介護保険の支給限度額を超えた場合はどうなる?請求の内訳と支払い先を解説

今月届いた介護サービスの請求書が、いつもより高くて驚いていませんか?明細に「全額自己負担」の行があり、何にいくら払うのか戸惑っているご家族もいるのではないでしょうか?
介護保険の支給限度額を超えた場合、超えた分は保険が使えず全額自己負担になり、高額介護サービス費の払い戻しも受けられません。支給限度額(正式には区分支給限度基準額)を超えた分の支払い先は、超過分が割り振られたサービスの事業所です。
この記事では、請求の内訳の読み方と超過額の計算方法、来月から限度額内に収める対策やケアマネジャーへの相談の仕方まで解説します。この記事を読めば、今月いくらを誰に払うのかがわかり、来月からの対策を一つ選んでケアマネジャーに相談できるでしょう。
※本記事は2026年9月時点の情報をもとに作成しています。2027年度の介護報酬改定に向けた議論が進んでおり、単位数や単価が見直される可能性があります。
介護保険の支給限度額とは
介護保険の支給限度額は、自宅で暮らしながら使う介護サービスに、保険が使える1か月の上限です。正式には区分支給限度基準額と呼ばれ、要介護度ごとに、サービスの費用を点数で表す「単位」で決められています。
ここでは、要介護度別の限度額と限度額に含まれるサービス、名前の似た負担限度額との違いを見ていきます。
要介護度別の支給限度額
支給限度額は要介護度が重いほど高く、1か月あたりの単位数で決まっています。1単位10円の場合の金額とあわせると、次のとおりです。
| 要介護度 | 1か月の限度額 | 1単位10円の場合 |
|---|---|---|
| 要支援1 | 5,032単位 | 50,320円 |
| 要支援2 | 10,531単位 | 105,310円 |
| 要介護1 | 16,765単位 | 167,650円 |
| 要介護2 | 19,705単位 | 197,050円 |
| 要介護3 | 27,048単位 | 270,480円 |
| 要介護4 | 30,938単位 | 309,380円 |
| 要介護5 | 36,217単位 | 362,170円 |
表の金額は、保険が使えるサービスの総額の上限です。実際に払うのはその1〜3割で、1単位10円の地域で1割負担なら、要介護3で限度額いっぱいまで使っても自己負担は27,048円に収まります。単価が10円より高い地域では、同じ単位数でも金額が上がります。
関連記事:介護保険の負担割合とは?介護サービスごとの自己負担額を解説
限度額に含まれるサービス
支給限度額の対象になるのは、自宅で暮らしながら使う居宅サービスと、小規模多機能型居宅介護などの地域密着型サービスです。毎月のケアプランに組み込まれるサービスの多くが、この枠の中で数えられます。
限度額の中で数える主なサービスは、次のとおりです。
- 訪問介護(ホームヘルプ)
- 通所介護(デイサービス)
- 短期入所(ショートステイ)
- 福祉用具の貸与
- 介護保険で使う訪問看護
ショートステイも通いや訪問と同じ枠で数えるため、泊まりの日数が増えるほど限度額を早く使い切ります。しかし、特養などの施設サービスと、グループホーム・介護付き有料老人ホームなどの居住系サービス(短期利用を除く)は限度額の対象外です。
医師などが自宅を訪ねる居宅療養管理指導も、限度額には数えません。枠の外で使えるサービスは、後半の章でまとめて紹介します。
負担限度額との違い
名前が似ている負担限度額は、支給限度額とはまったく別の制度です。支給限度額は超えると負担が増える上限で、負担限度額は所得の低い方の負担を軽くするための上限です。
2つの違いを整理すると、次のようになります。
| 項目 | 支給限度額 | 負担限度額 |
|---|---|---|
| 対象の費用 | 在宅の介護サービス | 施設の食費と居住費 |
| 決まり方 | 要介護度ごと | 所得と預貯金 |
| 確かめる書類 | 被保険者証 | 負担限度額認定証 |
負担限度額は、介護保険施設やショートステイを使う方の食費と居住費に設けられています。介護保険負担限度額認定証を提示すると、食費と居住費がその額までになります。明細や通知に「限度額」とあったら、どちらの制度の話かを見分けてから読みましょう。
関連記事:介護保険負担限度額認定証とは?交付要件や申請方法についても解説
介護保険の支給限度額を超えた場合の扱い
