ケアハウスのタイプ別特徴・入居条件と入居にかかる費用・流れを紹介

家庭での生活が困難な高齢者に対して提供される施設のうち、生活支援やその他のサービスが受けられる「ケアハウス」は、幅広い利用者の受け入れを行っている施設です。
近年では介護を必要とする方の入居も増えてきており、包括的介護の一環として、施設の中で運営されているケアハウスもみられます。
この記事では、ケアハウスの概要と他の施設との違い、サービス内容やメリット・デメリットについて紹介します。入居・生活にかかる費用や入居条件についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
ケアハウスの概要
ケアハウス(軽費老人ホーム)にはA・B・C(自立型と介護型)・都市型の5タイプがあります。厚生労働省による5つの分類ごとの入居対象と特徴を確認していきましょう。
【ケアハウス(軽費老人ホーム)の概要】
分類 | 入居対象 | 提供されるサービス | |
軽費老人ホームA型 | 自立した生活に不安がある60歳以上の方 | 食事提供・生活サービス | |
軽費老人ホームB型 | 自立した生活に不安がある60歳以上の方 | 生活サービス | |
ケアハウス (軽費老人ホームC型) |
自立型(一般型) | 自立した生活に不安がある60歳以上の方 | 食事提供・生活サービス |
介護型 | 要介護1以上の65歳以上の方 | 食事提供・生活サービス・ 施設内での介護サービス |
|
都市型軽費老人ホーム | 都市部で自立した生活に不安がある60歳以上の方 | 食事提供・生活サービス |
C型はA・B型と異なり「ケアハウス」という名称で呼ばれることが多く、バリアフリー化された施設です。自立型(一般型)と介護型に分かれており、自立型でも外部の介護サービスが利用できます。
自立型と軽費老人ホームA型は入居条件とサービスが共通していますが、A型は月収が一定水準以下でなければ入居できない所得制限があります。一方、C型は入居に所得制限が設けられていません。
都市型軽費老人ホームは、都市部に在住しており自立した生活に不安を抱える60歳以上の方を対象としています。都市部という括りがある点で、他の施設と異なっています。
関連記事:ケアハウスとは?種類や特徴・入居条件についても解説
ケアハウスと他施設の違い
ケアハウス(軽費老人ホーム)は、社会福祉法人や地方自治体が運営する公的施設です。入居前に費用を支払う必要がなく、費用がかからない点が特徴です。
他の施設との違いをみていきましょう。
【ケアハウスと他施設の違い】
施設の名称 | 施設のタイプ | 入居条件 |
ケアハウス(軽費老人ホーム) | 公的施設 | 自立〜要介護までの65歳以上(一部は60歳以上)の方 |
養護老人ホーム | 公的施設 | 生活環境や経済的に困窮した高齢者 |
特別養護老人ホーム(特養) | 公的施設 | 要介護3以上の65歳以上・特定疾病のある40〜64歳・特例が認められた要介護1,2以上で65歳以上の方 |
障害者グループホーム | 公的施設 | 原則18歳以上の障がい者・65歳までに障害福祉サービスを受けた方 |
生活支援ハウス | 公的施設 | 健康に不安がある60〜65歳以上の方 |
介護医療院 | 公的施設 | 要介護1〜5で65歳以上の方・特定疾病のある64歳以下の方 |
グループホーム | 公的施設 | 要支援2以上の65歳以上で認知症の診断を受けている方 |
有料老人ホーム(老ホ) | 民間施設 | 自立〜要介護までの60〜65歳以上の方 |
介護老人保健施設(老健) | 民間施設 | 要介護1以上の65歳以上・特定疾病のある40〜64歳の方 |
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 民間施設 | 自立〜要介護までの60歳以上の方 |
シニア向け分譲マンション | 民間施設 | 自立〜要介護までのシニア世代 |
上記の施設の多くが、自立から要介護5までの高齢者を対象としています。しかし施設ごとに受け入れられる基準が異なっており、特定疾病や特例が認められるケースもあります。
認知症や既往症、感染症をもつ方は入居が難しくなる場合があるため、受け入れ体制や医療機関との連携が整っている施設を選びましょう。
関連記事:ケアハウスと特別養護老人ホームの違いとは?注意点も紹介
ケアハウスのサービス内容
ケアハウスで提供されるサービスは大きく分けて以下のとおりです。
【ケアハウスのサービス】
- 1日3食の食事
- 生活相談員やケアワーカーへの相談
- 施設内・外部サービスの利用
- 講習会・クラブ活動・イベントの開催
5種類あるケアハウスのうち、介護型以外はいずれも自立した生活に不安を抱える方を受け入れています。
すべての施設で生活相談員やケアワーカーなどの専門スタッフに、健康状態やその他の悩みを相談できます。外部のサービスとして介護サービスが受けられます(介護型は施設内)。
施設では講習会やクラブ活動といったレクリエーションやイベントが開かれています。
ケアハウスへ入居するメリット
ケアハウスへの入居では、3つのメリットが期待できます。費用や生活の自由度、入居の継続性について詳しく確認していきましょう。
