きざみ食とは?介護食のメリット・デメリットや誤嚥を防ぐための注意点を解説

ご高齢のご家族の食事で、「食べ物が噛みにくそう」「飲み込みにくそう」と感じたことはありませんか?噛む力や飲み込む力が弱くなった方向けの食事形態として「きざみ食」があります。きざみ食は、食材を細かく刻むことで食べやすく工夫された介護食の一つです。
この記事では、きざみ食の概要やメリット、注意すべき誤嚥(ごえん)や食中毒といった危険性について詳しく解説します。また、他の介護食との違い、家庭で安全に調理するポイント、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)予防のための口腔(こうくう)ケアもご紹介します。この記事を読めば、きざみ食の正しい知識が身につき、食べる方ご本人に合った食事形態を選ぶ第一歩となります。
きざみ食とは?噛む力が弱い方のための介護食
きざみ食とは、通常の食事の食材を細かく刻んで調理した食事形態です。噛む力(咀嚼機能(そしゃくきのう))が低下した方でも食べやすいように工夫されています。食材の大きさは、食べる方の噛む力や飲み込む力(嚥下機能(えんげきのう))に合わせて調整されます。見た目や風味が元の食事に近いため、食事の楽しみを維持しやすいという特徴があります。
ただし、きざみ食は誰にでも適しているわけではありません。特に飲み込む力が著しく低下している方が食べると、誤嚥(食べ物が誤って気管に入ること)のリスクが高まるため注意が必要です。そのため、食事形態の選択は、必ず医師や歯科医師、管理栄養士などの専門家と相談し、ご利用者に合ったものを選ぶことが極めて重要です。
きざみ食が食事形態として必要な方
きざみ食は、主に以下のような状態の方に適しています。
- 歯の状態が悪く、硬いものや大きなものが噛めない方(義歯が合わない、歯が抜けているなど)
- 噛む力は弱いが、飲み込む力(嚥下機能)には大きな問題がない方
- 口を開けにくい、舌の動きが悪いなどで、食べ物をうまく口の中でまとめるのが難しい方
- ミキサー食やペースト食では食欲がわかない方
重要なのは「噛む力は弱いが、飲み込む力はある程度保たれている」という点です。飲み込む力が低下している場合は、きざみ食が適さないケースが多いため、専門家による慎重な判断が求められます。
食材の刻み方の種類と大きさの目安
きざみ食の食材の大きさは、食べる方の状態に合わせて数段階に分けられます。施設や病院によって呼称や基準は異なりますが、一般的に以下のように分類されます。
普通きざみ食(1cm~2cm程度)
食材を1cmから2cm角程度に刻んだ形態です。食材の形が残っているため、元の料理を認識しやすいのが特徴です。噛む力がある程度残っており、大きな塊を小さくすれば食べられる方に適しています。
細きざみ食(5mm~1cm程度)
食材を5mmから1cm程度に、さらに細かく刻んだ形態です。噛む力がかなり弱くなっている方に適しています。食材の食感は残りますが、元の形は分かりにくくなります。
極きざみ食(1mm~2mm程度)
食材を1mmから2mm程度と、ペースト状に近くなるまで細かく刻んだ形態です。ほとんど噛む必要がないため、噛む力が著しく低下している方に適しています。ただし、細かくなるほど口の中で散らばりやすく、誤嚥リスクが高まるため、とろみを付けるなどの工夫が不可欠です。
きざみ食のメリットとデメリット
きざみ食は、噛む力が弱い方にとって有効な食事形態ですが、メリットだけでなくデメリットや危険性も存在します。両方を正しく理解し、安全な食事提供につなげることが大切です。
きざみ食のメリット
まずは、きざみ食が持つメリットについて見ていきましょう。
料理の見た目や彩りが保たれ食欲につながる
きざみ食は元の料理を刻むため、ミキサー食のように完全に形がなくなることはありません。食材の色合いや形が残ることで、目で見て「美味しそう」と感じられ、食欲の維持・増進につながります。食事は栄養摂取だけでなく、生活の楽しみという側面も大きく、見た目は重要な要素です。
元の食事の風味や食感を残しやすい
