老化を予防するには|和田秀樹の「介護の誤解」vol.37

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老化予防の一番の秘訣は「意欲」

私自身、50歳ころから、患者さんのためだけでなく、自分のためにアンチエイジング医学を学び続けてきた。世界抗加齢医学会副会長で、ジャッキーチェンさんなどのアンチエイジングの主治医であるクロード・ショーシャ先生からもあれこれと学び、美容皮膚科的なことも含めて、テクニックもあれこれ身に着けた。食べ方とかサプリとかいろいろな形の老化予防があることも知っているし、最近では再生医療が少しずつ注目され、NMNのような抗老化物質が出回るようになり、アンチエイジング医療が身近なものになりつつある。私自身、人々が長寿化、高齢化する以上、高齢者に若返ってもらわないと、日本の労働力不足も消費不足も改善しないし、何よりも年寄りとして生きる期間が長くなり過ぎてしまうと考えている。高齢者が若返ることで、たとえば65歳以上が高齢者のところを、75歳から高齢者ということになれば、3600万人以上いる高齢者の数が2000万人ちょっとにまで減ることになる。そういう意味で、老化予防は、日本の医学だけでなく、日本全体のためにも必須のものと考えるが、私自身15年以上、アンチエイジング医学をやってきて気づいたことがある。それは、医学的指導や処方薬、そしてサプリメントや栄養指導、運動法、美容医療などさまざまなテクニカルなことより、意欲を老化させないことが大切だということだ。意欲が若ければ、前述のように若返る方法はいくらでもあるが、意欲が老け込んでしまって、「もう年なんだからいいや」と思っている人はその恩恵を享受することができない。

意欲の低下がもたらす危険性

私は、歩けなくならないためにも、認知症の発症を遅らせるためにも、発症してからの進行を抑えるためにも身体(足腰)や頭を使うことの大切さを強調してきた。ここで難しいのは頭でそれが大切なのはわかっていても、その意欲がわかない高齢者や認知症の患者さんが少なくないことだ。だから、私のアドバイスを実行に移してくれない。免許返納にしても、急に外出の機会が減る人は少なくない。もともと意欲が衰えているので、便利なものが使えなくなると、わざわざ外に出ようとしなくなってしまうのだ。実は、このような意欲の老化は、早い人だと40代から始まり、50代だとそうなっている人が珍しくない。昔ほどガツガツ仕事をしようとか、他人に勝ちたいという気が薄れてくる。定年までの間は、休みたいほど体調が悪かったり、意欲が落ちているわけでないから、それでも会社に行くし、歩行もするし、会社での会話もするから、歩行機能にしても、知能にしても、そうは衰えない。しかし、定年で会社に行く必要がなくなると意欲低下は顕在化する。経済的に切羽詰まってないと、仕事を探す気になれず、出歩く気にもなれず、一日中と言っていいほど外に出ない日が続く人が珍しくないという。意欲がなくても強制力があれば外にでるが、それがないと出ないのだ。これでは、どんどん足腰が衰えていくし、認知機能も衰えていく。

使わないと急速に衰えるのが「老化」

若いころと歳をとってからの一番の違いは、使わなかったときの衰え方だ。若いころであれば、引きこもり生活で、ずっと部屋の外に出ないような子供でも、歩けなくなることはない。スキーで骨を折って、一か月ベッドで寝たきりになってしまっても、骨がつながれば翌日から歩ける。しかし、高齢者はコロナ禍のときのように、ずっと外に出ない生活をしていると、フレイルという虚弱状態に陥るし、ひどい場合は、要介護状態になってしまう。風邪をこじらせて一か月も寝たきりになってしまうと、リハビリをしないと歩けないようになってしまう。若いころは頭を使わずフラフラしていてもボケることはないが、歳をとると人と会わずにぼんやりしている日が続くとボケたようになることは珍しくない。使わなかったときの衰え方が激しいのであれば、意欲が衰えて使うのがおっくうになるとその後の老化は激しくなるということだ。

なぜ意欲は老化するのか?4つの医学的要因

ところが、高齢になると(50代くらいから)、意欲の老化が起こりやすい。

1. 前頭葉の萎縮

一つには、意欲を司る前頭葉という脳の部位が40代くらいから目立ち始めるということがある。実際、CTやMRIなどの画像診断では、40代くらいから前頭葉の萎縮が見えるようになることが多い。実は、これは記憶を司る海馬などより先に目立つものだ。記憶力が落ちても実害は意外に少ないが、意欲が落ちると老化は確実に進む。フレイルと言われる虚弱状態や、要介護状態を予防するためにも、あるいはそうなってからの進行を遅らせるためにも意欲を保つことは大切だ。