メリット①費用が安い
ケアハウスは公的施設のため、食事や生活相談が付帯していても利用料金は比較的安価です。
月額は数万円から15万円前後までの料金体系で、外部のサービスを利用しなければ費用は最小限に抑えられるでしょう。
※ケアハウスはC型のみ初期費用として保証金や入居一時金といった費用がかかります。ただし無料になるケースもあります(初期費用は入居機関によって償却され残額は返還されます)。
関連記事:ケアハウスはなぜ安い?費用が抑えられる理由と探し方のポイント
メリット②生活の自由度が高い
ケアハウスは食事がサービスとして付帯しますが、介護型以外は自立した生活が可能な入居者を受け入れているため、自由度の高い生活が送れます。
大まかな起床・就寝時間や食事時間が決まってはいるものの、スケジュール通りに一日を過ごす施設ではなく、自立した方々がそれぞれ好きなタイミングで生活を送れます。
花見や初詣といった年間行事に加えて、地域との交流会やバスツアー、施設内での誕生会やレクリエーションも開かれています。施設のスタッフや入居者同士での交流も魅力のひとつです。
メリット③要介護度が上がっても入居を継続できる(介護型の場合)
介護型以外のケアハウスは、生活に不安を抱える高齢者が主な入居対象です。要介護度が上がると、外部の介護サービスを利用するか、または施設内で介護を実施している施設へ転居しなければなりません。
一方、介護型の施設は要介護1以上・65歳以上の方であれば終身で入居が可能です。途中から転居する必要がないため、家族の元に戻る必要がなく入居を継続できます。
ケアハウスへ入居するデメリット
ケアハウスに入居する際、メリットだけではなくデメリットも確認しておきましょう。
デメリット①希望してから入居までに時間がかかる
希望するケアハウスに空きがなければ、空きが出るまで待つか、他の施設を検討します。多数の応募がある地域では入居までに時間がかかるケースも少なくありません。
デメリット②要介護度によっては退去を求められる(一般型の場合)
ケアハウスC型は、一般型と介護型に分かれています。一般型に入居した方が要介護の認定を受けたときは、介護が可能な施設へ転居するために、退去を求められることがあります。
ケアハウスの入居・生活にかかる費用
ケアハウスへの入居・生活にかかる費用は、要介護度によって異なります。自立した暮らしが可能な方は介護サービスを必要としないため、A〜C型および都市型のいずれについても介護サービス費が発生しません。
一方、介護を必要とする方は介護サービスが利用できる「C型(介護型)」を利用するか、その他の施設に入居し外部の介護サービスと契約します。要介護の状態で入居する場合、入居時点から介護サービス費が発生します。
入居時と入居後の生活にかかる費用について、それぞれ確認していきましょう。
ケアハウスの入居にかかる費用は以下のとおりです。
【ケアハウスの入居にかかる費用】
入居一時金・保証金 | 0〜30万円程度(施設によってはそれ以上) |
月額費用 | 6万円前後〜20万円程度 |
引越し費用 | 数万円〜 |
入居に際し、入居一時金や保証金といった敷金に相当する費用が発生します。ただしA・B型や都市型では不要の場合が多く、ケアハウスC型を中心に発生します。30万円という目安を超えて、数百万円以上の初期費用が発生するケアハウスもみられるため、入居前に確認が必要です。
入居月の月額費用には10万円以下の居住費、4〜6万円程度の食費、利用したぶんの介護サービス費や雑費がかかります。
ケアハウスは公的施設のため、国や地方自治体から助成を受けており、利用者にかかる負担も軽減されています。さらに、低所得の方は負担軽減のための制度を利用することで、居住費や食費が軽減できます。
入居生活にかかる費用
入居が始まってからかかる費用も確認していきましょう。
【ケアハウスの入居生活にかかる費用】
居住費(家賃) | 10万円〜(水道光熱費と合算の場合あり) |
管理費 | 2万円前後 |
食費 | 4〜6万円 |
水道光熱費 | 0.1万円〜(居住費と合算の場合あり) |
雑費 | 2万円〜 |
介護サービス費 | 利用した分 |
ケアハウスに入居する場合は、一般の賃貸物件と同じく、居住費や水道光熱費がかかります。さらに施設の管理費や食費、介護サービスを利用する方は利用した分の費用が請求されます。
利用者によって理美容費や医療費が発生するほか、外出時の交通費、買い物や娯楽にかかる費用も考慮しておきましょう。
関連記事:老人ホームの入居にかかる費用は?相場と安く抑えるポイント
ケアハウスの入居条件
ケアハウスの入居条件は、介護型以外60歳以上の方を対象としています。施設ごとの入居条件は以下のとおりです。
【ケアハウス(軽費老人ホーム)の入居条件】
分類 | 入居対象 | |
軽費老人ホームA型 | 自立した生活に不安がある60歳以上の方 | |
軽費老人ホームB型 | 自立した生活に不安がある60歳以上の方 | |
ケアハウス (軽費老人ホームC型) |
自立型(一般型) | 自立した生活に不安がある60歳以上の方 |
介護型 | 要介護1以上の65歳以上の方 | |
都市型軽費老人ホーム | 都市部で自立した生活に不安がある60歳以上の方 |
