老人ホームと特別養護老人ホームは別物?違いを費用・入居条件から解説

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老人ホームと特別養護老人ホームは別物?違いを費用・入居条件から解説

親御さんの施設を探し始めると「老人ホーム」「特別養護老人ホーム」と似た名前が次々に出てきて、違いがわからず戸惑っていませんか?ケアマネジャーや周囲の方の話を聞くほど、どれとどれを比べればよいのか迷ってしまう方も少なくありません。

この記事では、老人ホームと特別養護老人ホームの違いを、費用と入居条件を中心に解説します。特養と紛らわしい施設の見分け方や、特養に入れないときの選択肢、入居までの流れまで取り上げます。

両者の関係と費用・条件の違いがわかれば、特養と有料老人ホームのどちらを軸に探すかを決められやすくなるでしょう。

※本記事の内容は2026年7月時点の情報に基づきます。なお、介護保険施設の食費・居住費は2026年8月1日(令和8年8月1日)から引き上げられます。

老人ホームと特別養護老人ホームの違いは?

「老人ホーム」と「特別養護老人ホーム」を並べて聞くと、まったく別の施設のように思えます。しかし、老人ホームは高齢者向けの施設をまとめて指す総称で、特別養護老人ホーム(以下、特養)はその中の一種です。別物どうしを比べる関係ではなく、大きなくくりとその中身という関係にあります。

ここでは、老人ホームが指す施設の範囲と特養の位置づけ、費用と入居条件の違いを見ていきます。

老人ホームが指す施設の範囲

老人ホームは、法律で定められた1つの施設名ではありません。高齢者が暮らす施設をまとめて呼ぶ言葉として、日常の中で使われています。

老人福祉法第5条の3では、老人福祉施設として養護老人ホーム・特別養護老人ホーム・軽費老人ホームなど7種類が挙げられています。一方、民間が運営する有料老人ホームは、同法第29条で「老人福祉施設でないもの」と規定された別のカテゴリです。

つまり、老人ホームの一言には公的な老人福祉施設と民間の有料老人ホームの両方が含まれます。施設を探し始めると名前が次々に出てくるのは、この総称が指す範囲の広さが理由です。

老人ホームに含まれる特養

特養は、老人福祉法が定める老人福祉施設7種のうちの1つです。老人ホームという大きなくくりの中に、特養という個別の施設が含まれる関係にあります。

そのため「老人ホームと特養は別物か」と問われれば、答えは別物ではありません。特養は老人ホームの一種であり、対等に並べて優劣を比べる相手ではないためです。

混乱が生じるのは、日常会話で老人ホームと呼ぶとき、民間の有料老人ホームを指している場面が多いからです。ケアマネジャーや周囲の方が「老人ホームは高い」と話していたら、それは有料老人ホームを指していると考えるとつじつまが合います。

この記事でも、多くの方が比べたい施設として思い浮かべる有料老人ホームを軸に、特養との違いを見ていきます。

費用と入居条件の違い早見表

特養と有料老人ホームの違いは、費用と入居条件に最もはっきり表れます。まずは全体像を早見表で確認しましょう。

項目 特別養護老人ホーム 有料老人ホーム
運営 自治体・社会福祉法人 民間事業者
初期費用 なし 0~数千万円
月額の目安 約9~15万円 約10~40万円
入居の条件 原則要介護3以上 自立~要介護
入居までの早さ 待機が長い傾向 早い傾向

差が大きいのは、初期費用の有無と月額の水準です。特養は公的施設のため初期費用が不要で、所得に応じて居住費や食費を軽くする制度も活用できます。

一方、有料老人ホームは入居までが早く、要介護度の条件もゆるやかです。表の数値はいずれも目安で、中身はこのあとの章で一つずつ見ていきます。

関連記事:特別養護老人ホームと有料老人ホームの違い・施設の特徴と入居の流れ

特別養護老人ホーム(特養)とは

特養は、老人福祉法に基づいて自治体や社会福祉法人が運営する公的な介護施設です。常時介護が必要な高齢者が生活の場として暮らし、看取りに対応する施設も多く、終身での利用を前提としています。民間の施設より費用を抑えられる点から、入所の希望が集まる施設です。

