うつ病になりにくいものの見方を身につける|和田秀樹の「介護の誤解」vol.9

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認知療法といううつ病の予防法

前回、うつ病の予防、とくにセロトニンの分泌を保つ方法をお伝えした。
もちろん、これは大切なうつ病の予防法だが、もう一つの大切なうつ病の予防法として、ものの見方を変えている、ものの考え方を変えていくというのがある。
うつ病の治療法としては、基本的には脳内のセロトニンを増やす薬を使った薬物療法が知られているが、もう一つの大切な治療法が、認知療法と言われる患者さんのものの見方、考え方のパターンを変えていく治療がある。
たとえば、うつ病になると、物事を悲観的にしか考えられなくなる。
配偶者を亡くした際に、「私はこれから一生孤独だ」「二度と配偶者を得ることなどない」と思い込んでしまうようなパターンだ。
これでは、絶望してしまって、最悪、死を選ぶようなことになりかねないし、そこまでいかなくても、鬱気分がなかなかよくはならない。
よくマイナス思考をプラス思考に変えればいいとかいうが、さすがに配偶者を失った人に、これからはいろいろなチャンスがあって、幸せになれるなどと信じさせようとしても、さすがに無理がある。
そこで、これから一生孤独かもしれないけど、そうでない可能性もあるという風にわからせる、思わせるというのが、うつ病のカウンセリングでは大切になる。
こうに決まっているという決めつけから脱却させ、ほかの可能性も考えられるように仕向けていくのだ。
これが認知療法という心の治療法の基本パターンである。

うつ病の治りにくい「不適応思考」

さて、この治療法はうつ病になった患者さんの治療法ではあるが、うつ病になりやすく、うつ病になった時に治りにくくなる思考パターン=不適応思考というものを想定している。
逆に言えば、うつ病になる前に、この不適応思考がある人は、それを是正することで、うつ病の予防ができることになる。
この治療法を開発したアーロン・ベックという精神医学者と、アーサー・フリーマンという心理学者がいくつかの不適応思考のパターンを提唱している。

その①「二分割思考」

その中の一つ目のものが、「二分割思考」といわれるものだ。
要するに、人のことなどを敵か味方、正義か悪という風に単純に二つにわける考え方だ。この場合、白と黒の間のグレーが認められない。
すると味方と思っていた人がちょっと自分の批判をすると、この人は敵になったというような認知を行ってしまう。
100%意見が一致しているわけでなく、20%くらいは違うとことがあるという考え方ができないのだ。
当然、ちょっと意見が合わないだけで敵になったと思うわけだから、鬱になる原因にしょっちゅう遭遇することになる。
ものごとや人を判断するときに、白と黒とか、味方と敵のような二分割で判断せずにグレーを認めることができて、この人はグレーが濃い、この人は白に近いというものの見方ができるようになれば、うつ病のリスクはかなり下がるはずだ。

その②「かくあるべし思考」

次に危険な思考パターンとされているものが、「かくあるべし思考」と言われるものだ。
仕事は終わるまで帰ってはいけない、親を老人ホームにいれるのは残酷なことで子どもは最期まで親を在宅で看なければいけないというようなパターンだ。
このような思考パターンをもっていると、それができないとき時、できなくなった時に自分を激しく責めてしまったり、「自分はダメな人間だ」と思ったりして、鬱になりやすい。
あるいは、高齢になると能力が落ちてきて、「かくあるべし」(たとえば、人に頼らず自立生活を送らなければならない)と思ってきたことができなくなることは珍しいことではない。
そういう際にも「自分はダメになった」と思ってしまって、鬱に陥ることは少なくない。
人間というものは、だんだん衰えてくる生き物で理想通りにいかないと思えることで、うつになるリスクはかなり下がる。
ついでにいうと、この手の「かくあるべし」の思考パターンのある人は、他人が「かくあるべし」の通りに動かなかった際にも、不快になってしまうし、場合によっては叱責したり、非難したりする。
これによって、ブラック上司と呼ばれたり、友達の少ない人間になりかねない。
まじめな人ほど、この手の「かくあるべし」に縛られやすいが、その自己モニタリングはメンタルヘルスのためにも対人関係のためにも重要だ。

その③「過度の一般化」

「過度の一般化」というのも、よく見られる不適応思考だ。
たった数件の高齢者の交通死亡事故があると、高齢者全てが危ないように考える(実際は75歳以上でも死亡事故を起こすのは年に1万人に一人くらいである)というようなパターンだ。
こういう人は、相手がちょっとあいさつしないくらいで、「この人は、自分のことを嫌いになったのだ」と思ったりする。
「犬が人間を噛んでもニュースにならないが、人間が犬を噛むとニュースになる」と言われるくらい、ニュースというのは珍しいことを取り上げるものだ。
このような確率の低いものにいちいち不安になっていると心の休まる間がない。あるいは、相手だって、常に好意を示すような対応をしてくれるわけではない。
ちょっとくらい悪いところや合わないところがあっても、それがすべてでないと思えるだけで心の余裕はずいぶん違うはずだ。

