絶縁した親の介護拒否は認められる?扶養照会から死後の手続きまで解説

長く連絡を取っていない親御さんの件で、役所や病院から突然連絡が来て戸惑っていませんか?絶縁していても介護をしなければならないのか、断ったら罪になるのかと不安を抱える方もいます。
絶縁しても法律上の親子関係は残りますが、身の回りの世話まで子に強制する規定はなく、子に求められるのは余力に応じたお金の援助が中心です。この記事では、絶縁した親の介護拒否が罪になる場合の線引きから、突然の連絡や扶養照会への答え方、顔を合わせずに施設へ任せる方法や亡くなったあとの手続きまでを解説します。
この記事を読めば、ご自身がどこまで関わるかを決められ、次に連絡が来ても慌てずに答えられるでしょう。
※本記事は2026年9月時点の情報をもとに作成しています。
絶縁した親の介護拒否は認められる?
親御さんと絶縁していても、法律上の親子関係は続きます。ただし、身の回りの世話まで子に強制する法律の規定はなく、求められるのは余力に応じたお金の援助が中心です。
ここでは、絶縁の法的な効力と子が負う義務の範囲を、3つの点から解説します。
絶縁の法的な効力
親御さんに絶縁を伝えても、絶縁状を送っても、法律上の親子関係は終わりません。民法には、実の親子の関係を当事者の意思で終わらせる規定がありません(養子縁組による親子には離縁の手続きがあります)。
戸籍を親御さんと別にする分籍(成人した人ができる手続き)をしても、変わるのは戸籍の記載だけです。実の親との親族関係が終わるのは特別養子縁組に限られ、対象は原則15歳未満のため、成人した子は使えません。
このため、絶縁していても扶養の義務や相続の関係は残ります。民法は、親子のような直系の血族どうしに、互いに扶養する義務を課しています。考えるべきなのは縁を切れるかどうかではなく、義務がどこまで及ぶかです。
直接の介護を担う義務の有無
法律には、子が親御さんと同居して身の回りの世話をするよう強制する規定はありません。扶養の程度や方法は当事者の話し合いで決め、まとまらなければ家庭裁判所が双方の事情を考えて定めます。
実務では、扶養の方法はお金の援助が原則です。お金を援助して訪問介護を頼んでもらう方法も、扶養の一つにあたります。同居して世話をする引取扶養は、引き取る側が同意しなければ、家庭裁判所も命じないのが通常です。
つまり、直接の介護を引き受けるかどうかは、子の側で決められる部分です。しかし、お金の援助は話し合いや家庭裁判所の判断で求められる場合があるため、次に範囲を確認しておきましょう。
関連記事:親の介護で兄弟姉妹トラブル|役割分担や費用でもめないための解決策
余力の範囲で求められるお金の援助
成人した子が親御さんに負う扶養は、ご自身の生活を保ったうえで、余力がある範囲のお金の援助です。生活保護の運用でも、成人した子から親への扶養は、子が社会通念上ふさわしい生活を保てる範囲に限られます。
援助の金額に公的な目安はなく、話し合いがつかなければ、家庭裁判所が双方の収入を含む一切の事情を考えて決めます。子育てや住宅ローンで余力がない場合は、援助できないと伝えてかまいません。
絶縁に至った経緯も、話し合いや家庭裁判所の場では事情の一つとして伝えることができます。ご自身とご家族の生活を先に守ってよいと知っておけば、突然の連絡にも落ち着いて向き合えるでしょう。
関連記事:介護費用を親の年金だけでまかなえない場合の対策ガイド|不足分は誰が負担するのか扶養義務や節約術を解説
絶縁した親の介護拒否は罪になる?
