親の介護でお金もらうのは違法?線引きと記録の残し方を解説

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親の介護でお金もらうのは違法?線引きと記録の残し方を解説

親御さんの介護を続けるなかで、交通費やおむつ代の立て替えがかさみ「親の介護でお金をもらうのは許されるのか」と迷っていませんか?受け取ったあとで兄弟姉妹から責められないか、税金がかかるのではないかと心配になる方もいます。

判断能力のある親御さんが納得して渡すお金を、介護の実費やお礼として受け取るのは違法ではありません。ただし、同意のない預貯金の引き出しや、判断能力が衰えた親御さんからの受け取りは問題になります。

この記事では、受け取れる範囲と税金の扱いに加え、金額の決め方や記録・取り決めの残し方、相続への影響と使える公的制度まで順に解説します。最後まで目を通せば、受け取る根拠と金額の目安がつかめ、親御さんや兄弟姉妹に話を切り出す準備が整うでしょう。

※本記事は2026年9月時点の情報をもとに作成しています。

親の介護でお金をもらうのは違法?

判断能力のある親御さんが納得して渡すお金は、介護を担うご家族が受け取っても法律で禁じられた行為にはあたりません。しかし、介護保険では家族の介護に報酬が出ないため、お金を受け取るのは筋が通らないのではと迷う方もいます。

ここでは、受け取っても違法にならない理由と、介護保険で家族に現金が出ない理由を順に見ていきます。

受け取っても違法にならない理由

民法では、贈与は渡す側と受け取る側の合意によって成立します。判断能力のある親御さんが納得のうえで渡す場合、介護の実費やお礼の名目で受け取っても違法にはなりません。

介護を頼み、引き受ける関係は、民法の「準委任」と呼ばれる契約にあたると考えられます。準委任では、報酬を支払う取り決めがあれば、引き受けた側は報酬を受け取れる決まりです。

反対に、取り決めがないまま続けた介護は、親族の間では無償の手伝いと判断される場合が多くなります。あとから「これまでの分を払ってほしい」と求めても、応じてもらうのは難しくなります。お金を受け取る際は、親御さんの意思を確かめたうえで、金額と使い道を先に決めておきましょう。

介護保険で家族に現金が出ない理由

介護保険には、親御さんを介護するご家族へ報酬を支払う仕組みがありません。制度が始まるときに、家族介護が固定化する懸念などを理由に、現金給付は導入しないと決められました。

訪問介護でも、ヘルパーが同居の家族を介護するのは原則として認められていません。離島や山間のへき地など自治体が認めた地域では、ケアプランに沿うなど一定の条件を満たした場合に限り、例外が認められます。

ただし、ご家族は事業所に雇われたヘルパーとして働く立場で、保険から現金を受け取るのとは異なります。在宅介護を続ける家族に慰労金を支給する自治体はありますが、介護の対価は親御さんとご家族の間で決めるのが基本です。

親の介護でお金をもらうときの線引き

親御さんのお金を扱っても問題にならないのは、親御さんの同意があり、決めた使い道から外れない場合です。反対に、同意のない引き出しや目的外の使い道は、あとで返すよう求められたり、相続で揉めたりする原因になります。

ここでは、線を越えてしまう3つの場面を取り上げ、注意したい点を解説します。

親の同意なく預貯金を引き出す場合

親御さんの同意を得ずに預貯金を引き出し、介護のお礼に充てるのはやめましょう。引き出したお金は、民法の不当利得や不法行為にあたるとして、親御さんやほかの相続人から返すよう求められる可能性があります。

預金は名義人である親御さんの財産のため、ご家族であっても親御さんの意思確認なしには払い出せないのが銀行の原則です。キャッシュカードと暗証番号を預かっていても、それだけで引き出しを認められたとはいえません。

親御さんのキャッシュカードで引き出した介護費も、使い道を説明できなければ、相続のときに使い込みを疑われます。引き出す前に親御さんの了承を得て、金額と使い道を書き残しておきましょう。

