介護保険の地域密着型サービスとは?9つのサービス内容や利用条件、費用をわかりやすく解説

高齢になり介護が必要になっても、「できる限り住み慣れた家や地域で暮らし続けたい」と願う方は少なくありません。そうした想いを支えるために作られたのが、介護保険の「地域密着型サービス」です。このサービスは、2006年の介護保険制度改正で創設され、市区町村が管轄する身近な事業者が、その地域ならではのニーズに応じたきめ細やかなサポートを提供します。大きな特徴は、原則として事業所のある市区町村にお住まいの方しか利用できないという点です。地域密着型サービスには、「訪問」「通所」「宿泊」「入居」といった多様な形態があり、全部で9つの種類に分かれています。この記事では、それぞれのサービス内容や対象者、費用の目安、利用するまでの流れなどを分かりやすく解説します。ご自身やご家族に合った在宅生活のサポートを見つけるために、ぜひ参考にしてください。
介護保険の地域密着型サービスとは
地域密着型サービスは、高齢者が要介護状態になっても、可能な限り住み慣れた自宅や地域での生活を続けられるように支援することを目的とした介護保険サービスです。市区町村が事業者の指定や監督を行うため、より地域の特性や実情に合ったサービスが提供されやすい仕組みになっています。
住み慣れた地域での生活を支えるためのサービス
高齢化が進行する中で、多様化する高齢者のニーズに応えるため、2006年の介護保険制度改正により創設されました。全国一律の基準で提供される介護サービス(居宅サービスや施設サービス)を補完し、より柔軟できめ細やかな支援体制を築く役割を担っています。
事業所の多くは小規模で、利用者やその家族、地域住民との距離が近いのが特徴です。顔なじみのスタッフからサービスを受けることで、利用者は安心感を得やすく、地域の中で孤立することなく生活を続けることができます。
地域密着型サービスの対象となる方
地域密着型サービスを利用できるのは、原則としてサービス事業所が所在する市区町村に住民票がある方です。また、サービスの種類に応じて、「要支援1・2」または「要介護1~5」の認定を受けている必要があります。
例えば、A市にある地域密着型サービスの事業所は、原則としてA市にお住まいの方しか利用できません。B市にお住まいの方は、たとえ隣接していても利用することはできない、というルールになっています。これは、地域との結びつきを重視したサービスならではの特徴です。
地域密着型サービスのメリット・デメリット
地域に根差したサービスだからこその、メリットとデメリットがあります。利用を検討する際は、両方の側面を理解しておくことが大切です。
メリット
- きめ細やかなケアを受けやすい
- 利用定員が少ない小規模な事業所が多いため、スタッフの目が行き届きやすく、一人ひとりの心身の状態やニーズに合わせた個別性の高いケアを期待できます。
- 顔なじみの関係を築きやすい
- 同じ地域の利用者やスタッフと接する機会が多く、アットホームな雰囲気の中で安心してサービスを利用できます。
- 地域の特性に応じたサービス
- 市区町村が事業者を指定するため、その地域の高齢者人口やニーズに合わせた独自のサービス展開がなされている場合があります。
デメリット
- 他の市区町村に引っ越すと利用できない
- 原則として、住民票のある市区町村の事業所しか利用できないため、引っ越しをした場合は、それまで利用していたサービスを継続できなくなります。
- 事業所の選択肢が限られる場合がある
- お住まいの地域によっては、希望するサービスの事業所数が少なかったり、人気が高く空きがなかったりする場合があります。
- 費用が割高になることがある
- 小規模で手厚い人員配置がされているサービスは、一般的な居宅サービスに比べて費用がやや高めに設定されていることがあります。
居宅サービスとの違い
自宅で生活しながら利用する介護サービスには、地域密着型サービスのほかに「居宅サービス」があります。代表的なものに、訪問介護(ホームヘルプ)や通所介護(デイサービス)などがあります。両者の最も大きな違いは、サービスを利用できるエリアです。
| 地域密着型サービス | 居宅サービス | |
|---|---|---|
| 利用できるエリア | 原則、事業所のある市区町村の住民のみ | 住所地に関係なく、どの地域の事業所でも選べる |
| 管轄 | 市区町村 | 都道府県 |
| 規模 | 小規模な事業所が多い | 大規模な事業所も多い |
【種類別】9つの地域密着型サービスの内容と費用
