介護施設から自宅に戻ることはできる?在宅復帰の条件・準備・使えるサービスまとめ

施設に入所している親御さんから「家に帰りたい」と懇願され、叶えてあげたいけれど現実的に可能なのか悩んでいませんか?仕事や家庭がある中で、無理なく介護ができるのか判断するのは非常に難しいことです。
本記事では、介護施設から自宅に戻るためにクリアすべき条件や、スムーズに手続きを進めるための具体的な手順を解説します。また、在宅生活を支えるサービスや費用の目安、ご家族が共倒れしないためのポイントもあわせて紹介します。
この記事を読めば、親御さんを引き取るための準備や判断基準が明確になり、ご家族にとって後悔のない選択ができるようになりますので、ぜひご覧ください。
介護施設から自宅に戻るための3つの条件
親御さんから「帰りたい」と懇願されると、叶えてあげたい気持ちと現実的な不安の間で心が揺れることでしょう。しかし、感情だけで決断せず、本当に在宅での生活が可能かどうかを冷静な見極めが必要です。
介護施設から自宅に戻るためには、クリアすべきいくつかのハードルが存在します。ここでは、判断の基準となる「本人の状態」「介護者の状況」「自宅環境」の3つの重要な条件について解説します。
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本人の医療依存度と病状の安定性の確認
在宅復帰を検討するうえで最も基本となるのは、ご本人の病状が安定しており、自宅での生活が医学的に可能だと医師が判断していることです。入院治療が必要な状態や、ご家族だけでは対応しきれない医療処置が多いと、安全な在宅生活を維持するのが難しくなるからです。
医師や看護師と連携して、以下のポイントを確認しましょう。
- 痰の吸引やインスリンなどの処置頻度
- 食事や排泄などの日常生活動作の自立度
- 認知症の進行度や徘徊などの症状の有無
これらを総合的に判断し、必要であれば試験外泊をして、実際の生活に支障がないかを見極める必要があるでしょう。
主介護者の心身の健康と協力体制の確認
介護を担うあなた自身の心身が健康であり、周囲の協力が得られることも、在宅生活を続けるための条件です。在宅介護は精神的・体力的な負担が大きく、主介護者が一人で抱え込んでしまうと、共倒れになってしまうリスクが高まります。
実際、仕事や家事と介護の両立で疲弊してしまい、結果的に再入所を選択するケースはあとを絶ちません。また、親族間でも介護に対する意識に大きなズレがあることがよくあります。
そのため、事前にしっかりとご家族で話し合い、誰が何を負担するのかを明確にしておくことがトラブルを防ぐポイントです。訪問介護などのプロの力を借りることを前提に、特定の誰かに負担が集中しないよう、無理なく続けられる協力体制を整えましょう。
自宅環境が生活や介助に適しているかの判断
施設とは異なる自宅の環境で、ご本人が安全に動き、ご家族がスムーズに介助できるかどうかも重要な判断材料です。慣れ親しんだ家であっても、身体機能が低下した状態では、ちょっとした段差や通路の狭さが生活の大きな妨げになることがあります。
たとえば、ベッドからトイレまでの移動が安全にできるか、手すりが必要な場所はどこかなどを具体的に確認します。必要に応じて、手すりの設置や段差の解消といった住宅改修や、介護ベッドなどの福祉用具の手配も検討しなければなりません。
理学療法士や作業療法士、ケアマネジャーなどの専門家のアドバイスを受け、退所前に万全の住環境を整えておくことが成功のポイントです。
スムーズに在宅復帰するための準備手順
介護施設から自宅に戻るためには、思いつきで動くのではなく、計画的に準備を進めることがポイントです。退所直前に慌てることがないよう、入院中や入所中から早めに行動を開始しなければなりません。
ここでは、安心して在宅生活をスタートさせるための具体的な5つのステップについて解説します。
施設相談員へ退所の意思を伝え時期を調整する
在宅復帰を考えている場合、施設の支援相談員に「自宅に戻りたい」という意思をはっきりと伝える必要があります。退所後の生活を満足のいくものにするためには、施設側との早めの連携が欠かせません。
相談員は入退所の手続きや関係機関との調整をする窓口であり、スムーズな移行を支援してくれます。ご本人の病状が安定しているか、自宅での医療ケアが可能かなどを相談し、退所の時期を検討しましょう。
無理なく在宅へ移行できるよう、プロと相談しながら計画的に進めることが求められます。
居宅ケアマネジャーを選定しプランを作成する
在宅生活を支えるためには、地域の居宅ケアマネジャーを選び、具体的なケアプランを作成します。ケアマネジャーは地域の情報をもっており、条件に合う訪問介護やデイサービスの事業所を紹介してくれます。