子として親御さんの介護を断ったら罪に問われるのではないかと、心配になる方もいます。罪が問題になるのは、主に同居や引き取りで世話を引き受けたあとに、必要な保護をせずに放置した場合です。
ここでは、刑法の保護責任者遺棄罪と高齢者虐待防止法が定める介護放棄の2つの面から見ていきます。
保護責任者遺棄罪に問われる場合
保護責任者遺棄罪は、高齢者などを保護する責任のある人が、置き去りにしたり(遺棄)、生存に必要な保護をしなかったりしたときに成立する罪です。刑は3か月以上5年以下の拘禁刑で、2025年6月から懲役に代わって拘禁刑が科されるようになりました。
保護する責任は、法律や契約のほか、世話を引き受けた事実などから生じます。親子であるだけで、直ちに保護する責任があると判断されるわけではありません。
主に問題になるのは、同居や引き取りなどで世話を始めたあとに、食事や受診をさせずに放置した場合です。絶縁して別に暮らし、世話を引き受けていない子が介護を断るだけなら、この罪が問われる場面は限られると考えられます。一時的でも親御さんを引き取ると保護する責任が生じうるため、その場で同居を引き受けないようにしましょう。
関連記事:親の介護は義務?扶養の範囲から拒否できる条件まで解説
高齢者虐待の介護放棄にあたる場合
高齢者虐待防止法でいう介護放棄(ネグレクト)は、高齢者を現に養護している人が世話を著しく怠る行為を指します。養護者とは、お金の管理や日常の世話を実際にしている人で、同居していない親族があたる場合もあります。
このため、絶縁して世話をしていない子は、介護放棄をした側にはなりにくい立場です。ただし、経済的虐待だけは、世話をしていない親族でも虐待をした側として扱われます。
親御さんの年金や預貯金を無断で使うと、経済的虐待にあたるおそれがあります。世話を引き受けず、親御さんのお金にも手を付けなければ、罪や虐待を必要以上に心配しなくてよいでしょう。
関連記事:高齢者虐待の原因とは?介護のストレスを減らす対策と相談窓口を解説
絶縁した親の件で連絡が来たときの対応
絶縁していても、親御さんに介護や入院が必要になると、自治体や病院、親族から子に連絡が来る場合があります。求めに応じる前に、連絡の目的と、子が引き受ける必要があるかを確かめるのが基本です。
ここでは、よくある3つの場面ごとに、子としての答え方の目安を解説します。
介護の手続きを頼まれた場合
地域包括支援センターや自治体の高齢福祉の担当者から、要介護認定の申請などを頼まれる場合があります。要介護認定の申請は、地域包括支援センターや居宅介護支援事業者(ケアマネジャーの事業所)が代わりにできる手続きです。
認知症などでご本人が契約できず、代わりに手続きをするご家族もいない場合は、自治体が「やむを得ない事由による措置」をとれます。介護サービスの利用や特別養護老人ホームへの入所を自治体が決める制度で、虐待からの保護にも使われる手段です。子が申請や契約の窓口にならなくても、手続きを進める方法はあります。
連絡を受けたら「事情があって関われないため、手続きは地域包括支援センターで進めてほしい」と伝えましょう。その場で書類への署名や立ち会いを約束せず、返事は持ち帰って考えてかまいません。
関連記事:地域包括支援センターとは?役割や相談できる内容、利用方法をわかりやすく解説
入院の保証人を頼まれた場合
病院から、入院の保証人(身元保証人)になってほしいと頼まれる場合もあります。身元保証人の不在だけを理由にした入院の拒否は、医師法で認められていません。
医療行為への同意もご本人だけができるもので、保証人に同意の権限はないと考えられています。保証人の欄に署名すると入院費の支払いを求められる立場になるため、頼まれても署名は控えましょう。
断る場合は、病院の医療ソーシャルワーカー(入院患者の生活面の相談を受ける専門職)に事情を伝えます。生活保護などの行政サービスや成年後見制度につないでもらえれば、子が保証人にならなくても入院の手続きは進みます。
親族から介護を求められた場合
きょうだいや親戚から「子なのだから面倒を見るべきだ」と求められる場合もあります。扶養する順序や分担は当事者の話し合いで決め、合意できないときは家庭裁判所が定める仕組みです。
家庭裁判所の扶養請求調停では、扶養する側の生活状況や経済状況などを考えたうえで話し合いが進みます。調停がまとまらなければ審判に移り、裁判官が一切の事情を考えて決める流れです。
申立書は相手に送られます。一緒に出す資料のうち知られたくない住所などは黒塗りにでき、黒塗りできない資料は非開示を希望する申出書を付けて出せます。
ただし、相手の閲覧を認めるかは裁判官が判断するため、扱いは申し立てをする家庭裁判所で確かめましょう。口頭で押し切られそうなときも、最後は家庭裁判所で決める道があるので、すぐに応じる必要はありません。
絶縁した親の扶養照会は断れる?
