とろみ剤の正しい使い方|介護食(とろみ食)の作り方と誤嚥を防ぐ注意点

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とろみ剤の正しい使い方|介護食(とろみ食)の作り方と誤嚥を防ぐ注意点

加齢や病気によって飲み込む力(嚥下機能:えんげきのう)が低下すると、お茶や水などのさらさらした液体でむせやすくなることがあります。これは、誤嚥(ごえん)という危険なサインかもしれません。そんな時に、安全な水分補給や食事をサポートするのが、飲み物や汁物に粘度(ねんど)をつける「とろみ食」です。

とろみ食は、市販の「とろみ剤(とろみ調整食品)」を使って、飲み込みやすい状態に調整した介護食です。脱水や誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)の予防に非常に重要な役割を果たします。

この記事では、とろみ食の必要性から、とろみ剤の種類と特徴、そして最も大切な「正しい使い方」まで、初めての方にも分かりやすく解説します。ダマにならないコツや、適切なとろみの段階、危険を避けるための注意点など、具体的な実践方法をご紹介します。この記事を読めば、とろみ剤への理解が深まり、日々の介護における不安を軽減し、安全な食事のサポートができるようになるはずです。

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とろみ食とは?むせや誤嚥を防ぎ安全に水分・栄養を補給する介護食

とろみ食とは、お茶やジュースといった飲み物、味噌汁などの汁物、あるいは液状のミキサー食などに「とろみ剤」を加え、適度なとろみを付けた食事形態のことです。単に食べやすくするだけでなく、誤嚥(ごえん)を防ぎ、生命維持に不可欠な水分や栄養を安全に補給するという重要な目的があります。

とろみ食がなぜ必要なのか

健康な状態であれば、私たちは無意識に水分や食べ物を飲み込んでいます。しかし、飲み込む機能(嚥下機能:えんげきのう)が低下すると、この当たり前の動作が難しくなります。特に、お茶や水のようなサラサラした液体は、口に入ってから喉を通過するスピードが非常に速いため、飲み込む準備が整う前に気管に入りやすくなります。これが「むせ」や「誤嚥」の原因です。

そこで、とろみ剤を使って液体に粘度(ねんど)をつけることで、喉を通過するスピードを緩やかにします。ゆっくり流れることで、脳が「これから飲み込む」と認識し、気管にフタをするなどの嚥下反射(えんげはんしゃ)が起こるまでの時間を稼ぐことができます。この時間的な余裕が、誤嚥を防ぎ、安全な飲み込みを可能にするのです。

飲み込む力(嚥下機能)が低下した高齢者に適した食事

とろみ食は、主に以下のような原因で嚥下機能が低下した高齢の方々に必要とされます。

脳血管疾患の後遺症
脳梗塞(のうこうそく)や脳出血などにより、飲み込みに関わる神経や筋肉が麻痺(まひ)してしまうことがあります。
神経・筋疾患
パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、全身の筋力が低下する病気は、嚥下機能にも影響を及ぼします。
加齢による筋力低下
特別な病気がなくても、年齢とともに喉の筋力や感覚が衰え、むせやすくなることがあります。

これらの状態にある方にとって、安全な水分補給は脱水を防ぎ、食事から十分な栄養を摂ることは低栄養を防ぐ上で不可欠です。とろみ食は、生命を守るための重要な役割を担っているのです。

とろみ付けの基本|とろみ剤の種類と特徴

とろみ付けには、市販の「とろみ調整食品(とろみ剤)」を使用するのが基本です。主成分によっていくつかの種類があり、それぞれに特徴があります。

とろみ剤の主な種類と選び方

とろみ剤は、開発された世代順に大きく3つのタイプに分けられます。それぞれのメリット・デメリットを理解し、用途や好みに合わせて選ぶことが大切です。

種類(世代) 主な原材料 メリット デメリット
デンプン系(第1世代) トウモロコシやジャガイモなどのでんぷん ・価格が比較的安い ・とろみがつくまでに時間がかかる
・唾液の酵素で分解されやすい(とろみが緩くなる)
・べたつきが強く、口の中に残りやすい
・食品の色がやや白濁することがある
グアーガム系(第2世代) グアー豆から作られる食物繊維(ガラクトマンナン) ・デンプン系に比べてべたつきが少ない
・とろみがつくのが速い
・独特の匂いや味を感じる場合がある
・食品によっては透明感が損なわれる
キサンタンガム系(第3世代) 微生物の発酵によって作られる多糖類 ・無味無臭で、食品本来の味や香りを損なわない
・透明感が高く、見た目が良い
・唾液の酵素の影響を受けにくく、とろみが安定している
・少量で素早くとろみがつく
・他のタイプに比べて価格が比較的高価

現在では、味や見た目への影響が少なく、安定性に優れた「キサンタンガム系」が主流となっています。初めて使う方や、何を選べばよいか分からない場合は、キサンタンガム系を選ぶと失敗が少ないでしょう。

