【認知症の症状】中核症状と周辺症状(BPSD)の違い・関係性とご家族の対応を解説

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【認知症の症状】中核症状と周辺症状(BPSD)の違い・関係性とご家族の対応を解説

「最近、親のもの忘れがひどくなった気がする」「穏やかだった父が、急に怒りっぽくなった」。ご家族にこのような変化が見られると、どう接すれば良いのか、これからどうなってしまうのかと、大きな不安を感じることでしょう。実は、認知症の症状には大きく分けて2つの種類があります。一つは、脳の機能が低下することで誰にでも起こる「中核症状」。もう一つは、その中核症状が引き金となり、ご本人の性格や周りの環境などが影響して現れる「周辺症状(BPSD)」です。この記事では、認知症の「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」のそれぞれの特徴と、両者の深い関係性について詳しく解説します。この2つの症状の違いと関係性を理解することは、ご家族が認知症と向き合う上での羅針盤となります。症状の背景にあるご本人の辛さを理解し、適切な対応方法を知ることで、ご本人もご家族も穏やかな時間を過ごすためのヒントが見つかるはずです。

認知症の症状は「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」の2種類

認知症と一言でいっても、その症状の現れ方は様々です。これらを理解しやすくするために、症状は「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」の2つに大別されます。この2つの違いを知ることが、認知症ケアの第一歩となります。

中核症状
脳の神経細胞が壊れることによって、脳の機能が直接的に低下する症状です。記憶する、考える、時間や場所を認識するといった機能が損なわれます。認知症になった方であれば、誰にでも現れる基本的な症状です。
周辺症状(BPSD)
中核症状によって引き起こされる不安や混乱をベースに、ご本人が元々持っている性格、生活してきた環境、人間関係、心理状態などが複雑に絡み合って二次的に現れる症状です。そのため、症状の現れ方は人それぞれで、個人差が大きいのが特徴です。「BPSD」とは、英語の「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」の略称です。

中核症状が原因となり、二次的に周辺症状が現れる

この2つの症状は無関係ではありません。「中核症状」が根本的な原因となり、それがご本人の心に影響を与え、「周辺症状(BPSD)」という形で現れます。

例えば、「物を置いた場所を忘れる(中核症状)」という出来事が起こると、ご本人は「なぜないんだろう」と不安になります。その不安な気持ちを解消するために、「誰かに盗られたに違いない」という「物盗られ妄想(周辺症状)」につながることがあります。

このように、周辺症状は、中核症状によって引き起こされるご本人の苦しみや戸惑いのサインと捉えることができます。

脳の機能低下によって誰にでも起こる「中核症状」

中核症状は、脳のどの部分がダメージを受けたかによって現れ方が異なりますが、認知症と診断された方には、程度の差こそあれ必ず見られる症状です。代表的な中核症状を4つご紹介します。

記憶障害(もの忘れ)

認知症の症状として最もよく知られているのが記憶障害です。特に、新しいことを記憶する力が低下するため、数分前、数時間前の出来事を忘れてしまいます。食事をしたこと自体を忘れて「ご飯はまだ?」と要求したり、同じことを何度も尋ねたりするのはこのためです。加齢によるもの忘れが体験の一部(昨日の夕食のおかずなど)を忘れるのに対し、認知症の記憶障害は体験の全体(夕食を食べたこと自体)を忘れてしまうという違いがあります。

見当識障害(時間・場所がわからない)

見当識(けんとうしき)とは、現在の時間や日付、自分がどこにいるのか、周りにいる人が誰なのかを正しく認識する能力のことです。見当識障害が起こると、まず時間や季節の感覚が曖昧になります。真夏にセーターを着ようとしたり、夜中に「朝だ」と言って起きだしたりします。症状が進行すると、慣れているはずの道で迷ったり、自宅にいるのに「家に帰る」と言い出したりするようになります。さらに進むと、ご家族や親しい人の顔が分からなくなることもあります。

