高齢者の一人暮らしは危険?潜むトラブルと家族ができる7つの対策を解説

日本では核家族化や平均寿命の延伸などを背景に、高齢者の一人暮らし世帯が増え続けています。住み慣れた自宅で自由に暮らせるというメリットがある一方、急な体調不良や認知症の進行、詐欺被害など、様々なトラブルに遭遇するリスクも少なくありません。ご本人もご家族も、漠然とした不安を感じているのではないでしょうか。この記事では、高齢者の一人暮らしに潜む具体的な4つのトラブルと、離れて暮らすご家族でも実践できる7つの対策を詳しく解説します。結論として、公的サービスや民間の見守りサービスなどを積極的に活用し、地域や家族とのつながりを保つことが、安全な一人暮らしを続けるための鍵となります。そして、在宅での生活が難しくなった場合には、老人ホームへの入居も有効な選択肢です。この記事が、皆さまの不安を解消し、具体的な備えを始める一助となれば幸いです。
増加する高齢者の一人暮らし|その背景と現状
65歳以上の一人暮らしは40年で約10倍に
現在、日本の高齢者人口に占める一人暮らしの割合は、男女ともに増加傾向にあります。内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、65歳以上の一人暮らしの高齢者は、1980年には男性約19万人、女性約69万人でしたが、2020年には男性約231万人、女性約441万人にまで増加しています。
| 年 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 1980年 | 約19万人 | 約69万人 |
| 1990年 | 約37万人 | 約124万人 |
| 2000年 | 約74万人 | 約229万人 |
| 2010年 | 約139万人 | 約341万人 |
| 2020年 | 約231万人 | 約441万人 |
一人暮らしが増える3つの社会的背景
このように高齢者の一人暮らしが増加している背景には、いくつかの社会的要因が挙げられます。
- 核家族化の進行
- かつては三世代同居が一般的でしたが、現代では夫婦と未婚の子どもからなる世帯や、単身世帯が増加しました。子どもが独立して親元を離れることで、親世代が一人暮らしになるケースが多くなっています。
- 平均寿命の延伸
- 日本の平均寿命は世界でもトップクラスであり、長生きする方が増えました。その結果、配偶者に先立たれてから一人で暮らす期間が長くなる傾向にあります。
- 未婚率・離婚率の上昇
- 生涯未婚率や離婚率の上昇により、元々一人で暮らしている方がそのまま高齢期を迎えるケースや、熟年離婚によって一人暮らしになるケースも増えています。
こうした背景から、今後も高齢者の一人暮らしは増え続けると予測されており、ご本人とご家族が安心して暮らせるための社会的なサポートや事前の備えがますます重要になっています。
高齢者の一人暮らしに潜む4つの主なトラブルとリスク
住み慣れた自宅での一人暮らしは、気ままで快適な面もありますが、一方で様々なトラブルやリスクを抱えています。ここでは、特に注意すべき「健康面」「認知機能」「生活面」「防犯面」の4つのリスクについて詳しく見ていきましょう。
健康面のトラブル|急な体調不良や孤独死のリスク
一人暮らしの高齢者にとって、最も心配なのが健康面のトラブルです。同居家族がいればすぐに気づけるような体調の変化も、一人の場合は発見が遅れ、深刻な事態につながる可能性があります。
発見が遅れがちな体調の急変や転倒事故
高齢になると、脳梗塞(のうこうそく)や心筋梗塞(しんきんこうそく)といった、迅速な対応が必要な病気を発症するリスクが高まります。一人暮らしの場合、発作が起きても助けを呼べず、対応が遅れて重症化したり、命に関わったりする危険性があります。
また、筋力の低下やバランス感覚の衰えにより、自宅内で転倒する事故も少なくありません。消費者庁の調査でも、高齢者の不慮の事故のうち「転倒・転落」が最も多くなっています。打ちどころが悪ければ骨折につながり、そのまま寝たきりになってしまうケースもあります。
社会的な孤立が招く孤独死の問題
誰にも看取られることなく自宅で亡くなり、死後しばらく経ってから発見される「孤独死」は、深刻な社会問題となっています。一人暮らしで地域や社会との交流が少ない高齢者は、特に孤独死のリスクが高いと言えます。
