検索できる。(たとえば www2.hosp.med.tottori-u.ac.jp/departments/establishment/pharmaceutical/files/62127.pdf ) 実際、アメリカの調査でも薬を飲まないで事故を起こした高齢者は高齢者の事故全体の2割に過ぎない。

スポンサーの意図で歪む医療情報とテレビ出禁の真相

こういうものを隠蔽し続けるテレビの情報番組、それどころか報道番組は、少なくとも薬や健康情報については信用する気にならない。コロナ禍のときも、危険をあおる医者ばかりが出演して、高齢者がこわがって外に出なくなってしまった。その後、歩けなくなった高齢者の話は枚挙に暇がない。ついでにいうと、テレビの医療情報、健康情報もなんらかのスポンサーの意図で歪められている可能性があるが、テレビにでる医者も信用できない。テレビ局の意図(多くの場合、製薬会社を喜ばせるもの)に沿う医者だけがテレビに呼ばれ、それに沿わない医者、とくに薬の害を問題にする医者は私のようにテレビ出禁(とくに生放送出禁)になってしまう。もちろん役に立つ情報はあるだろう。しかし、テレビでいうことだから裏付けがしっかりしているとか、本当のことだろうと盲目的に信じるのは危険だ。

盲信の危険性とあらゆる情報における「裏付け」の重要性

基本的な情報リテラシーとして、伝聞やネット記事だけでなく、テレビや新聞に書いてあることでも、裏付けをとる習慣は大切だ。これは医療に限らず、子育てにしても、介護にしても同じだ。詰め込み教育が古いといわれて久しいが、詰め込み教育が日本よりはるかに盛んな、韓国や台湾や中国が先端技術(IT、半導体、AI、自動運転、ヒューマノイドロボットなど)で圧倒的に日本をリードしている。AIの時代に、これまでの教育は不要と言われるが、これもよくわからない。少なくとも素直に盲信すると危険で、一応、普通の勉強をさせておくほうが安全だろう 。

「在宅介護の美談」の裏に隠された虐待とうつの現実

介護にしても、在宅が理想のようにテレビは言い続けてきたが、実際には介護虐待は、施設より在宅のほうがはるかに多い。統計をみると在宅介護の4割でなんらかの介護虐待が起こっている。そして、多くの人が介護うつ病に陥っている。テレビは自分の金儲けのためなら情報を平気で隠蔽するのに、表向きはきれいごとばかりを言って、多くの、たとえば介護をやっている人たちを精神的に追い詰める。事故を減らすために高齢者に免許返納を迫るのに、今回のような事故でも事故を減らすために原因究明(薬物の影響がないかなど)をすればいいのに、逆に原因の隠蔽に走っている。テレビ情報がみんなインチキというつもりはないが、素直に盲信するとひどい目に遭うことが多いといいたいのだ。

生成AIを活用した情報リテラシーの新時代

では、どうすればいいのか? 前述のように裏付けを取ればいい。それがインターネットのおかげで昔よりはるかに簡単にできるようになった。それなのに、そういうことをしない怠慢な人が多いようだ。裏付けを取らないからテレビの代わりにネット情報の陰謀論を信じ切る人もいる。実はインターネット以上に裏付けをとるのに便利なツールが出現している。それが生成AIだ。チャットGPTやGeminiに聞くとテレビが言っていることがどの程度の根拠があるかがわかる。そういう情報リテラシーが必要な時代になっているのは自覚してほしい。

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