片栗粉での代用は注意が必要

料理でとろみをつける際に使う「片栗粉」での代用は、誤嚥を誘発する可能性があるため絶対に行わないでください。片栗粉を介護食のとろみ付けに使用してはいけない理由は、主に2つあります。

唾液で分解される
片栗粉の主成分であるデンプンは、唾液に含まれる消化酵素「アミラーゼ」によって分解され、とろみが失われてしまいます。口に入れた時点ではとろみがあっても、飲み込む際にはサラサラの液体に戻ってしまい、誤嚥の危険性が非常に高いのです。
温度変化に弱い
片栗粉のとろみは、温かい状態でないと維持できません。冷めるととろみが弱まったり、液体と分離したりしてしまいます。

安全なとろみ食のためには、必ず介護用に開発された「とろみ調整食品」を使用してください。

とろみの3段階の目安|嚥下状態に合わせた調整が重要

とろみの強さは、濃すぎても薄すぎてもいけません。食べる方の嚥下状態に合わせて、適切な段階に調整することが最も重要です。とろみの段階は、学会などによって統一された基準があり、一般的に以下の3段階に分けられます。

※下記はあくまで目安です。実際のとろみの段階は、必ず医師、歯科医師、言語聴覚士、管理栄養士などの専門家の指示に従ってください。

薄いとろみ(フレンチドレッシング状)

状態
スプーンを傾けると、すっと流れ落ちる程度の薄いとろみです。フォークの先からすばやく流れ落ちます。
適した方
飲み込む動作に少し時間がかかる、時々むせることがある、といった嚥下機能が比較的保たれている方向けです。

中間のとろみ(とんかつソース状)

状態
スプーンを傾けると、とろとろとゆっくり流れ落ちる状態です。フォークの先からゆっくりとまとまって流れ落ちます。
適した方
嚥下機能の低下が見られる多くの方に適用される、標準的なとろみの強さです。口の中でまとめやすく、ゆっくりと喉に送ることができます。

濃いとろみ(ケチャップ状)

状態
スプーンを傾けても、すぐには流れ落ちず、形状がある程度保たれます。フォークですくうことができます。
適した方
嚥下機能がかなり低下しており、まとまりの悪いものを飲み込むのが困難な方向けです。スプーンで口に運び、ゆっくりと送り込む必要があります。

自己判断でとろみの濃度を変えることは絶対に避けてください。状態に合わないとろみは、誤嚥や窒息のリスクを高める原因となります。

【実践】とろみ剤の上手な使い方・作り方のコツ

とろみ剤は、正しい手順で使わないと「ダマ」になってしまい、かえって危険な場合があります。上手に作るためのポイントを覚えましょう。

基本的な使い方とダマにならないためのポイント

多くのとろみ剤に共通する基本的な使い方と、ダマを防ぐコツは以下の通りです。

基本的な手順

  1. 液体を準備する : 先にお茶などの液体をコップや器に入れます。
  2. とろみ剤を入れる : 製品に記載されている分量を守り、液体の上に加えます。分散させるように、少し高い位置からサラサラと入れるのがコツです。
  3. すぐにかき混ぜる : とろみ剤を入れたら、間髪を入れずにマドラーやスプーンで30秒ほど力強くかき混ぜます。溶け残りがないように、底からしっかり混ぜ合わせます。
  4. とろみが安定するまで待つ : かき混ぜ終わったら、製品によりますが2~3分ほど静かに置いておきます。時間が経つと、とろみが安定してきます。

ダマにならないためのポイント

順番を守る
必ず「液体が先、とろみ剤が後」の順番を守ります。粉末に液体を注ぐと、ほぼ確実にダマになります。
混ぜながら入れない
意外に思われるかもしれませんが、液体をかき混ぜながらとろみ剤を投入すると、混ざる前にダマになってしまうことがあります。「入れてから、すぐに混ぜる」を徹底しましょう。
道具を工夫する
スプーンよりも、小さな泡だて器やフォークを使うと、より混ざりやすくなります。

飲み物・食べ物別のとろみの付け方

お茶や水などの飲み物

お茶や水、ジュースなど、固形物を含まない透明な液体は、最もとろみがつけやすいです。基本的な使い方で問題ありません。現在のとろみ剤は、温かいものでも冷たいものでも使用できる製品がほとんどです。

味噌汁などの汁物

味噌汁やお吸い物のように、具材や味噌の粒子が含まれているものは、少し注意が必要です。

粒子が混ざりにくい原因に
味噌の粒子などがとろみ剤の粉末と均一に混ざるのを妨げ、ダマの原因になることがあります。
工夫
一度ザルなどで具材をこしてから汁だけにとろみをつけ、後から具材を戻すと、失敗なくきれいに仕上がります。また、味噌の種類によっては、とろみがつきにくい場合があることも覚えておきましょう。