近所付き合いが希薄になっている現代社会では、数日間姿を見なくても異変に気づかれにくいのが現状です。定期的な連絡を取り合えるご家族や友人がいない場合、孤独死のリスクはさらに高まります。このような事態を避けるためにも、社会的な孤立を防ぐ取り組みが重要です。
認知機能のトラブル|認知症の発見の遅れと進行
認知症(にんちしょう)は、誰にでも起こりうる病気です。一人暮らしの場合、認知機能の低下に周囲が気づきにくく、発見が遅れてしまう傾向があります。
周囲が気づきにくい認知症の初期症状
認知症の初期には、「同じことを何度も言う・聞く」「物の置き場所を忘れる」といった物忘れの症状が現れます。しかし、一人暮らしの場合は、こうした変化を指摘してくれる人がいないため、ご本人も「歳のせいだろう」と思い込み、自覚がないまま症状が進行してしまうことが少なくありません。
久しぶりに会ったご家族が、部屋が散らかっている、身だしなみに構わなくなっている、といった変化から認知症の可能性に気づくケースもあります。定期的なコミュニケーションが、認知症の早期発見につながります。
判断能力の低下による生活上の支障
認知症が進行すると、判断能力や理解力が低下し、日常生活に様々な支障が出てきます。
- 服薬管理ができない
- 薬を飲んだことを忘れて過剰に摂取してしまったり、逆に飲み忘れたりすることで、健康状態を悪化させる危険があります。
- 金銭管理が難しくなる
- 公共料金の支払いを忘れたり、預貯金の管理ができなくなったりします。また、不要な高額商品を契約してしまうといった金銭トラブルに巻き込まれることもあります。
- 季節に合わない服装をする
- 気温の変化を正しく認識できず、真夏に厚着をしたり、真冬に薄着で過ごしたりして、熱中症や低体温症(ていたいおんしょう)を引き起こす可能性があります。
生活面のトラブル|火災や栄養状態の悪化
加齢に伴う身体機能の低下は、日常生活の思わぬところに危険をもたらします。特に火の取り扱いや食事の管理には注意が必要です。
火の不始末やコンロの消し忘れによる火災リスク
消防庁の統計によると、住宅火災による死者のうち、65歳以上の高齢者が占める割合は非常に高くなっています。出火原因として多いのが、「たばこ」や「ストーブ」、そして「こんろ」の消し忘れです。
「鍋を火にかけたまま忘れてしまった」「仏壇のろうそくが倒れた」といった、ほんの少しの不注意が大きな火災につながる危険があります。特に認知機能が低下している場合は、火を使っていること自体を忘れてしまう可能性もあり、一層の注意が必要です。
食事の偏りによる低栄養や脱水症状
一人暮らしの高齢者は、食事の準備が面倒になったり、食欲が低下したりすることで、そうめんやパンだけで済ませるなど、食事が単調になりがちです。このような食生活が続くと、身体に必要な栄養素が不足する「低栄養」状態に陥る危険があります。
低栄養になると、筋肉量が減少して転倒しやすくなるほか、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなります。また、喉の渇きを感じにくくなるため、水分補給が不足し、脱水症状(だっすいしょうじょう)を引き起こすリスクも高まります。
防犯面のトラブル|詐欺や悪質商法のターゲットに
一人でいる時間が長い高齢者は、残念ながら特殊詐欺や悪質商法のターゲットにされやすい傾向があります。判断力の低下につけこまれ、大切な財産を失ってしまうケースが後を絶ちません。
特殊詐欺(オレオレ詐欺など)の被害
警察庁によると、特殊詐欺の被害者の多くは高齢者です。息子や孫になりすまして電話をかけ、お金をだまし取る「オレオレ詐欺」や、役所の職員をかたって医療費の還付金があると偽り、ATMを操作させてお金を振り込ませる「還付金詐欺」など、手口は巧妙化しています。
「自分は大丈夫」と思っていても、巧みな話術で不安を煽られると、冷静な判断ができなくなり、つい騙されてしまうことがあります。
点検商法や高額な商品を売りつける悪質商法
「無料で水道管を点検します」などと言って家に入り込み、不要な工事や高額な商品を契約させる「点検商法」も、高齢者の一人暮らしを狙った代表的な手口です。