預かったお金を介護以外に使う場合

介護費として預かったお金を、ご自身の生活費や買い物に回すのは避けましょう。預かったお金は親御さんの財産で、決めた使い道から外れた支出は、あとで返すよう求められる理由にもなります。介護用品とご家族の食料品をまとめて買うときは、レシートを分けてもらうと区別がつきます。

介護のお礼を受け取りたいときも、預かり金から黙って差し引かず、金額を決めて別に受け取りましょう。お礼の額によっては、1年間の合計で贈与税がかかる場合があります。

預かり金の残りは親御さんの口座に戻し、ご自身のお金と混ぜずに管理します。預かり金とお礼を分けておけば、兄弟姉妹から使い道を聞かれても説明に困りません。

判断能力が衰えた親から受け取る場合

認知症などで判断能力が衰えた親御さんから受け取るお金は、あとで無効とされる恐れがあります。民法は、意思能力のない状態での贈与などを無効としており、親御さんから「あげる」といわれても受け取る根拠にはなりません。

成年後見人が財産を管理している場合は、さらに厳しい決まりがあります。京都家庭裁判所の成年後見人向けの手引きでは、ヘルパーの代わりに介護を担う親族への報酬は認められないとしています。後見人自身の報酬も、家庭裁判所の審判を経なければ受け取れません。

後見人が財産を使い込めば、親族でも刑を免除する規定は当てはまらず(最高裁判所2012年10月9日決定)、業務上横領罪などに問われる場合があります。判断能力に不安が出てきたら、受け取る前に専門家へ相談しておくと、揉めごとを防げるでしょう。

関連記事:老人ホーム入居と成年後見制度:必要な手続きと費用、注意点を徹底解説

親の介護でもらうお金に税金はかかる?

介護に関わるお金は、受け取り方によって贈与税の扱いが変わります。扱いが分かれるのは、立て替えの精算、お礼、兄弟姉妹で出し合う介護費の3つの場面です。

ここでは、場面ごとの税金の扱いと注意したい金額の目安を解説します。

立て替えた介護費用の精算

親御さんの介護費を立て替え、あとで親御さんのお金から実費を返してもらうのは、本来は親御さんが払う費用の精算です。民法でも、頼まれて事務を引き受けた人は、そのために支出した必要な費用を返すよう請求できます。

頼まれずに立て替えた場合でも、親御さんにとって有益な費用であれば、返してもらえるのが原則です。親御さんの意思に反して支払った分は、今も利益を受けている範囲に限られます。

実費精算は親御さんが負担する費用を払い直すもので、介護へのお礼とは別物です。ただし、実際にかかった金額を超えて受け取ると、超えた分はお礼とみなされる場合もあります。おむつ代や通院のタクシー代は月ごとにレシートをまとめ、記載された金額どおりに精算しましょう。

お礼として受け取るお金の贈与税

介護のお礼として親御さんから受け取るお金は、生活費として贈与税がかからない扱いになるとは限りません。親子の間で非課税になるのは、生活費や教育費として通常必要な範囲で、その都度直接充てるお金です。

お礼は生活費の範囲から外れる可能性があるため、贈与税の基礎控除に収まるかで判断するのが確実です。1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計が110万円以下なら、贈与税はかかりません(暦年課税の場合)。

月5万円のお礼なら年60万円ですが、月10万円なら年120万円となり、110万円を超える部分に贈与税がかかる場合があります。報酬として取り決めた場合は所得税の対象になる可能性もあるため、金額が大きいときは税務署に相談しましょう。

兄弟が出し合う介護費用の扱い

兄弟姉妹が出し合ったお金で親御さんの介護費を払う場合、通常必要な範囲でその都度支払いに充てる分は、贈与税の対象になりません。親子や兄弟姉妹は互いに扶養する立場にあり、扶養のための生活費や治療費には非課税の扱いがあるためです。

注意したいのは、何年分かをまとめて渡し、使わずに貯めておく場合です。生活費や介護費に充てずに預金となった部分は、贈与税の課税対象になります。

それに対して、介護を担う兄弟姉妹へ毎月払う手当は、親御さんの介護費ではなくお礼の性質をもちます。分担金と手当は、口座や帳簿を分けましょう。贈与税の基礎控除の年110万円は受け取る人ごとの1年間の合計で判定するため、親御さんからのお礼も含めて収まるかを確かめておくとよいでしょう。

関連記事:親の老人ホーム費用を仕送りすると贈与税は?非課税になる条件と注意点

親の介護でもらうお金はいくらが妥当?