支給限度額を超えて介護サービスを使うと、超えた分には介護保険が使えません。1〜3割で済んでいた負担が、超えた部分だけは10割になります。
ここでは、超過分が全額自己負担になる仕組みと、高額介護サービス費で払い戻されない点を解説します。
超過分の全額自己負担
支給限度額を超えた分は介護保険の給付の対象外で、費用の全額が自己負担です。保険が使えるのは限度額の範囲までと、介護保険法で決められているためです。
たとえば、1割負担の方が限度額を1万円分超えた場合、超えた部分は1,000円ではなく1万円をそのまま払います。限度額内で払う1〜3割の負担はそのままで、そこに超過分が上乗せされる仕組みです。
限度額は月ごとの上限のため、ショートステイが重なった月や、体調を崩して訪問の回数が増えた月だけ超える場合もあります。請求額が普段より高い月は、全額自己負担の分が含まれていないか明細で確かめましょう。
関連記事:介護保険の「自己負担額」は年収で変わる|1割・2割・3割の負担割合の仕組みと判定基準
高額介護サービス費の対象外
限度額を超えて全額自己負担した分は、高額介護サービス費の払い戻しの対象になりません。高額介護サービス費は、1か月における1〜3割の負担のうち、所得に応じた上限額を超えた分が戻る制度で、支給限度額を超えた分はその計算に含まれません。
高額介護サービス費の計算に含まれない主な費用は、次のとおりです。
- 支給限度額を超えた分の利用料
- 福祉用具の購入費
- 住宅改修費
- 施設での食費や居住費
「高額になった分はあとで戻る」と考えて同じ使い方を続けると、超過分の支払いが毎月重なります。早めに使い方を見直したほうが、家計の負担を抑えられるでしょう。
支給限度額を超えた場合の請求の内訳
限度額を超えた月の請求の中身は、保険が使える分と全額自己負担の分の2種類です。どのサービスが全額自己負担に回されたかで金額も変わるため、仕組みを知っておくと明細を読み解けます。
ここでは、全額自己負担になるサービスの決まり方や、2種類の見分け方、支払い先と時期を順に解説します。
全額自己負担になるサービスの決まり方
超えた単位をどのサービスの分として全額自己負担に回すか(振り分け)は、ケアマネジャーが毎月作るサービス利用票別表に記載されます。別表はケアプランの月ごとの明細にあたる書類で、その月に超えた単位数を、利用したサービスごとに割り振って記載する欄があります。
振り分けで押さえたいのは、割り振り先によって超過分を払う事業所と金額の両方が変わる点です。全額自己負担の額は「割り振られた単位数×そのサービス1単位の単価」で決まり、単価はサービスの種類と事業所の所在地によって異なります。
どのサービスの分が全額自己負担になったかは、別表の「利用者負担(全額負担分)」の欄で確かめましょう。
保険適用分と全額自己負担分の区別
限度額を超えた月の利用者負担は、保険が使える「保険対象分」と、10割を払う「全額負担分」の2つに分けて計算します。保険対象分は限度額内の費用の1〜3割、全額負担分は超えた単位数に1単位の単価を掛けた額です。
限度額内の費用は、事業所が国民健康保険団体連合会(国保連)の審査を経て保険から受け取り、利用者は残りの1〜3割だけを払います。超えた分には保険からの支払いがないため、その費用は利用者が全額を払う仕組みです。
サービス利用票別表でも、2つの分は別々の欄に記載されています。請求書のどの行がどちらの分かわからないときは、別表の金額と照らし合わせると見分けがつきます。
超過分の支払い先と時期
全額負担分は、超過分が割り振られたサービスの事業所に支払います。自治体や国保連に払うお金ではなく、普段の1〜3割と同じく、サービスを提供した事業所への支払いです。
支払いの時期は、事業所の徴収方法によって変わります。利用のたびに払う事業所もあれば、1か月分をまとめて請求する事業所もあるため、請求の時期と支払い方法を事業所に聞いておきましょう。
事業所には、利用料を受け取ったときに領収証を渡す決まりがあります。領収証は医療費控除を申告するときにも使うため、全額負担分を払った月の分もまとめて保管しておくと、あとで探す手間が省けます。
支給限度額を超えた分の計算方法
超過分の金額は、超えた単位数と1単位の単価がわかれば、ご家族でも計算できます。請求書の金額が妥当かを確かめたいときにも役立つ手順です。
ここでは、超えた単位数の確かめ方と円への換算方法を説明し、要介護3を例に試算します。