食材を細かくする調理法なので、ミキサー食などと比較して料理本来の風味や香りが損なわれにくいメリットがあります。また、食材の食感も残りやすく「食べる」感覚を楽しみやすくなります。様々な食感が脳への良い刺激となり、食事への満足度を高める効果も期待できます。
きざみ食のデメリット・危険性
次に、きざみ食のデメリットと危険性を解説します。これらは命に関わる問題に直結する可能性があるため、特に注意が必要です。
口の中でまとまりにくく誤嚥しやすい
きざみ食の最大のデメリットは、誤嚥のリスクが高いことです。食材が細かいため口の中でばらばらになりやすく、唾液と絡めて食塊(しょっかい)(飲み込みやすいひとかたまり)を作るのが難しくなります。うまくまとまらなかった食べ物が気管に入り、誤嚥を引き起こす危険性があります。
唾液と混ざりにくく飲み込みにくい
ご高齢になると唾液の分泌量が減少しがちです。きざみ食は水分が少なくパサパサした食感になりやすいため、唾液が少ない方にはさらに飲み込みにくくなります。口の中に食べ物が残りやすく、それが後で気管に入ってしまうリスクもあります。
調理に手間がかかり食中毒のリスクがある
食材を一つひとつ細かく刻むため、調理に手間がかかります。また、包丁やまな板に触れる面積や回数が多くなるため、細菌が付着しやすく、食中毒のリスクが高まります。特に体力が低下しているご高齢者にとって、食中毒は重症化しやすいため、衛生管理には細心の注意が必要です。
きざみ食で注意すべきリスク|誤嚥と食中毒の対策
きざみ食で最も注意すべき「誤嚥」と「食中毒」。ここでは、それぞれの具体的なリスクと予防策を詳しく解説します。
誤嚥のリスクと予防策
誤嚥は、窒息や誤嚥性肺炎など、命に関わる事態を引き起こす可能性があります。なぜきざみ食で誤嚥が起こりやすいのかを理解し、適切な対策を講じましょう。
なぜきざみ食は誤嚥しやすいのか
前述の通り、きざみ食は口の中でばらばらになり、食塊を形成しにくい特性があります。口腔機能が低下したご高齢者では、食べ物をうまくまとめて飲み込む一連の動作がスムーズに行えません。まとまらなかった細かい食べ物が、意図せず喉の奥に流れ込み、気管に入ってしまう。これがきざみ食で誤嚥が起こるメカニズムです。
誤嚥を防ぐ食事介助のポイント
誤嚥を防ぐには、食事の際の姿勢や介助の方法が非常に重要です。以下のポイントを意識しましょう。
- 正しい食事姿勢を保つ
- 椅子に深く腰掛け、足を床につけます。少し前かがみであごを引くと、食べ物が食道へ送られやすくなります。ベッド上でも、リクライニングをできるだけ90度に近づけ、姿勢を安定させましょう。
- 一度に口に入れる量を少なくする
- スプーンに山盛りにせず、少量ずつ口に運びます。口の中のものがなくなってから、次の一口を運びましょう。食べる方ご本人のペースに合わせることが大切です。
- 食事に集中できる環境を整える
- テレビを消すなど、食事に集中できる環境を作りましょう。食事中に話しかけすぎると、話すことと食べることの切り替えがうまくいかず、誤嚥リスクが高まります。
- 食後はすぐに横にならない
- 食後すぐに横になると、胃から食べ物が逆流し誤嚥につながる可能性があります。食後30分~1時間は座った姿勢を保ちましょう。
食中毒のリスクと予防策
きざみ食は調理工程で細菌が付着しやすいため、徹底した衛生管理が求められます。食中毒を防ぐポイントを理解し、安全な食事作りを心がけましょう。
きざみ食で食中毒が起こりやすい理由
きざみ食は、包丁やまな板で食材を細かく刻むため、人の手や調理器具との接触面が増え、細菌が付着するリスクが高まります。また、食材の表面積が増えることで、細菌が繁殖しやすい環境が生まれます。特に、加熱後に刻む作業は再加熱が難しいため、さらに注意が必要です。
食中毒を防ぐ調理と保存のポイント
食中毒予防の基本は「つけない」「ふやさない」「やっつける」の三原則です。これをきざみ食の調理に応用しましょう。
- つけない(清潔)
- 調理前には必ず石けんで手を洗います。調理器具は清潔なものを使用し、生の肉や魚に使った器具と他の食材の器具を分けるなど、交差汚染(こうさおせん)を防ぎましょう。使い捨て手袋の使用も有効です。
- ふやさない(迅速・冷却)