ただし、紹介された事業所を必ず利用しなければならないわけではありません。ご本人やご家族が内容に納得できるサービスを選ぶことが、長く続く在宅介護の土台になります。
通院が難しくなる場合に備えて、自宅に来てくれる医師を探しておくなど、医療面の準備もあわせて進めておきましょう。
施設と在宅チーム合同の退所前会議を実施する
スムーズな引き継ぎのために、施設のスタッフと在宅生活を支えるチームが合同で「退所前カンファレンス」を実施します。これは主に「介護老人保健施設(老健)」などで、在宅復帰を支援するために行われる会議です。
具体的には、主治医や訪問看護師も含めた連携体制を確認し、誰がどのように支えるかを話し合います。関係者全員で情報を共有し、チーム全体で利用者を支える体制を整えることが安心につながります。
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老健(介護老人保健施設)とは?役割・費用・入所条件からスムーズな退所後の選択肢まで徹底解説
本格再開前に試験外泊して課題を洗い出す
いきなり完全な在宅生活に戻るのではなく、本格的な退所前に1週間ほどの「試験外泊」をすることをおすすめします。実際に自宅で過ごしてみることで、ご本人やご家族が無理なく生活できるかどうかを具体的に確認できるからです。
ただし、施設によっては外泊中も家賃などの費用がかかることや、期間のルールが決まっている場合があります。トラブルを防ぐためにも、費用の扱いや外泊できる日数を事前に施設へ確認しておくと安心です。
試験外泊で見つかった課題をケアマネジャーに伝え、在宅復帰を万全の状態で迎えられるようにしましょう。
住宅改修や必要な福祉用具を手配する
低下した身体機能にあわせて、自宅の環境を物理的に整備することも忘れてはいけません。工事や手続きには時間がかかるため、退所日が決まるのを待たずに、退所の目処が立った段階から早めに準備を始めましょう。
手すりの設置や段差の解消、介護ベッドの導入などは、介護保険を利用することで費用負担を大幅に抑えられる場合があります。制度を賢く利用するためにも、ケアマネジャーなどの専門家に相談し、適切なアドバイスをもらうことが欠かせません。
ご本人が使い慣れた家具を置くなど、精神的に落ち着ける環境を作ることも意識してみましょう。
在宅生活を支える介護・医療サービス一覧
在宅介護はご家族だけで抱え込む必要はなく、さまざまなプロの力を借りることで成り立ちます。介護施設から自宅に戻る際は、どのような支援が受けられるのかを事前に把握しておくとよいでしょう。
自分たちに合ったサービスを組みあわせることで、無理のない生活設計が可能になります。ここでは、在宅生活を支える代表的な3つのサービス形態について解説します。
ヘルパーや看護師が自宅に来る訪問系サービス
自宅での生活を長く続けるためには、専門職が家に来てくれる訪問サービスを積極的に活用しましょう。食事や入浴の介助だけでなく、医療処置やリハビリまで自宅で完結できれば、通院や外出の負担を大きく減らせます。
具体的には、目的に応じて以下のようなサービスがあります。
- 訪問介護:食事や入浴などの生活支援
- 訪問看護:点滴や床ずれなどの医療処置
- 訪問診療:医師による定期的な診察
- 訪問リハビリ:自宅環境での機能訓練
プロが定期的に自宅を訪問すると、ご本人の小さな変化にも気づきやすくなり、安心して療養生活を続けられるでしょう。
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デイサービスなど施設に通う通所系サービス
日中に施設へ通ってケアを受けるサービスは、ご本人の気分転換とご家族の休息の両方に大きな効果があります。家に閉じこもりがちになると心身の機能が低下しやすく、介護者も一人の時間がもてずに疲弊してしまうリスクがあるからです。
「デイサービス」では食事や入浴、レクリエーションを通じて他者との交流を楽しめます。一方「デイケア」は老健などで実施され、理学療法士による専門的なリハビリに特化しているのが特徴です。
ご本人の状態や目的にあわせて使い分けることで、生活にメリハリが生まれ、心身の活性化につながります。
短期間施設に宿泊できるショートステイ
冠婚葬祭や介護者の休息が必要なときは、施設に短期間宿泊できるショートステイをためらわずに利用しましょう。在宅介護は休みがなく続くため、ときにはご家族が介護から離れてリフレッシュする時間を作ることが、共倒れを防ぐために不可欠です。
主に、介護中心の「短期入所生活介護」と、医療処置も可能な「短期入所療養介護(医療型ショートステイ)」の2種類から選べます。点滴やインスリン注射などが必要な場合でも、医師や看護師がいる「医療型」なら安心して預けられます。