超えた単位数を確認する
超えた単位数は、サービス利用票別表の「区分支給限度基準を超える単位数」の欄に記載されています。同じ別表の「区分支給限度基準額」の欄にある数字が、親御さんの要介護度の限度額です。
別表が手元にない場合も、使ったサービスの単位数を合計し、限度額を引けば超過分の目安はつかめます。ただし、次のような加算は限度額の計算に入りません。
- 介護職員等処遇改善加算
- 特別地域加算
- 緊急時訪問看護加算
- ターミナルケア加算
手計算の単位数が別表と合わないときは、こうした計算に入らない加算が含まれている可能性があります。別表の写しがなければ、ケアマネジャーに頼んで見せてもらいましょう。
地域ごとの単価で円に換算する
単位を円に直すときは、1単位の単価を掛けます。単価は10円が基本ですが、人件費の地域差を反映するため、地域の区分(級地)とサービスの種類によっては10円より高く設定されています。
級地ごとの単価の例は、次のとおりです。
| 地域の区分 | 訪問介護など | 通所介護など |
|---|---|---|
| 2級地 | 11.12円 | 10.72円 |
| 5級地 | 10.70円 | 10.45円 |
| その他 | 10円 | 10円 |
同じ地域でも、人件費の割合が高いサービスほど単価は高くなります。1単位10円のまま計算すると、都市部では実際の請求より少なく見積もってしまいます。
現在の級地は2024〜2026年度の区分で、2027年度以降はまだ決まっていません。利用している事業所がある地域の級地やサービスごとの単価は、担当のケアマネジャーや自治体の介護保険の窓口に確認しましょう。
要介護3の例で試算する
要介護3で1割負担の親御さんが、限度額を3,000単位超えた月を例に計算します。使ったサービスの単価をすべて2級地の訪問介護と同じ11.12円とすると、計算は次のとおりです。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 限度額内の負担 | 27,048単位×11.12円×1割 | 約3万円 |
| 超過分 | 3,000単位×11.12円 | 33,360円 |
| 合計 | 上の2つを足した額 | 約6万3,400円 |
限度額内の負担が約3万円なのに対し、超えた3,000単位分だけで3万円を超え、請求は2倍以上に増えます。同じ使い方でも、1単位10円の地域なら合計は57,048円で、単価の違いだけで6,000円以上の差が出る計算です。
実際の請求額は、利用したサービスごとの単価や加算によって前後します。別表の金額も月の予定で計算するため、請求額と一致しない月があります。
支給限度額を超えた月の負担軽減制度
限度額を超えた月でも、1〜3割の負担を中心に、利用できる制度があります。制度ごとに対象になる費用を見分けて、漏れなく申請しましょう。
ここでは、高額介護サービス費と高額医療・高額介護合算療養費、医療費控除の3つを紹介します。
1〜3割負担分に使える高額介護サービス費
高額介護サービス費は、限度額を超えた月も、限度額内の1〜3割の負担には使えます。1か月の1〜3割の自己負担が上限額を超えると、超えた分が払い戻される制度です。
上限額は所得に応じて、次のように決まっています。
| 所得の区分 | 1か月の上限額 |
|---|---|
| 課税所得690万円以上 | 140,100円(世帯) |
| 課税所得380万〜690万円未満 | 93,000円(世帯) |
| 住民税課税で課税所得380万円未満 | 44,400円(世帯) |
| 世帯全員が住民税非課税 | 24,600円(世帯) |
| 非課税世帯で年金収入等82.65万円以下 | 24,600円(世帯)/15,000円(個人) |
| 生活保護を受けている方など | 15,000円(個人) |
超過分の支払いは、この上限の計算に入りません。2回目以降は申請なしで振り込まれる自治体もあるため、手続きを確かめておきましょう。
関連記事:【高額介護サービス費】介護費用の「払いすぎ」が戻ってくる?申請方法や上限額を解説
高額医療・高額介護合算療養費
高額医療・高額介護合算療養費は、医療保険と介護保険の1年間の自己負担を合計し、年間の限度額を超えた分が戻る制度です。医療と介護の両方に自己負担がある世帯が対象のため、親御さんが通院や入院で医療費も払っているなら確かめておきましょう。
