介護離職とは?年間10万人が直面する現実。原因と問題点、仕事と両立するための支援制度を徹底解説

「親の介護が必要になったけれど、仕事はどうしよう…」「介護と仕事の両立は、本当に可能なのだろうか?」高齢化が進む日本において、家族の介護を理由に仕事を辞めざるを得ない「介護離職」が、大きな社会問題となっています。総務省の調査によると、年間で約10万人もの人々が介護を理由に離職しているのが現状です。介護離職は、ご自身のキャリアや収入が途絶えてしまうだけでなく、精神的な負担や社会からの孤立につながる可能性も少なくありません。しかし、介護が始まっても、すぐに離職を決断する必要はありません。国や企業には、仕事と介護を両立するための様々な支援制度が用意されています。この記事では、介護離職の現状と原因、そして離職によって生じる問題点を詳しく解説します。さらに、利用できる公的な支援制度や、介護離職を防ぐために今からできる具体的なステップをご紹介します。介護に直面し、一人で悩みを抱えている方は、ぜひ最後までお読みいただき、利用できる制度や相談先があることを知ってください。
介護離職とは?増加する現状と背景
近年、メディアで「介護離職」という言葉を耳にする機会が増えましたが、具体的にどのような状況を指すのでしょうか。まずは、介護離職の定義と、その深刻な実態について解説します。
介護離職の定義
介護離職とは、家族(親、配偶者、子など)の介護・看護を理由として、それまで就いていた仕事を自発的に辞めることを指します。パートやアルバイトなどの非正規雇用だけでなく、正社員として安定した職に就いていた人が離職するケースも含まれます。
多くの場合、介護の必要性が突然生じたり、介護の負担が予想以上に大きくなったりすることで、仕事との両立が困難になり、やむを得ず離職を選択する人々が後を絶ちません。
年間約10万人が離職する深刻な実態
総務省統計局の「令和4年就業構造基本調査」によると、2021年10月から2022年9月の1年間に、家族の介護・看護を理由に離職した人は10万6千人にのぼります。
このうち、男性が2万5千人、女性が8万1千人と、女性が約8割を占めていますが、男性の介護離職も決して少なくありません。共働き世帯の増加などを背景に、性別を問わず誰もが介護の担い手となり得る時代になっています。介護離職は、依然として深刻な社会課題であることがわかります。
なぜ介護離職は増えているのか?高齢化と家族構成の変化
介護離職がなくならない背景には、日本の急激な高齢化があります。内閣府の「高齢社会白書」によると、日本の総人口に占める65歳以上の人の割合(高齢化率)は上昇を続けており、今後もこの傾向は続くと予測されています。
高齢者の増加は、すなわち介護を必要とする人の増加を意味します。それに加え、かつて主流であった三世代同居が減少し、核家族化が進んだことで、一人の介護者に負担が集中しやすい社会構造になっています。こうした社会背景の変化が、仕事と介護の両立をより一層困難にし、介護離職を選択せざるを得ない人々を生み出す大きな要因となっているのです。
介護離職の主な原因は?当事者が抱える3つの大きな負担
介護をしながら仕事を続けることは、決して簡単なことではありません。多くの人が「仕事か介護か」という究極の選択を迫られる背景には、複合的な原因が存在します。ここでは、介護離職につながる主な3つの負担について解説します。
肉体的・精神的な負担
介護は、想像以上に心身を消耗させます。特に、認知症の介護や、入浴、排泄などの身体介助は、肉体的に大きな負担となります。夜間の呼び出しや徘徊への対応で、まとまった睡眠が取れなくなることも少なくありません。
また、「いつまで続くかわからない」という出口の見えない不安や、思い通りにいかない介護への焦り、親しい人が衰えていく姿を目の当たりにする辛さなど、精神的なストレスも深刻です。こうした心身の疲労が蓄積し、仕事に集中できなくなり、離職に至るケースが多く見られます。
時間的な制約と仕事との両立の難しさ
介護には、日々のケアだけでなく、通院の付き添い、役所での手続き、ケアマネジャーとの面談など、多くの時間を要します。急な体調変化で病院に駆けつけなければならない場面も頻繁に起こり得ます。
