認知症の中核症状とは?5つの主な症状とBPSDとの違い、ケアのポイントを解説

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認知症の中核症状とは?5つの主な症状とBPSDとの違い、ケアのポイントを解説

「認知症」と聞くと、徘徊や妄想といった症状を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、認知症の症状は、実は大きく2つの種類に分けられます。一つは、脳の機能が低下することによって直接起こる「中核症状」、もう一つは、その中核症状が原因となって二次的に現れる「行動・心理症状(BPSD)」です。

記憶障害や判断力の低下といった中核症状は、認知症を発症した方であれば誰にでも起こりうる基本的な症状です。この中核症状を正しく理解し、適切に対応することが、ご本人の混乱や不安を和らげ、BPSDを予防・軽減することにもつながります。

この記事では、認知症の基本である「中核症状」に焦点を当て、その代表的な5つの症状を具体的な対応方法とともに詳しく解説します。また、BPSDとの違いや、認知症の種類によって現れやすい中核症状の傾向、ケアのポイントについてもご紹介します。

ご本人もご家族も、安心して穏やかに日々を過ごすために。この記事が、中核症状への理解を深め、適切な関わり方を見つけるための一助となれば幸いです。

認知症の中核症状とは?脳の機能低下で起こる基本症状

脳の器質的な変化によって直接引き起こされる症状

認知症の中核症状とは、アルツハイマー病や脳血管の病気など、原因となる疾患によって脳の神経細胞が壊れ、その機能が失われることで直接的に引き起こされる症状のことです。

記憶する、考える、時間や場所を認識する、段取りを立てて物事を実行するといった、私たちが普段何気なく行っている認知機能が障害されるため、日常生活に様々な支障が生じます。中核症状は、原因疾患を持つ方であれば誰にでも現れる可能性のある、いわば認知症の「土台」となる症状です。

中核症状と行動・心理症状(BPSD)の具体的な違い

認知症の症状を理解する上で、中核症状とBPSD(行動・心理症状)の違いを知ることは非常に重要です。

項目 中核症状 行動・心理症状(BPSD)
原因 脳の神経細胞の破壊による直接的な機能低下 中核症状に加え、本人の性格や身体状況、環境などが影響する二次的なもの
主な症状 記憶障害、見当識障害、実行機能障害など 不安、抑うつ、妄想、徘徊、暴力、介護への抵抗など
発症者 原因疾患を持つ方であれば誰にでも起こりうる すべての方に現れるわけではない
改善の可能性 根本的な治療は難しいが、薬で進行を遅らせることが期待できる 周囲の対応や環境調整によって改善・軽減が期待できる

例えば、「食事をしたことを忘れる」(記憶障害)のが中核症状です。それに対して、お腹が空いているのに家族が食事を出してくれないと感じ、「まだご飯を食べていない!」と怒り出すのがBPSDにあたります。中核症状への適切なケアが、BPSDの予防や緩和につながります。

加齢による「もの忘れ」と認知症の「記憶障害」の違い

加齢による「もの忘れ」と、認知症の中核症状である「記憶障害」は似ているようで全く異なります。大きな違いは、体験したことの一部を忘れるのか、体験したこと自体を忘れるのかという点です。

項目 加齢による「もの忘れ」 認知症の「記憶障害」
忘れる内容 体験の一部(例:朝食のメニュー) 体験の全体(例:朝食を食べたこと自体)
自覚 もの忘れの自覚がある 忘れたことの自覚がないことが多い
進行 基本的に進行しない 時間とともに症状が進行していく
日常生活への影響 大きな支障はない 支障が出てくる

加齢によるもの忘れは生理的な老化現象ですが、記憶障害は病的な症状です。「何かおかしい」と感じたら、一人で悩まず、かかりつけ医や地域包括支援センター、専門の医療機関などに相談することが大切です。