計算期間は毎年8月1日から翌年7月31日までで、合算の限度額を超えた額が500円を超える場合に支給されます。70歳以上の方の場合、年間の限度額は所得に応じて次のとおりです。
| 所得の区分 | 年間の限度額 |
|---|---|
| 課税所得690万円以上 | 212万円 |
| 課税所得380万〜690万円未満 | 141万円 |
| 課税所得145万〜380万円未満 | 67万円 |
| 住民税課税で課税所得145万円未満 | 56万円 |
| 住民税非課税の世帯 | 31万円 |
| 住民税非課税で所得が一定以下 | 19万円 |
申請先は、7月31日の時点で加入している医療保険です。後期高齢者医療制度や国民健康保険に加入している方は、自治体の担当窓口で手続きしましょう。
医療費控除の対象になる費用
介護サービスの自己負担は、条件を満たせば確定申告の医療費控除に含められます。対象になるのは、訪問看護や通所リハビリテーションなどの医療系サービスの自己負担と、医療系サービスとあわせて使う訪問介護や通所介護などの自己負担です。
ただし、次の費用は医療費控除の対象になりません。
- 生活援助が中心の訪問介護
- 福祉用具の貸与
- グループホームの利用料
- 有料老人ホームの利用料
控除の対象になる金額は、事業所が発行する領収証に記載されます。高額介護サービス費で払い戻された分は、医療費から差し引いて計算します。限度額を超えて払った分の扱いも含め、判断に迷うときは領収証の記載を確かめたうえで、税務署に問い合わせましょう。
関連記事:介護保険サービスは医療費控除の対象?対象・対象外一覧と申告手順
介護保険の支給限度額を超えないための対策
来月から限度額内に収めるには、サービスの使い方を見直す方法と、要介護度そのものを見直す方法があります。どちらも親御さんの暮らしに関わるため、ケアマネジャーと相談しながら進めるのが基本です。
ここでは、デイサービスや訪問介護の回数、ショートステイの日数の見直しと、区分変更の申請を解説します。
デイサービスや訪問介護の回数を調整する
限度額を超えた月は、どのサービスの回数が増えていたかを確かめ、回数を少し減らせないか検討しましょう。1回あたりの単位数が大きいサービスほど、1回減らしたときに空く枠も大きくなります。
たとえば、要介護3の方が通常規模のデイサービスを7時間以上8時間未満で使うと、1割負担の目安は1回900円です。1単位10円の地域なら、900単位にあたります。週1回減らせば月に3,600単位ほど空くため、3,000単位の超過を試算した例なら限度額内に収まる計算です。
訪問介護は時間で単位数が変わり、身体介護の1割負担の目安は30分以上1時間未満で387円、20分以上30分未満なら244円です。ただし、回数や時間を減らした分はご家族の介護が増えるため、負担とのバランスを見てケアマネジャーと決めましょう。
関連記事:要介護1で使えるデイサービス利用回数の上限は?平均回数と利用限度額も解説
ショートステイの日数を見直す
ショートステイは限度額の内側で数えるため、泊まりの日数が増えるほど枠を大きく使います。要介護3の方が併設型の多床室を使う場合、1割負担の目安は1日745円で、1単位10円の地域なら1日745単位にあたります。
10日泊まれば7,450単位となり、限度額27,048単位の3割近くを占める計算です。日数を減らせないか、次の点を見直してみましょう。
- 連続の泊まりを分けられないか
- 通いのサービスで代えられないか
- ご家族が自宅で介護できる日はないか
泊まりが長く続くと、デイサービスや訪問介護に回せる単位が減り、ほかのサービスで限度額を超える原因になります。介護保険で連続して利用できるのは30日までで、それを超えた日は保険が使えない点にも注意しましょう。
関連記事:ショートステイの30日ルールとは?31日目の自己負担額と回避策を解説
要介護度の区分変更を申請する
親御さんの心身の状態が、認定を受けたときより重くなっているなら、有効期間の途中でも要介護度の区分変更を申請できます。要介護度が上がれば限度額も上がり、要介護3から要介護4になると、月の枠は27,048単位から30,938単位に増えます。
区分変更の認定は申請した日にさかのぼって効力が生じ、結果は原則として申請から30日以内に出る決まりです。状態の変化に気づいたら早めに申請したほうが、新しい限度額を早く使えます。