介護の対価に公的な基準や決まった相場はなく、受け取る金額はご家族で話し合って決めるほかありません。迷ったときは、実費と介護にかけた時間、親御さんの資産の順に考えると、金額の根拠を説明できます。

ここでは、3つの考え方ごとに金額の目安と決め方を紹介します。

実費として受け取る金額

受け取る金額の土台になるのは、介護のために立て替えた実費です。実費は上乗せも値引きもせず、かかった金額をそのまま精算し、お礼とは分けて扱います。

  • 実費に含める主な支出は、次のとおりです。
  • 通院や買い物に付き添う交通費
  • おむつや介護用品の購入費
  • 介護サービス利用料の立て替え分
  • 病院で立て替えた医療費
  • 実家との往復にかかるガソリン代

ご自身の用事と兼ねた移動は、介護に使った分だけを数えましょう。レシートのない支出も、日付と金額と使い道をメモしておけば精算の根拠になります。精算日を月末などに決めると、立て替えた分があいまいになるのを防げます。

介護にかけた時間に見合う金額

実費とは別にお礼を受け取るなら、介護にかけた時間を目安にする方法があります。家事や介護などの無償の労働も、かかった時間に時間あたりの賃金をかけて金額に置き換えられます。

時給の参考になるのが、お住まいの地域の最低賃金です。たとえば、大阪府の最低賃金は2026年9月時点の時給1,177円から、同年10月1日に1,231円へ上がります。

週10時間を4週続けると月40時間で、1,177円をかけると4万7,080円です。ただし、最低賃金は雇われて働く人の賃金の下限で、ご家族間のお礼に当てはめる基準ではありません。試算した金額は話し合いの材料として使い、実際の額は親御さんの資産とあわせて決めましょう。

親の資産から考える上限額

お礼の上限は、親御さんがこれからの介護費や生活費を払い続けられる分を残した範囲に収めます。介護の費用は親御さんの資産から払うのが原則で、お礼で資産を減らしすぎると、施設に移る必要が出たときに費用が足りなくなります。

上限を考えるときは、次の4つを書き出してみましょう。

  • 年金など毎月の収入
  • 預貯金の残高
  • 今後の介護費の見込み
  • 施設に移る場合の費用

お礼の額は、親御さんの財産の状況に照らして過大にならない範囲にとどめ、ほかの兄弟姉妹にも説明できる額にしましょう。毎月の収入から払える額を上限にしておけば、預貯金を取り崩さずに介護費を払い続けられるでしょう。

親の介護費用で揉めない記録の残し方

親御さんのお金を扱うなら、あとで使い道を聞かれたときに答えられる記録を残しておきましょう。記録があれば、兄弟姉妹から使い込みを疑われる心配が減り、受け取ったお金の根拠も示せます。

ここでは、お金の管理と支出の記録、介護の時間の記録に分けて、残し方を紹介します。

親のお金を家計と分けて管理する

親御さんのお金は、ご自身の家計と混ぜずに管理しましょう。家庭裁判所も成年後見人に対し、ご本人の収支を後見人や親族のお金と区別し、あとで説明できる記録を残すよう求めています。

税金の面でも、混ぜない管理が必要です。親御さんのお金をご自身名義の口座に移しておくと、名義にかかわらず親御さんの財産と判断され、相続税の申告に含める必要が出る場合があります。