【5つの種類別】認知症の主な中核症状と対応方法

中核症状は、主に5つの種類に分けられます。それぞれの症状と、ご家族や周りの人ができる対応のポイントを見ていきましょう。

症状①:記憶障害(新しい出来事を覚えられない)

認知症の初期から現れることが多い代表的な症状です。特に、数分前、数時間前といった直近の出来事を記憶しておく「短期記憶」が障害されやすくなります。

<症状の具体例>

  • 同じことを何度も言ったり、尋ねたりする
  • 約束や予定を忘れてしまう
  • 食事をしたこと自体を忘れてしまう
  • 物を置いた場所を忘れ、「盗られた」と思い込む(もの盗られ妄想)

記憶障害のある方への対応ポイント

否定せず、初めて聞く姿勢で対応することが大切です。「さっきも言ったでしょ」と指摘すると、ご本人は自尊心を傷つけられ、混乱してしまいます。何度同じ話をされても、根気強く耳を傾けましょう。

また、大切な予定はカレンダーやメモに大きく書いて目立つ場所に貼っておくと、ご本人が確認できて安心につながります。「盗られた」という訴えは、不安の表れです。否定せずに「そうですか、大変ですね。一緒に探しましょう」と共感し、行動することで不安を和らげることができます。

症状②:見当識障害(時間や場所、人がわからなくなる)

見当識とは、自分が置かれている状況(時間・場所・人との関係)を正しく認識する能力のことです。この能力が障害されると、日常生活に混乱が生じます。

<症状の具体例>

時間の見当識障害
今日の日付や曜日、季節が分からなくなる。真冬に半袖を着ようとするなど、季節に合わない服装をすることがあります。
場所の見当識障害
慣れた道で迷ったり、自分の家が分からなくなったりして、徘徊につながることがあります。
人物の見当識障害
家族や親しい友人の顔が分からなくなります。進行すると、鏡に映った自分の姿が誰だか分からなくなることもあります。

見当識障害のある方への対応ポイント

大きな文字のカレンダーや時計を置く、季節の花を飾るなど、視覚的に情報が伝わるように工夫しましょう。そして「今日は〇月〇日ですよ」「ここはご自宅の居間ですよ」と、穏やかに正しい情報を伝え、安心させてあげることが重要です。

一人での外出は迷子や事故のリスクがあるため、できるだけ付き添い、安全を確保しましょう。

症状③:理解・判断力の障害(物事を考えられなくなる)

物事を論理的に考えたり、情報を整理して状況に応じて適切に判断したりする能力が低下します。

<症状の具体例>

  • 考えるスピードが遅くなる
  • 一度に二つ以上のことが重なると混乱する(例:テレビを見ながら会話する)
  • いつもと違う出来事(冠婚葬祭など)に対応できない
  • ATMの操作や公共料金の支払いなどが難しくなる

理解・判断力が低下した方への対応ポイント

一度にたくさんの情報を伝えず、「まずはお茶を飲みましょう」のように、一つずつ分かりやすい言葉で、ゆっくり、簡潔に話すことを心がけましょう。

選択を求める際は、「今日の洋服は、青と赤のどちらにしますか?」のように、2択にするなど、ご本人が選びやすいように選択肢を絞る工夫も有効です。また、リモコンの操作が難しいならボタンが少ないものに変えるなど、環境を調整することも大切です。

症状④:実行機能障害(計画的に行動できない)

目的を達成するために計画を立て、段取り良く実行することが難しくなります。料理や買い物、家電の操作など、日常の様々な場面で影響が現れます。

<症状の具体例>

  • 料理の段取りが分からなくなり、手順通りに作れない
  • 計画的な買い物ができず、同じものばかり買ってくる
  • 家電製品の使い方が分からなくなる
  • 服を順番通りに着られない(着衣失行)

実行機能障害のある方への対応ポイント

料理であれば、「まずはお野菜を洗いましょう」「次に、ニンジンを切りましょう」といった具合に、作業の工程を分けて具体的に伝え、一つずつお願いするようにしましょう。

ご本人のプライドを傷つけないよう、「ここ、ちょっと難しいから一緒にやりましょうか」などと声をかけ、さりげなく手伝うことも大切です。時間がかかっても、ご本人ができることは見守りましょう。「できる」という実感は、自信や意欲につながります。

