認知症の主な原因とは|種類別の原因疾患や予防につながる生活習慣を解説

ご自身やご家族に「もの忘れ」が増えてくると、「もしかして認知症?」と不安に感じることがあるかもしれません。しかし、認知症は単一の病気ではなく、その背後には様々な原因となる病気が存在します。原因が異なれば、症状の現れ方や進行のスピード、そして適切な対応も変わってきます。
認知症の原因で最も多いのは、脳の神経細胞がゆっくりと壊れていく「神経変性疾患」ですが、脳の血管のトラブルによって起こるものや、原因となる病気を治療することで改善が期待できるものもあります。
この記事では、認知症を引き起こす主な原因を「神経変性疾患」「血管性認知症」「その他の疾患」の3つに大きく分け、それぞれの特徴を詳しく解説します。また、認知症の発症リスクを高める生活習慣や、今日から始められる予防への取り組みについてもご紹介します。
認知症の原因を正しく理解することは、不安を和らげ、予防や早期発見、そして適切なケアへとつなげるための大切な第一歩です。この記事が、認知症と向き合うための知識と安心の一助となれば幸いです。
認知症の原因は一つではない
そもそも認知症とは?
「認知症」とは、特定の病気の名前ではなく、後天的な脳の病気や障害など、さまざまな原因によって脳の働きが低下し、記憶や判断力などに障害が起きて、日常生活に支障が出ている「状態」を指す言葉です。そのため、認知症を引き起こす原因は一つに限りません。
現在、認知症の原因となる病気は数多くあるといわれていますが、その中でも代表的なものがいくつか存在します。原因となる病気の種類を正しく理解することが、認知症と向き合う上で非常に重要になります。
原因によって分類される認知症の種類と割合
認知症は、原因となる病気によっていくつかの種類に分類されます。日本において特に多いとされる「4大認知症」の原因疾患と、それぞれの割合は以下の通りです。
| 認知症の種類 | 原因疾患 | 割合の目安 |
|---|---|---|
| アルツハイマー型認知症 | アミロイドβ、タウタンパクの蓄積 | 約67% |
| 血管性認知症 | 脳梗塞、脳出血などの脳血管障害 | 約20% |
| レビー小体型認知症 | レビー小体の出現 | 約4% |
| 前頭側頭型認知症 | 前頭葉・側頭葉の萎縮 | 約1% |
| ※出典:厚生労働省の調査データを基に作成。数値はおおよその目安です。 | ||
表の通り、アルツハイマー型認知症が全体の約7割弱を占め、突出して多いことがわかります。しかし、血管性認知症やレビー小体型認知症も決して少なくなく、それぞれに原因が異なることを知っておく必要があります。
原因疾患によって症状の進行も異なる
原因となる病気が違えば、症状の現れ方や進行の仕方も異なります。
- アルツハイマー型認知症
- 新しいことを記憶できなくなる「記憶障害」から始まり、ゆっくりと進行していくのが一般的です。
- 血管性認知症
- 脳血管障害が再発するたびに段階的に悪化することが多く、症状に波があるのが特徴です。
- レビー小体型認知症
- リアルな幻視やパーキンソン症状(手足の震えなど)が特徴的で、日によって症状が良い時と悪い時を繰り返しながら進行します。
- 前頭側頭型認知症
- 人格の変化や社会性の欠如といった行動面の変化が目立ち、記憶障害は比較的後期まで現れないこともあります。
このように、原因によってケアの方法や注意すべき点も変わってくるため、専門医による早期の診断が重要になるのです。
【種類別】認知症の主な原因疾患
それでは、認知症を引き起こす主な原因疾患を、3つのカテゴリーに分けて詳しく見ていきましょう。
原因①:脳の神経細胞が変性する「神経変性疾患」
神経変性疾患とは、脳や脊髄にある特定の神経細胞が、何らかの原因で徐々に失われていく病気の総称です。認知症の原因として最も多いのが、この神経変性疾患によるものです。
アルツハイマー型認知症の原因:アミロイドβやタウタンパクの蓄積
アルツハイマー型認知症は、脳内に「アミロイドβ」と「タウ」という異常なタンパク質が蓄積することが原因で発症します。
まず、アミロイドβというタンパク質が脳内に溜まり始め、「老人斑(ろうじんはん)」と呼ばれるシミのようなものを作ります。これが引き金となり、次に神経細胞内にタウタンパクが蓄積して神経細胞を破壊していきます。この変化は、症状が現れる20年以上も前から始まっていると考えられており、記憶などをつかさどる「海馬」から脳全体へとゆっくりと広がっていきます。
レビー小体型認知症の原因:レビー小体の出現
