国民年金だけで老人ホームに入居できる?施設ごとに必要な費用を解説

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国民年金だけで老人ホームに入居できる?施設ごとに必要な費用を解説

老人ホームは、高齢者や特定疾病を抱える方を受け入れている施設です。

高齢者が快適に老後を過ごせるように、設備やサービスを充実させている施設が多く、医療機関との連携やリハビリテーションが実施され、一人ひとりに合わせた配慮が魅力的です。

この記事では、国民年金を利用して入居できる老人ホームはあるのか、施設ごとの特徴と年金利用のポイントについて紹介します。

老人ホームにかかる費用を抑える方法や費用を補うための方法も解説していますので、ぜひ参考にしてください。

国民年金だけで入れる老人ホームはあるのか?

厚生労働省が毎年発表している「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、2022年の老齢厚生年金の平均年金月額は第1号で14万5,000円、国民年金の老齢年金金受給者の平均年金は5万6,000円でした。

参考:厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」 

有料老人ホームのように民間の事業者が運営している施設は月額費用が高額になるケースもあり、国民年金だけで費用をまかなえるケースはあまり多くはありません。

しかし、社会福祉法人などの機関が運営する公的施設であれば、比較的費用が安価なため、国民年金でまかなえる場合があります。

特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホームは、日常生活で常時介護を必要とする要介護3以上の方を中心に受け入れている施設です。公的施設のため、民間施設のように入居一時金や保証金は発生しません。

月額費用の目安は5~15万円で、居室のタイプによって料金の相場が変わります。他の入居者と同室になる「多床室」タイプは4.4〜12万円、入居者ごとの個室が設けられる「ユニット」型は6.8~15万円で、一人ひとりの居室が独立したユニット型のほうが高額です。

初期費用がかからないため入居までのハードルは高くありませんが、国民年金のみで生活するにはやや不安な面もあります。

2022年の国民年金の平均年金月額は5万6,000円なので、国民年金を受給している方は費用の安い特別養護老人ホームを選び、多床室に入るなどの工夫で支出を抑える必要があります。

関連記事:特別養護老人ホームにはどんな人が入居している?入居条件などの詳細

介護老人保健施設(老健)

介護老人保健施設は、在宅復帰を目指している入居者を要介護1から受け入れ、日常生活のサポートや機能訓練を行う施設です。
公的施設のため、民間施設のように入居一時金や保証金は発生しません。

月額費用の目安は8~20万円です。金額に幅があるのは、特別養護老人ホームと同じく個室タイプになると高額に設定される傾向にあるためです。

初期費用がかからないため、空きがあれば比較的すぐに入居できますが、在宅復帰を念頭においている施設のため、復帰できる状態だと判断されたときは退居しなければなりません。

また、国民年金のみで生活するのは難しいため、毎月必ず持ち出しが発生すると考えてください。

国民年金を満額受給している方でも月額費用の目安には届かないため、介護老人保健施設以外の施設を検討するなど、他の施設も視野に入れて検討する必要があります。

介護医療院

介護医療院は、医療的管理を必要としている要介護1以上の方を対象とした介護施設です。身体介護と医療ケアを組み合わせて提供し、必要な方には医師による看取りも実施しています。

公的施設のため、民間施設のように入居一時金や保証金は発生しません。

月額費用の目安は9~15万円で、特別養護老人ホームや介護老人保健施設よりも医療ケアが手厚いため、費用が高く設定されています。

介護医療院は、長期にわたって療養を行う方のための施設です。看護や機能訓練、日常的な医学管理を提供する施設のため、短期間の入居は想定されていません。

有料老人ホームよりも安く入居できる施設ですが、長期にわたる生活費やその他の費用を含めると、国民年金のみでまかなう生活は難しいといえるでしょう。

ケアハウス

ケアハウスは、家庭環境や経済状況によって独居生活が困難な高齢者のための施設です。A型・B型・C型(一般型と介護型)・都市型に分けられます。

C型以外は「軽費老人ホーム」と呼ばれ、一般的にケアハウスと呼称されているのはC型の2種類です。すべてのタイプが公的施設ですが、施設によっては初期費用が発生する場合があります。

C型(一般型)の初期費用の目安は0~30万円、月額費用の目安は6~12万円です。

C型(介護型)の初期費用の目安は0~30万円、月額費用の目安は6~20万円です。介護サービスを付帯しているため、介護型のほうが負担額が高くなる傾向にあります。

初期費用がかかる施設は入居前にまとまった金額を支払わなければなりませんが、月額費用は6万円からと比較的安い料金設定です。

ただし、国民年金のみでまかなえる金額ではありませんので、月々の持ち出しが必要になる点に注意が必要です。

関連記事:ケアハウスはなぜ安い?費用が抑えられる理由と探し方のポイント

老人ホームの入居にかかる費用

老人ホームの入居にかかる費用は、初期費用と月額費用に分けられます。初期費用は入居前にかかる費用で、月額費用は入居後に毎月請求される費用です。

老人ホームと呼ばれる施設は、民間施設と公的施設に分けられます。民間施設は事業者が運営する施設で、事業者の方針によって設備やサービス内容が異なります。手厚いケアや設備が整っている施設ほど、初期費用や月額費用が高額になります。