ここでいう「自立した生活に不安がある」とは、以下のようなケースです。※
【自立した生活に不安があるケース】
- 独居している高齢者
- 無年金など経済的に困窮している
- 虐待を受けている高齢者
- 要支援者
- 要介護者
- 身体的な障がいがある
- 認知症・精神障がいがある
- 他の法律に基づく施設に入所できない高齢者
- ホームレスの方
- 以前に犯罪をした方
- 賃貸住宅から立ち退きを受けた方
心身に障がいや病気があり、自立した生活に不安を抱える方や、家族・家庭環境の問題により自宅での生活が難しい方、要支援・要介護者、ホームレスの方や前科のある方もケアハウスの受け入れ対象となります。
ただし施設によって詳細な入居条件が異なり、募集状況によっては空きがない場合もあるため、お住まいの自治体の最新情報をこまめに確認しましょう。
※参照元:公益社団法人 全国老人福祉施設協議会「地域共生社会の実現に向けた軽費老人ホーム・ケアハウス活用ハンドブック」
ケアハウスへ入居するまでの流れ
ケアハウスへ入居するためには、お住まいの自治体のケアハウスの空き状況を確認し、施設を比較したうえで申し込みを行います。その後審査を経て契約となりますが、入居までに待ち時間が発生する場合もあります。 それぞれのステップについて、確認していきましょう。
施設を探す
ケアハウスを探すときは、入居希望者が居住している地方自治体の運営施設から探します。
住民票を異動し、他の自治体の施設に入居することも可能ですが、その場合は以前住んでいた自治体に保険料を支払うことで介護保険が給付される「住所地特例制度」が利用可能です。
ケアハウスは「軽費老人ホーム」の名称で、自治体の公式ホームページから確認ができます。近隣の施設をリストアップし、各施設のホームページなどから詳細を確認します。自治体のホームページに連絡先が記載されていますので、施設に直接連絡のうえ、資料請求や説明会への参加もできます。
「お部屋・お食事・浴室等を提供しています」「外出や外泊は自由にできます」「原則として大阪市に1年以上居住している方」などと詳細が記載されていますので、施設の特徴を比較して候補先を絞り込みましょう。
施設を見学する
入居したい候補先が絞り込めたら、申し込む前に施設の見学(体験入居)を行いましょう。説明会と同時に見学会を開いている施設もあります。
見学では施設内の設備・共有部の過ごしやすさ・スタッフの雰囲気・居室の広さや過ごしやすさを確認しましょう。
申し込み
施設を選び終えたら、入居申込書・健康診断書・住民票・身元保証書・所得証明書などの必要書類を揃えて審査を受けます。
審査
申し込みの後は審査を受けますが、軽費老人ホームはA型から都市型までが低所得者を対象としており、空きがあれば基本的には入居が可能です。
ただし、感染症やその他の既往症によって医療ケアが必要な方、他の入居者への迷惑行為が認められる場合は入居を断られる可能性があります。
面談
審査に通り、最終的な確認として施設の担当者と面談を行います。健康状態・生活状況・入居の意思を確認したうえで、最終的な判断が行われます。
入居開始
面談に通り許可が出ると、入居が可能になります。必要な衣類や物品とともに引っ越し、入居の手続きを経て施設での生活が始まります。
ケアハウスを選ぶ際のポイント
ケアハウスを選ぶポイントとして、以下の点をチェックしておきましょう。
【ケアハウスの選び方】
- 入居希望者の状況に合う施設を選ぶ
- 必要な設備やサービスが受けられるか確認する
- 早期に候補先の施設をピックアップする
- 医療機関や外部サービスとの連携を確認する
- 施設ごとの特徴・費用を比較する
入居希望者が介護を必要としていれば「介護型」を中心に、自立していればA〜C型(一般型)までが選択肢に入ります。都市部に在住していれば都市型も選べます。
希望者にふさわしい施設が選べたら、生活に必要な設備・サービスを確認し、施設にも設備・サービスが揃っているかを確認しましょう。一例として、医療機関への送迎や付き添いが可能か、有料または無料かといった違いを比較します。
次に、歯科検診などの往診の頻度・提携先の医療機関・緊急時対応の医療機関や連携の状況をチェックしてください。
施設をピックアップしたところで、特徴(入居条件や施設ならではの強み)・費用を確認し、具体的な絞り込みを行いましょう。
入居者の状況やライフスタイルに合う施設を選ぶ
今回は、ケアハウスの種類や施設ごとの入居条件、入居時・入居中にかかる費用と入居までの流れについて紹介しました。
数ある福祉施設のうち、ケアハウスは審査基準が厳しくなく入居対象が広いという特徴があります。低所得者にも開かれた施設であり、都市型や介護型といった施設も選べます。
他の公的施設とも比較しながら、入居者の状況や希望、ライフスタイルに合う施設を探してみてはいかがでしょうか。
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監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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