【まだら認知症とは】症状の特徴・原因となる病気・家族の対応や予防法を解説

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【まだら認知症とは】症状の特徴・原因となる病気・家族の対応や予防法を解説

「昨日までできていたことが、今日はできない」「しっかりしている時と、そうでない時の差が激しい」。ご家族にこのような変化が見られたら、それは「まだら認知症」のサインかもしれません。まだら認知症は、脳の血管のトラブルが原因で起こる「脳血管性認知症」の代表的な症状で、できることとできないことがまだら模様のように混在するのが特徴です。アルツハイマー型認知症とは異なり、症状の現れ方や進行の仕方に違いがあります。この記事では、まだら認知症の具体的な症状や原因、進行を遅らせるための予防法やリハビリ、そしてご家族が知っておきたい対応のポイントまで、網羅的に解説します。まだら認知症は、正しい知識を持って早期に対応することで、ご本人もご家族も穏やかな生活を続けることが可能です。この記事が、まだら認知症への理解を深め、不安を和げる一助となれば幸いです。

まだら認知症とは?症状や特徴を解説

まだら認知症は、実は正式な病名ではありません。脳の血管が詰まったり破れたりする「脳血管性認知症」の方に見られる特有の症状の現れ方を指す言葉です。脳のダメージを受けた部分と、正常に機能している部分が混在しているため、まるで「まだら模様」のように、できることとできないことが入り混じった状態になります。そのため、症状の現れ方が日や時間帯によって変動しやすいのが大きな特徴です。

「できること」と「できないこと」が混在する症状

まだら認知症の最も代表的な特徴は、「認知機能の低下が全体的に起こるわけではない」という点です。これを「まだら症状」と呼びます。ダメージを受けた脳の部位が担っていた機能は失われますが、無事な部位の機能は保たれるため、「できること」と「できないこと」が混在するのです。

記憶力
最近の出来事は忘れてしまっても、昔の記憶は鮮明に覚えている。
判断力
簡単な計算はできるのに、買い物でお金の計算ができない。
実行機能
料理の手順は覚えているのに、いざ作ろうとすると段取りが組めず、途中で混乱してしまう。
理解力
テレビドラマの内容は理解できるのに、複雑な会話になるとついていけなくなる。

この状態は、ご本人も周囲も混乱しやすく、「怠けている」「わざとやらない」といった誤解につながることも少なくありません。

感情のコントロールが難しくなる「感情失禁」

まだら認知症の症状の一つに「感情失禁(かんじょうしっきん)」があります。これは、感情のコントロールが効かなくなり、ささいなきっかけで泣き出したり、怒り出したり、大笑いしたりする状態を指します。周囲から見ると感情の起伏が激しくなったように感じられますが、これはご本人の意思とは関係なく起こる症状です。脳の感情を司る部分がダメージを受けたことによるもので、ご本人もなぜそのような感情になるのか分からず、戸惑っていることが少なくありません。感情失禁が見られた場合は、ご本人の感情を否定せず、まずは落ち着いて受け止め、安心できるような言葉をかけることが大切です。

日や時間帯によって状態が変動しやすい

まだら認知症は、日によって、あるいは一日のうちでも時間帯によって症状が大きく変動することがあります。「午前中は穏やかに過ごせていたのに、午後になったら急に混乱し始めた」「昨日は問題なくできた家事が、今日は全く手につかない」といったケースは珍しくありません。これは、その日の体調や気分、周囲の環境の変化、脳の血流の状態など、様々な要因が影響していると考えられています。症状に波があることを理解し、状態が良い時に一喜したり、悪い時に一憂したりせず、長い目で見守る姿勢が求められます。

まだら認知症の主な原因は「脳血管性認知症」

まだら認知症の症状は、そのほとんどが「脳血管性認知症」によって引き起こされます。脳血管性認知症は、アルツハイマー型認知症に次いで多いタイプの認知症です。ここでは、脳血管性認知症がなぜ起こるのか、そのメカニズムとリスク要因について解説します。