その④「読心」

「読心」というのもある。
相手の気持ちを勝手に決めつけるパターンだ。
たまたま、ちょっと返事をしなかったとか、ちょっと仏頂面をしているだけで、この人は自分を嫌っていると決めつけて、それが事実であるかのように思い込むパターンだ。
たまたま、気がつかなかっただけとか、家で嫌なことがあっただけかもしれないのに、それが想定できない。
こういう人は、ちょっと気に入らない対応をされただけで、この人は敵だとか、自分が嫌われていると思ってしまうので、どんな職場にいても、とても居心地が悪いものになる。
これでは、普通の人より鬱になりやすいのは、当然のことと言っていい。

その⑤「占い」

「占い」というものもある。
先のことを勝手に予想して、それが事実のように思い込んで疑えなくなる思考パターンだ。
自分にはこれからいいことはないとか、この会社では絶対に出世できないという思い込みが100%正しいと思ってしまう上に、ほかの可能性が考えられないのだから落ち込むのは当たり前だ。
あるいは、前述のようにうつ病になってからでも、悲観的な考え方が修正できないし、ほかの可能性が考えられないから、うつがどんどん悪くなってしまう。
自分の「占い」はあくまでも「占い」であって事実ではない。
ほかの可能性も起こり得ると考えられるようになることで、うつ病になりにくくなるし、うつ病になった際も治りやすくなる。

その⑥「完全主義」

フリーマンはあまり注目していなかったようだが、私の見るところ日本人に多い、うつ病になりやすい思考パターンに完全主義がある。
90点でもいいやと思えないのだ。
すると、自分のちょっとした欠点やミスが許せなくなるので、うつ病になりやすい。
とくに、この完全主義が二分割思考のある人に付け加わると、100点でなければすべてダメと思ってしまうから、99点の自分まで許せなくなってしまう。
常に自分に満足できない(たまに満点の出来のときもあるだろうが、その次が99点でも許せないから、やはり落ち込むことは多い)のだから、かなりうつ病になりやすい思考パターンと言えるだろう。

認知療法は再発が少ない

自分の合格点を決めて、これだけできれば十分と思えるように思考パターンを変えていかないと世の中はわたっていけない。
このようなさまざまな不適応な思考をカウンセリングの中で見つけ出してうつ病の治療をするのが認知療法と言われるものだが、薬による治療より再発が少ないとされる。
つまり、自分のまずい思考パターンを改めていければ、うつ病は予防できる可能性が高いのだ。
テレビを見ていると、敵と味方とか、正義と悪とか単純な「二分割思考」を当たり前のようにインテリとされるコメンテーターがするし、人の心を勝手に決めたり、将来を勝手に決める、「読心」や「占い」も当たり前に行われる。
有名人が、不倫などしようものなら絶対に許さない「かくあるべし思考」もものすごく強いし、コロナのような病気でも、交通事故でも一人でも死ねばダメというような完全主義的な理想を目指して、それによって、どれだけほかの生活が犠牲になってもおかまいなしだ。
テレビに植え付けられた「不適応思考」を修正できるならいいが、一度身に着いたらなかなか治らないと心得て、うつ病にならないためには、触らぬ神にたたりなしで、テレビを避ける生活をするほうが、日本ではメンタルヘルスによさそうだ。
そうでなくても、外国と違って,日本はテレビ局の数が少ないから、多様な考え方より、すべての局が同じような論調で報じる(たとえば、すべての局がコロナが怖いと報じる)ために、うつ病になりやすい決めつけが強くなる危険があることも知っておいて損はない。

著者

和田 秀樹(わだ ひでき)

国際医療福祉大学特任教授、川崎幸病院顧問、一橋大学・東京医科歯科大学非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック院長。

1960年大阪市生まれ。1985年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科、老人科、神経内科にて研修、国立水戸病院神経内科および救命救急センターレジデント、東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院である浴風会病院の精神科医師を歴任。

著書に「80歳の壁(幻冬舎新書)」、「70歳が老化の分かれ道(詩想社新書)」、「うまく老いる 楽しげに90歳の壁を乗り越えるコツ(講談社+α新書)(樋口恵子共著)」、「65歳からおとずれる 老人性うつの壁(毎日が発見)」など多数。

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