症状⑤:失行・失認・失語(高次脳機能障害)

これらは、脳の特定の領域が損傷することで起こる高次脳機能障害の一種です。身体機能に問題がないにもかかわらず、特定の動作や認識、言語機能に障害が現れます。

障害の種類 症状の概要
失行 身体の麻痺などはないのに、普段行っている日常的な動作(例:箸を使う、服を着る)ができなくなる。
失認 目や耳に異常はないのに、見たり聞いたりしたものが何であるか認識できなくなる(例:ハサミが何か分からない)。
失語 「聞く・話す・読む・書く」といった言葉を操る能力が障害される(例:物の名前が思い出せない)。

失行・失認・失語のある方への対応ポイント

言葉だけでなく、身振り手振り(ジェスチャー)や実物、写真などを使って視覚的に伝えることで、理解しやすくなる場合があります。

言葉がスムーズに出てこなくても、ご本人が伝えようとしていることを表情や仕草から推し量り、焦らずにゆっくりと待つ姿勢が大切です。また、失認によって危険を認識できない場合もあるため、火の元の確認や刃物の管理など、事故を防ぐための環境整備も必要です。

認知症の種類によって現れやすい中核症状

中核症状の現れ方は、認知症の原因となる疾患によって傾向があります。

アルツハイマー型認知症:記憶障害から始まることが多い

新しいことを覚えられない「記憶障害」が初期から目立ち、ゆっくりと他の認知機能障害(見当識障害など)が加わって進行していくのが典型的なパターンです。

血管性認知症:できること・できないことが混在する「まだら認知症」

脳の障害された部分と保たれている部分があるため、記憶力は低下しているのに判断力はしっかりしているなど、症状にムラがある「まだら認知症」が特徴です。実行機能障害や失語、感情のコントロールが難しくなる感情失禁なども起こりやすいとされています。

レビー小体型認知症:認知機能の変動やリアルな幻視が特徴

症状が良い時と悪い時の波が激しい「認知機能の変動」が特徴です。また、実際にはないものが見える「幻視」や、パーキンソン症状(手足の震えや筋肉のこわばり)、空間を認識する能力が低下する「視空間認知障害(失認の一種)」も現れやすい症状です。

前頭側頭型認知症:人格の変化や社会性の低下が目立つ

人格や社会性、理性を司る前頭葉の機能低下が先に現れるため、記憶障害よりも、計画を立てて行動する「実行機能障害」や、社会のルールを守れなくなったり、感情の抑制がきかなくなったりする症状が目立ちます。

認知症の中核症状は改善できる?治療方法について

現時点では、壊れてしまった脳細胞を元に戻し、中核症状を完全に治す薬はありません。しかし、適切な治療によって症状の進行を緩やかにしたり、残っている能力を最大限に活かしたりすることは可能です。

薬物療法:症状の進行を緩やかにする

アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症では、脳内の神経伝達物質を調整する「抗認知症薬」が用いられることがあります。これらの薬は病気そのものを治すものではありませんが、中核症状の進行を一定期間遅らせる効果が期待されています。

非薬物療法:リハビリテーションで残っている機能を引き出す

薬を使わないアプローチも非常に重要です。個人の状態に合わせて、残っている能力を引き出し、生活の質(QOL)を維持・向上させることを目指します。

回想法
昔の写真や懐かしい音楽などを用いて、楽しかった思い出を語り合うことで、精神的な安定やコミュニケーションの活性化を図ります。
音楽療法
歌ったり楽器を演奏したりすることで、心身をリラックスさせ、脳に良い刺激を与えます。
運動療法
ウォーキングや体操など、無理のない範囲で体を動かすことは、身体機能の維持だけでなく、脳の活性化や気分の改善にもつながります。