レビー小体型認知症は、「レビー小体」という特殊なタンパク質のかたまりが、脳の大脳皮質や脳幹に現れることが原因です。
このレビー小体の主成分は「αシヌクレイン」というタンパク質で、これが神経細胞の中に集まることで神経の働きが障害されます。その結果、リアルな幻視やパーキンソン症状といった、この病気に特徴的な症状が引き起こされます。
前頭側頭型認知症の原因:脳の前頭葉・側頭葉の萎縮
前頭側頭型認知症は、理性や感情、行動をコントロールする脳の「前頭葉」と、言語の理解などをつかさどる「側頭葉」が萎縮することで発症します。
神経細胞の中に「タウ」や「TDP-43」といった異常なタンパク質が蓄積することが原因と考えられていますが、なぜ特定の部位が萎縮するのか、詳しいメカニズムはまだ十分に解明されていません。
原因②:脳血管のトラブルが引き起こす「血管性認知症」
血管性認知症は、脳の血管が詰まったり破れたりする「脳血管障害」によって引き起こされます。
脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血といった脳卒中が起こると、脳の一部に血液が届かなくなり、神経細胞が死んでしまいます。その結果、ダメージを受けた脳の部位が担っていた機能が失われ、認知機能の低下につながるのです。
はっきりとした脳卒中だけでなく、自覚症状のない小さな脳梗塞(無症候性脳梗塞)が多発することでも、血管性認知症を発症することがあります。
血管性認知症のリスクを高める生活習慣病
血管性認知症の最大の危険因子は、脳血管障害の原因となる動脈硬化です。そして、動脈硬化を進行させるのが、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病です。
つまり、これらの生活習慣病を予防・管理することが、血管性認知症の予防に直結するといえます。
原因③:その他の疾患
頻度は高くありませんが、以下のような特殊な病気が認知症の原因となることもあります。
クロイツフェルト・ヤコブ病
異常な「プリオンタンパク」が脳に蓄積し、急速に脳機能が低下する病気です。発症は非常にまれですが、進行が非常に速いのが特徴です。
ウェルニッケ脳症とアルコールの影響
長期間の多量飲酒は、ビタミンB1の欠乏を引き起こし、「ウェルニッケ脳症」という病気を発症させることがあります。これが「アルコール関連認知症」につながることがあります。意識障害や歩行障害などが現れ、適切な治療が遅れると重い後遺症が残ることがあります。
治療によって改善する可能性がある認知症(治る認知症)
認知症の中には、原因となっている病気を治療することで、症状が大幅に改善したり、治ったりするタイプのものがあります。これらは「治る認知症」とも呼ばれ、早期発見・早期治療が極めて重要です。
正常圧水頭症
脳を満たしている「脳脊髄液」が脳室に過剰にたまり、脳を圧迫することで発症します。「歩行障害(歩幅が狭くなるなど)」、「認知機能障害(反応が鈍くなるなど)」、「尿失禁」が三大症状です。手術によってたまった髄液を排出させることで、症状の劇的な改善が期待できます。
慢性硬膜下血腫
頭を打った後などに、脳を覆う硬膜の下にゆっくりと血液がたまり、脳を圧迫する病気です。高齢者の場合、本人も気づかないような軽い打撲でも起こることがあるため注意が必要です。手術で血腫を取り除けば、症状は改善します。
甲状腺機能低下症などの内分泌・代謝疾患
甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、体全体の代謝が悪くなり、無気力になったり、もの忘れがひどくなったりと、認知症に似た症状が現れることがあります。ホルモンを補充する治療で改善が見込めます。
脳腫瘍
脳にできた腫瘍が脳を圧迫し、認知機能の低下を引き起こすことがあります。腫瘍の種類や場所にもよりますが、手術などで腫瘍を取り除くことで症状が改善する可能性があります。
認知症の発症リスクを高める生活習慣と環境
認知症の中には、日々の生活習慣が発症に深く関わっているものがあります。特に血管性認知症やアルツハイマー型認知症は、生活習慣を見直すことでリスクを下げられる可能性があります。
高血圧・糖尿病・脂質異常症
これらの生活習慣病は、動脈硬化を促進し、脳の血管にダメージを与えます。血管性認知症の直接的な原因になるだけでなく、脳の血流を悪化させることでアルツハイマー型認知症の発症リスクも高めることが分かっています。
運動不足やバランスの悪い食生活
