高額療養費制度とは?申請方法や自己負担限度額をわかりやすく解説

急な病気やケガで入院や手術が必要になったとき、「医療費は一体いくらかかるのだろう」と大きな不安を感じる方は少なくないでしょう。日本の公的医療保険制度には、そんな医療費の家計への負担を軽減するための仕組みがあります。それが「高額療養費制度」です。
この制度は、1ヶ月の医療費の自己負担額に上限を設け、その上限を超えた金額が払い戻されるという、非常に心強い仕組みです。しかし、制度の存在は知っていても、「自分がいくらまで負担すれば良いのか」「どうやって申請するのか」など、詳しい内容までは分からないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、高額療養費制度の仕組みから、年齢や所得によって異なる自己負担限度額、具体的な申請方法まで、図や表を交えて分かりやすく解説します。この記事を読めば、いざという時に慌てず、安心して医療を受けるために何をすべきかが明確にわかります。
高額療養費制度とは?医療費の自己負担を抑える公的制度
まずは、高額療養費制度がどのようなものか、基本的な3つのポイントを押さえておきましょう。
1か月の医療費の自己負担額に上限が設けられる
高額療養費制度は、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が、ひと月(月の初めから終わりまで)で上限額を超えた場合に、その超えた金額が支給される制度です。この上限額は、年齢や所得によって細かく定められており、収入が低い方ほど負担が軽くなるように設定されています。これにより、重い病気や大きなケガの治療で医療費が高額になっても、家計への負担が過大になるのを防ぐことができます。
対象外となる費用に注意
高額療養費制度の対象となるのは、公的医療保険が適用される診療にかかる費用のみです。そのため、以下のような費用は制度の対象外となりますので注意が必要です。これらは治療そのものではなく、療養環境を快適にするための選択的なサービスと見なされるためです。
- 入院時の食事代(食事療養費標準負担額)
- 差額ベッド代(希望して個室などに入院した場合の室料)
- 先進医療にかかる費用
- 保険適用外の診療や材料費
加入している公的医療保険(健康保険など)から支給される
高額療養費は、ご自身が加入している公的医療保険(協会けんぽ、組合健保、国民健康保険、後期高齢者医療制度など)から支給されます。申請先や手続きの方法も、加入している医療保険の種類によって異なります。申請について不明な点があれば、まずはご自身の保険証に記載されている保険者(保険の運営元)に問い合わせてみましょう。
自己負担限度額は年齢と所得区分によって決まる
1ヶ月あたりの自己負担限度額は、年齢が70歳未満か70歳以上かによって、また所得水準によって大きく異なります。ここではそれぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。
【70歳未満の方】の自己負担限度額
70歳未満の方の場合、自己負担限度額は5つの所得区分に分けられています。医療費の総額(10割分)によって計算式が異なる区分もあるため、少し複雑に感じられるかもしれません。
所得区分ごとの計算式と限度額一覧
| 所得区分 | 該当する方(標準報酬月額) | 自己負担限度額(月額) | 多数回該当 |
|---|---|---|---|
| ア | 83万円以上 | 252,600円+(総医療費-842,000円)×1% | 140,100円 |
| イ | 53万円~79万円 | 167,400円+(総医療費-558,000円)×1% | 93,000円 |
| ウ | 28万円~50万円 | 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
| エ | 26万円以下 | 57,600円 | 44,400円 |
| オ | 住民税非課税者 | 35,400円 | 24,600円 |
※「多数回該当」とは、直近12ヶ月以内に3回以上、上限額に達した場合に、4回目から適用される引き下げられた上限額のことです。
【70歳以上の方】の自己負担限度額
