特別養護老人ホームと養護老人ホームの違いとは?両施設の目的と対象者を解説

「養護老人ホームと特別老人ホームの違いがわからない」「どちらが自分に合っているか教えてほしい」などと考えていませんか。名称が似ているため混乱している方は多いでしょう。結論を最初に示すと、両施設は目的も対象もサービス内容も異なります。全く別の施設と考えてよいでしょう。
ここでは、法律上の位置づけや対象者、サービス内容などの切り口で、これらの施設の違いを解説しています。以下の情報を参考にすれば、それぞれの施設の特徴がわかるはずです。自分に合っている施設を選びたい方は確認しておきましょう。
養護老人ホームとは?
養護老人ホームは次の方を対象としています。
六十五歳以上の者であつて、環境上の理由及び経済的理由(政令で定めるものに限る。)により居宅において養護を受けることが困難なもの
出典:e-GOV法令検索「昭和三十八年法律第百三十三号 老人福祉法」
基本的に、身の回りのことを自分でできる高齢者を対象とします。施設の概要は次の通りです。
第十一条第一項第一号の措置に係る者を入所させ、養護するとともに、その者が自立した日常生活を営み、社会的活動に参加するために必要な指導及び訓練その他の援助を行うことを目的とする施設とする。
出典:e-GOV法令検索「昭和三十八年法律第百三十三号 老人福祉法」
「第十一条第一項第一号の措置に係る者」は上記の方です。ここでいう「環境上の理由」は、健康や住居、家族などの状況により在宅で生活することが難しいことを指します。ここでいう「経済的理由」は次の3つです。
【政令で定める経済的理由】
- 生活保護を受給している
- 前年の所得による市町村民税の所得割の額がない
- 災害などの事情により世帯の生活が困窮している
つまり、養護老人ホームは、在宅の生活環境が厳しく経済的にも困窮している高齢者を入所させて、擁護ならびに社会活動に必要な援助を行う施設です。対象となる方を、市町村長の措置で入所させる点も大きな特徴といえるでしょう。
ここでいう措置は、行政の権限と責任で受給要件などを確認し社会福祉サービスの給付を決定することです。したがって、自分の希望だけで養護老人ホームには入所できません。
特別養護老人ホームとは?
老人福祉法第20条の5で定義されている老人福祉施設です。厚生労働省は、特別養護老人ホームを次のように説明しています。
65 歳以上の者であって、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を 必要とし、かつ居宅においてこれを受けることが困難な者を入所させ、養護する施設
引用:厚生労働省「用 語 の 定 義」
介護保険法では、介護老人福祉施設として位置付けられています。同法による定義は次の通りです。
この法律において「介護老人福祉施設」とは、老人福祉法第二十条の五に規定する特別養護老人ホーム(入所定員が三十人以上であるものに限る。以下この項において同じ。)であって、当該特別養護老人ホームに入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことを目的とする施設をいい、「介護福祉施設サービス」とは、介護老人福祉施設に入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話をいう。
引用:e-GOV法令検索「平成九年法律第百二十三号 介護保険法」
特別養護老人ホームは、やむを得ない理由で介護老人福祉施設(または地域密着型介護老人福祉施設)へ入所することが著しく困難なときに市町村長の措置で入所します。ここでいうやむを得ない理由として、高齢者虐待からの保護などがあげられます。
以上に該当しない場合は、介護保険法に基づき施設と契約を結んで入所します。したがって、自分の意思で施設を選択することが可能です。ちなみに介護老人福祉施設は、一般的に特別養護老人ホームと呼ばれています。
関連記事:老人ホームとは?介護施設との違いや種類・費用などを一覧表で解説
養護老人ホームと特別養護老人ホームの違い
両者の違いをまとめると次のようになります。
| 養護老人ホーム | 特別養護老人ホーム | |
| 目的 | 養護ならびに社会活動に必要な援助を提供して自立を支援 | 常時介護を要する方に日常生活上の世話などを提供して自立を支援 |
| 対象 | 65歳以上かつ環境上と経済上の理由で、居宅で養護を受けられない方(自立) | 身体上または精神上の著しい障害で常時の介護を必要とする方(原則として要介護3以上) |
| 利用方法 | 措置 | 原則として契約 |
| サービス | 食事の提供・日常生活の支援 | 日常生活の介護・機能訓練・療養上の世話・健康管理など |
最も大きな違いは施設の目的といえるでしょう。養護老人ホームは社会生活に戻ることを支援する施設、特別養護老人ホームは介護などを提供しながらその人らしい暮らしを支援する施設です。