介護費は親御さん名義の口座から払い、現金は専用の財布に分けると、お金の出入りをたどれます。年金が振り込まれる口座から介護費を払うようにすれば、収入と支出を1冊の通帳で確かめられるのも利点です。管理の方法は、兄弟姉妹とも共有しておきましょう。

出納帳と領収書で使い道を残す

親御さんのお金を使ったら、お金の出入りを日付順に書く金銭出納帳に記録し、領収書やレシートを保管しましょう。数万円をまとめて引き出して、いくつもの支払いに充てるときほど、出納帳の記録が必要になります。

出納帳には、次の項目を記入します。

  • 日付
  • 金額
  • 支払先
  • 使い道
  • お金の出どころ

お金の出どころには、親御さんの口座から払ったのか、ご家族が立て替えたのかを記載します。少額の支出もその日のうちに書いておくと、記入漏れを防げます。

レシートは月ごとに台紙に貼り、出納帳の行と番号でつなげておきましょう。表計算ソフトで出納帳を作れば兄弟姉妹とも共有でき、毎月の報告にも使えます。

関連記事:親の介護で兄弟姉妹トラブル|役割分担や費用でもめないための解決策

介護にかけた時間を日誌につける

お金の記録とあわせて、介護にかけた時間も日誌に残しておきましょう。時間の記録があれば、お礼の金額を話し合うときに根拠を示せるうえ、相続で介護の貢献を主張する場面でも、実態を伝える材料になります。

日誌には、日付と時間帯、実際に行った介護の内容を1行ずつ書きます。「9月3日・9〜11時・通院の付き添い」「9月5日・18〜19時・夕食と服薬の介助」のように、短い書き方で十分です。

記録は、スマートフォンのメモやカレンダーを使えば、外出先でもその場でつけられます。通院の予約票やケアマネジャーとの連絡メモも、日誌の内容を裏づける資料として役立つでしょう。

親の介護のお金を家族で取り決める手順

受け取る金額や分担は、親御さんと兄弟姉妹で話し合って決め、書面に残しておくと揉めごとを防げます。話し合いの前に材料をそろえ、決めた内容を全員で共有するまでが一連の流れです。

ここでは、一覧づくりから覚書の共有までを、3つの手順に分けて解説します。

かかった費用と時間を一覧にする

話し合いの前に、これまでにかかった費用と介護の時間を一覧にまとめましょう。金額と時間が数字で並んでいれば、介護を担う方の負担が兄弟姉妹にも伝わり、感情的な口論を避けられます。

一覧には、次の4つを月ごとに並べます。

  • 立て替えた実費
  • 親御さんの口座から払った介護費
  • 介護に使った時間
  • 今後かかる費用の見込み

材料になるのは、前の章で紹介した出納帳と日誌で、月ごとに合計するだけで一覧の数字がそろいます。今後の見込みには、介護度が上がった場合や施設に移る場合の費用も入れておきましょう。親御さんの年金や預貯金の額も添えておけば、お礼や分担をどこまで出せるかを同じ資料で話し合えます。

負担の分け方を話し合って決める

一覧がそろったら、お金を出す役割と介護を担う役割を組み合わせて、分担を決めていきます。民法でも、扶養の程度や方法はまず当事者の話し合いで決め、まとまらないときに家庭裁判所が定める決まりです。

分け方には、介護を担う方にほかの兄弟姉妹が毎月一定額を払う方法や、デイサービスの費用を介護しない側が負担する方法があります。遠方に住む兄弟姉妹が、月1回の通院の付き添いを受け持つ分け方も考えられます。

話し合いでは、親御さんの希望も必ず聞いておきましょう。今後のサービス内容や費用の見込みを事前にケアマネジャーに確認しておくと、条件を数字で比較できます。兄弟姉妹だけでは感情的になりそうなときは、弁護士などの専門家に同席を相談する方法もあります。

関連記事:介護の「きょうだい格差」はなぜ起こる?「介護する側」と「しない側」の不満やトラブルの解決策

決めた内容を覚書にして共有する

話し合いで決めた内容は覚書にまとめ、親御さんと兄弟姉妹が1部ずつ保管しておきましょう。口約束のままだと、年月がたって記憶が食い違い、相続のときに「そんな約束は聞いていない」と揉める原因になります。