親御さんが生活保護を申請すると、福祉事務所から子に扶養照会(援助できるかどうかの問い合わせ)が届く場合があります。扶養照会は援助を強制する手続きではなく、援助できないときは、その理由を書いて回答してかまいません。
ここでは、照会が届く理由と届かないケース、回答の書き方を順に見ていきます。
照会が届く理由
生活保護法は、民法上の扶養義務がある親族からの扶養を、保護より優先させています。そのため、福祉事務所は申請した親御さんを援助できる親族がいるかを確かめるために照会を送ります。
しかし、法律は扶養を保護の要件とはしておらず、あくまで保護より優先させる扱いです。厚生労働大臣も2021年1月28日の参議院予算委員会で、扶養照会は義務ではないと答弁しています。
親族に相談してからでないと申請できない決まりもなく、照会は申請を受け付けたあとに送られます。援助できないと回答しても、それだけで親御さんの申請は退けられないため、事情を正直に伝えましょう。
照会されない絶縁のケース
扶養照会は、扶養が期待できると判断された親族にだけ送るのが国の基準です。2021年2月の見直しで、関係が著しく悪い親族や長く音信不通の親族には、照会しない扱いが示されました。
照会しない例として、次のような関係が挙げられます。
- 10年程度の音信不通
- 親御さんが子に借金を重ねている
- 相続をめぐって対立している
- 縁が切られている
親御さんから虐待を受けていたなど、これらと同程度に関係が悪い場合も、同じ扱いになりえます。10年程度の音信不通は、ほかの事情を問わず交流が途絶えていると判断される目安です。
この基準は2026年3月の国の会議資料でも同じで、現在も続いています。照会が届いたときも、こうした事情があれば回答書に書き添えましょう。
援助できないときの回答の書き方
扶養照会の回答では、主に次の内容を記載します。
- これまでの交流の状況
- 世帯の収入や資産の状況
- 援助できない理由
たとえば、交流がない状況なら「10年以上連絡を取っておらず交流が途絶えているため、金銭の援助も連絡や訪問などの支援もできません」のように、事実をそのまま記載します。余力がない場合は、収入や世帯の生活費の状況を添えて伝えるのも一つの方法です。
回答の内容が親御さんに伝わるのが心配なときは、回答前に福祉事務所へ扱いを確かめておきましょう。福祉事務所が扶養義務者から保護費を徴収する制度もありますが、徴収できるのは扶養義務の範囲内に限られます。

絶縁した親に会わずに済ませる方法
扶養の義務があっても、親御さんと直接顔を合わせる決まりはありません。担当者を間に立てれば、関わる範囲をご自身で決めて、距離を保ったまま必要な手続きだけを進められます。
ここでは、顔を合わせずに関わりを最小限にする3つの方法を紹介します。
連絡してよい範囲を担当者に伝える
まずは、親御さんを担当する地域包括支援センターやケアマネジャー、病院の相談員に、連絡してよい範囲を伝えておきましょう。担当者は絶縁の事情を知らないため、先に伝えておけば、連絡の方法に配慮を頼めます。
伝えておきたいのは、次の3点です。
- 連絡の手段(書面やメール)
- 連絡してよい場面
- 親御さんに伝えない情報
たとえば、担当者に「連絡は郵便だけにしてほしい」「こちらの住所や電話番号は伝えないでほしい」と頼む方法があります。亡くなったときだけ連絡がほしいなど、関わる場面を絞って伝えてもかまいません。担当者がわからないときは、親御さんが住む地区を受け持つ地域包括支援センターに問い合わせれば、窓口を確かめられます。
援助をお金の振り込みだけにする
援助をする場合は、お金の振り込みだけに絞れます。扶養はお金の援助が原則のため、同居して世話をしなくても、振り込みによる援助は扶養の方法の一つです。
