脳卒中とは?危険な前兆・症状から原因、後遺症のリハビリまで解説

ある日突然、自分や大切な家族の身に降りかかるかもしれない病気、それが「脳卒中」です。脳卒中は、日本の要介護原因の上位を占める疾患であり、命が助かっても麻痺などの重い後遺症が残ることが少なくありません。しかし、脳卒中は決して不治の病ではありません。危険な前兆やサインを知り、一刻も早く治療を開始することで、後遺症を最小限に抑え、その後の人生を大きく変えることが可能です。また、原因となる生活習慣を見直すことで、発症そのものを予防することもできます。この記事では、脳卒中の種類や特徴といった基本的な知識から、絶対に見逃してはいけない前兆の見分け方、そして原因、治療、後遺症を乗り越えるためのリハビリテーションまで、網羅的に解説します。いざという時に落ち着いて行動できるよう、正しい知識を身につけていきましょう。
脳卒中とは|3つの種類とそれぞれの特徴
「脳卒中」とは、一つの病気の名前ではなく、脳の血管に異常が起こることで脳細胞が障害される病気の総称です。脳の血管が「詰まる」タイプと「破れる」タイプに大別され、主に以下の3つの種類があります。
血管が詰まる「脳梗塞」
脳卒中の中で最も発症数が多く、全体の約7割以上を占めるのが脳梗塞です。これは、脳の動脈が詰まり、その先に血液が流れなくなることで、脳細胞が酸素不足や栄養不足に陥り、壊死してしまう状態を指します。脳梗塞は、原因によってさらに3つのタイプに分けられます。
- アテローム血栓性脳梗塞
- 高血圧や糖尿病などによって動脈硬化(アテローム硬化)が進行し、脳の太い血管が狭くなり、そこに血栓(血の塊)ができて詰まるタイプです。
- 心原性脳塞栓症
- 心房細動という不整脈などが原因で心臓の中にできた血栓が、血流に乗って脳まで運ばれ、脳の太い血管を突然詰まらせるタイプです。前触れなく発症し、重篤な後遺症を残しやすいのが特徴です。
- ラクナ梗塞
- 主に高血圧が原因で、脳の奥にある細い血管が詰まるタイプです。比較的小さな梗塞のため症状が軽いこともありますが、何度も繰り返すうちに認知症やパーキンソン症状の原因となることがあります。
脳内の血管が破れる「脳出血」
脳の中にある細い血管が、何らかの原因で破れて出血する状態です。出血した血液が塊(血腫)となって脳細胞を圧迫・破壊することで、様々な症状を引き起こします。
脳出血の最大の原因は、長年にわたる高血圧です。高い圧力がかかり続けることで血管がもろくなり、破れやすくなってしまうのです。出血した場所によって症状は異なりますが、突然の頭痛やめまい、意識障害、片麻痺などが起こります。
脳を覆う膜の血管が破れる「くも膜下出血」
脳の表面を覆っている「くも膜」という膜の下にある血管にできた「脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)」というコブが破裂し、血液が脳の表面に一気に広がる病気です。
症状は極めて特徴的で、「バットで殴られたような」「これまでに経験したことのない」と表現されるほどの突然の激しい頭痛、吐き気、嘔吐、意識障害などが起こります。発症すると約半数の方が亡くなる、あるいは重い後遺症が残る非常に危険な病気です。
見逃さないで!脳卒中の危険な前兆・初期症状
脳卒中の治療は、時間との勝負です。特に脳梗塞では、発症から4.5時間以内であれば血栓を溶かす薬(t-PA)を使える可能性があり、早く治療を開始するほど後遺症が軽くなることが分かっています。そのためには、ご家族や周りの人が「これは脳卒中かもしれない」と、いち早くサインに気づくことが何よりも重要です。
「FAST(ファスト)」で合言葉をチェック
脳卒中の主な初期症状を、誰でも簡単にチェックできるよう作られたのが「FAST」という合言葉です。以下の3つの症状のうち、一つでも当てはまれば、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。
- Face(顔):顔の片側の麻痺
- 顔の片方がゆがんだり、垂れ下がったりする症状です。チェックする際は、本人に「イーッ」と歯を見せるように笑ってもらいましょう。口の片方がうまく上がらず、ゆがんでいないかを確認します。