70歳以上の方の場合は、外来のみの上限額と、入院を含めた世帯全体での上限額が設定されています。70歳未満の方に比べて、所得区分がより細かく分けられているのが特徴です。
所得区分ごとの外来・入院の上限額一覧
| 所得区分 | 該当する方(課税所得/年収) | 自己負担限度額(月額) 外来(個人ごと) |
|---|---|---|
| 現役並み所得者Ⅲ | 課税所得690万円以上/年収約1,160万円~ | 252,600円+(総医療費-842,000円)×1% (多数回該当:140,100円) |
| 現役並み所得者Ⅱ | 課税所得380万円以上/年収約770万円~ | 167,400円+(総医療費-558,000円)×1% (多数回該当:93,000円) |
| 現役並み所得者Ⅰ | 課税所得145万円以上/年収約383万円~ | 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% (多数回該当:44,400円) |
| 一般 | ~課税所得145万円未満/年収約156万円~ | 18,000円 (年間上限144,000円) |
| 区分Ⅱ | 住民税非課税世帯 | 8,000円 |
| 区分Ⅰ | 住民税非課税世帯(所得が一定基準以下) | 8,000円 |
自分の所得区分を確認する方法
ご自身の所得区分がどれに該当するかは、お手持ちの「健康保険証」や、70歳以上の方であれば「高齢受給者証」「後期高齢者医療被保険者証」で確認できます。不明な場合は、保険証に記載されている保険者(協会けんぽ、市区町村など)へお問い合わせください。
高額療養費制度の申請方法|事前と事後の2パターン
高額療養費制度の利用方法には、医療費を支払う「前」と「後」の2つのパターンがあります。
①事前申請:窓口での支払いを抑える「限度額適用認定証」
入院や手術などで、あらかじめ医療費が高額になることが分かっている場合に便利なのが「限度額適用認定証」を利用する方法です。
限度額適用認定証とは
事前に申請して「限度額適用認定証」の交付を受け、医療機関の窓口で保険証と一緒に提示することで、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えることができます。これにより、後から払い戻しの申請をする手間が省け、一時的な高額な立て替え払いの負担をなくすことができます。
申請から交付までの流れ
限度額適用認定証の申請は、加入している公的医療保険の窓口で行います。一般的な流れは以下の通りです。
- 加入している医療保険の窓口(協会けんぽ、市区町村など)から申請書を入手します。
- 申請書に必要事項を記入し、保険証のコピーなどの必要書類を添えて提出します。
- 審査後、1週間程度で「限度額適用認定証」が郵送で交付されます。
- 医療機関の窓口で、保険証とあわせて提示します。
必要書類は加入している保険によって異なる場合があるため、事前に確認しましょう。
マイナ保険証なら手続き不要
マイナンバーカードを健康保険証として利用登録している「マイナ保険証」を使えば、限度額適用認定証がなくても、窓口での支払いを自動的に自己負担限度額までに抑えることができます。事前の申請手続きが不要になるため、非常に便利です。急な入院などの際にも慌てずに済むため、まだ利用されていない方は登録を検討するとよいでしょう。
②事後申請:払いすぎた医療費の払い戻しを受ける
限度額適用認定証を利用せずに医療費を支払った場合や、複数の医療機関の受診を合算して上限額を超えた場合などは、後から申請して払い戻しを受けることができます。
申請の流れ
多くの健康保険では、高額療養費の支給対象になると、診療月から3~4ヶ月後に保険者から自動的に申請書が送られてきます。届いた申請書に必要事項を記入し、医療機関の領収書などを添付して返送すれば、後日指定した口座に差額が振り込まれます。国民健康保険など一部の保険者では、初回のみ申請が必要な場合があります。
申請できる期間は2年以内
高額療養費を申請できる権利は、診療を受けた月の翌月の初日から2年で時効となります。申請を忘れていた場合でも、2年以内であればさかのぼって申請が可能ですので、領収書を確認してみましょう。
自己負担をさらに軽減する仕組み
高額療養費制度には、さらに負担を軽減するための特例的な仕組みがあります。