振り込みなら記録が残り、金額と時期を担当者に伝えておけば、顔を合わせずに援助を続けられます。金額は、ご自身とご家族の生活を守ったうえでの余力の範囲で決めてかまいません。
反対に、親御さんの通帳やキャッシュカードを預かるのは避けましょう。お金の管理を担う親族は、高齢者虐待防止法でいう養護者にあたる場合があります。管理が必要なときは、次に紹介する成年後見人などの第三者に任せましょう。
手続きを成年後見人に任せる
親御さんの判断能力が衰えている場合は、成年後見制度を使い、お金の管理や契約を後見人などに任せる方法もあります。親族が申し立てなくても、65歳以上の人なら市区町村長が家庭裁判所に申し立てられる仕組みです。
この申し立ては、2親等内の親族がいない場合や、音信不通などで親族からの申し立てが期待できない場合に使われます。親族に意向を尋ねる連絡が届いても、申し立てに親族の同意は求められていません。
ただし、後見人は原則として身元保証人にはならず、医療行為への同意もできません。成年後見制度は2026年6月成立の改正民法で見直され、現在の後見・保佐・補助は施行後に補助へ一本化される予定で、施行日は未定です。
関連記事:老人ホーム入居と成年後見制度:必要な手続きと費用、注意点を徹底解説
絶縁した親の介護を施設に任せる方法
在宅での生活が難しくなった親御さんにとって、施設は現実的な住まいの選択肢です。子が施設探しや費用の支払い、身元保証人を引き受けなくても、担当者や制度を使って施設に入るまでの手続きを進められる場合があります。
ここでは、施設探し・費用・身元保証人の3点について、子が窓口にならずに進める方法を解説します。
施設探しを相談窓口に頼む
施設探しは、親御さんがいまいる場所に応じた担当者に頼めます。主な相談先は、次のとおりです。
| 親御さんの状況 | 主な相談先 |
|---|---|
| 自宅で暮らしている | 地域包括支援センター |
| 入院している | 病院の医療ソーシャルワーカー |
| 施設で暮らしている | 生活相談員・ケアマネジャー |
| 生活保護を受けている | 福祉事務所のケースワーカー |
地域包括支援センターは高齢者の暮らしを支える総合相談の窓口で、ご家族からの相談も無料で受けています。施設の候補を幅広く探したいときは、老人ホーム紹介センターに親御さんの状況や予算を伝えて、条件に合う施設を紹介してもらう方法もあります。子が窓口に立つのは最初の相談だけにとどめ、その後のやり取りは担当者に任せたいと伝えておきましょう。
関連記事:京都で身寄りなし・保証人がいない方の老人ホーム探し|成年後見や身元保証会社を活用した厳選解決事例まとめ
施設の費用を親の年金や制度でまかなう
施設の費用は、サービスを受ける親御さんご本人の年金や預貯金から払うのが原則です。保証人や契約者として署名していなければ、子が払う直接の義務は法律上ありません。
年金だけで足りないときは、介護サービス費の自己負担に上限を設ける高額介護サービス費で負担を抑えられます。特別養護老人ホームなどの介護保険施設では、住民税非課税世帯などの食費や居住費を軽くする負担限度額認定も利用できます。
たとえば、食費の基準額は2026年8月から1日1,545円です。住民税非課税世帯で、年金収入(非課税の年金を含む)とそのほかの所得の合計が年82万6,500円以下、預貯金が650万円以下(単身の場合)の人は、1日390円になります。判定では、住民税は同じ世帯の全員と配偶者の分を、預貯金は親御さんと配偶者の分を確認します。
関連記事:老人ホームの費用は誰が払う?親の資産で足りない場合の対処法と補助制度を解説
身元保証人を引き受けずに済ませる