定期的な運動は、脳の血流を促進し、神経細胞の活性化につながります。逆に運動不足は、肥満や生活習慣病を招き、認知症のリスクを高めます。
また、塩分や糖分の多い食事、野菜や魚の少ない偏った食生活も、高血圧や糖尿病などを通じて認知症の間接的な原因となります。
社会的孤立やコミュニケーション不足
人と話したり、社会活動に参加したりすることは、脳にとって良い刺激になります。家に閉じこもりがちで、他者との交流が少なくなると、脳への刺激が減少し、認知機能が低下しやすくなるといわれています。趣味や地域活動に積極的に参加することが、認知症予防につながります。
ストレスは症状悪化の引き金になることも
直接的な原因ではありませんが、慢性的なストレスは脳の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。また、すでに認知症を発症している方の場合、ストレスや不安がBPSD(行動・心理症状)※を悪化させる引き金になることもあります。
※BPSD:妄想、抑うつ、興奮、徘徊など、認知機能障害に伴って現れる行動や心理状態の変化のこと。
認知症の原因を知り予防と早期発見につなげる
認知症の原因は様々ですが、その多くは生活習慣と関連しています。原因を正しく理解し、予防のためにできることから始めることが大切です。
今日から始められる認知症の予防習慣
認知症の予防は、特別なことではありません。健康的な生活を心がけることが基本です。
生活習慣病の予防と管理
血圧や血糖値、コレステロール値を定期的にチェックし、正常な範囲に保つよう努めましょう。すでに治療中の方は、医師の指示に従ってきちんと管理を続けることが重要です。
バランスの取れた食事と適度な運動
野菜や果物、魚を多く取り入れたバランスの良い食事を心がけ、塩分や糖分は控えめにしましょう。また、ウォーキングなどの有酸素運動を週に数回、無理のない範囲で続けることが推奨されています。
社会参加や趣味で脳を活性化
趣味の会に参加する、ボランティア活動を行う、友人と頻繁におしゃべりするなど、人との交流を楽しみましょう。読み書きや計算、ボードゲームなども脳の良いトレーニングになります。
認知症のサインに気づいたら早めに診断を
「治る認知症」の可能性もあるため、「年のせいだから」と放置せず、気になる症状があれば早めに専門医に相談することが大切です。早期に診断を受ければ、適切な治療やサポートにつながり、その後の生活の質を維持することにも役立ちます。
認知症の進行を遅らせるためにできること
残念ながら、一度変性してしまった神経細胞を元に戻すことは現代の医療では困難です。しかし、適切な治療とケアによって、認知症の進行を緩やかにし、穏やかな生活を送ることは可能です。
薬物療法と非薬物療法(リハビリテーション)
認知症の治療は、「薬物療法」と「非薬物療法」の2本柱で行われます。
- 薬物療法
- アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症に対しては、中核症状の進行を遅らせるための抗認知症薬が使われます。また、妄想や興奮などのBPSDを和らげるための薬が処方されることもあります。
- 非薬物療法
- 薬を使わずに、脳の活性化や心身の安定を図るアプローチです。昔を思い出しながら話す「回想法」や、音楽を聴いたり演奏したりする「音楽療法」、簡単な計算やパズルなどを行う「学習療法」などがあります。
本人が安心して過ごせる環境整備
認知症の方が穏やかに過ごすためには、環境を整えることも重要です。転倒を防ぐために室内の段差をなくしたり、本人が混乱しないように物の配置を分かりやすくしたりするなどの工夫が有効です。また、周囲の人が病気を理解し、本人のペースに合わせて、尊厳を傷つけないような関わり方をすることが、BPSDの軽減につながります。
認知症ケアに対応したグループホームという選択肢
在宅での介護が難しくなってきた場合、認知症ケアを専門とする「グループホーム(認知症対応型共同生活介護)」も有効な選択肢の一つです。少人数の家庭的な環境で、専門スタッフのサポートを受けながら共同生活を送ることで、本人の残っている能力を活かしながら、穏やかに暮らすことができます。
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このコラムの監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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