ここでは、特養のもう一つの呼び名と公的施設としての役割、どのような方が対象になるのかを紹介します。

介護老人福祉施設と同じ施設

特養を調べていると「介護老人福祉施設」の名前も見かけますが、この2つは同じ施設を指します。老人福祉法では特別養護老人ホーム、介護保険法では介護老人福祉施設と、根拠になる法律で呼び方が変わるためです。

自治体の資料や介護保険の書類では介護老人福祉施設、日常会話では特養と、場面によって使い分けられています。名前が違うだけで、施設の中身や入所の条件に差はありません。

なお、定員が29人以下の小規模な特養は地域密着型特養と呼ばれます。こちらも特養の一種で、原則として施設と同じ市区町村に住民票がある方が対象です。

2つの名前が同じ施設を指すと知っておくと、資料を読むときに迷わずにすみます。

特養が担う公的な役割

特養の運営主体は、自治体や社会福祉法人です。営利を目的としない公的な施設として、介護が重くなっても収入の多くない高齢者の暮らしを支える役割を担っています。

この公的な性格は、費用にそのまま表れます。入居一時金にあたるまとまった初期費用は不要です。所得や資産が一定以下の方には、居住費と食費を軽くする制度も用意されています。

サービスの内容も、施設ごとの裁量ではなく法令で決まっている点が特徴です。どの特養を選んでも一定水準の介護を受けられるため、施設による当たり外れの心配は小さいでしょう。

関連記事:特別養護老人ホーム(特養)とは?種類・費用・入居条件から選び方のポイント、他の介護施設との違いまで徹底解説

常時介護が必要な人の入所先

特養が受け入れるのは、常時介護が必要で、自宅での介護を続けられなくなった方です。介護の必要度が高い方から優先して入所が決まります。要介護度の細かな条件は次章で解説するため、ここで押さえたいのは施設としての性格です。

介護老人保健施設(老健)が在宅復帰を目指す通過点であるのに対し、特養は生活の場として長く暮らす前提の施設です。看取りまで対応する施設も多く、体調が変わっても住み替えを重ねずにすみます。

最期まで慣れた職員に見守られて過ごせる点は、ご家族にとって大きな安心材料です。親御さんの介護を在宅で支えきれない段階に来ているなら、終の住まいとして検討する価値があります。

有料老人ホームとは

有料老人ホームは、民間の事業者が運営する高齢者向けの施設です。老人福祉法では「老人福祉施設でないもの」と規定され、特養などの公的施設とは別のカテゴリに置かれています。日常会話で老人ホームと呼ばれるとき、多くの方が思い浮かべるのはこの有料老人ホームです。

ここでは、有料老人ホームの運営の仕組みと3つの種類、入居までの早さと初期費用を紹介します。

民間が運営する介護施設

有料老人ホームは、民間企業や医療法人などが運営します。公的な補助を前提とする特養と違い、事業者が価格やサービスを設計できるため、施設ごとの個性がはっきり出る点が特徴です。

介護の提供のしかたは、施設が受けている指定で決まります。「介護付」と表示できるのは特定施設入居者生活介護の指定を受けたホームだけで、原則として施設の職員が介護を担当します。

指定のない施設では、入居者が地域の訪問介護を個別に契約する仕組みです。同じ有料老人ホームでも、介護の担い手は施設によって異なります。

見学のときは、介護を施設の職員が担うのか、外部の事業者に頼むのかを聞いておきましょう。

介護付・住宅型・健康型の3種類

有料老人ホームは、厚生労働省の指針で次の3つの類型に分かれます。名前が似ていても、介護の受け方と対象になる方が大きく違う点に注意が必要です。

  • 介護付:施設の職員が24時間介護
  • 住宅型:介護は外部サービスを契約
  • 健康型:自立した方向けで介護なし

介護付は特定施設の指定を受けた施設で、要介護の方が施設の中で介護を受けられます。特養と同じく介護込みで暮らせるため、比較の対象になるのは主にこの介護付です。

住宅型は、外部の事業者と契約して介護を受け、利用した分を払う仕組みです。健康型は自立した方が対象のため、介護が必要な段階になると契約解除となり退去を求められます。