地域密着型サービスは、利用者の多様なニーズに応えるため、大きく分けて「複合型」「訪問型」「通所型」「認知症ケア専門」「入居型」の5つのタイプ、全9種類のサービスがあります。
※ここに記載する費用は、自己負担割合が1割の場合の一般的な目安です。お住まいの地域区分(都市部など)、各事業所の人員体制やサービス提供内容による「加算」、利用するサービス内容や回数によって変動します。
複数のサービスを組み合わせた複合型サービス
「通い」「訪問」「泊まり」などを柔軟に組み合わせて、顔なじみのスタッフから一体的に受けられる利便性の高いサービスです。
小規模多機能型居宅介護
- サービス内容
- 事業所への「通い(デイサービス)」を中心に、必要に応じてスタッフが自宅に来てくれる「訪問(ホームヘルプ)」、事業所に「泊まり(ショートステイ)」の3つのサービスを一体的に受けられます。
- 対象者
- 要支援1・2、要介護1~5 の方。
- 費用の目安(1割負担)
- 月額 約4,000円~28,000円(要介護度による定額制)+食費・宿泊費など。
看護小規模多機能型居宅介護
- サービス内容
- 小規模多機能型居宅介護のサービスに加えて、看護師による「訪問看護」も利用できます。「かんたき」とも呼ばれ、医療的ケアが必要な方でも安心して在宅生活を送れるよう支援します。
- 対象者
- 要介護1~5 の方。
- 費用の目安(1割負担)
- 月額 約5,000円~30,000円(要介護度による定額制)+食費・宿泊費など。
自宅に訪問してもらう訪問型サービス
24時間体制で自宅での生活を支える、訪問に特化したサービスです。
夜間対応型訪問介護
- サービス内容
- 夜間帯(おおむね午後10時~午前6時)に特化した訪問介護サービスです。定期的に自宅を訪問する「定期巡回」と、急に具合が悪くなった時などに通報システムでスタッフを呼べる「随時対応」があります。
- 対象者
- 要介護1~5 の方。
- 費用の目安(1割負担)
- 月額 約1,000円(基本料)+利用したサービスの費用(出来高制)。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- サービス内容
- 介護スタッフと看護師が連携し、24時間365日体制で「定期的な訪問」と「随時の対応」を行います。日中・夜間を問わず、介護と看護の両面から一体的なサービスを受けられるのが特徴です。
- 対象者
- 要介護1~5 の方。
- 費用の目安(1割負担)
- 月額 約6,000円~30,000円(要介護度やサービス提供体制による定額制)。
施設に通って利用する通所型サービス
小規模な施設に通い、日帰りでサービスを受けます。
地域密着型通所介護(デイサービス)
- サービス内容
- 利用定員が18人以下の小規模なデイサービスです。食事や入浴といった生活支援のほか、体操などの機能訓練、レクリエーションなどを通じて、心身機能の維持向上や社会的な孤立感の解消を図ります。
- 対象者
- 要介護1~5 の方。
- 費用の目安(1割負担)
- 1回あたり 約400円~1,200円(利用時間や要介護度による出来高制)+食費など。
認知症の方を専門にケアするサービス
認知症の特性に配慮した専門的なケアを提供します。
認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)
- サービス内容
- 認知症の方を専門に受け入れるデイサービスです。認知症ケアの専門知識を持つスタッフが、利用者の状態に合わせた対応を行い、穏やかに安心して過ごせる環境を提供します。
- 対象者
- 要支援1~要介護5 の認定を受けた認知症の方。
- 費用の目安(1割負担)
- 1回あたり 約800円~1,300円(利用時間や要介護度による出来高制)+食費など。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- サービス内容
- 認知症の高齢者が、5人~9人の少人数を1ユニットとして共同生活を送る住居です。家庭的な雰囲気の中、専門スタッフの支援を受けながら、自立した生活を目指します。
- 対象者
- 要支援2~要介護5 の認定を受けた認知症の方。
- 費用の目安(1割負担)
- 1日あたり 約800円~850円(要介護度による定額制)+家賃・食費・光熱費など。
施設に入居して利用するサービス
小規模な施設に入居し、24時間体制で介護を受けられます。
地域密着型特定施設入居者生活介護
- サービス内容
- 利用定員が29人以下の小規模な「介護付き有料老人ホーム」や「軽費老人ホーム」などです。食事、入浴などの介護サービスや機能訓練を包括的に提供します。