- Arm(腕):腕の片側の麻痺
- 片方の腕や足に力が入らなくなる症状です。チェックする際は、両腕を前にまっすぐ伸ばしてもらい、目を閉じてもらいます。麻痺がある側の腕は、力を保てずにだらりと下がってきます。
- Speech(言葉):ろれつが回らない・言葉が出ない
- ろれつが回らずうまく話せなくなったり、他人の言うことが理解できなくなったり、言葉そのものが出てこなくなったりする症状です。チェックする際は、簡単な文章を言ってもらい、普段通りに話せるかを確認します。
- Time(時間):発症時刻を確認しすぐに救急車を
- 上記の3つの症状が一つでも見られたら、ためらわずにすぐに救急車を呼びましょう。その際、症状が始まった「発症時刻」を覚えておき、救急隊員に正確に伝えることが、その後の治療方針を決める上で非常に重要になります。
一時的な症状「一過性脳虚血発作(TIA)」も要注意
一時的に脳の血管が詰まり、FASTで挙げたような症状が現れるものの、24時間以内に(多くは数分から数十分で)完全に消えてしまう状態を「一過性脳虚血発作(TIA)」と呼びます。
症状が消えるため、「治った」と勘違いして放置されがちですが、これは非常に危険です。TIAは、本格的な脳梗塞が起こる「最後通告」とも言える重要な前触れであり、TIAを起こした人の約1~2割が3ヶ月以内に本格的な脳梗塞を発症すると言われています。症状が一時的であっても、必ずすぐに医療機関を受診してください。
自覚症状のない「隠れ脳梗塞」とは
脳ドックなどで偶然発見される、自覚症状のない小さな脳梗塞を「無症候性脳梗塞」、通称「隠れ脳梗塞」と呼びます。症状がないからといって安心はできません。隠れ脳梗塞がある人は、ない人に比べて将来的に本格的な脳卒中や、脳血管性認知症を発症するリスクが高いことが分かっています。生活習慣を見直すきっかけと捉えることが大切です。
脳卒中の主な原因|生活習慣病と危険因子
脳卒中は、長年の生活習慣の積み重ねが発症に大きく関わっています。以下のような危険因子を複数持っている人は、特に注意が必要です。
- 高血圧|最大の危険因子
- 高血圧は、脳梗塞・脳出血のいずれにおいても最大の危険因子です。常に血管に高い圧力がかかることで、血管の壁が傷つき動脈硬化が進行します。血圧の管理は、脳卒中予防の基本中の基本です。
- 糖尿病・脂質異常症|動脈硬化を促進
- 糖尿病による高血糖や、脂質異常症による悪玉コレステロールの増加は、血管の壁にダメージを与え、動脈硬化を著しく進行させます。これらは自覚症状がないまま進行するため、定期的な健康診断で数値を把握し、適切にコントロールすることが重要です。
- 不適切な食生活・肥満・喫煙・過度な飲酒
- 塩分の摂りすぎは高血圧に、カロリーの摂りすぎは肥満や糖尿病に直結します。また、喫煙は脳卒中のリスクを約2倍に高めると言われています。過度の飲酒も高血圧や不整脈の原因となり危険です。
- 心房細動|脳梗塞の大きな原因に
- 心臓が不規則に小刻みに震える不整脈の一種で、心臓の中に血栓ができやすくなります。この血栓が脳に飛んで太い血管を詰まらせるのが「心原性脳塞栓症」です。突然発症し重い後遺症を残すことが多いため、心房細動の治療は脳梗塞予防に非常に重要です。
脳卒中の治療と後遺症を乗り越えるリハビリテーション
脳卒中を発症した場合、急性期治療から回復期のリハビリテーション、そして退院後の生活期まで、一貫したサポートが必要となります。
発症後の治療の流れ
脳卒中の治療は、まず救急病院での急性期治療から始まります。脳梗塞であれば血栓を溶かす薬(t-PA静注療法)やカテーテルで血栓を取り除く治療、脳出血やくも膜下出血であれば手術など、いかに早く脳へのダメージを食い止めるかが勝負となります。容態が安定したら、回復期リハビリテーション病院に転院し、集中的なリハビリで在宅復帰を目指すのが一般的な流れです。
後遺症の種類と向き合い方
脳のどの部分が、どのくらいの範囲でダメージを受けたかによって、様々な後遺症が現れます。
- 運動麻痺・感覚障害
- 最も代表的な後遺症で、体の片側の手足が動かしにくくなる「片麻痺」や、触った感覚や温度が分かりにくくなる「感覚障害」が起こります。
- 言語障害・嚥下障害