脳梗塞や脳出血で脳の一部がダメージを受けることが引き金に

脳血管性認知症の直接的な原因は、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血といった「脳血管障害(脳卒中)」です。

脳梗塞
脳の血管が詰まり、その先の脳細胞に酸素や栄養が届かなくなり、神経細胞が死んでしまう病気です。
脳出血
脳の血管が破れて出血し、できた血腫(血のかたまり)が周囲の脳組織を圧迫してダメージを与える病気です。

これらの脳血管障害によって脳の一部が破壊されると、その部分が担っていた機能が失われます。例えば、記憶を司る部分がダメージを受ければ記憶障害が、言語を司る部分がダメージを受ければ言語障害が現れます。これが脳血管性認知症の正体です。特に、自覚症状がないまま起こる小さな脳梗塞(無症候性脳梗塞)が複数箇所で発生した場合でも、徐々に認知機能が低下し、まだら認知症の症状が現れることがあります。

高血圧などの生活習慣病がリスクを高める

脳血管障害の最大の危険因子は、動脈硬化です。動脈硬化とは、血管が硬く、もろくなってしまう状態で、これを進行させるのが高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病です。これらの生活習慣病を放置することは、脳血管障害のリスクを著しく高め、結果として脳血管性認知症の発症につながるのです。

高血圧
常に血管に高い圧力がかかっている状態で、血管の壁を傷つけ、動脈硬化を促進します。脳出血の最大の危険因子です。
糖尿病
高い血糖値が血管を傷つけ、動脈硬化を進行させます。脳梗塞のリスクを高めると言われています。
脂質異常症
血液中の悪玉コレステロールなどが増えすぎた状態で、血管の壁にプラーク(コレステロールのかたまり)を作り、動脈硬化の原因となります。
心房細動
心臓が不規則に拍動する不整脈の一種で、心臓の中に血栓(血の塊)ができやすくなります。その血栓が脳に飛んで血管を詰まらせると、脳梗塞(心原性脳塞栓症)を引き起こします。

まだら認知症の進行予防とリハビリテーション

脳血管性認知症によって一度失われた脳の機能を取り戻すことは困難です。しかし、適切な治療とリハビリテーションによって、症状の進行を遅らせたり、残された機能を最大限に活用したりすることは可能です。まだら認知症の進行予防で最も重要なのは、「脳血管障害の再発を防ぐこと」です。

原因となる生活習慣病の予防と治療

脳血管性認知症の進行予防は、その原因である高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の管理から始まります。医師の指導のもと、薬物療法をきちんと続けるとともに、日々の生活習慣を見直すことが不可欠です。

食生活の見直しと塩分・カロリー管理

高血圧予防のための減塩は特に重要です。また、血糖値やコレステロール値をコントロールするために、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。

食生活のポイント 具体的な内容
減塩 日本高血圧学会では1日の塩分摂取量を6g未満にすることを推奨しています。加工食品や麺類の汁を控える、香辛料やだしを上手に使うなどの工夫が有効です。
カロリー管理 肥満は生活習慣病の温床です。ご自身の適正体重を知り、食べ過ぎに注意して摂取カロリーをコントロールします。
バランスの良い食事 主食・主菜・副菜をそろえ、特に野菜や果物、魚(特に青魚)を積極的に摂りましょう。これらは動脈硬化の予防に役立つ栄養素を豊富に含みます。

ウォーキングなどの適度な運動

適度な運動は、血圧や血糖値を下げる効果が期待できるほか、血行を促進し、気分転換にもつながります。無理のない範囲で、ウォーキングや軽いジョギング、水中運動などの有酸素運動を習慣にすることがおすすめです。週に3~5日、1回30分程度を目安に、楽しみながら続けられる運動を見つけましょう。ただし、運動を始める前には、必ずかかりつけ医に相談してください。