中核症状のある方と接するときのケアのポイント

中核症状のある方と接するとき、少しの配慮がご本人の安心につながり、穏やかな関係を築く助けになります。

頭ごなしに否定せず、まずは本人の気持ちを受け止める

ご本人が事実と違うことを言っても、「違うでしょ」と否定するのは避けましょう。否定されると、ご本人は混乱し、不安になります。まずは「そうなんですね」と一度受け止め、話に耳を傾ける姿勢が大切です。その上で、必要であれば正しい情報を穏やかに伝えます。

本人のペースに合わせて急かさない

認知症の方は、考えたり行動したりするのに時間がかかります。こちらのペースで急かしてしまうと、焦りや失敗につながり、自信を失わせてしまいます。ゆったりと構え、ご本人のペースを見守り、必要に応じてさりげなく手伝いましょう。

安心できる環境を整え、役割を持ってもらう

いつも同じ場所に物が置いてある、一日の流れが決まっているなど、見通しのつきやすい環境はご本人に安心感を与えます。また、「洗濯物をたたむ」「食卓を拭く」など、簡単なことでも役割を持ってもらうことで、自尊心が保たれ、生活に張り合いが生まれます。

介護者が一人で抱え込まず専門家や周りを頼る

認知症の介護は、ご家族だけで抱え込むと心身ともに疲弊してしまいます。地域包括支援センターやケアマネジャー、かかりつけ医などに相談し、介護保険サービスなどを積極的に利用しましょう。介護者が休息をとり、自分の時間を持つことは、結果として良いケアを続けるために不可欠です。

中核症状のケアに適した老人ホームの種類

在宅での生活が難しくなった場合、専門的なケアを受けられる老人ホームへの入居も選択肢となります。

グループホーム(認知症対応型共同生活介護):家庭的な環境で共同生活

認知症の診断を受けた方を対象とする、地域密着型サービスの一つです。5~9人の少人数のユニットで、なじみのスタッフや他の入居者と共同生活を送ります。家庭的な雰囲気の中で過ごすことで精神的に安定しやすく、中核症状のケアに適した環境といえます。

住宅型有料老人ホーム:必要な外部サービスを選んで利用

食事サービスや見守りなどの生活支援が受けられる施設です。介護サービスが必要な場合は、外部の訪問介護やデイサービスなどを個別に契約して利用します。比較的お元気な方から介護が必要な方まで幅広く対応しており、ご自身の状態に合わせて必要なサービスを柔軟に選びたい方向けです。

介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護):24時間体制の手厚い介護

施設の介護・看護スタッフから、24時間体制で食事や入浴、排泄などの介護サービスを受けられる施設です。多くの場合、看護師が日中常駐しており、医療的ケアが必要な方や、認知症が進行し常時見守りが必要な方でも安心して生活しやすい体制が整っています。

認知症の症状や施設探しのお悩みは「笑がおで介護紹介センター」へ

認知症の中核症状は、ご本人の状態によって現れ方が様々です。「ご本人に合ったケアをしてくれる施設はどこだろう」「安心して任せられる施設を探したい」など、施設選びに関するお悩みは尽きないことと思います。

そんな時は、介護のプロに相談するのが一番の近道です。

専門の相談員が無料でご希望に合う施設探しをサポートします

「笑がおで介護紹介センター」では、関西エリアの介護施設情報に精通した専門の相談員が、無料で施設探しのお手伝いをいたします。ご本人の症状や心身の状態、ご家族のご希望を丁寧にお伺いし、数多くの選択肢の中から最適な老人ホームをご提案します。

見学の予約や同行、入居に関する手続きのサポートまで、一貫してご支援いたしますので、まずはお気軽にご相談ください。ご本人とご家族が、笑顔で穏やかな毎日を送れるよう、私たちが全力でサポートいたします。

監修者

花尾 奏一(はなお そういち)

保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

有料老人ホームにて介護主任を10年 
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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