こうした突発的な対応や日々の介護に時間を取られることで、残業ができなかったり、重要な会議に出席できなかったりと、仕事に様々な支障が生じ始めます。職場に迷惑をかけているという罪悪感や、思うようにキャリアを積めない焦りから、自ら退職を選んでしまうのです。
経済的な負担(介護費用と収入減)
在宅介護であっても、介護保険の自己負担分や、おむつ代、医療費など、様々な費用がかかります。有料老人ホームなどの施設に入居する場合は、さらに高額な費用が必要になることもあります。
介護のために時短勤務を選択したり、残業を減らしたりすると、当然ながら収入は減少します。増え続ける介護費用と、減っていく自身の収入との板挟みになり、「自分が介護に専念すれば施設費用を節約できる」と考え、現在の仕事を離れてしまうケースも少なくありません。
介護離職がもたらす深刻な問題点
介護離職は、個人の問題だけでなく、その家族や企業、ひいては社会全体にまで大きな影響を及ぼす深刻な問題です。ここでは、それぞれの立場から見た問題点を具体的に解説します。
離職者本人への影響
介護離職は、離職した本人の生活に多大な影響を与えます。
- 経済的な困窮
- 最も大きな問題は、収入が途絶えることによる経済的な困窮です。介護にかかる費用は継続的に発生するため、貯蓄を取り崩す生活が続けば、いずれ立ち行かなくなる可能性があります。特に、介護が長期化した場合、自身の老後資金まで使い果たしてしまう「介護破産」のリスクも高まります。
- 再就職の困難さ
- 一度離職すると、元の職場と同じような条件で再就職することは容易ではありません。特に、離職期間が長くなるほど、正社員としての復帰は難しくなる傾向にあります。ブランクによってキャリアが中断され、スキルや経験を活かせない非正規の仕事に就かざるを得ないケースも少なくありません。
- 社会的孤立と精神的ストレス
- 仕事は、収入を得るだけでなく、社会とのつながりを保つ重要な場でもあります。離職して介護に専念することで、同僚や社会との接点が失われ、社会から孤立してしまうことがあります。相談相手がいない中で一人で介護の悩みを抱え込み、精神的に追い詰められてしまう危険性もあります。
家族への影響
介護離職は、離職した本人だけでなく、その家族にも影響を及ぼします。介護の負担が一人の家族に集中することで、他の兄弟姉妹との関係が悪化したり、介護疲れから虐待につながってしまったりする悲しいケースも報告されています。また、介護者が心身のバランスを崩してしまうと、最終的に介護そのものが立ち行かなくなり、共倒れになってしまうリスクも潜んでいます。
企業への影響
従業員の介護離職は、企業にとっても大きな損失です。
- 貴重な人材の損失
- 長年かけて育成してきた経験豊富な中堅社員や管理職が介護を理由に離職することは、企業にとって計り知れない損失です。特に、40代から50代の働き盛りの世代は、親の介護に直面しやすい年齢であり、この層の人材流出は企業の競争力低下に直結します。
- 生産性の低下とコスト増
- 離職者が出れば、新たな人材を採用し、育成するためのコストが発生します。また、残された従業員の業務負担が増加し、職場全体の生産性が低下する可能性も否定できません。従業員が安心して働き続けられる環境を整備することは、企業が持続的に成長していく上で不可欠な経営課題と言えるでしょう。
社会全体への影響
個々の介護離職は、社会全体で見るとさらに大きな問題となります。働き盛りの世代が労働市場から退出することは、日本の労働力人口の減少に拍車をかけ、経済の活力を削ぐ一因となります。また、離職によって収入を失った人々が生活保護などの公的な支援に頼らざるを得なくなれば、社会保障費の増大にもつながります。介護離職は、もはや「個人の家庭の問題」ではなく、国全体で取り組むべき重要な社会課題なのです。
仕事と介護を両立するために!知っておきたい支援制度
「介護が始まったら、仕事を辞めるしかないのか…」と悲観する必要はありません。日本には、仕事と介護の両立を支援するための法律や公的なサービスが整備されています。ここでは、いざという時に頼りになる代表的な制度をご紹介します。
育児・介護休業法に基づく両立支援制度
育児・介護休業法は、労働者が育児や家族の介護を理由に離職することなく、働き続けられるように支援するための法律です。この法律に基づき、労働者は会社に対して以下の制度の利用を申し出ることができます。これらは労働者の権利として法律で定められており、事業主は原則として申し出を拒むことはできません。
