【認知症の薬】効果や副作用を一覧で解説|症状別の種類や新薬の最新情報も

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【認知症の薬】効果や副作用を一覧で解説|症状別の種類や新薬の最新情報も

ご家族が認知症と診断され、薬による治療が始まると、「この薬はどんな効果があるの?」「副作用は大丈夫だろうか?」といった様々な疑問や不安が生まれることでしょう。また、近年では新しいタイプの認知症治療薬も登場し、治療の選択肢は広がりを見せています。認知症の薬は、症状の進行を緩やかにし、ご本人やご家族が穏やかに過ごすための大きな助けとなります。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、薬の種類や目的、そして副作用について正しく理解しておくことが不可欠です。この記事では、現在日本で使われている認知症の薬について、その種類や効果、副作用を一覧で分かりやすく解説します。さらに、ご家族ができる服薬管理のポイントや、注目される新薬の最新情報まで、幅広くご紹介します。薬と上手に付き合っていくための知識として、ぜひお役立てください。

認知症の薬物療法とは|目的と治療の基本

まず、認知症の薬物療法がどのような目的で行われ、治療においてどう位置づけられているのか、基本的な考え方を理解しておくことが大切です。

薬物療法の目的は症状の緩和と進行抑制

現在の医療では、残念ながら認知症を完全に治す(完治させる)薬はまだありません。薬物療法の主な目的は、大きく分けて2つです。

中核症状の進行抑制
記憶障害や見当識障害といった、認知症の根本的な症状(中核症状)の進行をできるだけ緩やかにすることを目指します。
行動・心理症状(BPSD)の緩和
妄想や興奮、うつ状態といった、中核症状に伴って現れる行動面・心理面の症状(BPSD)を和らげ、ご本人やご家族の負担を軽くすることを目指します。

薬によって、ご本人が自分らしく穏やかに過ごせる時間を少しでも長く保つこと。それが認知症における薬物療法の最も重要な目的です。

非薬物療法との併用が効果的

認知症の治療は、薬だけに頼るものではありません。薬物療法と、薬を使わない「非薬物療法」を車の両輪のように組み合わせて行うことが基本となります。

非薬物療法には、脳の活性化を図るリハビリテーション、昔を思い出す回想法、音楽療法などがあります。また、デイサービスなどの介護サービスを利用して他者と交流したり、ご本人が安心できる環境を整えたりすることも非常に重要です。これらを薬物療法と併用することで、より高い治療効果が期待できます。

病気の進行を抑える薬も登場|早期発見・早期治療が重要

これまで、認知症の薬は症状を緩和する「症状改善薬」が中心でした。しかし近年、アルツハイマー病の原因物質に直接働きかけ、病気の進行そのものを抑えることを目指した新しいタイプの薬(疾患修飾薬)が登場し、治療は新たな時代を迎えつつあります。

どのような薬であっても、その効果を最大限に引き出すためには、早期の段階から治療を始めることが重要です。「もの忘れが気になる」といった小さなサインを見逃さず、早期に専門医を受診することが、その後の生活の質を大きく左右します。

【症状別】認知症に使われる薬の種類一覧

認知症の治療薬は、作用する症状によって「中核症状」に用いる薬と、「行動・心理症状(BPSD)」に用いる薬に大別されます。

中核症状に用いる「抗認知症薬」4種類

記憶障害や見当識障害といった中核症状の進行を抑制する目的で使われる薬です。現在、日本で承認されているのは以下の4種類です。

商品名(一般名) 剤形 主な対象 特徴
アリセプト (ドネペジル) 錠剤、OD錠、ゼリー、内用液 ・アルツハイマー型認知症
・レビー小体型認知症
軽度から高度まで幅広い病期に使用可能。世界で最も広く使われている。
レミニール (ガランタミン) 錠剤、OD錠、内用液 軽度~中等度のアルツハイマー型認知症 アセチルコリンの量を増やす作用と、情報伝達をスムーズにする作用を併せ持つ。
イクセロンパッチ/リバスタッチパッチ (リバスチグミン) 貼り薬(パッチ剤) 軽度~中等度のアルツハイマー型認知症 1日1回貼るタイプ。飲み込みが苦手な方や、内服薬で副作用が出やすい方に向いている。
メマリー (メマンチン) 錠剤、OD錠 中等度~高度のアルツハイマー型認知症 他の3剤とは作用の仕方が異なる。興奮や攻撃性を抑える効果も期待できる。他の3剤と併用されることもある。

