【認知症の進行】段階別の症状・原因と進行を緩やかにするケア方法を解説

「認知症と診断されたら、この先どうなっていくのだろう」「症状の進行を少しでも遅らせる方法はないのだろうか」。ご家族が認知症と診断された時、その進行に対する不安は計り知れないものでしょう。結論として、認知症は原因となる病気によって進行の仕方が異なり、時間とともに症状も変化していく進行性の状態ですが、適切な治療やケア、生活習慣によってその進行を緩やかにすることは可能です。この記事では、認知症の進行を「初期・中期・後期」の段階に分け、それぞれの症状と対応のポイントを詳しく解説します。さらに、進行に影響を与える要因や、進行を緩やかにするための具体的な方法、進行度に合わせた施設選びまで、ご家族が知っておきたい情報を網羅しました。認知症の進行を正しく理解し、ご本人とご家族が少しでも穏やかに過ごすためのヒントを見つけていただければ幸いです。
認知症の進行段階|初期・中期・後期の症状の変化
認知症の進行は、一般的に「初期」「中期」「後期」の3段階に分けられます。また、その前段階として「軽度認知障害(MCI)」も注目されています。それぞれの段階における症状と、ご家族や周りの人が心がけたい対応のポイントを見ていきましょう。
前兆:軽度認知障害(MCI)の段階
軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)は、健常な状態と認知症との間のグレーゾーンにあたる状態です。
- 症状
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ご本人やご家族からもの忘れの訴えはあるものの、日常生活への影響はほとんどなく、認知症とは診断されない状態です。しかし、MCIと診断された人のうち、年間約10~15%が認知症に移行すると言われており、認知症の重要な「前兆」と捉えられています。
- 対応のポイント
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この段階で運動習慣やバランスの取れた食事、社会参加などを積極的に行うことで、認知機能の維持・改善や、認知症への進行を予防できる可能性があります。早期発見と対策が非常に重要です。
初期段階の症状と対応のポイント
記憶障害などの症状が出始め、診断を受けることが多い時期です。
- 症状
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- 直前の出来事を忘れる、同じことを何度も聞くなどの記憶障害が目立ちます。
- 料理や買い物など、段取りが必要なこと(実行機能)が苦手になります。
- 時間や場所がわからなくなる見当識障害が出始めます。
- ご本人は能力の低下に戸惑い、不安や抑うつ、意欲の低下が見られることがあります。
- 対応のポイント
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できなくなったことを責めたり、指摘しすぎたりせず、ご本人の自尊心を傷つけない配慮が大切です。ご本人が安心して話せる環境を作り、不安な気持ちに寄り添いましょう。メモやカレンダーを活用し、ご本人が自分で確認できる工夫も有効です。
中期段階の症状と対応のポイント
中核症状がさらに進行し、日常生活全般に介助が必要となってくる時期です。
- 症状
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- 記憶障害が進行し、数分前のことも忘れてしまいます。
- 時間や場所だけでなく、人の顔がわからなくなることがあります。
- 着替えや食事、トイレなどの日常生活動作に介助が必要になります。
- 徘徊、妄想、興奮、暴力・暴言といった行動・心理症状(BPSD)が最も現れやすい時期です。
- 対応のポイント
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行動・心理症状(BPSD)には、その背景にご本人の不安や混乱、訴えたい気持ちが隠れていることを理解しようと努めることが重要です。介護の負担が最も大きくなる時期のため、デイサービスやショートステイなどの介護サービスを積極的に利用し、ご家族だけで抱え込まないようにしましょう。
後期段階の症状と対応のポイント
心身の機能が著しく低下し、ほぼ常時介護が必要な状態となる時期です。
- 症状
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- 記憶はほとんど失われ、ご家族のことも認識できなくなることが多いです。
- コミュニケーションは言葉ではなく、表情やしぐさが中心になります。
- 歩行が困難になり、寝たきりの状態になることもあります。
- 食べ物を飲み込むことが難しくなる嚥下障害が起こりやすくなります。