初期費用の目安は0〜数億円と幅があります。初期費用を無料にする代わりに月額費用が高くなるケースや、娯楽設備が充実している有料老人ホームもあります。

月額費用は特別養護老人ホームやケアハウスのような公的施設で5〜20万円、住宅型有料老人ホームをはじめとする民間施設では10~40万円が目安です。

公的施設は初期費用がかからず、高額な料金を支払う必要がないため、費用に不安がある場合に向いています。

【種類別】老人ホームの費用

老人ホームには公的・民間それぞれで施設が用意されています。

特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・ケアハウス・サービス付き高齢者向け住宅・住宅型有料老人ホーム・介護付き有料老人ホーム・グループホームについて、必要な費用を詳しくみていきましょう。

特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホームは公的施設の一種で、初期費用がかからない比較的安価な高齢者向け施設です。

初期費用はかかりませんが、月額費用として以下の費用がかかります。※

【特別養護老人ホームにかかる費用】

  • 施設サービス費
  • 居住費
  • 食費
  • 日常生活費

月額費用の目安はユニット型で6.8~15万円、多床室の場合は4.4〜12万円です。

※(参考:厚生労働省「どんなサービスがあるの? - 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」) 

介護老人保健施設(老健)

介護老人保健施設は公的施設の一種で、初期費用がかからず在宅復帰をサポートする施設です。

初期費用はかかりませんが、月額費用として以下の費用がかかります。※

【介護老人保健施設にかかる費用】

  • 施設サービス費
  • 居住費
  • 食費
  • 日常生活費

月額費用の目安は8~20万円です。介護老人保健施設にも個室と多床室が存在し、個室ほど高額に設定されます。高額なプランでは20万円までを目安としてください。

※(参考:厚生労働省「どんなサービスがあるの? - 介護老人保健施設(老健)」) 

ケアハウス

ケアハウスは公的施設の一種で、A〜C型と都市型の5タイプが存在する高齢者向け施設です。

初期費用として0〜30万円がかかり(施設によって異なる)、月額費用として以下の費用がかかります。※

【ケアハウスにかかる費用】

  • サービスの提供に要する費用
  • 居住費
  • 生活費
  • 管理費
  • 介護保険サービス費
  • その他(日常生活費やサービス費など)

5タイプに分類されるケアハウスは、入居者の要支援・要介護度の程度や有無によってサービスが変わります。

サービスの提供に要する費用と生活費はすべての施設で共通していますが、家賃やその他の費用は利用者や施設ごとに変動します。介護が必要な方は本人負担分として介護保険サービス費がかかります。

月額費用の目安は、A型で6.5〜15万円・B型は約4万円・都市型は9〜15万円です。ケアハウスと呼ばれるC型は一般型が6~12万円、介護型が6~20万円です。

月額4万円から提供されている軽費老人ホームB型は健康かつ自立した方のための施設です。食事サービスが付帯していないため、自炊分の食費がかかります。

※(参考:厚生労働省「住まい支援の連携強化のための連絡協議会【資料10】全国老施協説明資料」) 

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は民間施設の一種で、必要なサービスが受けられる高齢者向け住宅です。

老人ホームとは異なり、食事の提供や介護サービスの付帯はありません。

初期費用として0~数千万円の費用がかかり(施設によって異なる)、月額費用として以下の費用がかかります。※

【サービス付き高齢者向け住宅にかかる費用】

  • サービスの提供に要する費用
  • 居住費
  • 生活費
  • 管理費
  • その他(日常生活費やサービス費など)

月額費用の目安は、管理費や水道光熱費などを含めて10~40万円です。

有料老人ホームのように食事サービスが付帯していないため、オプションとして食事の提供を選ぶか(オプションが用意されている施設に限る)入居者自身による自炊を選択します。

※(参考:厚生労働省「サービス付き高齢者向け住宅について」) 

住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは民間施設の一種で、常時介護を必要としない方に適した施設です。

初期費用は0~数千万円で、平均的には73万円ほどです。月額費用として以下の費用がかかります。※

【住宅型有料老人ホームにかかる費用】

  • 居住費
  • 食費
  • 管理費
  • その他(日常生活費やサービス費など)

月額費用の目安は管理費や水道光熱費などを含めて12~30万円です。 住宅型は自立した方や自立に近い方が多く入居する施設のため、介護サービスが必要になったときはその他の費用として支払います。

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは民間施設の一種で、介護を必要とする方のために介護サービスを付帯した施設です。

初期費用は0~数千万円で、平均すると351.3万ほどです。ただし施設によっては費用がかからないケースもあるため、事前に施設へ確認をとってください。

月額費用には以下の費用がかかります。

【介護付き有料老人ホームにかかる費用】

  • 介護保険自己負担分
  • 居住費
  • 食費
  • 管理費
  • その他(日常生活費やサービス費などなど)