行動・心理症状(BPSD)に用いる薬

妄想、興奮、うつ、不眠といったBPSDに対しては、症状を緩和するために以下のような薬が用いられます。ただし、これらの薬の使用は、非薬物療法で改善が見られない場合に限り、慎重に検討されるのが原則です。

向精神薬
主に幻覚や妄想、著しい興奮や攻撃性といった精神症状を鎮めるために用いられます。副作用に注意しながら、非定型抗精神病薬が少量から使われることが多いです。
抗うつ薬
抑うつ気分、意欲の低下、不安、焦りといった症状が見られる場合に処方されます。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などが用いられます。
抗不安薬
不安感が強く、落ち着きがない状態を和らげるために用いられます。依存性や、ふらつき・転倒のリスクがあるため、長期使用は避けるべきとされています。
睡眠薬
不眠や昼夜逆転といった睡眠障害が著しい場合に用いられます。高齢者の場合は、翌朝への持ち越し効果や転倒のリスクが少ない薬が慎重に選ばれます。
漢方薬
BPSDの緩和に漢方薬が有効な場合があります。特に「抑肝散(よくかんさん)」は、神経の高ぶりを抑える効果が期待でき、イライラや不眠といった症状に広く用いられています。

知っておきたい認知症の薬の副作用

薬には効果がある一方で、副作用のリスクも伴います。どのような副作用が起こりうるのかを事前に知っておくことで、いざという時に落ち着いて対応できます。

抗認知症薬の主な副作用一覧

抗認知症薬の4種類に共通して見られやすいのは、吐き気や食欲不振、下痢といった消化器系の症状です。

薬の種類 主な副作用
アリセプト、レミニール、イクセロン/リバスタッチ 吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢、めまい、頭痛、興奮、イライラ、脈が遅くなる(徐脈)など
メマリー めまい、ふらつき、眠気、頭痛、便秘、食欲不振など

これらの副作用は、飲み始めや薬の量を増やした時に現れやすいですが、徐々に慣れていくことも多いです。

行動・心理症状(BPSD)治療薬の主な副作用

BPSDの治療薬は、種類によって様々な副作用がありますが、特に注意したいのが眠気やふらつきです。これらは転倒や骨折につながるリスクを高めます。また、薬が効きすぎて、ぼんやりしたり、活気がなくなったりすることもあります。

副作用かもと思ったら医師や薬剤師にすぐ相談

「いつもと様子が違うな」「これは副作用かな?」と感じたら、自己判断で薬をやめたり量を減らしたりせず、すぐに処方した医師や、かかりつけの薬剤師に相談してください。薬の量を調整したり、他の薬に変更したりすることで、副作用を軽減できる場合があります。

ご家族ができる服薬管理のポイントと工夫

認知症の方が薬を正しく飲み続けるためには、ご家族のサポートが欠かせません。ここでは、服薬管理をスムーズに行うための工夫をご紹介します。

薬の飲み忘れ・飲み過ぎを防ぐ方法

記憶障害により、薬を飲んだことを忘れてしまったり、飲み忘れたりすることがあります。二重に飲んでしまう「過量服薬」も危険です。

お薬カレンダーやケースの活用
曜日や朝・昼・夕ごとにポケットが分かれている「お薬カレンダー」や「お薬ケース」は、飲み忘れや飲み過ぎを防ぐのに非常に有効です。ご本人の目につきやすい場所に置き、飲んだかどうかをご家族が一緒に確認する習慣をつけましょう。
薬局や訪問サービスの活用
薬局では、飲むタイミングごとに薬を一つの袋にまとめる「一包化」をしてもらえます。また、訪問看護師に服薬管理を依頼したり、薬剤師が自宅を訪問して薬の管理や説明をしてくれるサービスもあります。

