親の介護をしたら遺産は多くもらえる?相続の「寄与分」とトラブル回避のための生前対策を解説

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親の介護をしたら遺産は多くもらえる?相続の「寄与分」とトラブル回避のための生前対策を解説

親の介護を長年行ってきたご家族の中には、「その分、遺産を多くもらいたい」と考える方も少なくありません。しかし、単に親の介護を頑張ったというだけでは、自動的に遺産の取り分が増えるわけではありません。遺産相続には法律で定められたルールがあるからです。

ただし、その貢献を法的に評価し、遺産分割に反映させるための「寄与分(きよぶん)」という制度が存在します。この記事では、介護の苦労が報われる可能性のある「寄与分」とは何か、認められるための条件や具体的な主張の方法、そして最も重要な「相続トラブルを未然に防ぐための生前対策」について、わかりやすく解説していきます。

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「親の介護を頑張ったから遺産を多く欲しい」は認められるのか

親が亡くなった後、遺産をどう分けるかという問題は、親族間のトラブルの原因となることがしばしばあります。特に、特定の子供だけが介護を担っていた場合、その貢献度をめぐって意見が対立しがちです。まずは、法律の基本的な考え方から見ていきましょう。

原則は法定相続分|介護の貢献は自動的に反映されない

遺言書がない場合、遺産の分け方は民法で定められた「法定相続分(ほうていそうぞくぶん)」に従うのが原則です。例えば、相続人が子供3人だけの場合、それぞれの子供が遺産の3分の1ずつを相続する権利を持ちます。このとき、特定の子供がどれだけ熱心に親の介護をしたか、あるいは全くしなかったかといった事情は、この法定相続分には自動的に考慮されません。法律上は、あくまで「子供」という立場で平等に扱われるため、「介護を頑張ったから多く欲しい」という主張は、当然には認められないのです。

介護の貢献を遺産に反映させるための「寄与分」という制度

法定相続分が原則であるものの、それでは不公平だというケースも存在します。そこで、民法は「寄与分(きよぶん)」という特別な制度を設けています。寄与分とは、被相続人(亡くなった親など)の財産の維持または増加に”特別な貢献”をした相続人がいる場合に、その貢献を金銭的に評価し、法定相続分に上乗せして遺産を受け取れるようにする制度です。つまり、介護によって「本来であれば支払うはずだった介護費用が節約され、親の財産が守られた」といった場合に、その貢献分を遺産の中から先に受け取ることができる仕組みです。

介護の貢献分を主張できる「寄与分」とは

寄与分は、介護の苦労が金銭的に報われる可能性のある重要な制度ですが、認められるためにはいくつかの厳しい要件をクリアする必要があります。「介護をしていた」という事実だけで簡単に認められるものではない点を理解しておくことが大切です。

寄与分の意味と遺産分割における役割

寄与分が認められると、遺産分割の計算方法が通常とは変わります。まず、相続財産の総額から、認められた寄与分の金額を差し引きます。そして、残った財産を法定相続分に従って各相続人で分け合い、寄与分を主張した人は、その自分の取り分に加えて、先に差し引いた寄与分を受け取ります。これにより、貢献した人が他の相続人よりも多くの遺産を取得できることになり、相続人間の公平が図られるのです。

寄与分が認められるための5つの要件

介護を理由とする寄与分が認められるには、主に以下の5つの要件を満たす必要があるとされています。

特別な寄与であること

親族として通常期待されるような範囲の協力では「特別な寄与」とは認められません。例えば、「時々様子を見に行って身の回りの世話をした」程度では不十分です。長期間にわたり、ほぼ毎日、排泄や入浴の介助といった負担の大きい介護を継続していたなど、通常期待されるレベルを明らかに超える貢献が必要です。

2. 親族間の扶養義務の範囲を超えていること

民法では、親子や兄弟姉妹などの親族は、互いに助け合う義務(扶養義務)があると定められています。寄与分が認められるのは、この扶養義務の範囲を明らかに超えるレベルの貢献があった場合です。同居している家族として食事の支度や簡単な身の回りの世話をするといった行為は、扶養義務の範囲内と判断されやすい傾向にあります。

