老人ホームに払うお金がなくなった際にとるべき対処法とは?
お役立ちコラム
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在宅介護が難しい場合に利用する老人ホーム。平均寿命が延びている中、10年以上老人ホームで過ごすという方もいるでしょう。そこで問題になってくるのが金銭面です。老人ホームに入り続けたいと思っても、お金が足りず諦めるという方も少なくありません。ここでは、老人ホームに払うお金がなくなった際にとるべき対処法について解説します。お金がなくなった際に検討したい補助制度や老人ホームの支払いを滞らせないための対策についても紹介しているので、参考にしてみてください。
老人ホームの費用の相場とは?
そもそも、老人ホームの費用はどれくらいかかるのでしょうか。老人ホームの種類は大きく分けて、民間機関が運営する施設と公的機関が運営する施設に分かれます。種類によって費用が異なるため、それぞれの費用相場を紹介します。
民間機関
老人ホームの種類 | 初期費用の相場 | 月額費用の相場 |
介護付有料老人ホーム | 0~数千万円 | 10~40万円 |
住宅型有料老人ホーム | 0~数千万円 | 15~30万円 |
グループホーム | 0~数百万円 | 15~20万円 |
健康型有料老人ホーム | 0~数億円 | 15~40万円 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 0~数千万円 | 10~30万円 |
シニア向け分譲マンション | 数千万円~数億円 | 10~30万円 |
公的機関
老人ホームの種類 | 初期費用の相場 | 月額費用の相場 |
特別養護老人ホーム | 0円 | 5~15万円 |
介護老人保健施設 | 0円 | 8~20万円 |
介護療養型施設 | 0円 | 9~15万円 |
軽費老人ホーム | 0円~数十万円 | 10~30万円 |
ケアハウス | 0円~30万円 | 6~20万円 |
民間機関が運営する老人ホームにもさまざまな種類があり、必要な費用が異なります。
食事や入浴、排せつなど日常生活上の支援や機能訓練などの介護が充実している「介護付有料老人ホーム」、食事・洗濯・清掃など生活支援サービスが付いているものの、ホームスタッフが介護サービスを提供しない「住宅型有料老人ホーム」、認知症の方のみが入居する「グループホーム」、介護の必要がなく自立した生活を送れる方向けの「健康型有料老人ホーム」、バリアフリー環境が完備された賃貸住宅である「サービス付き高齢者向け住宅」、購入後に所有権を伴う資産となり、譲渡や相続ができる「シニア向け分譲マンション」と大きく6つに分けられます。
どれも月額費用は数十万円に抑えられるものの、初期費用はまとまった金額が必要になるものもあります。多くの方が利用する介護付有料老人ホームや住宅型有料老人ホームでも、初期費用が数百万円かかる場合もあります。運営する機関によって提供するサービスやそれに伴う費用は大きな差が出ます。よく比較することが大切です。
公的機関が運営する老人ホームは、民間機関のものと比べて初期費用、月額費用ともに抑えられる場合が多いです。中でも特別養護老人ホームは、ほかの施設に比べて安く入居できる分人気が高く、入居の条件も厳しくなっています。介護度の重い方や低所得者の保護と支援に重点を置いているため、入居待ちになってしまう確率も高いでしょう。
関連記事:有料老人ホーム10種類の特徴や費用を一覧解説!違いや選び方とは
老人ホームの費用は誰が払うべきなのか?
親の老人ホームの費用は親のお金で払うのが基本です。なぜなら、子どもには自分たちの生活があるからです。親のお金には、収入、年金、貯蓄、資産などがあります。老人ホームの費用の支払いで困らないためにも、子どもはこれらすべてを把握しておく必要があります。特に確認しておきたいのが以下の5つです。
【把握しておきたいもの】
- すべての銀行口座
- 生命保険の契約
- 所有の不動産
- 投資有価証券
- 負債
支払いが難しくなる理由
老人ホームの支払いが難しくなる理由としては、主に4つあげられます。
まず介護度が上がって負担額が増えるケースです。介護認定を受けている場合、介護度が上がるほど介護費用の負担は増えます。住宅型有料老人ホームや高齢者向け住宅では、訪問看護などのサービス利用が増えるほど費用がかさみ、支払いが難しくなることも。公的機関が運営する老人ホームの介護サービス費用は毎月定額なので支払い額は基本的に変わりません。しかし、要介護認定が上がるほど定額費用は増加していきます。
2つ目は資産売却が上手くいかないケースです。老人ホームに入居する際、自宅などの資産を売却して資金を確保する場合もあります。しかし、売却が思うように進まなかったり、予定していた金額が得られなかったりすると、老人ホームの支払いが難しくなることがあります。
3つ目は不動産投資などの収入が減ったケースです。保有する不動産を活用し収入を得て、老人ホームの費用に充てる場合もあるでしょう。マンションやアパートの経営が上手くいかないと収入が減り、支払いが困難になるケースも見られます。
4つ目は家族の収入が減ったケースです。老人ホームの費用は親が支払うのが基本ですが、家族が金銭的な援助をしている場合も少なくないでしょう。支援をしていた家族の収入が病気や転職などで減った場合、親の援助ができなくなり、支払いが難しくなることがあります。
老人ホームの支払いが難しくなるとどうなる?