覚書に入れておきたい項目は、次のとおりです。

  • お礼の金額と支払日
  • 実費の精算方法
  • 親御さんのお金を管理する人
  • 兄弟姉妹それぞれの分担額
  • 内容を見直す時期

書式に決まりはなく、全員の署名と日付を入れておけば、あとで内容を確かめる手がかりになります。介護度が上がって負担が変わったときは、改めて話し合い、覚書を今の状況に沿った内容に作り直すとよいでしょう。

親の介護でもらうお金が相続に与える影響

介護の貢献は、相続のときに「寄与分」や「特別寄与料」として評価される場合があります。ただし、介護の対価といえる額のお礼を生前に受け取っていると、こうした評価が認められにくくなる点に注意が必要です。

ここでは、受け取ったお金が相続でどう扱われるかと、生前に受け取るか相続を待つかの考え方を見ていきます。

受け取ると寄与分が認められにくい理由

寄与分は、親御さんの療養看護などで財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人が、その分を上乗せして相続できる制度です。協議でまとまらなければ、家庭裁判所の調停や審判で額を決める流れです。

民法の条文に「無償」の文言はありませんが、裁判例には、無償で担った介護を特別の寄与と認めた例があります。介護の対価を十分に受け取っていると、すでに報われたと見られ、寄与分は認められにくくなります。

相続開始から10年を過ぎた遺産分割では、原則として寄与分を主張できません(2023年4月1日施行)。施行日より前に始まった相続にも適用されますが、少なくとも施行から5年の猶予期間があります。10年がたつ前に家庭裁判所へ遺産分割を請求した場合などは例外のため、早めに動きましょう。

関連記事:親の介護をしたら遺産は多くもらえる?相続の「寄与分」とトラブル回避のための生前対策を解説

子の配偶者が請求できる特別寄与料

長男の妻など相続人ではない親族が、無償で親御さんを介護して財産の維持や増加に特別な貢献をした場合は、相続人に特別寄与料を請求できます。この制度の対象は2019年7月1日以降に始まった相続で、条文でも「無償で」が要件です。

そのため、介護の対価といえる額のお礼を受け取っていた場合は、請求が認められない可能性があります。特別寄与料の額は相続人との協議で決め、まとまらなければ家庭裁判所に判断を求めます。

家庭裁判所に請求できる期限は、相続の開始と相続人を知ったときから6か月以内、かつ相続開始から1年以内です。受け取った特別寄与料は遺贈で得たものとみなされ、相続税の対象になる点も覚えておきましょう。

生前に受け取るか相続を待つかの判断

お礼を生前に受け取るか、相続で寄与分として評価を求めるかは、先に方針を決めておくと迷いません。生前に受け取れば金額は手元に残りますが、介護に見合う額を受け取っていれば、相続で寄与分を求める根拠は弱くなります。

相続を待つ場合、寄与分はほかの相続人との協議や家庭裁判所の判断で決まるため、望む額になるとは限りません。親御さんに判断能力があるうちなら、遺言で介護への感謝を財産の分け方に反映してもらう方法もあります。

どの方法でも、親御さんの考えを聞いて兄弟姉妹に伝えておきましょう。選んだ方法を覚書に残しておけば、相続のときに介護の貢献を巡って揉める心配が減るでしょう。

親の介護で使える公的制度

介護を担うご家族が使える公的制度には、仕事を休む間の給付金や、税金の負担を軽くする控除があります。条件は制度ごとに細かく決まっているため、当てはまりそうなものから詳しい内容を確かめましょう。

ここでは、介護休業給付金と家族介護慰労金に加え、3つの控除の要点を紹介します。

介護休業給付金

雇用保険に入っている会社員などが、親御さんなど家族の介護のために介護休業を取ると、休業中に介護休業給付金を受け取れます。主な条件として、休業を始める前の2年間に、雇用保険の被保険者として働いた期間が12か月以上必要です。