ただし、認定の結果は審査で決まるため、希望どおりに上がるとは限りません。申請中のサービスの組み方も含めて、担当のケアマネジャーと相談してから申請しましょう。
関連記事:要介護認定の更新手続き完全ガイド|期間・流れと区分変更申請との違いを徹底解説

支給限度額の枠外で使えるサービス
介護保険には、支給限度額に数えないサービスや、限度額とは別の上限をもつサービスがあります。同じ支援を枠の外へ移せれば、限度額の中のサービスを減らさずに済む場合もあります。
主なサービスと限度額との関係は、次のとおりです。
| サービス | 限度額との関係 |
|---|---|
| 居宅療養管理指導 | 限度額に数えない |
| 福祉用具の購入 | 年度10万円の別枠 |
| 住宅改修 | 20万円の別枠 |
| 医療保険の訪問看護 | 介護保険の枠外 |
| 自治体の独自サービス | 自治体ごとに異なる |
ここでは、それぞれのサービスを使える条件と、置き換えを考えるときのポイントを紹介します。
医師や薬剤師による居宅療養管理指導
居宅療養管理指導は、医師や薬剤師などが通院の難しい方の自宅を訪ね、療養上の管理や助言をするサービスです。介護保険のサービスで1〜3割の負担はかかりますが、支給限度額には数えません。
訪問するのは医師のほか、歯科医師や薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士などです。薬の飲み忘れや飲み残しが気になる場合は、薬剤師の訪問で薬の管理について助言を受けられます。
限度額の中のサービスを減らさずに専門職の訪問を増やせる点が、置き換えを考えるうえでの利点です。薬剤師などの訪問には医師や歯科医師の指示が必要なため、主治医やケアマネジャーに相談してみましょう。
関連記事:居宅療養管理指導とは?在宅介護での利用条件や費用、専門職の役割を解説
福祉用具の購入
入浴や排せつに使う用具などの購入費は、支給限度額とは別に、年度ごとに10万円まで介護保険が使えます。原則は、購入時にいったん全額を払い、あとから9割(所得により8割・7割)が払い戻される仕組みです。自治体によっては、登録された事業者で買えば1〜3割の支払いで済む方式もあります。
購入の対象になる主な用具は、次のとおりです。
- 腰掛便座
- 入浴補助用具
- 簡易浴槽
- 固定用スロープ
- 歩行器(歩行車を除く)
レンタルと購入のどちらかを選べるのは、固定用スロープと歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖の4種類です。レンタル料は限度額に含まれるため、長く使う用具を購入に切り替えれば、その分の枠をほかのサービスに回せます。購入先は指定を受けた事業者に限られるため、切り替えはケアマネジャーに相談しましょう。
住宅改修
住宅改修も、福祉用具の購入と同じく支給限度額とは別の枠で介護保険が使えます。上限は20万円で、そのうち1〜3割が自己負担です。
対象になる主な工事は、次のとおりです。
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 床材の変更
- 扉の取り替え
- 便器の取り替え
工事のいらない置き型の手すりはレンタルの対象で、費用は毎月の限度額に含まれる扱いです。廊下やトイレに工事で手すりを取り付ければ住宅改修の扱いになり、レンタル分の単位を限度額から外せます。
転居したときや、介護の必要の程度が3段階以上重くなったとき(この場合は1回限り)は、もう一度20万円の枠を使えます。工事の前に申請が必要なため、業者と契約する前にケアマネジャーへ伝えておきましょう。
医療保険の訪問看護
要介護認定を受けた方の訪問看護は、原則として介護保険で利用し、支給限度額の中で数えます。ただし、条件にあてはまる場合は医療保険の訪問看護となり、その分は介護保険の限度額を使いません。
医療保険で訪問看護を受けられるのは、次の3つの場合です。
- 厚生労働大臣が定める疾病等がある
- 精神科訪問看護が必要(認知症を除く)
- 特別訪問看護指示の期間中
この疾病等には末期の悪性腫瘍(がん)やパーキンソン病関連疾患などが含まれ、病気によっては重症度の条件もあります。特別訪問看護指示は病状の悪化などで主治医が出すもので、原則として月1回、最長14日間です。