親御さんに介護が必要なら、候補は介護付か住宅型に絞られると考えておきましょう。

関連記事:有料老人ホーム10種類の特徴や費用を一覧解説!違いや選び方とは

入居までの早さと初期費用

有料老人ホームの利点は、入居までの早さです。空室があれば見学から入居まで数週間で進む施設もあり、特養の空きを待てない状況では現実的な選択肢になります。

その代わり、費用の負担は重くなります。入居時にかかる初期費用は0~数千万円と幅が広く、家賃を前払いする入居一時金を求める施設と、初期費用0円で月額のみの施設に分かれる状況です。

初期費用0円の施設は入りやすい反面、月額が高めに設定される傾向があります。前払いか毎月払いかの違いのため、入居を想定する年数で総額を試算すると比較できるでしょう。

初期費用の額に公的な基準はなく、施設ごとの設定に委ねられています。表示額はあくまで目安として見ておきましょう。

有料老人ホームとの入居条件の違い

特養と有料老人ホームでは、入居できる方の条件が大きく異なります。特養が原則として要介護3以上に絞られる一方、有料老人ホームは自立の方から要介護5の方まで幅広く受け入れています。この条件の差が、施設選びの最初の分かれ道です。

ここでは、特養に必要な要介護度と有料老人ホームの条件、要介護1・2の特例入所、入所待ちの期間を見ていきます。

特養に必要な要介護度

特養に入所できるのは、原則として要介護3以上と認定された方に限られます。新規の入所がこの範囲に絞られたのは、平成27年4月の制度改正でした。

特養は、常時介護が必要な方の生活の場として位置づけられた施設です。食事や入浴、排せつに日常的な介助が要る状態で、在宅での暮らしが立ち行かなくなった段階が一つの目安になります。

親御さんが要介護2以下の場合、原則としては特養の対象になりません。ただし、次で紹介する特例入所の枠があり、事情によっては入所が認められる場合もあります。

まずは介護保険の認定結果の通知を見て、要介護3以上かどうかを確認しましょう。要介護3に届いていない段階では、条件のゆるやかな施設もあわせて検討すると安心です。

有料老人ホームの入居条件

有料老人ホームの入居条件は、施設の類型で変わります。介護付と住宅型は60歳以上とする施設が多く、健康型は自立した方が対象です。特養のような要介護度の下限はありません。

介護付の中心は要介護の認定を受けている方ですが、自立や要支援の方を受け入れる施設もあります。住宅型は生活支援が中心のため自立や軽度の方が多く、健康型は介護が要る状態になれば契約解除となり退去します。

年齢や要介護度のほかに、受け入れの可否は施設ごとの体制によっても変わるでしょう。認知症の症状の程度や医療的なケアの必要度で判断が分かれるため、問い合わせのときに親御さんの状態をありのまま伝えましょう。

要介護1・2の特例入所

要介護1・2の方でも、やむを得ない事情があれば特例として特養に入所できます。施設が市町村の意見を求めたうえで、居宅での生活が困難だと認めた場合に限られる仕組みです。

勘案される事情は、次の4つです。

  • 認知症で日常生活に支障が頻繁に出る
  • 知的障がいや精神障がいを伴う
  • 家族などによる深刻な虐待の疑い
  • 単身や家族の支援が期待できない

4つ目には、同居のご家族が高齢または病弱で介護を担えず、地域の介護サービスの供給も足りない状況が含まれます。いずれも書類だけで機械的に決まるものではなく、親御さんとご家庭の状況を踏まえて判断されます。

要介護1・2で申し込む場合は、該当する理由を入所申込書に書き添えましょう。事情があるご家庭は、あきらめる前にケアマネジャーや自治体に相談してみましょう。

特養の入所待ちの期間

特養は費用の安さから希望者が多く、申し込んですぐ入所できるとは限りません。厚生労働省の調査では、令和7年4月1日時点の入所申込者は要介護3以上で20.6万人、そのうち在宅で待つ方が8.6万人でした。

申込者は前回の令和4年度調査の25.3万人から4.7万人減っており、待機の状況は以前より緩和されています。ただし、地域差は大きく、数か月から数年待つ例もあります。

なお、この人数には長く申込名簿に載ったままの方も含まれ、全員がすぐの入所を必要とするとは限りません。順番も申し込んだ順ではなく、介護の必要度やご家族の状況を勘案し、必要性の高い方から入所検討委員会の合議で決まります。