3. 無報酬またはそれに近い状態であること

親から介護の対価として給料や生活費を受け取っていた場合、寄与分は認められにくくなります。あくまで「無償」で貢献したことが前提となるためです。ただし、受け取っていた金額が、介護の労力に比べて著しく低い場合は、その差額分が寄与分として考慮される可能性はあります。

4. 貢献によって被相続人の財産が維持・増加したこと

これが最も重要な要件の一つです。介護という貢献行為によって、「本来であれば発生したはずの支出(ヘルパー代や施設利用料など)を免れ、その結果として親の財産が減らなかった」という明確な因果関係を証明する必要があります。精神的な支えになったといった貢献は寄与分の対象とはなりません。

5. 相続人による貢献であること

寄与分を主張できるのは、原則として「相続人」に限られます。例えば、長男が相続人である場合、長男自身が行った介護については寄与分を主張できます。しかし、介護を主に手伝っていたのが「長男の妻」である場合、長男の妻は相続人ではないため、この寄与分の制度を利用することはできませんでした。※この問題に対応するため、「特別寄与料」という制度が新設されました。

寄여분は具体的にいくらもらえるのか|計算方法の目安

寄与分の金額は法律で一律に決まっているわけではなく、最終的には相続人間の話し合いや裁判所の判断に委ねられます。家庭裁判所などで療養看護型の寄与分を計算する際には、一つの目安となる計算式が用いられることがあります。

【療養看護型寄与分の計算式の目安】

介護報酬相当額(日当)× 療養看護日数 × 裁量的割合

項目 説明
介護報酬相当額(日当) 介護保険サービスの公定価格などを参考に、要介護度に応じて設定されます。一般的に日当5,000円〜8,000円程度が目安です。
療養看護日数 実際に介護を行った日数です。親が入院していた期間や、ショートステイなどを利用していた期間は除外されます。
裁量的割合 親族による介護は、専門家によるサービスとは異なることなどを考慮して、算出された金額から一定割合を差し引くための調整係数です。一般的に0.5〜0.8程度で判断されることが多いです。

例えば、日当6,000円相当の介護を500日間行い、裁量的割合が0.7と判断された場合、「6,000円 × 500日 × 0.7 = 210万円」が寄与分の目安額となります。

「寄与分」を主張するための具体的な方法

寄与分を認めてもらうためには、適切な手順を踏んで主張し、その根拠を客観的に示す必要があります。

ステップ1:相続人全員による遺産分割協議で主張する

まず最初に行うべきは、相続人全員が集まって遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)」の場で、寄与分を主張することです。ここで、介護の内容や期間、それによってどれだけ親の財産が維持されたかを具体的に説明し、他の相続人全員がその主張に納得し、金額についても合意できれば、寄与分は認められます。合意した内容は「遺産分割協議書」という書面に明確に記載しておきましょう。

ステップ2:協議で合意できない場合は家庭裁判所に調停を申し立てる

他の相続人が寄与分に納得せず、話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に「寄与分を定める処分調停」を申し立てることになります。調停は、裁判官や調停委員という中立的な第三者を交えて、相続人全員の合意を目指す話し合いの場です。ここでも、寄与分の主張とその根拠を客観的な証拠に基づいて説明する必要があります。調停でも話がまとまらなければ、自動的に「審判」という手続きに移行し、最終的には裁判官が一切の事情を考慮して寄与分の有無や金額を判断します。

介護の事実を証明する客観的な証拠(介護記録など)が重要

寄与分を主張する上で最も重要なのが、「どれだけの介護を、どのように行ったか」を客観的に証明する証拠です。感情的に「大変だった」と訴えるだけでは、他の相続人や裁判所を納得させることは困難です。

証拠の例 説明
介護記録・介護日記 いつ、どのような介護(食事、入浴、排泄、通院など)を行ったかを詳細に記録したもの。献身的な介護の事実を示す最も重要な証拠の一つになります。
医療機関の記録 親のカルテや、要介護認定の資料など。介護の必要性を示す証拠となります。
介護サービス関連の書類 ケアプランや、介護サービス事業者との連絡ノートなど。公的な介護サービスだけでは足りない部分を、自身がどう補っていたかを示すことができます。
費用の領収書 介護用品の購入費、交通費、医療費などを立て替えた場合の領収書。財産的な貢献を示す証拠です。