どちらの保険になるかは病名や主治医の指示で決まり、ご家族の希望で選ぶものではありません。あてはまるかどうかは、主治医や訪問看護ステーションに確認しましょう。
関連記事:訪問看護とは?介護保険・医療保険の違い・費用・利用条件をわかりやすく解説
自治体の独自サービス
自治体によっては、介護保険法に基づく制度や高齢者福祉の事業として、独自のサービスを用意しています。条例で支給限度額を国の基準より高く設定する制度や、市町村特別給付として独自の給付をする制度があります。
独自のサービスの例は、次のとおりです。
- 条例による限度額の上乗せ
- 紙おむつの給付
- 泊まりの超過分への給付
泊まりの超過分への給付では、介護している方の入院などでショートステイが限度額を超えるとき、超えた分を保険と同じ負担割合にしている自治体があります。紙おむつの給付では、要介護度や世帯の所得を条件にしている例があります。
制度の有無や条件は自治体によって大きく異なり、どこでも利用できるわけではありません。お住まいの自治体にある介護保険の窓口や、担当のケアマネジャーに確認してみるとよいでしょう。
支給限度額を超えたらケアマネジャーに相談する流れ
限度額を超えた月は、ケアマネジャーと一緒に今月の中身を確かめ、来月の組み方を考え直すタイミングです。聞く内容を順番に整理しておけば、限られた相談の時間でも必要な答えを引き出せます。
ここでは、相談の場でそのまま使える言葉とあわせて、確認したい4つの点を紹介します。
全額自己負担になったサービスを確認する
最初に確認したいのは、どのサービスの分が全額自己負担に回されたかです。振り分け先によって金額が変わるため、ここを押さえると請求額の理由がわかります。
相談の場では「今月、全額自己負担になったのはどのサービスの何単位分ですか?」と聞いてみましょう。「サービス利用票別表を見せてもらえますか?」とあわせて頼めば、振り分けの内訳を書面で確かめられます。
別表と請求書を並べて説明を受けると、どの行が全額負担分なのかを照らし合わせられます。振り分け先に疑問があれば、その場で理由を聞いておくと、来月のサービスの組み方を考える材料になるでしょう。
来月の利用見込みを確認する
次に確かめたいのは、来月も同じ使い方を続けると限度額を超えるのかどうかです。今月だけの超過なのか、毎月のように超える見込みなのかで、考えるべき対策が変わります。
「来月の予定のままだと、限度額まであと何単位残りますか?」と聞けば、来月の見込みを数字でつかめます。超える見込みなら「どのサービスが全額自己負担になりそうですか?」と続けて聞いておきましょう。ショートステイなど利用が増える予定がわかっているなら、あわせて伝えておくと見込みの精度が上がります。
毎月超える見込みなら、回数の調整や区分変更、施設の検討まで含めた話し合いが必要です。今月だけの一時的な超過であれば、使い方を大きく変えずに様子を見る判断もあるでしょう。
枠外に置き換えられるかを聞く
3つ目に、今使っているサービスの一部を限度額の外へ移せないかを聞きます。制度の細かな条件はご家族だけでは判断しにくいため、ケアマネジャーに候補を挙げてもらうと話が進みます。
- 置き換えの主な候補は、次の4つです。
- 一部の用具のレンタルから購入への切り替え
- 薬剤師による居宅療養管理指導
- 医療保険の訪問看護
- 自治体の独自サービス
相談の場では「今使っているサービスの中で、限度額の外に移せるものはありますか?」と聞いてみましょう。移せるかどうかは、親御さんの状態や主治医の判断、自治体の制度によって決まります。すぐに移せない場合も、候補を知っておけば次のケアプランの見直しで検討できます。
超えそうなときの連絡を頼む
最後に、この先限度額を超えそうな月があれば、事前に連絡してもらうよう頼んでおきましょう。超える前にわかれば、回数の調整やショートステイの日程変更など、選べる対策が増えます。
「限度額を超えそうな月は、予定を組む前に教えてください」と伝えておくと、請求書を受け取ったときに慌てずに済みます。あわせて「自己負担は月◯万円までに抑えたい」と上限の金額を伝えると、その範囲でプランを考えてもらえるでしょう。連絡は電話やメールなど、ご家族が確実に受け取れる方法を決めておくと行き違いが起きません。
相談の場で4つの点をひととおり確かめておけば、請求の中身と来月の見通しをもとに家計の計画を立てられます。