待つ間の暮らしをどう支えるかも、あらかじめ考えておきましょう。つなぎの選択肢は記事の後半で紹介します。

関連記事:特養の入居待ちは何年?待機期間や順番を早める方法、待てない場合の措置と有料老人ホームとの違い

有料老人ホームとの費用の違い

費用は、特養と有料老人ホームで最も差が出る部分です。特養は初期費用が不要で月額も抑えられる一方、有料老人ホームは初期費用と月額の両方で負担が重くなります。

ここでは、それぞれの費用の内訳と負担を軽くする制度、年金で入れるかの目安を見ていきます。

特養でかかる費用

特養の月額費用は、施設介護サービス費・居住費・食費・日常生活費の4つで構成されます。入居一時金にあたる初期費用は不要で、毎月の支払いだけで暮らせる点が特養の大きな特徴です。

このうち居住費と食費には、全国一律の基準費用額があります。令和6年8月時点で食費は1日1,445円(月約4.4万円)、居住費は多床室で1日915円(月約2.8万円)、ユニット型個室で1日2,066円(月約6.3万円)です。

ここに要介護度に応じた施設介護サービス費の自己負担分(原則1割)と日常生活費が加わります。合計した月額の目安は、多床室で約9~12万円、ユニット型個室で約13~15万円です。

居室のタイプによって3万円ほどの差が出るため、費用を重視するなら多床室のある施設を候補に入れましょう。

関連記事:特別養護老人ホームの費用はいくら?月額料金シミュレーション・軽減制度を解説

有料老人ホームでかかる費用

有料老人ホームの費用は、初期費用と月額費用に分かれます。初期費用は0~数千万円と施設によって幅が広く、月額の目安は介護付で15~30万円、住宅型で12~30万円、健康型で10~40万円です。

月額には家賃・管理費・食費・水道光熱費が含まれ、介護付ではここに介護サービス費の自己負担分が加わります。住宅型は外部サービスを使った分だけ費用が積み上がるため、介護が重くなるほど月額は上がるでしょう。

有料老人ホームは、特養と比べると月額が高めです。そのぶん入居までが早く、居室や食事、レクリエーションの内容も施設ごとに選べる点が民間施設の強みになります。

なお、これらの金額は施設ごとの設定によるもので、公的に定められた基準はありません。あくまで目安として見て、気になる施設には見積書を出してもらいましょう。

費用を抑える軽減制度

特養の費用は、所得や資産が一定以下の方を対象にした制度で軽くできます。代表的なものは、居住費と食費に上限を設ける負担限度額認定(補足給付)です。

対象は、原則として世帯全員が住民税非課税で、預貯金が基準以下の方です。認定を受けると、令和6年8月時点で食費は1日300~1,360円、ユニット型個室の居住費は1日880~1,370円まで下がります。

介護サービス費には、高額介護サービス費もあります。1か月の自己負担が上限を超えた分が払い戻される制度で、上限は住民税非課税世帯で月24,600円、生活保護を受けている方などは月15,000円です。

どちらも申請しないと適用されません。自治体の窓口で対象になるか問い合わせましょう。なお、負担限度額と食費の基準費用額は令和8年8月1日から引き上げが決まっています。

関連記事:特別養護老人ホームの費用負担を軽減!知っておきたい減免制度と申請方法

年金で入れるかの目安

年金だけで特養に入れるかは、負担限度額認定の段階で変わります。月額の目安は、軽減が最も大きい第1段階で多床室3~5万円・ユニット型個室5~7万円、軽減のない第4段階で多床室10~12万円・ユニット型個室13~15万円です。

たとえば、世帯全員が住民税非課税で年金収入などが年80.9万円以下、預貯金が650万円以下の方は第2段階にあたり、多床室なら月4~6万円ほどが目安になります。国民年金が中心の方でも、多床室を選べば年金の範囲に収まる場合もあるでしょう。

一方、住民税が課税されている世帯は軽減の対象外です。第4段階の金額が基準となるため、年金額によっては貯蓄やご家族の援助が必要になります。

親御さんの年金額と住民税が非課税かどうかを先に確かめておくと、無理のない施設選びにつながるでしょう。

有料老人ホームとのサービスの違い

受けられるサービスの中身も、特養と有料老人ホームでは考え方が違います。特養は法令で内容が決まっている一方、有料老人ホームは施設ごとにサービスを設計する点が対照的です。