実際に老人ホームの支払いが難しくなるとどうなるのでしょうか。多くの場合、身元保証人に費用の請求がいき、それでも支払いが難しい場合は強制退去を求められます。
身元保証人に請求される
老人ホームに支払い費用を滞らせてしまっても、すぐに強制退去にはなりません。基本的には、1~2ヵ月の猶予期間が設けられています。具体的な猶予期間は、老人ホームの契約書などに記載があるので確認しましょう。
しかし、3ヵ月以上など、長期間にわたって滞納が続くと身元保証人に連絡が入ります。それだけでなく、身元保証人が費用の支払いを求められるなど、家族に迷惑をかけることになります。
猶予期間後は強制退去を求められる
猶予期間を過ぎても費用が支払われない場合や、身元保証人も支払えない状況が続くと、強制退去を求められます。実際に強制退去を求められるのは、支払いが困難になってから3ヵ月~半年程度でしょう。そうならないためにも、事前に施設のスタッフに相談したり、補助制度を活用したりすることが大切です。
老人ホームにお金を払えなくなった際は何をすればよい?
老人ホームにお金を支払えなくなったら、まず、焦らず施設のスタッフや担当のケアマネージャーに相談しましょう。より低額な施設を紹介してくれたり、施設の紹介事業などを行っている仲介業者を紹介してくれたり、さまざまなアドバイスをもらえます。アドバイスを参考にして、支払い期限の延長や分割が可能かを施設長に相談しましょう。何より、身元保証人への請求や強制退去になる前に、早めに相談することが大切です。
お金がなくなった際に検討したい補助制度
お金がなくなった際に検討したい4つの補助制度を紹介します。
医療費控除
医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定の金額を超えた際に、支払った医療費を元に計算した金額分だけ所得控除が受けられる制度です。
介護保険が適用される介護サービス費用の多くは医療費控除の対象となります。医療系の施設である「介護老人保健施設」や「指定介護療養型医療施設」、「介護医療院」では、介護費と食費、居住費の全額が医療費控除の対象です。福祉系の施設である「指定介護老人福祉施設」や「指定地域密着型介護老人福祉施設」では、介護費と食費、居住費の半額が医療費控除の対象となります。
生活援助中心型の訪問介護や認知症高齢者グループホーム、福祉用具の貸与など、医療と関連性のないサービスは対象とならないので注意が必要です。
医療費控除額の計算方法としては、まず、1年間に支払った医療費から、保険金などで補われている金額を差し引きます。そこから、さらに10万円引いた額が医療費控除額となります。しかし、総所得が200万円未満の場合は、10万円ではなく総所得額に5%を掛けた金額が差し引かれます。
介護保険料の減免制度
介護保険料は40歳から加入が義務付けられています。生涯にわたって保険料の支払いが続きますが、条件付きで免除・軽減を受けられることがあります。介護保険料の減免制度が適用となる条件としてあげられるのは、著しい収入減があった場合、災害で大きな被害を受けた場合、低所得者で生活が難しい場合、市区町村独自の減免措置を活用した場合などです。適用する場合は、必要書類を各自治体の介護担当窓口に提出しましょう。
生活保護
生活保護は、生活に困窮する方に対して、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障、自立を助長することを目的とした国の制度です。生活を営む上で必要な費用に対応して扶助が支給され、介護サービスの費用も対象となります。生活保護制度を利用する場合は、地域の福祉事務所の生活保護担当者へ事前に相談する必要があります。
高額介護サービス費制度
介護サービスを利用する際は、自己負担割合に応じた利用料を負担します。高額介護サービス費制度とは、1ヵ月に支払った利用者の負担が負担限度額を超えたとき、超えた分が払い戻される制度です。一般的な所得の方の負担限度額は月額44,400円です。
介護サービスの利用にかかる相談や自宅で受ける家事援助などのサービス、施設に出かけて日帰りで行うサービス、施設で生活しながら受けるサービスなど、介護保険で利用できるサービスが高額介護サービス費制度の対象となります。福祉用具の購入費や住宅改修費などは対象外なので注意しましょう。
お金がなくても老人ホームを利用したい際の対処法
お金がなくても老人ホームを利用したい場合はどうしたらよいのでしょうか。5つの対処法を紹介します。
対処法①地方の老人ホームに移る
1つ目が地方の老人ホームに移ることです。老人ホームの費用は地域によって異なります。例えば、東京都の入居一時金の平均額は400万円台ですが、隣接する千葉県では100万円前後。1つ県をまたぐだけで大きく差があるのです。東北や九州など、地方都市であればさらに費用を抑えられます。近隣の県の老人ホームを選ぶだけでも効果はありますし、地元から遠く離れた地域を選ぶことで、支払いの問題を解消できることがあります。