- 調理後はできるだけ早く食べてもらいましょう。作り置きする場合は速やかに粗熱を取り、冷蔵庫で保管します。細菌が繁殖しやすい10℃から60℃の温度帯に置く時間を、できるだけ短くすることが重要です。
- やっつける(加熱)
- 多くの食中毒菌は加熱で死滅します。食材の中心部まで十分に(75℃で1分以上が目安)加熱しましょう。加熱後に刻む場合は、特に「つけない」「ふやさない」の徹底が不可欠です。
きざみ食と他の介護食(嚥下調整食)との違い
噛む力や飲み込む力が低下した方向けの食事を総称して「嚥下調整食(えんげちょうせいしょく)」と呼びます。代表的な嚥下調整食との違いを理解し、ご利用者に最適な食事形態を選ぶ参考にしてください。医療や介護現場では、日本摂食嚥下リハビリテーション学会が定めた統一基準が用いられることもあります。
| 食事形態 | 特徴 | 対象となる方の例 |
|---|---|---|
| きざみ食 | 通常の食事を細かく刻んだもの。食材の形や食感が残りやすいが、口の中でまとまりにくい。 | 噛む力は弱いが、飲み込む力はある程度保たれている方。 |
| ミキサー食・ペースト食 | 食材をミキサーにかけポタージュ状やペースト状にしたもの。噛む必要がない。 | 噛む力、飲み込む力ともに著しく低下している方。固形物を食べられない方。 |
| ソフト食(やわらか食) | 食材を一度つぶしゲル化剤などで固めて元の形に近づけたもの。舌でつぶせる硬さが目安。 | 噛む力は弱いが、飲み込む力はあり、見た目も楽しみたい方。 |
| ゼリー食 | 食事全体をゼリー状に固めたもの。口の中でばらばらになりにくく、まとまりが良い。 | 飲み込む力が特に弱く、誤嚥のリスクが非常に高い方。 |
ミキサー食・ペースト食
ミキサー食は、調理した食材とだし汁などを一緒にミキサーにかけ、なめらかな液体状にした食事です。ペースト食はミキサー食より水分を少なくし、粘度を高めたものを指します。噛む必要がほとんどなく、飲み込む力もかなり弱い方向けですが、元の食材が分かりにくく食欲が低下する原因にもなります。
ソフト食(やわらか食)
ソフト食は、見た目にも配慮された食事形態です。食材を一度つぶし、ゲル化剤などで元の料理の形に似せて固め直します。舌や歯ぐきで簡単につぶせるほどのやわらかさが特徴です。きざみ食のようにばらつかず、ミキサー食より見た目が良いため、食事の満足度を高める工夫として注目されています。
ゼリー食
ゼリー食は、食べ物や飲み物をゼリー状に固めたものです。均質でまとまりが良く、つるんとした食感で飲み込みやすいのが特徴です。口の中でばらばらにならないため、嚥下機能が著しく低下し、誤嚥のリスクが非常に高い方に適しています。
適切な食形態の選び方|嚥下機能と噛む力の確認が重要
どの食事形態が適しているかは、食べる方ご本人の「噛む力」と「飲み込む力」で決まります。見た目や調理の手間だけで選ばず、医師、歯科医師、言語聴覚士、管理栄養士などの専門家に必ず相談しましょう。専門家が客観的に嚥下機能を評価し、最も安全で適切な食事形態を提案してくれます。自己判断での食事形態の変更は、窒息や誤嚥性肺炎のリスクを高めるため大変危険です。
自宅で安全にきざみ食を調理する際のポイント
ご家庭できざみ食を作るには、誤嚥や食中毒を防ぎ、美味しく食べてもらう工夫が必要です。ここでは、具体的な調理のポイントをご紹介します。
とろみ調整食品を上手に活用する
きざみ食の欠点である「まとまりの悪さ」を解消するため、とろみ調整食品の活用が有効です。調理後のきざみ食に加えて混ぜることで、食材が適度にまとまり、喉を通りやすくなります。片栗粉でも代用できますが、とろみ調整食品はダマになりにくく、温度に左右されずに安定したとろみを付けられるため便利です。ただし、入れすぎるとかえって飲み込みにくくなるため、製品の指示に従い少量から試しましょう。
ぱさつきやすい食材の調理の工夫
鶏むね肉やゆで卵の黄身、パンなどは、刻むとぱさつきやすくなります。あんかけにしたり、マヨネーズやだし汁で和えたり、スープや煮込み料理にしたりする工夫で、水分とまとまりが加わり食べやすくなります。
繊維質の多い野菜の調理法