理解力・判断力の低下

物事を考えたり、理解したりするスピードが遅くなり、これまで当たり前にできていたことが難しくなります。例えば、一度に複数のことを言われると混乱したり、話の内容が少し複雑になると理解できなかったりします。また、いつもと違う出来事が起きた時に、どう対応すれば良いか判断できなくなります。自動販売機で切符を買う、銀行のATMを操作するといった、一連の手順が必要な作業も苦手になります。

実行機能障害(段取りができない)

実行機能とは、目的を達成するために計画を立て、段取り良く物事を進める能力のことです。この機能が障害されると、計画的な行動がとれなくなります。例えば、料理を作る際に、複数の品物を同時に調理するための段取りが組めず、時間がかかったり、途中でやめてしまったりします。また、買い物に行って、必要なものを必要なだけ買うといった計画的な行動も難しくなります。

ご本人の性格や環境が影響して現れる「周辺症状(BPSD)」

周辺症状(BPSD)は、中核症状によって生じる困難やストレスに対し、ご本人の心と体が反応して起こる症状です。そのため、ケアの方法や環境を工夫することで、症状を和らげたり、なくしたりできる可能性があります

心理面の症状:不安・抑うつ・妄想・幻覚

ご本人の内面、心理状態に現れる症状です。

不安・抑うつ・無気力(アパシー)
「なんだか今までと違う」「できなくなった」という状況に、ご本人が一番戸惑い、不安を感じています。その不安から気分が落ち込み、ふさぎ込んだり(抑うつ)、何事にも興味や関心を示さなくなったり(無気力)することがあります。
妄想
最も多いのが、財布などを「盗られた」と思い込む「物盗られ妄想」です。他にも、配偶者の浮気を疑う「嫉妬妄想」などがあります。
幻覚
実際にはないものが見えたり、聞こえたりする症状です。特に、いないはずの人や動物、虫などが見える「幻視」は、レビー小体型認知症でよく見られます。

行動面の症状:暴力・暴言・徘徊・介護拒否

心理面の症状が、具体的な行動として外に現れたものです。

暴力・暴言
自分の気持ちをうまく言葉で伝えられないもどかしさや、自尊心を傷つけられたと感じた時に、手を出したり、大声で怒鳴ったりすることがあります。
徘徊
目的もなく歩き回っているように見えますが、ご本人には「家に帰りたい」「トイレを探している」「仕事に行かなくては」といった切実な理由や目的がある場合がほとんどです。
介護拒否
入浴や着替え、服薬などを頑なに拒否する行動です。羞恥心や、何をされるのか分からない不安、手順が理解できない混乱などが原因と考えられます。

症状の関係性を理解することがご家族の対応の第一歩

認知症の方を介護する上で、暴力や妄想といった周辺症状(BPSD)は、ご家族にとって最も対応が難しく、負担に感じる部分かもしれません。しかし、その行動だけを見るのではなく、なぜそのような行動が起こるのか、その背景を理解しようとすることが、対応の第一歩となります。

例:記憶障害(中核症状)が「物盗られ妄想」(周辺症状)を引き起こす

周辺症状がどのようにして現れるのか、「物盗られ妄想」を例に見てみましょう。

  1. 【中核症状】 財布を自分でしまい込んだ場所を忘れてしまう(記憶障害)。
  2. 【心理的混乱】 財布を探しても見つからず、「ない!」という事実に直面し、強い不安と混乱に陥る。
  3. 【自己防衛】 「自分が忘れた」という失敗を認めることはプライドが許さず、この不安な状況を何とか説明しようとする。
  4. 【周辺症状】 「自分はしっかり管理していた。ないのはおかしい。きっと誰かが盗んだに違いない」という結論に達し、「物盗られ妄想」という症状が現れる。

このように、周辺症状は、中核症状によってもたらされる不自由さや不安な気持ちからご本人自身を守るための、苦肉の策とも言えるのです。

周辺症状はケアや環境の工夫で改善できる可能性がある

この関係性を理解すると、ケアの方向性が見えてきます。中核症状である記憶障害そのものを治すことは難しいですが、その後の心理的な混乱や不安を和らげてあげることで、二次的に起こる周辺症状を軽くしたり、なくしたりすることが可能です。つまり、周辺症状は、周りの人の関わり方や環境調整によって改善できる可能性があるのです