ここでは、介護の内容や居室・設備、医療と看取りへの対応の違いを見ていきます。

特養で受けられる介護

特養で提供される介護は、法令によって内容が決まっています。食事や入浴、排せつの介助に加え、機能訓練や療養上の世話、健康管理までが含まれる範囲です。

サービスの水準が法令で決まっているため、どの特養を選んでも受けられる介護の中身に大きな差は生まれません。施設ごとにサービスを設計する民間施設とは、水準の決まり方が異なります。

看護職員も配置され、日常の健康管理を担います。施設内で対応できない医療が要るときの受け皿は、協力する医療機関です。

特養では、介護の中身で施設を比べるよりも、居室のタイプや立地、雰囲気のほうが施設選びの軸になります。

有料老人ホームのサービス

有料老人ホームのサービスは、類型によって大きく変わります。介護付は多くの施設で職員が24時間体制の介護を提供し、食事や入浴、排せつの介助から生活支援まで一通りそろう内容です。

住宅型は生活支援が中心で、介護は入居者が外部の事業者と個別に契約してサービスを受けます。利用した分が請求されるため、介護度が軽いうちは負担を抑えられる一方、介護度が重くなると割高になる場合もあるでしょう。

健康型には介護のサービスがなく、自立した方の住まいという位置づけです。介護が要る状態になると契約が終わるため、介護を前提に探すなら候補から外れます。

施設ごとの独自のサービスは、レクリエーションや食事の質、居室の設備に表れる部分です。特養にはない要素のため、見学で実際の様子を確かめましょう。

居室・設備の違い

特養の居室には、全国共通の基準があります。入所者1人あたりの床面積は10.65平方メートル以上と決まっており、居室の定員は現在の基準では原則1人です。以前からある施設では、4人以下の相部屋(多床室)が経過措置として残っています。

居室のタイプは、多床室・従来型の個室・ユニット型個室の3つです。プライバシーを重視するならユニット型、費用を抑えるなら多床室と、優先したい条件で選び方が変わります。

有料老人ホームの居室は、施設ごとに広さや設備の差が大きい部分です。厚生労働省の指針では入居者1人あたり13平方メートル以上と示されていますが、実際の基準は自治体の指導指針で定められます。

居室は毎日を過ごす場所なので、図面や写真だけで判断せず、見学で実際の広さと設備を確かめておきましょう。

医療・看取りへの対応

特養では、令和6年度の介護報酬改定により、協力医療機関を定める義務が課されました(3年の経過措置あり)。施設内で対応できる範囲を超えた医療が要るときに備え、相談や診療、入院の受け入れの体制を確保する狙いです。

また、特養には看取りの体制を評価する加算が設けられており、住み慣れた施設で最期まで過ごせる体制が整えられてきました。ただし、24時間の医療管理が常時必要な状態には向かない場合もあるでしょう。

たんの吸引や点滴の管理が日常的に続く親御さんは、医療体制の手厚い施設のほうが安心です。介護付き有料老人ホームにも看取りの体制を整えた施設はあるため、医療の必要度が高いときは、施設ごとの対応範囲を個別に確認しましょう。

特養に似た施設との違い

高齢者向けの施設には、特養と名前が似ていて紛らわしい施設があります。養護老人ホームと介護老人保健施設は、名前こそ近いものの、目的も入所の方法もまったく違う施設です。名前だけで候補から外したり、逆に同じものと思い込んだりすると、施設選びの遠回りにつながります。

ここでは、この2つが特養とどう違うのかを整理します。

養護老人ホーム

養護老人ホームは、老人福祉法に基づく措置施設です。65歳以上で、環境上の理由と経済的な理由により自宅での生活が難しい方を、市区町村長の措置によって受け入れます。

特養との最も大きな違いは、対象になる方の状態です。特養が要介護3以上の常時介護が必要な方を受け入れるのに対し、養護老人ホームは身体的に自立した方が中心で、介護を目的とした施設ではありません。