関連記事:ケアプランに要望を伝えるコツは?本人・家族の希望を反映させる作成の流れとポイント

支給限度額を毎月超えるなら施設も検討

毎月のように限度額を超える状態が続くなら、施設も選択肢に入れて費用を比べてみましょう。施設の種類によっては支給限度額の管理がなく、介護サービス費は要介護度ごとの決まった額になります。
ここでは、在宅で毎月かかる費用の合計と施設に移った場合の月額の目安、相談先を紹介します。
在宅で毎月かかる費用の合計
施設の費用と比べる前に、在宅介護で毎月かかる出費を合計しておきましょう。月の合計に含めたい主な費用は、次のとおりです。
- 限度額内の1〜3割の負担
- 限度額を超えた分
- おむつ代などの実費
- 通院や薬の医療費
生命保険に関する調査や情報提供をしている公益財団法人生命保険文化センターの2024年度調査では、介護保険の自己負担を含む在宅介護の月々の費用は平均5.3万円でした。計算方法の章で試算した要介護3の例では、限度額を3,000単位超えただけで介護サービスの支払いが約6万3,400円になり、この平均を上回ります。
同じ超過が毎月続けば、超過分だけで年間40万円を超えます。在宅を続けた場合の年間の負担を一度計算しておくと、施設と比べるときの判断材料になるでしょう。
関連記事:介護費用の平均はいくら?在宅介護と施設介護の相場や内訳を徹底比較
施設に移った場合の月額費用
特養やグループホーム、介護付き有料老人ホーム(ホームの職員が介護する一般型)には支給限度額の管理がなく、介護サービス費は要介護度ごとの1日あたりの額で決まります。超過分が出ないため、介護費を見通せます。
特養は原則として要介護3以上が入所でき、要介護3で多床室を使う場合、30日分の目安は次のとおりです。
| 費用 | 1日あたり | 30日分 |
|---|---|---|
| 施設サービス費(1割・1単位10円) | 732円 | 21,960円 |
| 居住費 | 915円 | 27,450円 |
| 食費 | 1,545円 | 46,350円 |
合計は約9万6,000円です。地域の単価や加算が上乗せされ、日常生活費もかかります。居住費と食費は国の基準費用額による目安で、実際の額は施設との契約で決まる仕組みです。
これに対して、住宅型有料老人ホームで外部の介護サービスを使う場合は、在宅と同じく限度額内で数えます。
関連記事:有料老人ホームで介護保険は使えない?適用範囲や利用の流れを解説
紹介センターへの無料相談
在宅と施設で迷い始めたら、介護施設の紹介センターに相談する方法もあります。ケアマネジャーが在宅生活を支える調整役なのに対し、紹介センターは施設選びを専門にした相談窓口です。2つの窓口は併用できるため、在宅の調整と施設探しを並行して進められます。
『笑がおで介護紹介センター』でも、ご予算や要介護度、医療的なケアの必要性などをうかがい、条件に合う施設をご紹介しています。提携施設から紹介料を受け取る仕組みのため、ご相談から入居まで費用はかかりません。
毎月の超過額と施設の月額を並べて比べたいときも、一緒に整理いたします。在宅を続けるかどうか決めきれない段階でも、お気軽にご相談いただけます。
関連記事:ケアマネジャーと紹介センターどっちに相談すべき?役割の違いと使い分け
介護保険の支給限度額でよくある質問
支給限度額を超えた月には、制度の仕組みを知っていても判断に迷う場面があります。最後に取り上げるのは、ご家族からよく聞かれる疑問です。
ここでは、説明がなかった場合と払えない場合、月の途中で要介護度が変わった場合の3つにお答えします。
説明なく限度額を超えていたらどうする?
まずは担当のケアマネジャーに、超過した理由と、どのサービスが10割負担に回されたのかを説明してもらいましょう。ケアマネジャーには、ケアプランのサービスが保険の対象になるかを明確に説明し、文書で同意を得る決まりがあります。
説明に納得できないときや同じ状況が続くときは、担当のケアマネジャーや居宅介護支援事業所を変更できます。事業所を変える場合は自治体への届出が必要なため、新しい事業所と相談しながら手続きを進めましょう。
話し合いで解決しない場合は、自治体の介護保険の窓口や、介護サービスの苦情を受け付ける国保連の窓口にも相談できます。相談の前に、請求書とサービス利用票別表、ケアプランの写しをそろえておくと、状況を正確に伝えられます。
超過分を払えないときはどうする?