特別養護老人ホームなどの介護保険施設は、身元保証人の不在だけを理由に入所を断れません。代わりに、成年後見人が親御さんのお金から費用を払い、高齢者等終身サポート事業者(身元保証や亡くなったあとの事務を請け負う事業者)が手続きを担う仕組みも利用できます。
しかし、子が保証人の欄に署名すると、親御さんの滞納分を支払う責任を負います。2020年4月からは、施設の費用などをまとめて保証する個人の保証は上限額(極度額)を定めなければ無効ですが、上限の範囲では責任が残る点に注意が必要です。
関連記事:老人ホームは身元保証人がいないと入れない?代行サービスや後見制度の活用法

絶縁した親が亡くなった後の手続き

絶縁したまま親御さんが亡くなると、警察や病院、自治体から子に連絡が来る場合があります。相続放棄には期限があるため、連絡を受けたら早めに動き出しましょう。
ここでは、亡くなったあとに子が直面する3つの場面ごとに、対応を整理します。
遺体の引き取りを断る場合
親御さんの遺体の引き取りを求められても、断る選択はできます。埋葬や火葬をする人がいないときは、亡くなった地域の自治体が火葬などをする決まりです。
ただし、費用はまず親御さんが遺したお金から充てられ、足りない分は相続人や扶養義務者に負担を求められる場合があります。相続放棄をしても、扶養義務者として求められる余地は消えません。
国の手引には、費用の請求先としてふさわしくない親族の例が挙げられています。親御さんから虐待を受けていた親族や縁を切られていた親族、10年程度音信不通だった親族がその例です。
引き取り手のない遺骨は、自治体が一定期間保管したあとに合葬する例があります。死亡届を出す義務も、同居していない子にはありません。引き取るかどうかは、連絡をくれた担当者に伝えましょう。
相続放棄をする場合
相続放棄をすると初めから相続人でなかったとみなされ、親御さんの借金や未払いの入院費・施設費を引き継ぎません。手続きの要点は次のとおりです。
- 期限は知ったときから3か月以内
- 申述先は親御さんの最後に住んでいた住所地の家庭裁判所
- 収入印紙800円と郵便切手が必要
3か月の数え始めは、亡くなった事実とご自身が相続人になった事実を知ったときです。財産が全くないと信じた相当な理由があれば、財産の存在を知ったときから数える場合もあります。判断がつかないときは、家庭裁判所に期間の延長を申し立てられます。
ただし、親御さんの預貯金を使うなど財産を処分すると、相続を承認したとみなされて放棄できなくなるおそれがあるため注意しましょう。放棄後も財産を守る義務が残るのは、放棄の時点で親御さんの財産を手元で管理している場合だけです。
未払いの費用を請求された場合
親御さんが亡くなったあとに、病院や施設から未払いの費用を請求される場合があります。相続放棄をすれば、子は親御さんの未払いの入院費や施設費を引き継がず、支払う義務はありません。
ただし、保証人や連帯保証人、施設の契約者として署名していれば、相続放棄をしても支払いの義務は残ります。請求が来たら、まず契約書で保証人や契約者になっていないかを確かめましょう。
支払いに親御さんの預貯金を使うと相続財産の処分にあたり、放棄できなくなるおそれがあります。ご自身のお金から払う分には処分にあたりませんが、本来払わなくてよい費用を負担する結果になります。放棄を考えているなら、支払いに応じる前に家庭裁判所や専門家へ相談しておくと安心でしょう。
関連記事:老人ホームの費用が払えないときの対処法|利用できる制度や相談先を解説
絶縁した親の介護拒否でよくある質問
親御さんと絶縁している方からは、借金や相続、住所の扱いについての疑問もよく寄せられます。どれも関わりを断ちたいときに気になる点で、法律上の答えを知っておくと判断に迷いません。
ここでは、代表的な3つの質問にお答えします。
親の借金を代わりに払う必要はある?