その他にも、「このままだと大変なことになる」と不安を煽って高額な布団や健康食品を売りつける商法や、親切な態度で近づき、繰り返し訪問して契約させる「次々販売」など、様々な悪質商法が存在します。断りきれずに契約してしまい、後でトラブルになるケースが多発しています。
遠方の親も安心|一人暮らしの高齢者を支える具体的な対策7選
ここまで一人暮らしの様々なリスクを見てきましたが、適切な対策を講じることで、多くの不安は軽減できます。ここでは、離れて暮らすご家族でも取り組める具体的な対策を7つご紹介します。
対策1:公的な総合相談窓口「地域包括支援センター」に相談する
まず検討したいのが、国や自治体が提供している公的な高齢者支援サービスです。中でも「地域包括支援センター」は、高齢者の暮らしに関する悩みを受け付けてくれる総合相談窓口で、全国の市町村に設置されています。
保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職が無料で相談に応じてくれます。介護や健康、福祉、医療に関する相談はもちろん、要介護認定の申請代行や、高齢者の権利を守るための支援(虐待防止、成年後見制度の紹介など)も行っています。「どこに相談したら良いか分からない」という場合は、まずお住まいの地域の地域包括支援センターに連絡してみましょう。
対策2:介護保険の在宅サービスを利用する
要支援・要介護認定を受けることで、介護保険を利用して様々な在宅サービスを1~3割の自己負担で利用できます。ご本人の状態に合わせてサービスを組み合わせることで、自宅での生活を継続しやすくなります。
| サービスの種類 | サービス内容 |
|---|---|
| 訪問介護(ホームヘルプ) | ヘルパーが自宅を訪問し、食事や入浴、排泄などの身体介護や、掃除、洗濯、調理などの生活援助を行います。 |
| 通所介護(デイサービス) | 施設に通い、食事や入浴などの支援を受けたり、レクリエーションや機能訓練に参加したりします。他の利用者と交流する機会にもなります。 |
| 訪問看護 | 看護師が自宅を訪問し、病状の観察、医療処置(点滴や褥瘡(じょくそう)のケアなど)、療養上のアドバイスを行います。 |
| 短期入所生活介護(ショートステイ) | 短期間施設に宿泊し、日常生活の介護や機能訓練を受けられます。ご家族の介護負担軽減(レスパイトケア)のためにも利用されます。 |
対策3:自治体独自の高齢者支援サービスを活用する
介護保険サービス以外にも、各市町村が独自に高齢者向けの支援サービスを実施しています。お住まいの自治体のウェブサイトや広報誌で確認してみましょう。
- サービスの一例
- 急病や事故の際にボタン一つで通報できる「緊急通報システム」の設置、栄養バランスの取れた食事を届けてくれる「配食サービス」、自力でのゴミ出しが困難な方向けの「ゴミ出し支援」、地震対策としての「家具転倒防止器具の設置助成」など、内容は多岐にわたります。配食サービスは安否確認を兼ねている場合も多いです。
対策4:民間の見守りサービスで安否を確認する
公的サービスを補う形で、民間のサービスを利用するのも有効な手段です。特に離れて暮らすご家族にとって心配な日々の安否確認には、多様なサービスがあります。
- センサー型
- ドアの開閉や室内の人の動きを感知するセンサーを設置し、一定時間動きがない場合に家族へ通知します。プライバシーに配慮しやすいのが特徴です。
- カメラ型
- 室内にカメラを設置し、スマートフォンのアプリなどでいつでも様子を確認できます。導入の際は、ご本人のプライバシーへの十分な配慮が必要です。
- 緊急通報型
- ペンダント型のボタンなどを押すだけで警備会社やコールセンターにつながり、必要に応じてスタッフが駆けつけてくれます。
- 電化製品連携型
- ポットやテレビなど、毎日使う電化製品の使用状況をご家族に通知することで、さりげなく安否を確認できます。
対策5:配食・家事代行サービスで生活の負担を減らす
食事の準備が負担になっている場合は、民間の配食サービスが便利です。栄養バランスが考えられているだけでなく、噛む力や飲み込む力(嚥下(えんげ)機能)に合わせて、刻み食やミキサー食に対応してくれる事業者もあります。
また、掃除や洗濯、買い物などを代行してくれる家事代行サービスを利用すれば、身体的な負担を減らし、清潔で安全な住環境を維持することにつながります。
対策6:地域や社会とのつながりを保つ