脳の血流を促すリハビリテーション

まだら認知症のリハビリは、脳血管障害の再発予防と並行して行われます。残された脳の機能を維持・向上させ、日常生活の自立度を高めることを目的とします。専門家が行うリハビリには、以下のような種類があります。

理学療法
麻痺などの身体機能に障害がある場合に行います。歩行訓練や関節の運動などを通して、基本的な動作能力の回復を目指します。
作業療法
食事や着替え、入浴といった日常生活の応用的な動作の訓練や、家事、趣味活動などを通して、その人らしい生活を取り戻すための支援を行います。
言語聴覚療法
言葉がうまく話せない(失語症)、ろれつが回らない(構音障害)といった言語障害や、食べ物がうまく飲み込めない(嚥下障害)に対する訓練を行います。

また、ご家庭でも計算ドリルや音読、パズル、囲碁や将棋、趣味活動など、脳を活性化させる活動に積極的に取り組むことも、脳の血流を促し、認知機能の維持に有効です。

まだら認知症の方へのご家族の対応とケアのポイント

まだら認知症の方と接する上で、ご家族が症状の特性を理解することは非常に重要です。「できること」と「できないこと」が混在し、日によって状態が変動するため、戸惑うことも多いかもしれません。ここでは、ご家族が心に留めておきたい対応のポイントを3つご紹介します。

「できないこと」を責めずに「できること」を維持する声かけ

昨日までできていたことが急にできなくなると、つい「どうしてできないの?」「さっきはできたじゃない」と言いたくなってしまうかもしれません。しかし、このような言葉はご本人の自尊心を傷つけ、不安や混乱を増大させるだけです。できないことを責めるのではなく、まずは「できていること」に目を向けましょう。そして、そのことを認め、褒めることが大切です。例えば、着替えに時間がかかっても、自分で服を選べたことを「素敵な柄を選びましたね」と評価するなど、肯定的な声かけを心がけてください。ご本人が自信を取り戻し、意欲的に過ごすための大きな支えになります。

ご本人のプライドを傷つけないよう見守る姿勢

認知症になっても、ご本人のプライドや羞恥心は失われません。むしろ、「できなくなった自分」を誰よりも自覚し、深く傷ついていることが多いのです。そのため、過剰な手助けや、子どものように扱うことは避けなければなりません。失敗しそうになってもすぐには手を出さず、まずは見守る姿勢が大切です。ご本人が助けを求めてきた時に、さりげなくサポートしましょう。「手伝おうか?」「一緒にやってみようか?」など、ご本人の意思を尊重する言葉を選ぶことで、プライドを傷つけずに支援することができます。

介護者の負担を軽減するために介護サービスを上手に利用

ご家族だけで介護のすべてを抱え込むと、心身ともに疲弊してしまいます。介護者が倒れてしまっては、元も子もありません。介護者の休息(レスパイト)を確保するためにも、介護保険サービスを積極的に活用しましょう。利用できるサービスには、以下のようなものがあります。

デイサービス(通所介護)
日帰りで施設に通い、食事や入浴の介助、レクリエーション、機能訓練などを受けられます。ご本人の社会的な孤立を防ぎ、心身機能の維持向上を図るとともに、ご家族の介護負担を軽減します。
ショートステイ(短期入所生活介護)
短期間、施設に宿泊して介護を受けられるサービスです。ご家族の出張や冠婚葬祭、休息が必要な時などに利用できます。
訪問介護(ホームヘルプ)
ホームヘルパーが自宅を訪問し、身体介護(食事、入浴、排泄の介助など)や生活援助(掃除、洗濯、調理など)を行います。

これらのサービスを利用するには、要介護認定の申請が必要です。まずはお住まいの市区町村の窓口や、地域包括支援センターに相談してみましょう。

まだら認知症に関するよくある質問

まだら認知症について、多くの方が抱く疑問にお答えします。

まだら認知症は治りますか?