これらの証拠を日頃から整理しておくことが、いざという時にご自身の主張を裏付ける大きな力となります。

相続人以外(長男の嫁など)の貢献は?「特別寄与料」について

これまで見てきた「寄与分」は、相続人のみが主張できる権利でした。そのため、例えば息子の妻(お嫁さん)が義理の親を熱心に介護しても、その貢献は法的に報われないという問題がありました。

2019年の民法改正で新設された「特別寄与料」

この不公平を解消するため、2019年7月の民法改正で「特別寄与料」という制度が新設されました。これは、相続人ではない親族が、亡くなった方に対して無償で療養看護などを行った結果、財産の維持・増加に貢献した場合に、相続人に対して金銭(特別寄与料)の支払いを請求できるという制度です。

特別寄与料を請求できる人の範囲と要件

特別寄与料を請求できるのは、被相続人の親族(6親等内の血族、3親等内の姻族)で、相続人ではない人です。最も典型的な例が「長男の妻」です。認められるための要件は、基本的に寄与分と同じで、「特別な寄与」であることや「無償」であること、「財産の維持・増加に貢献した」ことなどが必要です。

請求手続きの流れと注意点

特別寄与料の請求方法は、寄与分とは少し異なります。まず、貢献した人(特別寄与者)が、遺産を相続した相続人に対して直接、金銭の支払いを請求します。話し合いで金額などがまとまれば、それで解決です。もし話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることになります。注意点として、特別寄与料には請求できる期間に制限があります。特別寄与者は、相続の開始および相続人を知った時から6ヶ月、または相続開始の時から1年を経過すると請求できなくなるため、早めに行動を起こす必要があります。

介護と相続で親族トラブルにならないための6つの生前対策

寄与分や特別寄与料を亡くなった後に主張するのは、精神的にも時間的にも大きな負担がかかります。何より、親族間の関係が悪化してしまうことは避けたいものです。そこで最も重要になるのが、親が元気なうちに行う「生前対策」です。

対策1:遺言書を作成してもらう

最も確実で効果的な方法が、親に「遺言書」を書いてもらうことです。遺言書で「介護をしてくれた長男の妻に、財産の一部を遺贈する」といった内容を明確に記しておけば、原則としてその通りに遺産が分けられます。親の意思が明確になるため、他の相続人も納得しやすくなります。

対策2:生前贈与を活用する

親が元気なうちに、介護をしてくれているご家族などに対して、感謝の気持ちとして財産を贈与(生前贈与)する方法です。毎年110万円までの贈与であれば贈与税がかからない「暦年贈与」などの制度を活用することで、計画的に財産を移転できます。ただし、亡くなる直前の贈与は相続財産に加算される場合があるなど、税務上の注意点もあります。

対策3:生命保険の受取人に指定してもらう

親が自分自身に生命保険をかけ、その死亡保険金の受取人を介護してくれたご家族に指定する方法です。死亡保険金は、原則として受取人固有の財産とみなされ、遺産分割協議の対象外となります。これにより、他の相続人の同意なしで、まとまった資金を確実に受け取ることが可能です。

対策4:家族信託(民事信託)を検討する

少し専門的になりますが、「家族信託」という仕組みも有効です。これは、親(委託者)が元気なうちに、信頼できるご家族(受託者)に財産を託し、その管理や処分を任せる契約です。この契約の中で、「親が亡くなった後、信託した財産の中から、介護の対価として受託者である長男に〇〇円を給付する」といった柔軟な設定が可能です。

対策5:養子縁組で相続人になる

介護をしてくれたのが相続人ではない親族(例えば長男の妻)の場合、親と養子縁組をするという方法もあります。養子になると法律上の子供として扱われ、実子と同じ法定相続分を持つ「相続人」になります。これにより、寄与分の主張も可能になります。ただし、他の親族との関係性にも影響する重大な身分行為であるため、慎重な検討が必要です。