いざというときの避難場所としても機能するため、ケアマネジャーと相談して事前に利用できる施設を探しておきましょう。
参考:厚生労働省『
』
在宅復帰の費用に関する注意点

「介護施設から自宅に戻る」ことを決断する前に、避けて通れないのがお金の問題です。一般的に在宅のほうが費用を抑えられるといわれますが、要介護度が高くサービスの利用が多い場合は、施設より割高になることもあります。
後悔しないために、在宅でかかる具体的な費用と、施設との違いを正しく理解しておきましょう。
在宅生活で発生する医療・介護費を試算する
在宅での生活には、主に「介護サービス費」「医療費」「生活費」の3つがかかります。介護保険サービスの利用料は、所得に応じて1割から3割が自己負担となり、医療的なケアが必要な場合はその分の費用も上乗せされるためです。
具体的には、ヘルパーや訪問看護の利用料に加え、往診してくれる医師への診療費や、インスリンなどの薬剤費が必要です。また、手すりの設置や介護ベッドの導入といった初期費用もかかりますが、これらは介護保険を使うことで負担を大きく減らせる場合があります。
まずはケアマネジャーに毎月の費用の目安を試算してもらい、支払いのイメージを把握することから始めましょう。
施設費用との差額や家計への影響を比べる
現金の支出だけで比べると、施設よりも在宅介護のほうが費用を安く抑えられる傾向にあります。施設では介護費用のほかに、家賃や食費、管理費などが毎月固定でかかりますが、持ち家の在宅介護ではそれらが発生しないからです。
しかし、要介護度が高くなり、訪問介護や看護などのサービスを頻繁に利用すると、結果的に施設費用を上回る可能性があります。また、ご家族が介護のために仕事を休んだり辞めたりして、収入が減ってしまうリスクも考慮しなければなりません。
目に見える出費だけでなく、家計全体の収入と支出のバランスも含めて慎重に比較する必要があるでしょう。
支給限度額を超えた場合の自己負担も把握する
介護保険には負担を軽くする制度がありますが、仕組みが少し複雑なため、正しく理解しておく必要があります。まず、介護保険で使えるサービスの量(支給限度額)は「要介護度」によって決まっており、この上限を超えて利用した分は全額自己負担です。
一方で、毎月の自己負担額(1~3割分)の合計が高額になった場合は「高額介護サービス費」という制度が利用できます。これは「所得」に応じて毎月の上限額が決まっており、それを超えた分が払い戻される仕組みです。
また、所得が低く預貯金なども一定額以下の方には、ショートステイ利用時などの食費や部屋代が安くなる「介護保険負担限度額認定」という制度もあります。おむつ代などの実費は原則自己負担となるため、ケアマネジャーと相談して無理のない資金計画を立てましょう。
参考1:厚生労働省『
』
参考2:大阪市『
』
誰に連絡し、どう動くかを事前に決めておくことで、ご家族は落ち着いて対処できるようになります。
家族だけで抱え込まずプロに頼る意識をもつ
在宅介護を長続きさせる鉄則は、ご家族だけで完結させようとせず、プロの力を積極的に借りることです。親子間でも介護に対する意識にはズレがあり、無理に背負い込むと精神的にも肉体的にも限界が来てしまいます。
共倒れを防ぐために、以下の意識をもつようにしましょう。
- ショートステイで休息を確保する
- 早期にケアマネジャーへ相談する
- 親族間で役割分担を決めておく
「家族だから」という責任感よりも、プロに任せてお互いの笑顔を守るという意識転換が、長く続ける秘訣です。
再入所を検討する限界ラインを事前に決める
無理をして限界を超えてしまう前に「どうなったら再入所を検討するか」という撤退の基準を決めておくことが不可欠です。ご本人の状態変化や介護者の事情により、在宅生活の継続が難しくなるケースは決してめずらしくありません。
たとえば、介護をするご家族の体調が悪化したり、医療処置が増えて自宅での対応が難しくなったりした場合が挙げられます。また、資金計画を超えて家計への負担が大きくなったときも、見直すべきタイミングといえるでしょう。
施設に戻ることは「介護の失敗」ではありません。状況が変われば柔軟に決断することが、お互いの生活を守ります。
介護施設から自宅に戻る際によくある質問
いざ「介護施設から自宅に戻る」と決めても、本当にやっていけるのか、もしものときはどうすればいいのかと、疑問は尽きないものです。不安を抱えたままスタートするのではなく、想定されるリスクや対処法を事前に知っておくことで、落ち着いて判断できるようになります。
ここでは、在宅復帰を検討する際によくある3つの質問にお答えします。
在宅生活が困難になったら再び施設に入所できる?