月額費用の目安は管理費や水道光熱費などを含めて15~30万円です。同じ有料老人ホームでも、住宅型より介護サービスが付帯している介護付き有料老人ホームのほうが費用は高く設定されています。

グループホーム

グループホームは民間施設の一種で、少人数の入居者が共同生活を送る施設です。

少人数制のため地域に密着し、認知症の方を受け入れている施設もあります。

初期費用は0~数百万円で、平均すると20万円程度です。初期費用としては他の施設よりも低額ですが、要支援2以上かつ住民票のある地域でのみ入居できるといった条件が付いています。

月額費用には以下の費用がかかります。

【グループホームにかかる費用】

  • サービスの提供に要する費用
  • 居住費
  • 生活費
  • 管理費
  • その他(日常生活費やサービス費など)

月額費用は管理費や水道光熱費などを含めて12~18万円です。ケアハウスや公的施設より月額費用が高いのは、グループホームによっては民間の事業者が管理しており、料金設定が施設により異なるためです。

老人ホームにかかる費用を抑える方法

老人ホームにかかる費用を抑えるポイントは、多床室への入居と施設選びの2点です。それぞれのポイントを詳しくチェックしていきましょう。

方法①多床室を選ぶ

多床室とは、老人福祉施設の中に設けられた相部屋を指します。一部屋あたり4人以下に定員が制限され、介護士や施設スタッフによるケアを受けながら生活するスペースです。

スペースごとにカーテンやパーテーションで仕切られており、仕切りにスライド式の扉が使われ準個室化されている介護施設もあります。

多床室は個室やユニット型の部屋よりも料金が安いため、費用面で不安な場合は多床室への入居を検討するとよいでしょう。

方法②駅から遠く築年数が古い施設を選ぶ

老人ホームの料金は、立地条件によっても変わります。送迎の必要がない利便性の高い場所にある老人ホームは、郊外の施設よりも費用が割高になる傾向にあります。

駅から多少遠く、築年数が経っていても問題ない場合は、費用の安い施設を中心に検討したいところです。

関連記事:老人ホームの入居にかかる費用は?相場と安く抑えるポイント

国民年金以外で老人ホームにかかる費用を補う方法

国民年金以外で老人ホームにかかる費用を補うには、4つの方法が挙げられます。それぞれの方法を確認していきましょう。

介護保険制度・助成制度を活用する

介護保険制度や助成制度は、介護サービスを利用する場合にかかる自己負担分を軽減するために設けられています。

【介護保険制度・助成制度】

制度・認定 内容
医療保険の減免 国民健康保険加入者が一定の要件を満たす場合、医療費を減免
介護保険料の減免 65歳以上の介護保険第1号被保険者が要件を満たす場合、介護保険料を減免
健康・医療高額療養費制度 支払った医療費が1ヶ月の上限額を超えた場合に払い戻される
高額介護サービス費 介護サービス利用時に自己負担分が1ヶ月の上限額を超えた場合に払い戻される
高額介護合算療養費 医療保険と介護保険の自己負担の合算額が高額になると超えた金額を支給
特定入所者介護サービス費 介護施設の入居者の所得や資産が一定基準以下の場合に食費や居住費を軽減
社会福祉法人等による利用者負担軽減制度 低所得で生計が困難な方に介護保険サービスの自己負担分を軽減

制度のなかには、減免前の審査や書類の提出が必要なものもあります。制度の対象に当てはまるか不明な場合は、役所や役場にお問い合わせください。

生活保護を受給する

経済的に困窮する場合は、生活保護の受給も視野に入れられます。福祉事務所や区役所の窓口で相談し、行政側で家庭調査や扶養援助の可否を確認して、保護が必要と判断されると受給が決定します。

世帯分離を行う

世帯分離とは、一つの家族が住所を同じにしたまま住民票の登録を変更し、世帯を分ける手続きです。

分離によって1世帯あたりの世帯収入が減るため、介護保険料の自己負担割合を下げたり介護保険施設の居住費や食費が下げられたりと、老人ホームにかかる費用を工面しやすくなります。

マイホームを活用する

自宅が持ち家の場合は、売却や融資によって老人ホームに入居する費用を捻出できます。 一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)が行う「マイホーム借上げ制度」を利用し、持ち家を転貸して老後資金にする方法もありますので、ぜひ参考にしてください。

施設の特徴と利用できる制度をチェック

今回は、国民年金を利用して老人ホームに入居できるかについて、施設ごとの費用の目安や、老人ホームにかかる費用を抑える方法も含めて紹介しました。

国民年金を活用して老人ホームでの生活費用をまかなうには、低額タイプの公的施設を中心に探すか、生活保護や助成制度の活用といった工夫が必要です。

年金だけですべてをカバーできなくても、施設の特徴・選び方や利用できるさまざまな制度について知っておくことで、具体的な見通しが立てやすくなります。ぜひ老後資金を考えるときに役立ててみてはいかがでしょうか。

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監修者

花尾 奏一(はなお そういち)

保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

有料老人ホームにて介護主任を10年 
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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