- 介護休業
- 要介護状態にある対象家族1人につき、通算93日まで、3回を上限として分割して休業できる制度です。介護体制の構築(ケアプランの作成、施設探しなど)や、家族の看病に集中的に対応するために利用できます。
- 介護休暇
- 要介護状態にある対象家族の通院の付き添いや、介護サービスの手続きなどのために、年5日(対象家族が2人以上の場合は年10日)まで、1日または時間単位で休暇を取得できる制度です。急な用事にも柔軟に対応できます。
- 所定外労働の制限(残業の免除)
- 介護のために残業をすることが難しい場合に、会社に申し出ることで所定外労働(残業)を免除してもらえる制度です。介護の終了まで、回数の制限なく利用できます。
- 時間外労働の制限
- 1か月あたり24時間、1年あたり150時間を超える時間外労働をさせないように会社に請求できる制度です。
- 深夜業の制限
- 午後10時から午前5時までの深夜時間帯の労働を免除してもらえる制度です。体力的・精神的な負担を軽減するために有効です。
- 所定労働時間の短縮措置(時短勤務など)
- 1日の所定労働時間を短縮する制度です。その他、フレックスタイム制度や時差出勤、介護費用の助成といった措置を講じることが事業主に義務付けられています。
※2025年4月からは、これらの制度について企業が労働者に個別に周知し、利用の意向を確認することなどが義務化され、より利用しやすい環境が整備される予定です。
介護保険サービス
介護保険制度は、介護が必要になった高齢者を社会全体で支える仕組みです。市区町村の窓口で「要介護認定」を受けることで、費用の一部(原則1割~3割)を負担するだけで、様々な介護サービスを利用できます。
| サービスの種類 | 主な内容 | 代表的なサービス例 |
|---|---|---|
| 在宅サービス(居宅サービス) | 自宅で生活しながら利用できるサービスです。 | 訪問介護(ホームヘルプ)、訪問看護、デイサービス(通所介護)、ショートステイ(短期入所生活介護)、福祉用具のレンタルなど |
| 施設サービス | 介護施設に入居して、24時間体制で介護を受けられるサービスです。 | 特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院など |
| 地域密着型サービス | 住み慣れた地域で生活を続けられるよう支援する、市区町村が管轄するサービスです。 | 小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、夜間対応型訪問介護など |
これらのサービスをうまく組み合わせることで、介護者の負担を大幅に軽減し、仕事との両立を図ることが可能になります。
介護休業中の生活を支える「介護休業給付金」
介護休業を取得すると、その間の給与が支払われないことが一般的です。しかし、雇用保険の被保険者であれば、一定の要件を満たすことで「介護休業給付金」を受給できます。
これは、休業中の生活を経済的に支えるための制度で、支給額は原則として、休業開始前の賃金の67%が、介護休業の日数分支給されます。支給を受けるには、休業を開始する前の2年間に、雇用保険に12か月以上加入していることなどの条件があります。申請手続きは、原則として事業主を通じてハローワークに行います。介護休業を取得する際は、必ず会社に確認しましょう。
介護離職を防ぐために、今すぐできる4つのステップ
将来、親の介護が必要になったとき、あるいは今まさにその局面に立たされたとき、冷静に対処するためには事前の準備と迅速な行動が鍵となります。ここでは、介護離職という事態を避けるために、今すぐ取り組むべき4つのステップをご紹介します。
ステップ1:早めに情報を集め、専門家に相談する
介護は、ある日突然始まります。その時になって慌てないためにも、元気なうちから親子で介護について話し合い、公的な相談窓口や利用できる制度について情報を集めておくことが重要です。
- 地域包括支援センター
- 高齢者の介護に関する総合相談窓口です。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職が在籍しており、介護に関するあらゆる相談に公正・中立な立場で応じてくれます。介護保険の申請支援や、その人に合った介護サービスの紹介も行っています。