結論からいえば、一度自宅に戻ったあとでも、生活が難しくなった場合は再び施設へ入所できます。老人ホームなどの契約は基本的に自由意志によるものであり、一度退去したからといって再入所入居を制限される法的な決まりはありません。
実際に、病状の進行や介護をするご家族の限界により、在宅生活を断念して再入所を選択するケースはあります。老健などの相談員に次の施設を探してもらったり、一時的にショートステイを利用して体制を立て直したりすることも可能です。
施設に戻ることは決して悪いことではないため、ご本人とご家族の生活を守るための前向きな選択肢と考えましょう。
認知症で徘徊がある親でも引き取ることは可能?
認知症による徘徊がある場合でも自宅へ引き取ることは可能ですが、安全を守るための環境づくりとサービスの活用が欠かせません。住み慣れた家に戻ることで症状が落ち着く場合もありますが、ご家族だけで24時間見守るのは現実的に難しいといえます。
引き取りを成功させるためには、以下の対策を講じてみましょう。
- 本格的な再開の前に試験外泊をして様子を見る
- デイサービスなどを使いご家族の負担を減らす
- 玄関にセンサーをつけるなどの対策をする
ただし、試験外泊の間も施設の家賃や管理費がかかることが多いため、費用や期間のルールを必ず事前に確認してください。これらを試しても安全確保が難しい場合は、認知症ケアに特化したグループホームなどを検討するのも一つの方法です。
施設側から退所を反対された場合はどうすればいい?
もし施設側から退所を反対されたら、まずは医師やスタッフから「なぜ無理なのか」という具体的な理由を聞き出す必要があります。施設には利用者の安全を守る義務があるため、医学的な根拠や介護力のリスクを心配して慎重な判断をしていることが多いからです。
たとえば、夜間の医療ケアが心配なら、訪問看護を利用することで解決できるとケアマネジャーを通じて説明します。また、1週間だけ試験外泊をして、実際に自宅で問題なく過ごせることを実績として示すのも効果的です。
この際も、外泊中の費用負担や日数の制限について施設側とよく話し合い、後からトラブルにならないよう注意しましょう。準備不足のまま強行するのは危険なので、専門家の意見を参考にしつつ、現実的なプランを練りましょう。
まとめ
親御さんの「家に帰りたい」願いを叶えるためには、感情だけで動かず、冷静な計画と準備を進める必要があります。介護施設から自宅に戻るには、ご本人の病状の安定、ご家族の協力体制、自宅環境の安全性を含めた3つの条件をクリアしなければなりません。
まずは施設の相談員やケアマネジャーに率直な気持ちを伝え、試験外泊などを試して現実的な生活のイメージをつかんでみてください。介護はご家族だけで抱え込まず、訪問看護やデイサービスといったプロの力を借りれば、無理なく長く続けられるようになります。
もし今後の介護方針に不安を感じたり、改めて施設を探したいとお考えの場合は、ひとりで悩まず『笑がおで介護紹介センター』へご相談ください。専門のアドバイザーがあなたの悩みに寄り添い、ご家族全員が納得できる生活を送れるよう、親身になってサポートいたします。

このコラムの監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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