社会的な孤立は、心身の健康に大きな影響を及ぼします。近隣住民や地域コミュニティとの良好な関係は、いざという時の助け合いにもつながるため、積極的に関わりを持つことが大切です。
- 地域のコミュニティや趣味の会への参加
- 地域の老人クラブや趣味のサークル、自治会が主催するイベントなどに参加することで、新たな交友関係が生まれ、生活に張り合いが出ます。外出する機会が増えることで、閉じこもりや運動不足の予防にもなります。
- 近所付き合いを大切にする
- 日頃から挨拶を交わすなど、ご近所の方と良好な関係を築いておくことも大切です。「数日間姿を見かけない」「新聞が郵便受けに溜まっている」といった小さな異変に気づいてもらいやすくなります。
対策7:家族間の定期的なコミュニケーションを欠かさない
離れて暮らしていても、ご家族ができることはたくさんあります。最も重要なのは、定期的に連絡を取り、コミュニケーションを絶やさないことです。
- 電話やビデオ通話
- 毎日決まった時間に電話をする、週に一度はビデオ通話で顔を見るなど、ルールを決めておくと継続しやすいでしょう。何気ない会話の中から、体調や生活の変化に気づくきっかけが得られます。
- 定期的な訪問
- 実際に顔を合わせることで、電話だけでは分からない変化に気づくことができます。部屋の様子や冷蔵庫の中身、ご本人の表情や服装などをさりげなく確認しましょう。
在宅での生活継続が難しいと感じたら施設入居も選択肢に
様々な対策を講じても、ご本人の心身の状態によっては、一人暮らしや在宅での生活が難しくなる時が来ます。その場合は、安全で専門的なケアが受けられる老人ホーム・介護施設への入居を検討することも、ご本人とご家族双方にとって大切な選択肢です。
老人ホーム・介護施設への入居を検討するタイミング
どのような状態になったら、施設入居を考え始めるべきでしょうか。以下のようなサインが見られたら、検討を始めるタイミングかもしれません。
- 認知症が進行し、常時見守りや徘徊(はいかい)への対応が必要になった
- 転倒を繰り返すなど、自宅での生活における危険性が高まった
- 入退院を繰り返し、医療的なケアの必要性が高まった
- 食事をほとんど摂らなくなり、栄養状態が悪化した
- 介護をするご家族の心身の負担が限界に達している
ご本人が「まだ自宅で暮らしたい」と希望されていても、安全な生活を送ることが困難になっている場合は、ご家族が中心となって次のステップを考える必要があります。
一人ひとりの状態に合わせた施設選びの重要性
老人ホーム・介護施設には、様々な種類があります。自立した生活が送れる方向けの施設から、手厚い介護や医療ケアが受けられる施設まで、その特徴は多岐にわたります。
| 施設の種類 | 特徴 |
|---|---|
| 介護付き有料老人ホーム | 介護スタッフが24時間常駐し、食事、入浴、排泄などの介護サービスを提供。要介護度の高い方や看取り(みとり)まで対応可能な施設が多い。 |
| 住宅型有料老人ホーム | 食事の提供や見守りなどの生活支援サービスが中心。介護が必要な場合は、外部の訪問介護などの在宅サービスを利用する。 |
| サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | バリアフリー対応の賃貸住宅。安否確認と生活相談サービスが義務付けられている。自由度の高い生活を送りたい方向け。 |
| グループホーム(認知症対応型共同生活介護) | 認知症の高齢者が、5~9人の少人数で共同生活を送る施設。家庭的な雰囲気の中で、専門スタッフの支援を受けながら自立した生活を目指す。 |
| 特別養護老人ホーム(特養) | 公的な施設で、原則として要介護3以上の方が入居対象。費用が比較的安いが、待機者が多い傾向がある。 |
施設を選ぶ際は、ご本人の心身の状態、必要なケアの内容、費用、立地、施設の雰囲気などを総合的に考慮し、複数の施設を見学して比較検討することが非常に重要です。
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このコラムの監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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