ミキサー食など

もともと粘度のあるミキサー食や濃厚流動食などに、さらにとろみをつけたい場合もあります。この場合は、とろみ剤を入れすぎると非常に硬くなってしまうため、規定量よりも少なめから試し、状態を見ながら慎重に調整することが大切です。

とろみ剤を使う際の3つの重要注意点

安全のために使うとろみ剤ですが、使い方を誤ると大きな事故につながる可能性があります。以下の注意点を必ず守ってください。

注意点1:とろみの付けすぎは窒息のリスクを高める

「むせるのが怖いから」と、自己判断でとろみを濃くしすぎるのは大変危険です。濃すぎて粘着性が高くなったとろみ食は、喉に貼り付いて飲み込みにくくなり、かえって窒息のリスクを高めます。とろみの濃度は、必ず専門家の指示に従い、勝手に変更しないでください。

注意点2:とろみ剤を追加する際は慎重に

出来上がったとろみ食に、とろみが足りないからといって上から粉末のとろみ剤を追加するのは絶対にやめましょう。後から加えた粉末は液体に溶けず、大きなダマになってしまいます。このダマを誤嚥すると大変危険です。

もしとろみを強くしたい場合は、別の容器で少量のお湯などを使って濃いめのとろみ液を作り、それを少しずつ加えて混ぜながら調整するようにしてください。

注意点3:服薬への使用は医師・薬剤師に必ず相談

薬を飲みやすくするために、水にとろみをつけて飲ませるケースがあります。しかし、薬の種類によっては、とろみ剤の成分と反応したり、体内での吸収速度に影響が出たりする可能性があります。薬の効果が弱まったり、逆に効きすぎて副作用が出たりすることも考えられます。

薬を飲むためにとろみ剤を使用する場合は、自己判断で行わず、必ず事前に医師や薬剤師に相談し、問題がないか確認してください。

とろみ食と合わせて行いたい口腔ケア

とろみ食を利用しても、誤嚥のリスクを完全にゼロにすることはできません。万が一の事態に備え、誤嚥性肺炎を予防するために、日々の口腔ケアが非常に重要になります。

誤嚥性肺炎の予防には口腔ケアが不可欠

誤嚥性肺炎は、食べ物や飲み物そのものよりも、それに付着した口の中の細菌が気管から肺に入ることで発症します。つまり、日頃から口の中を清潔に保ち、細菌の数を減らしておくことが、最も効果的な予防策となるのです。たとえ誤嚥してしまったとしても、肺に入る細菌が少なければ、肺炎を発症するリスクを大幅に下げることができます。

食前・食後の口腔ケアで口内を清潔に

口腔ケアは、食後だけでなく食前に行うことも効果的です。

食前の口腔ケア
歯ぐきや舌を優しく刺激することで唾液の分泌が促され、飲み込みの準備運動になります。また、口の中が潤うことで、食べ物の味を感じやすくなる効果も期待できます。
食後の口腔ケア
食事で残った食べかすを丁寧に取り除き、細菌の温床となる歯垢(しこう)を除去します。歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやスポンジブラシ、舌ブラシなども活用し、口の粘膜全体をきれいにしましょう。

食事の不安は専門家へ|「笑がおで介護紹介センター」で施設探し

ご家庭でのとろみ調整は、日々のことであり、神経を使うためご家族の負担も少なくありません。「とろみの加減がこれで合っているのか不安」「毎日続けるのが大変」と感じたら、介護の専門家がいる施設への入居を検討するのも一つの大切な選択肢です。

老人ホームでは管理栄養士が嚥下状態を管理

介護施設や老人ホームでは、管理栄養士や看護師、言語聴覚士といった専門家が連携し、入居者一人ひとりの嚥下状態を定期的に評価しています。その評価に基づき、その方に最適なとろみの段階を判断し、毎食提供してくれるため、安心して食事を任せることができます。

一人ひとりに合った食事を提供できる施設探し

とろみ食だけでなく、ミキサー食やソフト食など、個々の状態に合わせた食事形態にきめ細かく対応してくれるのが、介護施設の大きなメリットです。体調が変化した際にも、迅速に食事内容を見直してくれるため、常に安全な食事環境が保たれます。

食事に関するお悩みも無料相談でお聞かせください

「食事のサポートが手厚い施設を探したい」「嚥下食に詳しい施設について知りたい」など、食事に関するお悩みやご希望がございましたら、ぜひ「笑がおで介護紹介センター」にご相談ください。

関西エリア(大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山、滋賀、三重)の豊富な施設情報の中から、専門の相談員がお客様のご要望にぴったりの施設を無料でご紹介いたします。日々の介護でのお困りごとも、どうぞお気軽にお聞かせください。

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このコラムの監修者

花尾 奏一(はなお そういち)

保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

有料老人ホームにて介護主任を10年 
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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