- 対応のポイント
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言葉での意思疎通は難しくなりますが、感情は残っています。優しく話しかけたり、手を握ったりといったスキンシップで、安心感を与えることが大切です。誤嚥性肺炎などの合併症を予防するための口腔ケアや、床ずれを防ぐための体位交換など、身体的なケアが中心となります。
【種類別】認知症の進行のしかたと特徴
認知症は、原因となる病気によって進行のパターンが異なります。代表的な3つのタイプの進行の特徴を知っておきましょう。
アルツハイマー型認知症の進行
比較的ゆるやかに、しかし着実に進行するのが特徴です。まるでなだらかな坂道を下っていくように、数年から10年以上かけて段階的に症状が進んでいきます。記憶障害から始まり、徐々に見当識障害や実行機能障害などが現れてきます。
レビー小体型認知症の進行
調子の良い時と悪い時を繰り返しながら、全体としては進行していくのが特徴です。進行のスピードはアルツハイマー型に比べて早い傾向があります。幻視やパーキンソン症状など、特有の症状が現れます。
血管性認知症の進行
脳梗塞や脳出血といった脳血管障害が起こるたびに、ガクンと階段を下りるように段階的に症状が悪化します。そのため、症状の進行は比較的急速な場合もあれば、再発作がなければ長期間同じ状態で安定していることもあります。
認知症の進行に影響する要因と緩やかにする方法
認知症は進行性の病気ですが、日々の過ごし方や環境によって、そのスピードは変わってくると考えられています。
進行を早める可能性のある要因
- 孤独・社会的孤立
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人との交流がなく、家に閉じこもりがちになると、脳への刺激が減少し、認知機能の低下につながります。
- ストレス
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環境の変化や、周りから急かされたり叱られたりすることは大きなストレスとなり、混乱や不安を招き、症状を悪化させることがあります。
- 活動性の低下
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運動不足や、日中に何もせずぼーっと過ごすことが多い生活は、心身機能の低下を招き、認知症の進行にも影響します。
- 不適切な生活習慣
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栄養バランスの偏りや水分不足、睡眠不足などは健康状態を悪化させ、認知機能にも悪影響を及ぼす可能性があります。
進行を緩やかにするためのケアと生活習慣
認知症の進行を緩やかにするためには、「薬物療法」と、生活習慣の改善やリハビリテーションなどの「非薬物療法」を組み合わせることが重要です。
食事・運動・知的活動で脳を活性化
- 食事
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特定の食品だけを摂取するのではなく、魚や野菜、果物などをバランス良く取り入れた食生活を心がけます。特に青魚に含まれるDHAやEPA、緑黄色野菜に含まれる抗酸化物質などが良いとされています。
- 運動
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ウォーキングなどの有酸素運動を週に数回行う習慣は、脳の血流を良くし、認知機能の維持に効果が期待できます。無理なく続けられることが大切です。
- 知的活動(脳トレ)
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簡単な計算や音読、パズル、囲碁や将棋、手芸など、ご本人が興味を持って楽しく取り組める活動は、脳の活性化につながります。
薬による治療(薬物療法)
現在、日本で承認されている認知症の治療薬は、残念ながら病気そのものを治すものではありません。しかし、症状の進行を一定期間抑制し、穏やかに過ごせる時間を延ばす効果が期待できます。アルツハイマー型認知症に対しては、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル塩酸塩など)やNMDA受容体拮抗薬(メマンチン塩酸塩)などが用いられます。医師の指示に従い、正しく服用することが重要です。
人との交流や役割を持つことの重要性
認知症になっても、社会とのつながりを持ち続けることは非常に大切です。デイサービスや地域のサロンなどに参加して人と会話したり、料理の盛り付けや洗濯物たたみなど、簡単な家事の役割を担ってもらったりすることで、脳への良い刺激となり、ご本人の自信や意欲を引き出すことにつながります。