支給額は、休業開始時の賃金日額×支給日数×67%で計算します。休業前の賃金が月30万円なら1か月あたりおよそ20万円が目安で、支給額の上限は2026年8月1日以降、1か月あたり366,222円です。

同じ家族について通算93日を限度に、3回まで分けて受け取れます。給付を受けるには介護休業を取るのが前提になるため、介護が始まったら早めに勤務先の担当部署へ申し出ておきましょう。

家族介護慰労金

家族介護慰労金は、要介護度の重い親御さんを介護保険のサービスを使わずに在宅で介護している家族を慰労するため、自治体が支給する制度です。国の要綱では、要介護3以上の方を1年間サービスを使わずに介護している家族が対象で、所得や金額の定めはありません。

地域の実情に応じて、一定の認知症がある要介護2の方や、福祉用具の利用だけの場合も対象にできます。実施するかどうかも含めて自治体の判断に任されており、要介護4・5や住民税非課税世帯を条件に年額10万円を支給する自治体もあります。サービスを使わない前提の制度のため、お住まいの自治体窓口で有無と条件を確かめ、ご家族の負担と比較して検討しましょう。

扶養控除と障害者控除

親御さんと生計を一にし、親御さんの合計所得金額が一定以下なら、扶養控除を受けられます。所得の上限は2025年分が58万円以下で、2026年分以降は62万円以下への引き上げが決まっています(2026年12月1日施行)。

70歳以上の親御さんの場合、所得税の控除額は48万円で、同居していれば58万円です。扶養親族にあたる65歳以上の親御さんが要介護認定を受けていれば、自治体から障害者控除対象者の認定を受けて障害者控除の対象になる場合があります。

障害者控除の額は所得税で27万円、特別障害者なら40万円、同居の特別障害者なら75万円です。認定の申請先はお住まいの自治体の窓口で確かめ、年末調整や確定申告で忘れずに控除を受けましょう。

医療費控除

親御さんと生計を一にするご家族が親御さんの医療費を払った場合は、その分もご自身の医療費控除に含められます。1年間に払った医療費から保険金などで補てんされる分を引き、10万円(総所得金額等が200万円未満なら5%)を超えた額が対象で、上限は200万円です。

おむつ代は、医師などが発行する「おむつ使用証明書」があれば対象になります。要介護認定を受けていれば、自治体が主治医意見書の内容を確認した書類などで代えられる場合もあります。

施設の費用は、特別養護老人ホームなら自己負担額の2分の1、介護老人保健施設と介護医療院なら自己負担額の全額が対象です。理美容代などの日常生活費は含まれないため、領収書を1年分保管しておくと、申告のときに慌てずにすむでしょう。

施設で暮らす親を支える場合の対価

親御さんが施設に入ったあとも、手続きや通院の付き添いなど、ご家族が担う役割は続きます。お金を受け取るときは、在宅介護のときと同じく、親御さんの同意と実費の精算、記録の3つを原則にしましょう。

ここでは、施設で暮らす親御さんを支えるときの手間と出費、受け取り方を紹介します。

家族に残る手間と出費

施設の費用とは別に、ご家族には時間と交通費がかかる役割が残ります。日常の介護は施設が担っても、次のような役割はご家族が引き受けるケースが少なくありません。

  • 施設や病院での手続き
  • 通院の付き添い
  • 日用品や衣類の補充
  • 施設からの連絡への対応

身寄りのない高齢者を支える民間のサービスでは、こうした手続きの代行や通院の付き添いを有料で引き受けています。ご家族が担う場合も同じ手間がかかるため、施設に入ったあとの役割も、実費とお礼を考える対象に含まれます。交通費は実費として出納帳に、手続きや付き添いの時間はお礼の目安として日誌に記録しておきましょう。