多数回該当|4回目から自己負担限度額が引き下げ
直近の12ヶ月間に、高額療養費の支給を3回以上受けた場合、4回目からは自己負担限度額がさらに引き下げられます。これを「多数回該当」と呼びます。長期にわたって治療が必要な方の負担を、より軽減するための措置です。
世帯合算|家族の医療費をまとめて申請可能
一人一人の自己負担額では上限に達しない場合でも、同じ医療保険に加入している家族(同一世帯)の自己負担額を、ひと月単位で合算することができます。例えば、ご主人がA病院で25,000円、奥様がB病院で30,000円の自己負担額を支払った場合(共に70歳未満)、世帯で合算して55,000円として計算できます。合算した金額が自己負担限度額を超えれば、その超えた分が高額療養費として支給されます。ただし、70歳未満の方の場合は、21,000円以上の自己負担額のみが合算の対象となります。
高額療養費制度を利用する際の注意点
制度を利用する上で、いくつか知っておきたい注意点があります。
医療費控除との違いを理解する
高額療養費制度と混同されやすいものに「医療費控除」があります。両者は全く異なる制度ですので、違いを理解しておきましょう。
| 高額療養費制度 | 医療費控除 | |
|---|---|---|
| 制度の目的 | 医療費の自己負担を軽減する | 所得税・住民税の負担を軽減する |
| 管轄 | 厚生労働省(公的医療保険) | 国税庁(税務署) |
| 計算単位 | 1ヶ月ごと(月の初め~末日) | 1年間(1月1日~12月31日) |
| 申請方法 | 加入の医療保険に申請 | 税務署に確定申告 |
| 戻ってくるお金 | 自己負担限度額を超えた金額 | (医療費-10万円)×所得税率など |
なお、医療費控除を申告する際には、高額療養費制度で払い戻された金額を、支払った医療費の総額から差し引いて計算する必要があります。
月をまたぐ入院や治療は合算できない
高額療養費制度の計算は、「月ごと」に行われます。たとえ一連の治療であっても、月をまたいで入院した場合、それぞれの月の医療費は別々に計算されます。例えば、月末に入院して翌月初めに退院すると、それぞれの月の自己負担額が上限に達せず、制度の対象にならないケースがあるため注意が必要です。
差額ベッド代や入院中の食費は対象外
冒頭でも触れましたが、保険適用外の費用は高額療養費制度の対象にはなりません。特に、入院時の「差額ベッド代」や「食費」は自己負担額が高額になりがちですが、これらは全額自己負担となる点を理解しておく必要があります。
一時的な支払いが困難な場合の支援制度
「限度額適用認定証」を使いそびれてしまい、一時的とはいえ窓口での高額な支払いが難しい場合、以下のような制度を利用できる可能性があります。
高額医療費貸付制度
高額療養費として支給される見込み額の8割~9割程度を、無利子で借りられる制度です。医療費の支払いに充て、後日支給される高額療養費を返済に充当します。
高額療養費受領委任払制度
加入している医療保険から、医療機関へ直接、高額療養費を支払ってもらう制度です。これにより、利用者は窓口で自己負担限度額のみを支払えばよくなります。
これらの制度の利用条件や手続きは、加入している医療保険によって異なりますので、まずは相談してみましょう。
医療費や介護費用でお悩みなら「笑がおで介護紹介センター」へ
急な入院をきっかけに、退院後の生活や介護について考え始める方は少なくありません。高額療養費制度を使っても、医療費やその後の介護費用に不安を感じることもあるでしょう。
「退院後、自宅での生活が不安」「老人ホームや介護施設も検討したいけど、費用はどのくらいかかるの?」といったお悩みがあれば、ぜひ私たち「笑がおで介護紹介センター」にご相談ください。関西エリア(大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山、滋賀、三重)の介護施設情報に精通した専門の相談員が、皆様の状況やご予算に合わせ、最適な選択肢を一緒に考え、施設探しを無料でお手伝いいたします。

このコラムの監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
この記事の関連記事

0120-177-250