したがって、前者は基本的に自立した方、後者は介護を必要とする方を対象とします。利用方法が措置と契約に分かれる点もポイントです。
養護老人ホームと特別養護老人ホームのメリット
それぞれのメリットとして次の点があげられます。
養護老人ホームのメリット
入居費用は応能負担となっています。応能負担は、対象者が受ける利益ではなく対象者の能力の基づき費用を負担する仕組みです。したがって、費用徴収額は前年度の収入などで変動します。経済的な問題を抱えている方でも利用しやすい点はメリットと考えられます。
1人以上の職員が宿直勤務または夜間および深夜の勤務(宿直勤務を除く)を行っている点も魅力です。夜間に生じたトラブルにも速やかに対応してもらえる可能性があります。
関連記事:老人ホームの入居にかかる費用は?相場と安く抑えるポイント
特別養護老人ホームのメリット
両者を比べたときに考えられるメリットとして契約で利用できることがあげられます。要件を満たせば、市区町村の利用判定を経ず自分の意思で施設を選んで入所できます。中重度の要介護者を対象としているため、要介護度が高くなっても対応できる点も魅力です。
また、多くの施設が看取りに対応しています。厚生労働省が発表している「施設、在宅での看取りの状況に関するデータ」によると、特別養護老人ホームの72.9%(「看取り期に入った利用者に対し、個別に看取り計画を立てて看取りを行っている」が56.4%、「看取り期に入った利用者に対し看取りは行っているが、看取りの計画は立てていない」が16.5%)が看取りを実施しています。終の棲家として入所を検討できるでしょう。
参考:厚生労働省「施設、在宅での看取りの状況に関するデータ」
養護老人ホームと特別養護老人ホームのデメリット
両施設には気を付けたいデメリットもあります。代表的なデメリットは以下の通りです。
養護老人ホームのデメリット
市区町村長の措置により入所する施設です。希望すれば誰でも入所できるわけではありません。具体的には、65歳以上の対象者が居住地を有するときは居住地の市区町村、居住地を有さないとき、居住地が明らかでないときは現在地の市区町村が措置を実施します。
基本的な入所のステップは以下の通りです。
【入所のステップ】
- 市区町村の窓口などで入所について相談
- 市区町村の窓口で入所の申し込み
- 本人の心身の状況や生計の状況などを調査
- 入所判定委員会で措置の要否を判定
- 4の結果に基づき市区町村長が措置の要否を決定
- 入所
介護保険施設とは入所の流れが大きく異なります。本人の心身の状況や生計の状況などについて調査がある点にも注意が必要です。
自立している方を対象としているため、介護サービスを基本的に提供していない点もデメリットになりえます。施設が特定施設入居者生活介護の指定を受けている場合は、当該施設から介護保険に基づくサービスを受けられますが、そうでない場合は外部の事業者と個別に契約してサービスを受ける必要があります。入居中に要介護度が高くなると、別の施設へ転居を求められることも考えられます。
特別養護老人ホームのデメリット
施設と契約して利用できる点は魅力ですが、入居希望者が多いためスムーズに入居できる保証はありません。厚生労働省の発表によると、2022年4月1日時点における特別養護老人ホームの入所申込者数は要介護3以上の方が253,000人(うち106,000人は在宅)、特例入所の対象となる要介護1・2の方が22,000人(うち在宅の方は11,000人)です。
ここでいう入所申込者は、入所申込をしているものの調査時点で入所できていない方を指します。2019年度調査より減少していますが、それでも多くの方が希望通りに入所できていません。ケースによっては年単位の待機期間が発生するため注意したいポイントといえるでしょう。
参考:厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)」
原則として要介護3以上の方を対象としている点もデメリットとしてあげられます。2015年4月1日から、必要性の高い高齢者が入所しやすくなるように対象者の要介護度が引き上げられました。要介護1・2の方は、やむを得ない事情がある場合のみ特例入所の対象となります。要介護度によっては、必要性を感じていても入所できない恐れがあります。
養護老人ホームと特別養護老人ホームのサービス内容
両施設はサービス内容にも違いがあります。基本的なサービス内容は以下の通りです。
養護老人ホームのサービス内容
主なサービスとして、社会復帰に向けた支援が行われます。具体的には、食事の提供や日常生活に関する支援が行われます。内容はケースで異なりますが、金銭管理や健康管理などが考えられるでしょう。
ただし、自立した方を主な対象とする社会復帰に向けた施設であるため、自分でできることはできる限り自分で行います。介護が必要になった場合は、外部の事業者と契約して介護サービスを受けますが、一部の施設は特定施設入居者生活介護の指定を受けているため介護サービスも提供できます。