ご本人が服薬を拒否する場合の対応

薬を飲むこと自体を拒否されるケースもあります。その場合は、無理強いせずに、まずは理由を探ってみましょう。「味が嫌い」「錠剤が大きくて飲み込めない」といった理由が隠れているかもしれません。医師や薬剤師に相談し、粉薬や液体、貼り薬、口の中で溶けるOD錠など、剤形の変更を検討してもらうのも一つの方法です。

認知症治療の最前線|新薬の開発状況

認知症治療は、近年大きな転換期を迎えています。アルツハイマー病の根本原因にアプローチする新薬が登場し、大きな注目を集めています。

アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」

「レカネマブ(商品名:レケンビ)」は、アルツハイマー病の原因物質と考えられている「アミロイドβ」という異常なたんぱく質を脳内から取り除くことを目的とした薬です。

従来の薬が症状を緩和する対症療法であったのに対し、この新薬は病気の進行そのものに影響を与える「疾患修飾薬」として画期的なものです。ただし、投与の対象は、アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)または早期の認知症の方に限られます。また、脳のむくみや出血といった特有の副作用があるため、専門の医療機関で慎重に投与される必要があります。

※アデュカヌマブ(アデュヘルム)は、2024年に日本での販売が中止されたため、情報を更新しました。

今後の新薬開発への期待

現在も、世界中で様々な角度から新薬の開発が進められています。これらの新しい薬の登場は、認知症が「治らない病気」から「進行を止められる、あるいは予防できる病気」へと変わっていく未来への大きな一歩と言えるでしょう。

薬の管理も相談できる老人ホーム・介護施設という選択肢

在宅での生活が長くなると、薬の種類が増えたり、ご本人の拒否が強くなったりして、ご家族だけでの服薬管理が困難になるケースも少なくありません。そのような場合は、専門家のサポートが受けられる老人ホームや介護施設への入居も有効な選択肢となります。

グループホーム
認知症の方を専門に受け入れる少人数の共同生活住居です。認知症ケアに精通したスタッフが24時間常駐し、家庭的な雰囲気の中で、服薬の見守りなど一人ひとりの状態に合わせたサポートを行います。
介護付き有料老人ホーム
多くの場合、日中は看護師が常駐し、医療機関との連携体制も整っています。そのため、より確実な服薬管理が可能です。医療的なケアが必要な方の受け入れも可能な施設が多くあります。

認知症の薬や治療のことは専門家への相談が不可欠

認知症の薬物療法は非常に専門的な知識を要します。ご家族だけで判断せず、必ず専門家と連携して進めていくことが大切です。

かかりつけ医や専門医との連携
薬の開始や変更、中止は、必ず医師の判断のもとで行われます。治療方針や薬の効果、副作用について、分からないことは遠慮なく医師に質問し、納得のいく治療を受けられるようにしましょう。
薬のことはかかりつけ薬剤師に相談
薬に関するより身近な相談相手が「かかりつけ薬剤師」です。薬の飲み方や飲み合わせ、副作用に関する詳しい説明はもちろん、服薬管理全般について親身に相談に乗ってくれます。

認知症の不安や悩みは「笑がおで介護紹介センター」へご相談ください

認知症の治療や介護は、ご家族だけで抱え込むにはあまりにも大きな課題です。薬の管理に関する悩みはもちろん、「今後の生活はどうしたらいいの?」「どんな介護サービスが使えるの?」といった不安や疑問がございましたら、ぜひ私たち「笑がおで介護紹介センター」にご相談ください。

介護の専門知識と豊富な経験を持つ相談員が、ご本人とご家族の状況を丁寧にお伺いし、最適な介護サービスや施設選びを無料でサポートいたします。関西エリア(大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山、滋賀、三重)の施設情報に精通しておりますので、安心してお任せください。

監修者

花尾 奏一(はなお そういち)

保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

有料老人ホームにて介護主任を10年 
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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