入所の方法も特養とは異なり、特養が施設との契約で入所するのに対し、養護老人ホームは自治体の措置で決まります。申し込めば希望どおりに入所できるわけではありません。

費用は前年の収入に応じた応能負担で、収入が一定以下の方は0円です。負担額は自治体の徴収基準で決まるため、詳しくは窓口に聞いてみましょう。

関連記事:特別養護老人ホームと養護老人ホームの違いとは?両施設の目的と対象者を解説

介護老人保健施設

介護老人保健施設(老健)は、在宅復帰を目指してリハビリを受ける公的な施設です。病院と自宅の中間に位置づけられ、医師の管理のもとで看護・介護・リハビリを受けられます。

特養との違いは、施設の目的にあります。特養が生活の場として終身の利用を前提とするのに対し、老健は自宅へ戻るための通過点です。入所期間は3~6か月が目安ですが、法令上の期限はなく、状況によって延びる場合もあります。少なくとも3か月ごとに在宅復帰の可否を検討します。

入所の条件は、65歳以上で要介護1以上、かつ病状が安定した方です。40~64歳でも、特定疾病が原因で要介護認定を受けていれば入所できます。月額の目安は8~20万円です。

退院直後で体力の回復を目指す段階なら老健、生活の場を移すなら特養と、目的で選び分けましょう。

関連記事:老健(介護老人保健施設)とは?役割・費用・入所条件からスムーズな退所後の選択肢まで徹底解説

特養に入れないときに選べる老人ホーム

要介護3に届かない、あるいは待機が長くて待てないときも、選べる施設はほかにもあります。親御さんの状態と急ぎ具合によって、現実的な候補は変わるでしょう。

ここでは、特養の代わりや待機中のつなぎになる3つの施設を紹介します。

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは、特定施設入居者生活介護の指定を受け、施設の職員が24時間体制で介護を提供する民間施設です。特養と同じく介護込みで暮らせるため、代わりの候補として最も近い存在になります。

介護付き有料老人ホームの強みは、入居までの早さです。空室があれば数週間で入居できる施設もあり、特養の待機が長い地域では、入所が決まるまでの住み替え先としても選ばれています。

月額の目安は15~30万円と、特養より負担は重めです。その代わり、要介護度が上がっても住み替えずに暮らせる施設が多く、看取りまで任せられるホームも選べます。

特養の申し込みを続けながら介護付き有料老人ホームで待つ進め方もあります。在宅介護が限界に近いときは、候補に入れて見学しましょう。

ケアハウス

ケアハウスは、老人福祉法に基づく軽費老人ホームの一種です。比較的低い費用で生活支援を受けられる施設で、一般型と介護型の2つに分かれます。

一般型の対象は、自宅での暮らしに不安がある原則60歳以上の方です。介護型は原則65歳以上かつ要介護1以上が対象で、施設の職員から介護を受けながら暮らせます。

費用は、初期費用が一般型で0~30万円、介護型では数十万~数百万円かかる場合もあります。月額は一般型で6~12万円、介護型で6~20万円が目安です。特養に次いで費用を抑えられるため、要介護度が3に届かず費用を優先したいご家庭に適しています。

しかし、一般型は介護を前提とした施設ではなく、介護が重くなると住み替えが必要になる場合もあります。親御さんの状態の変化も見据えて、対応の範囲を確かめましょう。

関連記事:ケアハウスとグループホームの違いとは?費用・条件とあなたに合う選び方

グループホーム

グループホームは、認知症のある方が少人数で共同生活を送る地域密着型の施設です。介護保険では認知症対応型共同生活介護と呼ばれ、なじみの職員から介護を受けながら、料理や掃除などの役割を保って暮らします。

入居の条件は、原則65歳以上で要支援2以上、かつ医師から認知症と診断されている点です。地域密着型のため、施設と同じ市区町村に住民票がある方に限られます。

費用は、初期費用が0~数十万円、月額が12~18万円ほどが目安です。認知症が主な悩みで、要介護3に届かない段階から入居できる点が特養との違いになります。

親御さんに認知症の診断があり、住み慣れた地域で穏やかに暮らしてほしい場合は、有力な候補になるでしょう。

老人ホームの選び方

特養と有料老人ホームのどちらを選ぶかは、何を優先するかで決まります。費用を最優先するのか、入居までの早さを取るのか、親御さんの状態に合う介護を重視するのかで、答えは変わるでしょう。