特別養護老人ホームのサービス内容
施設サービス計画に基づき次のサービスが提供されます。
【サービス】
- 日常生活で必要になる介護と世話
- 療養生活で必要になる世話
- 離床訓練や歩行訓練をはじめとする機能訓練
- 検温や血圧測定などをはじめとする健康管理
- 相談援助など
特別養護老人ホームには、医師・看護師・生活相談員・介護職員・機能訓練指導員・栄養士・介護支援相談員などが配置されています。手厚い介護サービスを提供している点が特徴です。
養護老人ホームと特別養護老人ホームの入所基準
両施設における入所基準は以下の通りです。
養護老人ホームの入所基準
入所の対象となるのは、65歳以上で環境面・経済面が厳しく、常時の介護は必要としないものの心身の機能が低下していて、家族などから援助を受けられず在宅での生活が困難になっている方です。入居者像として以下の例があげられます。
【入居者の例】
- 一人暮らしをしている方
- 家族などから虐待されている方
- 年金の受給額が著しく少ない方
- 身体や精神に障害がある方
- 賃貸住宅から立ち退かされて行き場がない方
入所の判定(措置の要否)は、市区町村が設置する入所判定委員会が行います。
特別養護老人ホームの入所基準
入所の対象となるのは、身体または精神の著しい障害により常時の介護を必要とし在宅生活が困難な方です。具体的には、要介護3以上の方が対象になります。ただし、要介護1・2の方もやむを得ない事情により介護老人福祉施設以外での生活が著しく困難である場合は特例入所の対象となる可能性があります。
特例入所の要件(勘案事項)として次の点があげられています。
【要件】
- 認知症
- 知的障害・精神障害
- 虐待が疑われる
- 単身世帯、同居家族が高齢又は病弱
詳しくは、市町村の窓口などでご確認ください。
養護老人ホームと特別養護老人ホームの費用
養護老人ホームの費用は、前年度の収入により段階的に変動します。具体的には、前年度の収入から社会保険料などを差し引いた金額をもとに徴収金額が決まります。徴収金額は0~140,000円です。介護保険に基づく介護サービスを利用した場合は、別途、この金額がかかります。
特別養護老人ホームの費用は、施設サービス費、居住費・食費、日常生活費で構成されます。施設サービス費は、要介護度と居室の種類などで異なります。
| 要介護度 | 従来型個室 | 多床室 | ユニット型個室 | ユニット型個室的多床室 |
| 要介護1 | 573円/日 | 573円/日 | 652円/日 | 652円/日 |
| 要介護2 | 641円/日 | 641円/日 | 720円/日 | 720円/日 |
| 要介護3 | 712円/日 | 712円/日 | 793円/日 | 793円/日 |
| 要介護4 | 780円/日 | 780円/日 | 862円/日 | 862円/日 |
| 要介護5 | 847円/日 | 847円/日 | 929円/日 | 929円/日 |
※自己負担割合1割の場合
居住費は室料と光熱費、食費は食材費と調理費に基づき算出されます。日常生活費は理美容代などの費用です。月額費用の目安は、要介護5の方が多床室を利用した場合が10万円程度、ユニット室を利用した場合が14万円程度といえるでしょう。
低所得の方は、居住や食事に関する費用が限度額を超えたときに差額が給付される特定入所者介護サービス費を利用できます(原則、現物給付)。
関連記事:特別養護老人ホームの費用相場は?入居できない場合の3つの対処法
なるべく早い入居を叶えるには?
デメリットで解説した通り、特別養護老人ホームは入居まで時間がかかることがあります。できるだけ早く入居したい方は次の点を意識するとよいでしょう。
【ポイント】
- 空室情報をこまめにチェックする
- 申込時に早く入所しなければならない理由を伝える
- 複数の施設に申し込む
- 対象エリアを広げてみる
できるだけ早く入所したい場合は、選択肢を広げることが大切です。また、早く入居したい理由を詳細に伝えることで、優先順位を高くしてもらえる可能性があります。
養護老人ホームと特別養護老人ホームは別の施設
ここでは、養護老人ホームと特別養護老人ホームの特徴について解説するとともに両施設の違いを説明しました。前者は65歳以上で環境上・経済上の問題を抱えていて家族からの援助がなく自宅での生活が困難になっている方、後者は常時介護を必要としていて自宅での生活が困難になっている方を対象とする施設です。
入所の方法も措置と原則契約に分かれます。よく似た名称ですが、特徴は大きく異なるといえるでしょう。違いを理解して選択することが重要です。
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このコラムの監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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