2. セロトニンの減少

そのほかにも、実は高齢者には意欲を低下させる要因がいくつもある。たとえば、セロトニンという神経伝達物質の減少だ。セロトニンというのは「幸せホルモン」ともいわれる脳内物質で、これが多いと幸せな気分になり、意欲も保たれる。逆にそれが足りなくなると、不安感が高まったり、痛みに敏感になったりする。そして、それが本格的に足りなくなるとうつ病になるとされる。一般人口の3%がうつ病とされると、高齢者になるとそれが5%になる。これはセロトニンの分泌の減少が原因と考えられている。実際、高齢者のうつ病は、脳内のセロトニンを増やす薬を使うと改善することが多い。

3. 動脈硬化

また、動脈硬化も意欲低下、自発性低下の原因となる。動脈硬化は心筋梗塞や脳梗塞の原因となるので、中高年のうちから体重を落としたり、コレステロール値を落とすなど、予防に努める人は少なくない。ただ、残念なことだが、これも老化現象のようで、私が以前勤めていた浴風会病院という高齢者専門の総合病院での年間100例程度の解剖所見をみると70代以上で動脈硬化が身体中どこにもない人はほとんどいなかった。いくら予防に努めても、歳をとると動脈硬化になるのだ。動脈硬化というのは血管の壁が厚くなり、血管の通る内腔が狭くなる状態だ。要するに血の巡りが悪くなる。脳は細い血管が多いので、よけいに血流の悪さの影響を受ける。すると、意欲が落ちてしまうのだ。

4. 男性ホルモンの減少

前頭葉の委縮、セロトニンの減少、動脈硬化に加えて、とくに男性の意欲低下につながるのが、男性ホルモンの減少だ。男性ホルモンというと性欲のホルモンのように思われがちだが、男性ホルモンの分泌が減ると性欲だけでなく、意欲も全般的に衰える。また男性の場合、異性である女性への関心も低下する。魅力的な女性をみても、興味がわかないのだ。これも夫婦円満につながるのだろうが、厄介なことに女性だけでなく、人間への関心が落ちてしまって、人付き合いがおっくうになってしまう。実は、女性の場合、閉経後に男性ホルモン(これは女性にも存在する)の分泌が増えることが明らかになっている。歳をとると、意欲的にいろいろなサークルに参加する女性が増えるのは、男性ホルモンのおかげなのだろう。実際、高齢者の団体旅行というとたいがいが女性のグループである。実は、男性ホルモンが減ると意欲や人付き合いだけでなく、記憶力がおちることもわかっている。脳内のアセチルコリンという記憶を司る神経伝達物質が男性ホルモンが減ると減ってしまうからだとされている。また男性ホルモンが加齢で減ると筋肉が落ち、脂肪が増えることも知られている。逆に男性ホルモンが増えると筋肉も増える。三浦雄一郎さんは男性ホルモンの補充治療で80代でエベレスト登頂を達成された。いずにせよ、男性ホルモンは加齢とともに分泌が減少するので、とくに男性は意欲低下になりやすいのだ。逆に年をとっても男性ホルモンの分泌が多い人は、意欲も保たれる。渋沢栄一などは68歳にして子供ができたし、その後も愛人が何人かいたといわれるが、晩年まで意欲的に事業を拡大したことが知られている。それは現在ではほめられたことではないのだが、やはり男性ホルモン値を高く保つことが意欲の老化を防ぐことは医学的事実として認めざるを得ない。

意欲の老化に抗うための対策

ということで、私は老化予防の本質というのは、意欲を保つことだと考えるようになったが、前頭葉の老化もセロトニンの減少も動脈硬化もそして男性ホルモンの減少も、残念ながら歳をとると必ず起こると言っていいものだ。ただ、医学や栄養学の知見である程度の対策ができることも確かだ。動脈硬化の予防はあれこれ言われているが実際には難しい。脳内のセロトニンの減少は、うつ病の薬で補うことはできる。男性ホルモンの減少もホルモン補充治療は保険診療でも可能だ。ただ、セロトニンの減少や男性ホルモンの減少はその材料を増やすという、栄養学でもある程度は対応できる。セロトニンの材料はトリプトファンというアミノ酸で、たんぱく質をたくさん摂ることでセロトニンがある程度増えることは期待できる。男性ホルモンの材料はコレステロールだ。そういう点では歳をとってからコレステロール値を下げることを私はお勧めしていない。前頭葉の老化予防については以前にも少し触れたが、次回にでも説明したい。私は脳トレといわれるものより、はるかに認知症予防に役立つと信じている。

著者

和田 秀樹(わだ ひでき)

国際医療福祉大学特任教授、川崎幸病院顧問、一橋大学・東京医科歯科大学非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック院長。

1960年大阪市生まれ。1985年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科、老人科、神経内科にて研修、国立水戸病院神経内科および救命救急センターレジデント、東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院である浴風会病院の精神科医師を歴任。

著書に「80歳の壁(幻冬舎新書)」、「70歳が老化の分かれ道(詩想社新書)」、「うまく老いる 楽しげに90歳の壁を乗り越えるコツ(講談社+α新書)(樋口恵子共著)」、「65歳からおとずれる 老人性うつの壁(毎日が発見)」など多数。

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