【症状別の対応】進行段階で見られる症状とケアのヒント
進行に伴って現れる様々な症状に対し、ご家族がどのように対応すればよいか、具体的なヒントをご紹介します。
中核症状(記憶障害・見当識障害など)への対応
- 記憶障害への対応
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忘れたことを責めず、自然な形で情報を伝えましょう。予定や大切なことは、目につく場所にメモを貼るなど、視覚的に思い出せる工夫が有効です。
- 見当識障害への対応
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カレンダーや時計を大きく見やすい場所に置いたり、「今日は〇月〇日ですね」と会話の中でさりげなく伝えたりすることで、安心感につながります。
行動・心理症状(BPSD)への対応
- もの盗られ妄想への対応
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「盗んでいない」と否定するのではなく、「それは大変、一緒に探しましょう」と、まずはご本人の訴えを受け止め、共感する姿勢が大切です。ご本人の不安な気持ちに寄り添いましょう。
- 徘徊への対応
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無理に止めようとせず、まずは安全を確保した上で少し付き添い、気分転換を図ってから家に戻るよう促します。玄関にセンサーをつけたり、地域の見守りネットワークに登録したりする対策も重要です。
認知症の進行度に合わせた老人ホーム選び
在宅での介護が難しくなってきた場合、老人ホームへの入居も選択肢の一つとなります。認知症の進行度によって、適した施設の種類は異なります。
初期段階の方:グループホーム・住宅型有料老人ホーム
- グループホーム
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認知症の方が少人数で共同生活を送る施設です。なじみの関係の中で、役割を持って生活することで、症状の進行を緩やかにする効果が期待できます。
- 住宅型有料老人ホーム
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生活支援サービスを受けながら、必要な介護は外部のサービスを利用します。まだ自立できる部分が多く、自分のペースで生活したい初期の方に適しています。
中期~後期段階の方:介護付き有料老人ホーム
24時間体制で介護スタッフが常駐し、手厚い介護を受けられる施設です。認知症ケアに特化したフロアを設けている施設や、医療機関との連携が強く、看取りまで対応している施設も多いため、症状が進行しても安心して暮らすことができます。
認知症の進行に関するよくある質問
ここでは、認知症の進行についてよくある疑問にお答えします。
認知症の進行速度は人によって違いますか?
はい、進行速度には大きな個人差があります。原因となる病気の種類、年齢、持病の有無、生活習慣、受けているケアの内容など、様々な要因が影響するため、一概には言えません。
認知症は必ず進行するものですか?
現在の医療では、認知症を完治させることは難しく、基本的には進行性の状態とされています。しかし、前述したように、適切な治療や生活習慣、周りの関わり方によって、その進行を緩やかにし、穏やかな状態を長く保つことは十分に可能です。
家族として何ができますか?
最も大切なのは、認知症という病気を正しく理解し、ご本人の気持ちに寄り添うことです。できなくなったことではなく、まだできることに目を向け、ご本人の尊厳を守る関わり方を心がけましょう。また、介護保険サービスなどを活用し、決して一人で抱え込まず、専門家や周りのサポートを得ることも重要です。
認知症の進行や施設選びのお悩みは「笑がおで介護紹介センター」へ
認知症の進行と向き合うことは、ご家族にとって精神的にも身体的にも大きな負担が伴います。特に、症状が進行するにつれて、どのような環境がご本人にとって最適なのか、施設選びに悩まれる方も少なくありません。
そんな時は、介護の専門家である私たち「笑がおで介護紹介センター」にお任せください。関西エリア(大阪・兵庫・京都・奈良・和歌山・滋賀・三重)の施設情報に精通した相談員が、ご本人の認知症の進行度や症状、ご家族のご希望を丁寧にお伺いし、最適な老人ホーム・介護施設を無料でご紹介いたします。先の見えない不安を、安心に変えるお手伝いをさせてください。まずはお気軽にご相談ください。

このコラムの監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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