- 対象者
- 要介護1~5 の方。
- 費用の目安(1割負担)
- 1日あたり 約550円~850円(要介護度による定額制)+家賃・食費・管理費など。
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
- サービス内容
- 利用定員が29人以下の小規模な「特別養護老人ホーム(特養)」です。常時介護が必要な方が入所し、日常生活の世話や機能訓練、看取りまでのケアを受けられます。
- 対象者
- 原則として要介護3~5 の方。
- 費用の目安(1割負担)
- 1日あたり 約600円~900円(要介護度や居室タイプによる定額制)+居住費・食費など。
地域密着型サービスを利用するまでの流れ
地域密着型サービスを利用するには、いくつかのステップを踏む必要があります。
1. 要介護認定の申請
介護保険サービスを利用するには、大前提としてお住まいの市区町村から「要介護(要支援)認定」を受ける必要があります。お住まいの市区町村の介護保険担当窓口や、地域包括支援センターで申請手続きを行いましょう。
2. ケアプラン作成の依頼
要介護認定の結果が通知されたら、担当窓口に連絡して相談します。
- 要介護1~5と認定された方
- 居宅介護支援事業所を選び、所属するケアマネジャー(介護支援専門員)にケアプラン作成を依頼します。
- 要支援1・2と認定された方
- 地域包括支援センターに連絡し、担当職員に介護予防ケアプランの作成を依頼します。
3. ケアプランの作成
担当者がご本人やご家族と面談し、課題や要望を整理します。その内容に基づき、どの地域密着型サービスを、どのくらいの頻度で利用するかなどを盛り込んだ「ケアプラン」を作成します。
4. サービス事業者との契約
作成されたケアプランに沿って、利用するサービス事業所を決定します。事業所の見学などを行い、サービス内容や雰囲気をしっかり確認した上で、事業者と直接利用契約を結び、サービスの利用がスタートします。
地域密着型サービスに関するよくある質問
Q1. 地域密着型サービスは他の市町村でも利用できますか?
A. 原則として、利用できません。お住まいの市区町村の住民であることが利用の条件です。ただし、市区町村によっては、特別な事情がある場合や、隣接する市町村と協定を結び、一部のサービスの相互利用を認めているケースも稀にあります。
Q2. 他の介護サービスとの併用は可能ですか?
A. サービスの種類によって異なります。「小規模多機能型居宅介護」や「看護小規模多機能型居宅介護」は、「通い・訪問・泊まり」を包括的に提供するサービスのため、ケアプランも一体で作成されます。そのため、利用中は他の訪問介護や通所介護(デイサービス)、ショートステイなどを併用することはできません。どのような組み合わせが可能かは、担当のケアマネジャーに必ず確認してください。
Q3. サービス事業者はどうやって探せばよいですか?
A. まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談するのが最も確実な方法です。地域の事業所情報に詳しいため、ご本人の希望や状態に合った事業所を紹介してくれます。また、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口で事業者リストをもらったり、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」で検索したりすることも可能です。
まとめ
介護保険の地域密着型サービスは、高齢者が要介護状態になっても、愛着のある地域で自分らしい生活を続けるための心強い味方です。訪問、通所、入居、複合型など9つの多様なサービスがあり、それぞれのニーズに合わせてきめ細やかなサポートを受けられるのが大きな魅力です。
ただし、原則としてその地域に住んでいる方しか利用できないという特徴があるため、利用を検討する際は、まずお住まいの地域にどのような事業所があるかを知ることが第一歩となります。
どのサービスが自分に合っているのか、どうやって手続きを進めたら良いのか迷ったときは、一人で悩まずにケアマネジャーや地域包括支援センター、そして私たちのような介護の専門家にご相談ください。
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監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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