超過分は高額介護サービス費で戻らないため、まずは請求元の事業所に事情を伝え、支払いの時期や方法を相談しましょう。支払いが遅れてから伝えるより、請求が届いた時点で相談したほうが話し合いの余地が残ります。
同じ月の1〜3割の負担は、高額介護サービス費の対象です。世帯全員が住民税非課税などの要件を満たす場合は、社会福祉法人等による利用者負担軽減制度で、1〜3割の負担や食費・居住費が軽くなる場合もあります。対象は、この制度を実施している社会福祉法人等のサービスに限られます。
来月以降も払い続けるのが難しいなら、ケアマネジャーと使い方を見直したうえで、自治体の窓口や地域包括支援センターにも相談しましょう。地域包括支援センターは、高齢者の暮らしを幅広く支える総合相談の窓口です。
月の途中で要介護度が変わったらどうなる?
月の途中で要介護度が変わった場合、その月の支給限度額は、変更前と変更後のうち重い方の要介護度で考えます。要介護3から要介護4に上がった月なら、その月の枠は要介護4の30,938単位です。
サービス費の請求は、変更日の前は変更前の要介護度、変更日からは変更後の要介護度で分けて計算します。区分変更の認定は申請日にさかのぼって効力が生じるため、申請した月から重い方の限度額で計算できる場合があります。
ただし、認定の結果が出るまでは、その月の枠がどちらになるか決まりません。結果を待つ間のサービスの組み方をケアマネジャーと相談しておくと、請求が確定したときに慌てずに済むでしょう。
まとめ
介護保険の支給限度額を超えた場合、超えた分は全額自己負担になり、高額介護サービス費でも払い戻されません。超過分は、割り振られたサービスの事業所に払います。金額は、超えた単位数にサービスの種類と地域で決まる1単位の単価を掛けた額です。
まずはサービス利用票別表で全額自己負担になったサービスを確かめ、来月の見込みをケアマネジャーと話し合いましょう。回数の調整や枠外サービスへの置き換え、区分変更の申請を組み合わせれば、限度額内に収まる場合もあります。
毎月の超過が続き、施設も含めて考えたいときは『笑がおで介護紹介センター』へご相談ください。
参考サイト
- 要介護度別・区分支給限度基準額|堺市
- 区分支給限度基準額について(社会保障審議会介護給付費分科会第103回資料1)|厚生労働省
- 福祉用具貸与|介護サービス情報公表システム(厚生労働省)
- サービスにかかる利用料|介護サービス情報公表システム(厚生労働省)
- 介護サービス費の自己負担が高額になったとき|東大阪市
- 「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」の一部改正について(介護保険最新情報Vol.1286)|厚生労働省
- 介護給付費明細書の記載方法|神奈川県国民健康保険団体連合会
- 介護保険法|e-Gov法令検索
- 介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について|厚生労働省
- 地域区分について(報告)|厚生労働省
- 介護保険サービスの種類と利用者負担|大阪市
- 健康保険法施行令等の一部を改正する政令の公布について(介護保険最新情報Vol.1516)|厚生労働省
- 高額医療・高額介護合算療養費制度のお知らせ|大阪市
- No.1127医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価|国税庁
- 通所介護(デイサービス)|介護サービス情報公表システム(厚生労働省)
- 訪問介護(ホームヘルプ)|介護サービス情報公表システム(厚生労働省)
- 短期入所生活介護(ショートステイ)|介護サービス情報公表システム(厚生労働省)
- 短期入所サービスの利用日数について|東大阪市
- 特定福祉用具販売|介護サービス情報公表システム(厚生労働省)
- 福祉用具購入費支給申請書|大阪市
- 住宅改修費の支給|大阪市
- 介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて|厚生労働省
- 居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について|厚生労働省
- 訪問看護のしくみ|厚生労働省
- 市町村特別給付|神戸市
- 高齢者紙おむつ給付事業|堺市
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)|介護サービス情報公表システム(厚生労働省)
- 令和8年8月からの特定入所者介護(予防)サービス費の見直し等に係る周知への協力依頼について(介護保険最新情報Vol.1506)|厚生労働省
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準|e-Gov法令検索
- 居宅(介護予防)サービス計画作成・介護予防ケアマネジメント依頼(変更)届出書【旨の届】について|大阪市
- 苦情解決体制|大阪府
- 社会福祉法人等による利用者負担額軽減制度|大阪市
- 要介護状態区分が月途中で変更になった場合の請求について|全老健介護保険制度情報サービス

このコラムの監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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