ここでは、判断の軸になる3つの視点から選び方を紹介します。

費用を抑えたいなら特養を選ぶ

毎月の負担を抑えたいなら、第一候補は特養です。初期費用が不要で、所得や資産が一定以下なら負担限度額認定で居住費と食費を軽くできるため、年金の範囲で暮らせる場合もあります。

ただし、要介護3以上の条件と待機の可能性は避けられません。令和7年4月時点で在宅のまま待つ方は8.6万人おり、地域によっては数か月から数年かかります。

そこで、特養を第一候補にしつつ、複数の施設へ同時に申し込む進め方をおすすめします。申し込みは何か所にも出せるため、通える範囲の施設をまとめて申し込むと入所までの期間を短くできるでしょう。

すぐ入りたいなら有料を選ぶ

在宅介護が限界に近く、待てない状況なら有料老人ホームを選びます。空室があれば数週間で入居でき、要介護度の条件もゆるやかなため、今すぐ住まいを確保したいときに現実的です。

費用は月15~30万円ほどと高めになります。それでも、介護を担うご家族の負担と天秤にかけ、共倒れを避ける選択として費用の高さを受け入れるご家庭もあります。

親御さんが要介護3以上なら、有料老人ホームに入居しながら特養の申し込みを続ける方法もあるでしょう。空きが出た時点で移れるため、当面の安心と将来の費用を両立できます。

急いで決めるほど見落としも増えます。数週間で動けるとはいえ、見学と重要事項説明書の確認は省かないようにしましょう。

親の状態から候補を絞り込む

費用と早さのどちらとも決めきれないときは、親御さんの状態から候補を絞り込みます。確認したいのは、次の3点です。

  • 要介護度が3以上かどうか
  • 認知症の診断があるか
  • 医療的なケアが必要か

要介護3以上なら特養と介護付き有料老人ホームの両方が候補です。要介護2以下なら特養は特例入所の検討となり、介護付き有料老人ホームやケアハウスが中心になります。

認知症の診断があるならグループホーム、たんの吸引や点滴の管理が続くなら医療体制の手厚い施設と、状態によって向く施設は変わるでしょう。3点を書き出してから探し始めると、候補選びの遠回りを防げます。

判断に迷うときは、担当のケアマネジャーに親御さんの状態を整理してもらいましょう。

老人ホームへの入居までの流れ

入居までの進め方は、特養と有料老人ホームで大きく違います。特養は施設への申し込みから始まり、有料老人ホームは見学と契約が中心です。

ここでは、それぞれの流れと迷ったときの相談先を紹介します。

特養は施設に直接申し込む

特養の申し込みは、入所を希望する施設へ直接申込書を出します。自治体の窓口をとおす必要はありません。通える範囲の施設へ、同時に申し込めます。

入所の可否は、施設に置かれた入所検討委員会の合議で決まります。介護の必要度やご家族の状況を勘案し、必要性の高い方から順に入所が決まる仕組みです。

要介護1・2の方が特例入所を希望する場合は、該当する理由を申込書に書き添えましょう。特例入所の要件に当てはまる申し立てがあるときは、施設が申し込みの受け付けを拒む取り扱いは認められないと国の指針で示されています。

申し込んだあとも、状況が変わったら施設に伝えましょう。介護の必要度が上がれば、入所の優先度も変わります。

有料老人ホームは見学して契約する

有料老人ホームは、情報収集から始めて見学へ進みます。パンフレットの印象と実際の雰囲気は違うため、候補を絞って複数の施設を回るのがおすすめです。

見学のあとに体験入居を利用できる施設もあります。数日過ごせば、食事の味や職員の対応、ほかの入居者の様子まで確かめられる点が利点です。

納得できたら申込書を出し、面談と入居審査を受けます。契約の前には重要事項説明書が渡されるため、費用の内訳と退去の条件は必ず目をとおしましょう。疑問を残したまま署名すると、あとから条件の食い違いに気づく心配があります。