- 勤務先の人事・総務部
- まずは自社の就業規則を確認し、介護休業や時短勤務などの両立支援制度がどのように定められているか把握しましょう。その上で、人事・総務部の担当者に相談し、制度の利用実績や手続きの流れについて確認しておくといざという時にスムーズです。
ステップ2:家族や親族と役割分担を話し合う
介護は、一人で抱え込むものではありません。兄弟姉妹や親族がいる場合は、誰が中心的な担い手になるのか、費用負担はどうするのか、それぞれの役割分担について事前にしっかりと話し合っておくことが不可欠です。感情的な対立を避け、「誰が」「何を」「どこまで」できるのかを具体的に話し合い、協力体制を築いておくことで、一人の負担が過剰になることを防げます。
ステップ3:会社の制度を確認し、上司に相談する
実際に介護の必要性が生じたら、できるだけ早い段階で直属の上司に状況を説明し、相談することが大切です。育児・介護休業法に基づく両立支援制度の利用を検討していることを伝え、今後の働き方について理解と協力を得られるように努めましょう。後ろめたさを感じる必要はありません。率直に相談することで、業務の引き継ぎや人員の調整など、職場も対応策を講じやすくなります。
ステップ4:介護サービスの利用を積極的に検討する
「親の面倒は自分が見るべきだ」という責任感から、介護サービスに頼ることに抵抗を感じる人もいるかもしれません。しかし、プロの力を借りることは、決して悪いことではありません。デイサービスやショートステイなどを利用すれば、介護を受ける本人にとっても社会との交流や心身機能の維持につながるというメリットがあります。介護者自身の休息時間を確保し、仕事と両立するためにも、介護保険サービスなどを積極的に活用しましょう。
まとめ:一人で抱え込まず、専門家や制度を頼ることが介護離職を防ぐ第一歩です
今回は、介護離職の現状と原因、そして仕事と介護を両立するための支援制度について詳しく解説しました。
- 介護離職の現状
- 年間約10万人が離職しており、深刻な社会問題となっています。
- 介護離職の主な原因
- 「肉体的・精神的負担」「時間的制約」「経済的負担」の3つが大きいです。
- 介護離職の問題点
- 離職者本人の経済的困窮や社会的孤立だけでなく、企業や社会全体にも大きな損失をもたらします。
- 両立のための支援制度
- 「介護休業」や「時短勤務」などの法制度、「介護保険サービス」、「介護休業給付金」などを活用できます。
- 離職を防ぐためにできること
- 早めの情報収集と相談、家族との協力、会社の制度活用、介護サービスの利用が鍵となります。
親の介護という現実に直面したとき、多くの人が「仕事を辞めるしかないのか」と不安に駆られます。しかし、見てきたように、あなたを支えるための様々な制度や相談窓口が存在します。最も大切なことは、一人で抱え込まず、悩みを共有することです。まずは、お住まいの地域の「地域包括支援センター」や、勤務先の人事担当者、そして信頼できる家族や友人に相談してみてください。利用できる制度やサービスを最大限に活用し、あなた自身の人生とキャリアを守りながら、大切な家族の介護と向き合っていく道は、きっと見つかるはずです。
関西エリアで介護施設をお探しなら「笑がおで介護紹介センター」にご相談ください
介護と仕事の両立を図るうえで、特別養護老人ホームや有料老人ホームといった介護施設の利用は、非常に有効な選択肢の一つです。しかし、数多くの施設の中から、ご本人やご家族の希望に合った施設を自力で探し出すのは大変な労力がかかります。
「笑がおで介護紹介センター」では、介護業界に精通した相談員が、皆様の施設探しを無料でお手伝いいたします。
- ご希望の条件に合う施設を無料でご紹介
- 面倒な見学予約の代行
- 見学時の同行や送迎
- 入居に関するあらゆるご相談
関西エリア(大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山、滋賀、三重)で介護施設をお探しの際は、どうぞお気軽に「笑がおで介護紹介センター」までお問い合わせください。経験豊富な相談員が、親身になって皆様の施設選びをサポートいたします。

監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
この記事の関連記事

0120-177-250