中核症状に対してはご本人のプライドを傷つけないサポートを

記憶障害や実行機能障害といった中核症状によって、ご本人が何かを失敗したり、できなくなったりした時に、それを正面から指摘したり、責めたりするのは避けましょう。ご本人の自尊心を深く傷つけ、かえって不安や混乱を招きます。

「忘れても大丈夫だよ」「一緒にやろうか」という姿勢で、さりげなく手伝ったり、代わりに行ったりするなど、ご本人のプライドに配慮したサポートを心がけましょう。

周辺症状に対しては原因を探り、不安を取り除く対応を

暴力や徘徊などの周辺症状が見られた時は、「問題行動」と決めつける前に、「なぜ、この人はこんな行動をするのだろう?」とその背景にある原因を探る視点が重要です。

徘徊しているなら、「どこか行きたいところがあるのですか?」と優しく尋ねてみる。入浴を拒否するなら、「お風呂場が寒いのかな?」「裸になるのが恥ずかしいのかな?」と考えてみる。その行動の裏に隠されたご本人の不安や不快感、訴えを理解し、それを取り除くことで、周辺症状は自然と収まっていくことが多くあります。

早期発見と専門家への相談の重要性

「もしかして認知症かも?」と感じたら、できるだけ早く専門機関に相談することが大切です。早期に診断を受け、正しい知識を持って対応を始めることで、認知症の進行を緩やかにし、周辺症状(BPSD)の発現を予防したり、軽くしたりすることにつながります。

「加齢によるもの忘れ」との違いと認知症のサイン

年を重ねれば誰でももの忘れは増えますが、認知症による記憶障害とは質が異なります。ご家族が「おかしいな」と気づくためのサインを理解しておきましょう。

比較項目 加齢によるもの忘れ 認知症による記憶障害
忘れる内容 体験したことの一部(例:夕食のおかず) 体験したことの全体(例:夕食を食べたこと自体)
自覚の有無 もの忘れの自覚がある 忘れたこと自体の自覚がないことが多い
ヒントの効果 ヒントがあれば思い出せる ヒントがあっても思い出せない
日常生活への影響 ほとんどない 支障が出てくる(約束を忘れるなど)

もの忘れ以外にも、人柄が変わった、趣味に関心が無くなった、身なりを気にしなくなったなども、認知症の初期サインである場合があります。

一人で抱え込まず、かかりつけ医や専門機関に相談する

ご家族だけで悩みを抱え込まず、専門家の力を借りることが重要です。まずは、日頃から健康状態を把握してくれているかかりつけ医に相談してみましょう。

また、各市町村に設置されている「地域包括支援センター」は、高齢者の健康や介護に関する総合相談窓口です。必要に応じて、認知症の専門医療機関である「認知症疾患医療センター」などを紹介してくれます。

ご本人に合ったケアや施設探しは「笑がおで介護紹介センター」へ

認知症の症状の現れ方は、一人ひとり全く異なります。中核症状の程度や、どのような周辺症状(BPSD)が出ているかによって、ご本人に必要なケアや、安心して過ごせる環境も変わってきます。

「在宅での介護が難しくなってきた」「認知症のケアに詳しい施設はあるだろうか」。そんなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ私たち「笑がおで介護紹介センター」にご相談ください。

認知症ケアに関する豊富な知識と経験を持つ相談員が、ご本人の症状やお人柄、ご家族のご希望を丁寧にお伺いし、数ある選択肢の中から最適な老人ホーム・介護施設をご提案いたします。

関西エリア(大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山、滋賀、三重)の施設情報に精通しておりますので、安心してお任せください。ご相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。

監修者

花尾 奏一(はなお そういち)

保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

有料老人ホームにて介護主任を10年 
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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