- 言葉をうまく話せない「構音障害」や、言葉そのものが出てこない・理解できない「失語症」といった言語障害が現れることがあります。また、食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなる「嚥下障害」も多く見られ、誤嚥性肺炎の原因となります。
- 高次脳機能障害
- 記憶、注意、思考、感情といった、より高度な脳の機能に障害が起こることです。物事に集中できない「注意障害」や、計画を立てて物事を実行できない「遂行機能障害」など症状は多岐にわたり、外見からは分かりにくいため「見えない障害」とも呼ばれます。
回復期のリハビリテーションの重要性
脳卒中後の機能回復には、発症後3~6ヶ月の「回復期」と呼ばれる時期が極めて重要です。この時期に、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といった専門スタッフのもとで集中的なリハビリテーションを行うことが、失われた機能を取り戻し、自宅での生活を再び送れるようにするための鍵となります。
脳卒中の再発予防のためにできること
脳卒中は一度発症すると再発しやすく、再発するとさらに重い後遺症が残る可能性が高いため、退院後の再発予防は非常に重要です。
- 生活習慣の見直しと改善
- 塩分を控えたバランスの良い食事、禁煙、節酒、適度な運動といった、危険因子を減らすための生活習慣の改善が基本です。医師や管理栄養士の指導を受けながら、無理なく続けられる目標を立てて実践しましょう。
- 血圧・血糖のコントロール
- 高血圧や糖尿病がある場合は、家庭で血圧などを定期的に測定し、正常な範囲にコントロールすることが不可欠です。日々の記録は、診察時に医師が治療方針を決めるための重要な情報となります。
- 処方された薬の継続的な服用
- 脳卒中の再発予防のためには、血液をサラサラにする薬や血圧を下げる薬などを、医師の指示通りに飲み続けることが最も重要です。「症状がないから」といった自己判断で薬をやめてしまうと、再発のリスクが急激に高まるため、絶対にやめましょう。
脳卒中後の生活を支える老人ホーム・介護施設の選び方
後遺症の程度によっては、ご自宅での生活が困難になる場合もあります。その際は、専門的なケアが受けられる老人ホームや介護施設が、新たな生活の場として選択肢になります。
- 集中的なリハビリを行う介護老人保健施設(老健)
- 病院退院後、在宅復帰を目指して集中的なリハビリテーションを行うための施設です。医師やリハビリ専門職が常駐し、医療的管理のもとで機能回復を図ります。ただし、入所期間は原則3~6ヶ月とされています。
- 後遺症に合わせたケアが受けられる介護付き有料老人ホーム
- 長期的な生活の場として、後遺症の状態に合わせたケアを受けられる施設です。施設によって、リハビリ専門職を配置しているところや、看護師が24時間常駐しているところなど様々な特徴があります。麻痺がある方の入浴介助や、嚥下障害に配慮した食事の提供など、安心して生活できる体制が整っているかを確認することが大切です。
脳卒中後の生活や施設探しは「笑がおで介護紹介センター」へご相談ください
脳卒中を発症し、退院後の生活に大きな不安を抱えているご本人、ご家族は少なくありません。「麻痺が残っても安心して暮らせる施設はどこだろう」「リハビリを続けられる施設を探したい」。そんな時は、ぜひ私たち「笑がおで介護紹介センター」にご相談ください。
介護の専門知識と豊富な経験を持つ相談員が、お一人おひとりの後遺症の状態やご希望を丁寧にお伺いし、最適な老人ホーム・介護施設をご提案いたします。関西エリア(大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山、滋賀、三重)の施設情報に精通し、各施設のリハビリ体制や医療ケアの詳細まで把握しておりますので、安心してお任せください。ご相談は無料です。退院後の生活の第一歩を、私たちが全力でサポートいたします。

監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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