ごぼうやたけのこなど繊維質の多い野菜は、食べにくいことがあります。繊維を断ち切るように切る、隠し包丁を入れる、圧力鍋などで十分に加熱してやわらかくする、皮を厚めにむく、といったひと手間で安全かつ美味しくなります。
衛生管理と調理器具の選び方
食中毒予防の観点から、衛生管理は非常に重要です。「つけない・ふやさない・やっつける」の原則に加え、フードプロセッサーやキッチンバサミなどの便利な調理器具の活用もおすすめです。使用後は部品を分解し、隅々まで洗浄・消毒して清潔に保ちましょう。
誤嚥性肺炎の予防に欠かせない口腔ケア
安全な食事摂取には、食事の工夫と同じくらい「口腔ケア」が重要です。口腔ケアを怠ると、口の中の細菌が増殖し、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
食事の前後の口腔ケアが重要な理由
誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液に含まれる細菌が誤って気管に入り、肺で炎症を起こす病気です。口の中が不潔で細菌が繁殖していると、たとえ少量誤嚥しただけでも発症リスクが高まります。食前の口腔ケアで口内の細菌を減らし、食後の口腔ケアで食べかすを取り除くことが、誤嚥性肺炎の予防に不可欠です。
ご高齢者の状態に合わせた口腔ケアの方法
口腔ケアは、ご利用者の状態に合わせて行うことが大切です。基本的なケアは以下の通りです。
- うがい
- まず口の中の大きな汚れを洗い流します。自分でうがいができない場合は、口腔ケア用ウェットティッシュなどで拭き取ります。
- 歯磨き
- 歯ブラシで丁寧に磨きます。出血しやすい場合は、やわらかめの歯ブラシを選びましょう。義歯は必ず外して洗浄します。
- 舌の清掃
- 舌の汚れ(舌苔(ぜったい))も細菌の繁殖源です。舌専用ブラシなどで、奥から手前に優しく汚れをかき出します。強くこすりすぎないよう注意しましょう。
- 保湿
- 最後に、口腔用の保湿ジェルなどで口の中の乾燥を防ぎます。口内が潤っていると、自浄作用が高まり細菌の繁殖を抑えられます。
ご自身でのケアが難しい場合や用品選びに迷う場合は、歯科医師や歯科衛生士に相談しましょう。訪問歯科診療を利用することも可能です。
食事や栄養に関するお悩みは「笑がおで介護紹介センター」へ
ここまで、きざみ食についてお伝えしましたが、ご自宅での食事の準備や管理に不安を感じるご家族もいらっしゃるかもしれません。特に、ご利用者の状態に合わせた食事形態の選択や日々の調理、栄養管理は、ご家族にとって大きな負担になり得ます。
老人ホーム・介護施設での食事サポート
多くの老人ホームや介護施設では、管理栄養士が一人ひとりの栄養状態や健康を考慮した献立を作成しています。栄養バランスの整った食事を毎日3食摂れるのは、施設で暮らす大きなメリットです。また、季節の行事食などで日々の食事に楽しみを加える工夫をしている施設も多くあります。
入居者に合わせた食事形態への対応
施設では、入居者一人ひとりの噛む力や飲み込む力に合わせ、きざみ食やミキサー食、ソフト食など様々な食事形態に個別対応しています。また、糖尿病や腎臓病向けの治療食や減塩食など、専門知識に基づいた食事提供が可能です。看護職員や介護職員が食事の様子を見守るため、ご家族も安心してお任せいただけます。
まずはお気軽に無料相談をご利用ください
「食事の準備が大変」「専門家がいる環境で、安心して食事を摂ってほしい」など、食事に関するお悩みや、老人ホーム・介護施設への入居をご検討中の方は、ぜひ「笑がおで介護紹介センター」にご相談ください。
介護の知識と経験が豊富な相談員が、ご利用者やご家族のお悩みやご希望を丁寧にお伺いし、関西エリア(大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山、滋賀、三重)の豊富な施設から、最適な施設をご提案します。相談から入居まで無料でサポートしますので、お気軽にお問い合わせください。

このコラムの監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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