対策6:日頃から家族間でコミュニケーションをとる

どのような対策をとるにしても、基本となるのは家族間のコミュニケーションです。親が介護をしてくれる子供に感謝していること、財産を多く残したいと考えていることを、他の子供たちにも伝えておくことが大切です。また、介護をする側も、介護の状況や大変さを他の兄弟姉妹に定期的に報告し、情報を共有することで、後の誤解や不満を防ぐことにつながります。

相続問題は専門家へ|弁護士や司法書士に相談しよう

生前対策や相続手続きは、法律や税金が複雑に絡み合う専門的な分野です。自分たちだけで進めようとせず、専門家の力を借りることをお勧めします。

相続トラブルは当事者間での解決が難しい

相続の問題は、お金だけでなく、長年の家族関係や感情が絡み合うため、当事者同士での冷静な話し合いは非常に困難です。一度関係がこじれてしまうと、修復は簡単ではありません。トラブルの兆候が見えたら、なるべく早い段階で第三者である専門家に相談することが、円満な解決への近道です。

相談できる専門家の種類とそれぞれの役割

相続に関して相談できる主な専門家と、それぞれの役割は以下の通りです。状況に応じて適切な専門家を選びましょう。

専門家 主な役割
弁護士 相続人間のトラブルや紛争の解決が専門です。遺産分割協議の代理人として交渉したり、調停や審判の手続きを行ったりできる唯一の専門家です。
司法書士 不動産の名義変更(相続登記)の専門家です。遺言書の作成支援や、相続放棄の手続き書類作成なども行います。紛争性がない案件のスムーズな手続きを得意とします。
税理士 相続税の申告や節税対策の専門家です。相続財産の評価や、相続税がかかるかどうかの判断、申告書の作成などを依頼します。
行政書士 遺産分割協議書の作成や、自動車の名義変更、預貯金の解約手続きなど、事実証明に関する書類作成の専門家です。

介護と相続に関するよくある質問(Q&A)

最後に、介護と相続に関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式でお答えします。

Q1. 介護費用を親の預金から引き出して使っても問題ないですか?

A1. 親ご本人に必要な介護費用(施設利用料、医療費、介護用品代など)のために引き出すのであれば、基本的には問題ありません。ただし、その際は必ず領収書やレシートを保管し、「何にいくら使ったか」を記録しておくことが極めて重要です。記録がないと、他の相続人から「親のお金を使い込んだのではないか」と疑われ、深刻なトラブルに発展する恐れがあります。ご自身の生活費などに使うことは絶対にあってはなりません。

Q2. 「介護をしないなら相続放棄しろ」と他の兄弟に言えますか?

A2. そのように強制することはできません。財産を相続する権利も、相続を放棄する権利も、法律で保障された各相続人固有の権利です。介護への協力が得られないことへの不満はもっともですが、感情的な言葉は関係を悪化させるだけです。冷静に、寄与分の主張や生前対策といった法的な手段を検討する方が建設的です。

Q3. 遺言書があれば絶対にその通りになりますか?(遺留分について)

A3. 原則はその通りになりますが、例外があります。兄弟姉妹を除く法定相続人(配偶者、子、親など)には、「遺留分(いりゅうぶん)」という、最低限保障された遺産の取り分があります。例えば、「全財産を長男に相続させる」という遺言があったとしても、他の子供は遺留分として、法定相続分の半分を請求する権利があります。遺言書を作成する際は、この遺留分にも配慮することが、後のトラブルを防ぐポイントです。

介護施設の入居や費用に関するお悩みは「笑がおで介護紹介センター」へ

親の介護と相続の問題は、切っても切れない関係にあります。相続で揉めないための最善の策は、親が元気なうちから将来について話し合い、適切な準備をしておくことです。そして、その準備の一つが、親に合った介護施設を見つけ、安心して生活できる環境を整えることです。介護の負担が軽減されれば、心に余裕が生まれ、将来の相続についても冷静に話し合うことができるかもしれません。

「笑がおで介護紹介センター」では、関西エリア(大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山、滋賀、三重)の多種多様な老人ホーム・介護施設の情報をご提供しています。介護施設の入居に関するご相談はもちろん、費用に関するお悩みや不安についても、経験豊富な相談員が親身になってお話を伺います。ご相談は無料ですので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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監修者

花尾 奏一(はなお そういち)

保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

有料老人ホームにて介護主任を10年 
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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