空室があれば、見学から入居まで数週間で進む場合もあります。特養と違って待つ必要がないぶん、焦って決めないよう注意しましょう。

関連記事:【完全ガイド】老人ホーム入居までの流れを7ステップで解説|準備から契約まで失敗しないためのポイント

迷ったら紹介センターに相談する

どの施設が合うか迷うときは、介護施設の紹介センターに相談する方法もあります。希望する条件をヒアリングし、条件に合う施設を無料で提案してもらえる窓口です。

ご自身で探すと、施設のホームページを一つずつ見て回るだけで時間がかかります。紹介センターは地域の施設の空室状況や費用を把握しているため、条件に合う候補を短い時間で絞り込めるでしょう。

見学の同行や入居の手続きの支援まで対応する事業者もあります。特養の待機中に入れる施設を探したいときの相談先としても有効です。

『笑がおで介護紹介センター』でも、大阪を中心とした関西の施設をご紹介しています。費用や条件で迷ったときは、候補に入れてみましょう。

老人ホーム選びでよくある質問

最後に、特養と有料老人ホームを比べるときにご家族から寄せられる疑問をまとめます。細かな判断は施設やケアマネジャーへの確認が基本ですが、先に押さえておくと相談がスムーズです。

ここでは、特に質問の多い3つにお答えします。

特養から有料に移れる?

特養から有料老人ホームへ移ることは可能です。どちらも契約に基づく施設のため、退所と入居の手続きを踏めば住み替えられます。

移る理由として多いのは、医療的なケアが増えて特養では支えきれなくなった場合や、居室の環境が合わなかった場合です。逆に、有料老人ホームで暮らしながら特養の空きを待ち、順番が来たら移る進め方もあります。

ただし、移ると費用は大きく変わります。特養から有料老人ホームへ移れば月額の負担は上がるため、年金や貯蓄でまかなえるかを先に試算しましょう。

住み替えは親御さんの心身にも負担がかかります。移る時期と理由を、ケアマネジャーや施設の相談員と一緒に考えていきましょう。

認知症でも老人ホームに入れる?

認知症があっても入居は可能です。むしろ認知症のある方を受け入れる前提の施設は多く、特養・介護付き有料老人ホーム・グループホームがいずれも候補となります。

特養は要介護3以上が原則ですが、認知症で日常生活に支障が頻繁に出る状態は、要介護1・2の特例入所で勘案される事情の1つです。グループホームは要支援2以上と医師の認知症の診断があれば入居でき、要介護3に届かない段階から選べます。

進行の程度や症状によって、向く施設は変わります。夜間に動き回る、ほかの入居者とのトラブルが心配といった不安があれば、そのまま施設に伝えて対応を聞きましょう。

見学のときは、認知症のある方の受け入れ実績と夜間の体制を確かめておくと安心です。

見学では何を確認すればいい?

見学では、パンフレットに書かれていない部分を確かめます。費用の内訳・医療と看取りの体制・居室の広さと設備の3点は、入居後の暮らしを左右する部分です。

費用は、月額に何が含まれ、何が別料金かを確認します。有料老人ホームは施設ごとに設定が違うため、見積書を出してもらうと総額を比較できます。

医療については、協力医療機関や看護職員の配置、夜間の対応を聞いておきましょう。契約の前に渡される重要事項説明書には、費用と退去の条件が書かれています。

職員の表情や入居者の様子など、数字に表れない部分も確認しておきたいところです。日常の雰囲気を感じたい場合は、見学を申し込むときに、様子がわかりやすい時間帯を施設に相談してみましょう。

まとめ

老人ホームは高齢者向けの施設をまとめて指す総称で、特別養護老人ホームはその一種です。別物ではなく、日常会話で老人ホームと呼ばれる有料老人ホームと比べると、費用と入居条件の違いがはっきりします。

特養は初期費用が不要で月額も約9~15万円と抑えられますが、原則要介護3以上で待機もあります。有料老人ホームは費用が高めな代わりに、入居までが早く要介護度の条件もゆるやかです。

まずは親御さんの要介護度と年金額を確かめ、費用と入居の早さのどちらを優先するか整理しましょう。特養の申し込みと並行して、入れないときの候補も見ておくと安心です。

施設選びで迷ったときは『笑がおで介護紹介センター』へご相談ください。

参考サイト

このコラムの監修者

花尾 奏一(はなお そういち)

保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

有料老人ホームにて介護主任を10年 
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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