関連記事:介護施設・老人ホーム入居後に家族が担うサポートや役割

施設費用を払ったうえでの受け取り方

施設で暮らす親御さんからお金を受け取るときは、施設の費用を年金や預貯金から払ったうえで、残る範囲から実費とお礼を考えます。施設の月額費用は暮らしている間ずっと続くため、お礼を優先して預貯金を減らすと、支払いが続けられなくなる恐れがあります。

親御さんのお金は、施設の費用と医療費や日用品代を先に払い、立て替えた実費、お礼の順で使いましょう。お礼の額は、施設で暮らす年数を見込んだうえで、預貯金を取り崩さない範囲が目安です。

施設の請求書と出納帳を毎月突き合わせておけば、親御さんのお金の流れを兄弟姉妹にも説明できます。

関連記事:介護費用を親の年金だけでまかなえない場合の対策ガイド|不足分は誰が負担するのか扶養義務や節約術を解説

親の介護のお金でよくある質問

最後に、親御さんの介護のお金で判断に迷う3つの質問をまとめました。いずれも税金や銀行、家庭裁判所の決まりを知っておくと、落ち着いて対応できます。

ここでは、それぞれの質問について、順に回答します。

同居する親から生活費を受け取ってもいい?

同居する親御さんから、食費や光熱費など暮らしにかかる費用の分担を受け取るのは問題ありません。分担額は、ご家族の人数で割るなどの方法で先に決めておくと、あとで説明がつきます。

税金の面では、親子など扶養する立場の間で、生活費として通常必要な分をその都度渡すお金に贈与税はかかりません。ただし、何年分かをまとめて受け取り、使わずに貯金へ回した分は、贈与税の対象になる場合があります。

生活費の分担は、介護のお礼とは別の項目として出納帳に記録しましょう。分担とお礼を分けておけば、兄弟姉妹から見ても、何のお金かがひと目でわかります。

親のキャッシュカードで代わりに引き出してもいい?

預金の払い出しには、原則として名義人である親御さんの意思確認が必要です。親御さんに判断能力があるうちに、銀行へ代理人の届出をしたり、家族用の代理人カードを作ったりすると、代わりに引き出せるようになります。

代理人カードの発行条件や手続きは、銀行ごとに異なります。取引のある銀行の窓口で、親御さんと一緒に確かめておきましょう。

判断能力が衰えたあとは、成年後見制度を使い、後見人が手続きを担います。後見制度を使っていない場合にご家族の依頼に応じるかは銀行の判断で、応じるとしても医療費の支払いなど親御さんの利益になるのが明らかな場面に限られます。

関連記事:施設に入った親の通帳はどう管理する?介護施設の通帳預かりと家族ができること

兄弟がお金を出さない場合、どうすればいい?

兄弟姉妹が介護費を出さないときは、まず費用と介護の時間をまとめた一覧を見せ、分担を改めて話し合いましょう。それでもまとまらない場合は、家庭裁判所の扶養請求調停を利用できます。

扶養請求調停は、親御さんの扶養についてご家族の協議がまとまらないときに、家庭裁判所で話し合う手続きです。扶養する側の兄弟姉妹も申し立てられ、費用は親御さん1人につき収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手です。

調停では、それぞれの経済状況や生活状況、親御さんの意向なども考慮されます。これまでの出納帳や日誌を持参すれば、介護を担ってきた負担を伝える材料になるでしょう。

まとめ

親の介護でお金をもらうのは、判断能力のある親御さんが納得していれば違法ではありません。ただし、同意のない引き出しや目的外の使い道は、返すよう求められたり相続で揉めたりする原因になります。

金額は実費を全額精算したうえで、介護にかけた時間と親御さんの資産からお礼の上限を考えましょう。出納帳と日誌で記録を残し、決めた内容を覚書にして兄弟姉妹と共有しておくと安心です。

まずは今月の立て替えと介護の時間を書き出し、ご家族で話し合う材料をそろえましょう。施設への住み替えや介護のお金に不安があるときは『笑がおで介護紹介センター』へご相談ください。

参考サイト

このコラムの監修者

花尾 奏一(はなお そういち)

保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

有料老人ホームにて介護主任を10年 
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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