一度ダメージを受けて死んでしまった脳細胞は、現在の医療では再生させることができないため、まだら認知症(脳血管性認知症)を完治させることは困難です。しかし、原因となる高血圧などの生活習慣病をしっかり治療し、脳血管障害の再発を予防すること、そして適切なリハビリテーションを継続することによって、症状の進行を食い止めたり、穏やかにしたりすることは十分に可能です。残された機能を維持し、できるだけ長く自立した生活を送ることを目指します。

アルツハイマー型認知症との違いは何ですか?

まだら認知症(脳血管性認知症)とアルツハイマー型認知症は、原因も症状の現れ方も異なります。主な違いを以下の表にまとめました。ただし、両方のタイプを合併している混合型認知症の場合もあります。

比較項目 まだら認知症(脳血管性認知症) アルツハイマー型認知症
主な原因 脳梗塞や脳出血などの脳血管障害 脳にアミロイドβなどの異常なたんぱく質がたまり、神経細胞が死滅する
性差 比較的、男性に多い傾向 比較的、女性に多い傾向
進行 脳血管障害が起こるたびに段階的に悪化する。比較的、進行は早い場合がある ゆっくりと時間をかけて進行する
主な症状 ・記憶障害はあるが、判断力などは保たれていることが多い(まだら症状)
・感情失禁(急に泣く、怒るなど)
・手足の麻痺や言語障害などを伴うことがある
・記憶障害(特に新しいこと)から始まることが多い
・判断力の低下
・時間や場所が分からなくなる(見当識障害)

どんな施設が向いていますか?

まだら認知症の方は、症状の変動に対応できる体制や、脳血管障害の再発予防のための医療ケア、身体機能維持のためのリハビリテーションが重要になります。そのため、以下のような施設が選択肢として考えられます。どの施設が最適かは、ご本人の心身の状態や必要な医療ケア、ご家族の希望によって異なります。専門家と相談しながら、慎重に選ぶことが大切です。

介護付き有料老人ホーム
24時間体制で介護スタッフが常駐し、看護師も日中常駐している施設が多く、医療ケアやリハビリ体制も充実している傾向があります。看取りまで対応している施設も多く、安心して長く暮らせる選択肢です。
介護老人保健施設(老健)
病院退院後、在宅復帰を目指すための中間施設です。医師の管理のもと、理学療法士や作業療法士などによる専門的なリハビリを重点的に受けられます。ただし、入所期間は原則として3~6ヶ月程度とされています。
グループホーム
認知症の方を対象とした少人数の共同生活住居です。家庭的な雰囲気の中で、スタッフの支援を受けながら自立した生活を送ることを目指します。身体的な合併症が少なく、状態が安定している方向けです。

まだら認知症のご本人・ご家族に合った施設探しは「笑がおで介護紹介センター」へ

まだら認知症は、症状の現れ方に個人差が大きく、日によって状態も変動するため、「どのような施設を選べば良いのか分からない」と悩まれるご家族は少なくありません。医療ケアやリハビリの必要性、ご本人の性格やこれまでの生活歴など、考慮すべき点は多岐にわたります。

そんな時は、ぜひ私たち「笑がおで介護紹介センター」にご相談ください。介護業界に精通した経験豊富な相談員が、ご本人様のお体の状態やご希望、ご家族様の想いを丁寧にお伺いした上で、数ある施設の中から最適な選択肢をご提案いたします。関西エリア(大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山、滋賀、三重)の老人ホーム・介護施設の情報に精通しており、パンフレットだけでは分からない各施設の特徴や雰囲気まで熟知しています。見学の予約や同行も無料でサポートいたしますので、安心してお任せください。ご相談は無料です。まだら認知症の方の施設探しでお悩みでしたら、一人で抱え込まず、まずはお気軽にお問い合わせください。

監修者

花尾 奏一(はなお そういち)

保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

有料老人ホームにて介護主任を10年 
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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