保証人や連帯保証人になっておらず、名義も貸していなければ、親御さんの借金を子が返す義務はありません。承諾して親御さんの借り入れに名前を使わせる名義貸しでは、子に返済の義務が生じます。
承諾なく名前を使われた場合は、原則として子に返す義務はありません。貸金業者が、借りた親御さんや保証人ではないご家族に代わりの返済を求める行為も、貸金業法で禁じられています。
親御さんが亡くなると借金は相続の対象になりますが、相続放棄をすれば引き継ぎません。ただし、保証人になっている場合は、放棄をしても保証人として返す義務が残ります。取り立ての連絡が来たら、ご自身が保証人になっていないかを確かめ、そのうえで支払いに応じるかを判断しましょう。
介護を拒否すると相続できなくなる?
介護をしなかっただけでは、相続人の資格を失う相続欠格にはあたりません。相続欠格にあたるのは、親御さんを故意に死亡させたり死亡させようとしたりして刑を受けた場合や、遺言書を偽造した場合など、重大な行為です。
ほかにも、親御さんが生前に家庭裁判所へ請求したり、遺言で意思を示したりして相続権を失わせる「廃除」の手続きもあります。廃除が認められるのは、虐待や重大な侮辱、著しい非行があった場合です。裁判例でも、社会通念に照らして重大なものに限って認める考え方がとられています。
介護や看病をしなかった点が、ほかの事情と重なって廃除が認められた裁判例はあります。とはいえ、介護をしないだけで廃除まで認められるのは難しいのが実情です。
親に今の住所を知られないようにできる?
DVやストーカー行為、児童虐待の被害者と、これらに準ずる行為の被害者は、DV等支援措置を申し出られます。支援措置を受けると、加害者による住民票の写しや戸籍の附票(住所の履歴が載る書類)の写しの請求が制限される仕組みです。
対象になるかは、警察などの相談機関の意見を聴いたうえで自治体が判断します。親御さんからの暴力や虐待を理由に申し出られるかも個別の判断になるため、まずは警察や相談窓口に事情を話しましょう。
措置の期間は1年で、延長も申し出られますが、延長のときも支援の必要性が改めて確認されます。支援措置で住所を守れれば、関わりを断ったあとの暮らしも落ち着いて続けられるでしょう。
まとめ
親御さんと絶縁していても法律上の親子関係は残りますが、身の回りの世話を子に強制する規定はなく、扶養の中心は余力に応じたお金の援助です。罪が問題になるのは、世話を引き受けたあとに放置した場合などです。
扶養照会には援助できない理由を書いて回答し、手続きや施設探しは地域包括支援センターなどの担当者に任せましょう。親御さんが亡くなったあとは、財産に手を付けないまま3か月以内に相続放棄を検討する流れです。
施設探しを専門の相談先に任せれば、子が窓口にならなくても親御さんの住まいの手配は進められます。絶縁した親の介護拒否で迷い、施設への引き継ぎを考えるときは『笑がおで介護紹介センター』へご相談ください。
参考サイト
- 民法|e-Gov法令検索
- 生活保護法による保護の実施要領について|厚生労働省
- 刑法|e-Gov法令検索
- 高齢者虐待防止の基本(市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について)|厚生労働省
- 介護保険法|e-Gov法令検索
- 老人福祉法|e-Gov法令検索
- 身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて|厚生労働省
- 生活保護法|e-Gov法令検索
- 扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について|厚生労働省
- 令和8年8月からの特定入所者介護(予防)サービス費の見直し等に係る周知への協力依頼について(介護保険最新情報Vol.1506)|厚生労働省
- 市町村や地域包括支援センターにおける身元保証等高齢者サポート事業に関する相談への対応について|厚生労働省
- 身寄りのない方が亡くなられた場合の遺留金等の取扱いの手引(改訂版)|厚生労働省
- 相続の放棄の申述|裁判所
- 配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の方は、申出等によって、住民基本台帳の閲覧等を制限できます。|総務省

このコラムの監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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