対処法②費用の安い老人ホームに移る
2つ目が費用の安い老人ホームに移ることです。先述の通り、老人ホームといっても介護施設のタイプはさまざまです。入居一時金が無料の施設から数億円かかる施設まであり、民間が運営する施設よりも公的な機関が運営する施設の方が、入居一時金が安い傾向にあります。民間でもサービス付き高齢者向け住宅や、施設や設備の内容が最低限整った介護付有料老人ホームを選ぶことで費用の削減が可能です。
対処法③個室から多床室に変える
3つ目が個室から多床室に変えることです。老人ホームでは、部屋のタイプによっても費用が異なり、個室よりも相部屋の方が費用を抑えられます。個室のようなプライベート空間は作れませんが、最低限のプライバシーは確保されています。他の入居者の方とコミュニケーションを取りたいという方は、むしろ相部屋の方が楽しく過ごせることもあるでしょう。
対処法④生活費を減らす
4つ目が生活費を減らすことです。老人ホームに支払う月額費用は負担しなければなりませんが、日用品の購入費やクリーニング代は工夫次第で削減できます。実費の負担が必要になるサービスを控えたり、家族に洗濯をお願いしたりするなどの工夫を行いましょう。生活費の一部だけ家族に負担してもらうのも有効です。
対処法⑤融資や資産運用で生活資金を獲得する
5つ目が融資や資産運用で生活資金を獲得することです。融資が受けられる制度の1つとして、「長期生活支援賃金貸付制度」があります。65歳以上の高齢者世帯を対象としていて、社会福祉協議会が資金や土地がある方に向けて、在宅福祉や社会参加の促進など世帯の自立を支援するための貸付を行っています。土地や建物を担保に死亡するまでお金を借りられますが、連帯保証人が必要になるケースもあるので確認が必要です。
そのほか、「マイホーム借上げ制度」も利用できます。一般社団法人移住・住みかえ支援機構が行う事業で、50歳以上の方が所有する住宅を借上げ、子育て世帯などに転貸する制度で、空室が発生しても一定に賃料収入を得られるのが特徴です。自宅を売却することなく、老後の資金として活用できます。
老人ホームの支払いを滞らせないための対策
老人ホームの支払いに困らないようにするためには、入居前の対策が重要です。ここでは、老人ホームの支払いを滞らせないための3つの対策を紹介します。
入居後のライフプランを立てる
老人ホームの入居を検討する場合は「資産の確認」、「収入の確認」、「入居期間の 想定」をして入居後のライフプランを立てましょう。入居時には、入居一時金と家具や家電などの生活用品の費用、引越費用が必要になり、入居後には、月額利用料と介護サービスの自己負担額、日用品などのその他の費用が必要になります。80~84歳の約3割が要支援・要介護と認定されていて、平均的な介護期間は5年といわれています。この期間をベースに、必要な費用をシミュレーションして余裕を持った資金計画を立てましょう。
各施設を比較してから入居先を決める
老人ホームには、最低限の施設やサービスが整っているものから、豪華な設備やサービスが充実しているところまでさまざまです。快適に過ごせるのは大切ですが、月額費用が払えなくなっては元も子もありません。資産と収入に見合っているか、各施設を比較してから入居を決めるようにしましょう。
在宅介護も視野に入れる
在宅介護とは、老人ホームなどの施設介護ではなく、自宅で介護することを指します。訪問介護などの訪問型、デイサービスなどの通所型、ショートステイなどの宿泊型のサービスが受けられます。介護を受ける方が住み慣れた自宅で暮らせることや介護費用を大きく抑えられるのがメリットです。一方で、同居する家族に負担がかかりやすくなり、介護うつになるケースも少なくありません。在宅介護の場合は、家族間で介護を分散することが大切です。
ライフプランの設計と周りへの相談が大切
老人ホームに払うお金がなくなった際にとるべき対処法について解説してきました。老人ホームへの支払いが滞ると、身元保証人に請求がいき、それでも支払いがない場合は強制退去となります。そうならないためには、入居前にしっかりとライフプランを設計すること、支払いが厳しいと感じたら、施設スタッフや担当のケアマネージャーに相談することが重要です。補助制度が活用できる場合があるほか、費用の安い老人ホームに移ることで支払えるようになる場合もあります。日用品などを節約したり、家族の力も借りたりしながら、焦らず予算内の魅力的な老人ホームを探しましょう。
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監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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