特別養護老人ホームの特徴とは?メリット・デメリットと入居の流れ

 

お役立ちコラム

特別養護老人ホームの特徴とは?メリット・デメリットと入居の流れ

日本では、65歳以上の高齢者が多数を占める高齢化社会が到来しています。少子化の問題も重なり、少子高齢化として人口減少に繋がるという懸念もあります。

この記事では、日本における高齢化の状況と、高齢者が適切に介護や支援を受けるための選択肢である「特別養護老人ホーム」について詳しく取り上げていきます。

有料老人ホームとの違いや特別養護老人ホームのメリット・デメリット、施設の入居条件や入居までの流れについても紹介しますので、老人ホームへの入居を検討中の方はぜひ参考にしてください。

日本社会における高齢化の状況

内閣府が発表した「令和5年版高齢社会白書」によると、日本の総人口のうち65歳以上の割合は3,624万人であり、総人口に占める割合(高齢化率)も29.0%という結果でした。

昭和25年には総人口の5%に満たなかった高齢者の割合は年々上昇し、平成7年に15〜64歳人口がピークを迎えたことで、本格的に高齢化社会の到来が始まりました。

現在も高齢者の割合は増え続けており、将来推計人口では令和38年に1億人を割り込んで9,965万人になると推計されています。

65歳以上の高齢者の人口は、団塊の世代と呼ばれる人口の多い世代が65歳以上を迎えた平成27年に3,379万人となり、その10年後には3,653万人になると見込まれています。

65歳以上人口のピークは令和25年とされており、その後は数が減少するものの、日本の人口も減っていきますが、平均寿命は延び続けています。令和52年には男性が85.89歳、女性が91.94歳となり、90年を超える長寿命化が見込まれています。

※参照元:内閣府「令和5年版高齢社会白書(全体版)第1節 高齢化の状況(1)」 

特別養護老人ホームの概要

在宅での生活が困難な高齢者には、特別養護老人ホームへの入居が選択肢の一つになります。有料老人ホームとの違いを詳しくみていきましょう。

関連記事:老人ホームとは?介護施設との違いや種類・費用などを一覧表で解説

有料老人ホームとの違い

特別養護老人ホームは介護保険法で「介護老人福祉施設」と定義されており、社会福祉法人などが運営する公的施設です。「広域型」「地域密着型」「地域サポート型」の3種類に分かれており、要介護度の高い方が入居利用の対象となっています。

一方、有料老人ホームは民間の企業などが経営する民間施設で、「介護付」「住宅型」「健康型」と3つのタイプに分かれています。

2つの老人ホームの違いは以下のとおりです。

【特別養護老人ホームと有料老人ホームの違い】

種類 特別養護老人ホーム 有料老人ホーム
運営タイプ 公的施設 民間施設
費用・料金 比較的安く入居できる
入居一時金は不要
施設によっては高額になる
入居一時金は施設によって異なる
対象者 要介護3以上から可能 自立から可能
待機者の人数 多い 少なめ
施設のタイプ

広域型
地域密着型
地域サポート型

健康型
住宅型
介護付

特別養護老人ホームは終身で利用できる公的施設であり、入居一時金と呼ばれる敷金のような費用がかからないため、有料老人ホームよりも安く入居できることが特徴です。

原則的にどの施設も要介護3以上の方を対象としているため、入居条件を満たさなければなりません。平成27年に制度が改正され、要介護度が引き上げられたために、待機者を減らすことができました。

特別養護老人ホームと有料老人ホームは、費用や待機者の人数以外に施設のタイプにも違いがみられます。

有料老人ホームは自立した方が入居する「健康型」生活支援サービスが付帯した「住宅型」介護サービスが付帯した「介護型」に分けられており、自立者も受け入れられるように施設を展開しています。

一方の特別養護老人ホームは、入居の対象が常時介護を必要とする要介護3以上の高齢者が対象のため、要介護2までは他の介護サービスやサポートを受けなくてはなりません。

特別養護老人ホームの種類

特別養護老人ホームは「広域型」「地域密着型」「地域サポート型」に分けられています。それぞれの種類ごとに特徴や受けられるサービスを確認していきましょう。

関連記事:有料老人ホーム10種類の特徴や費用を一覧解説!違いや選び方とは

広域型

広域型は、居住地に制限がなく入居者を広く受け入れている特別養護老人ホームです。

特別養護老人ホームの中ではもっとも一般的な形態であり、広い地域から入居者を受け入れて、自立した生活を支援するといった目的もあります。

食事・身支度・排泄・入浴・機能訓練・レクリエーションといったサポートが受けられ、施設には終身で入居できます。広域型特別養護老人ホームの定員は30人以上で、3つのタイプの中ではもっとも規模が大きくなっています。

地域密着型

地域密着型は、施設がある市区町村に居住する方を対象とした特別養護老人ホームです。

広域型とは異なり、入居条件が特定の市区町村のみに制限されているため、アットホームな雰囲気があります。食事・身支度・排泄・入浴・機能訓練・レクリエーションといったサポートが受けられ、施設には終身で入居できます。

地域密着型特別養護老人ホームの定員は29人以下で、同一の運営者が運営する本体施設とは別に運営されている「サテライト型」と、運営元の施設が存在しない「単独型」に分けられます。

地域サポート型

地域サポート型は、在宅で生活を送る要介護の高齢者に向けてサービスを提供する形態です。

特別養護老人ホームとはいっても、利用者は入居をするわけではありません。在宅介護の利用者に対して、24時間体制で見守りのための定期巡回を実施します。

地域サポート型は、在宅介護が可能な方が受けるサポートの一つです。生活援助員と呼ばれるスタッフが見守りや援助を行い、介護者の負担を軽減します。

特別養護老人ホームで行われている衣食住のサポートは行いませんが、自宅訪問・電話での安否確認のほか、相談を聴いたうえで介護事業所を紹介します。また、緊急時の駆けつけや緊急連絡先(家族や知人など)への連絡も代行します。

特別養護老人ホームのメリット

特別養護老人ホームには、費用が安い・24時間体制で介護サービスを受けられる・退去を強いられないといったメリットがあります。それぞれのポイントを確認していきましょう。

メリット①費用が安い

特別養護老人ホームは公的施設のため、月々の家賃に加えて水道光熱費や食費といった費用のみがかかります。入居一時金と呼ばれる初期費用がかからず、月額費用も高額になりすぎない点がメリットです。

要介護者を対象とした施設のため、「介護サービス費」がかかります。要介護度と入居する居室のタイプによって金額が変わり、介護保険を利用して受けるサービスにかかった費用の1〜3割を支払います。

※「多床室」と呼ばれる相部屋タイプの居室よりも、一人につき1部屋の「ユニット型」のほうが費用は高くなります。

メリット②24時間体制の介護サービスを受けられる

3種類ある特別養護老人ホームの形態のうち、2種類は食事・身支度・排泄・入浴・機能訓練・レクリエーションのサービスが受けられます。

要介護度が高く、一人で寝起きや歩行ができない方についてはスタッフが丁寧に介助を行い、定期的な声掛けや見守りも実施するため、一人きりで暮らす不安がありません。

また、特別養護老人ホームでは入居者の健康管理や体調に応じた医療行為を行うため、看護師が常勤しています。病院まで移動する必要がなく、看護師を通して医療対応や看取りが受けられる点もメリットです。

メリット③退去を強いられない

終身で入居できる特別養護老人ホームでは、要介護度が上がっても退去させられる心配がありません。

事前に家族や知人に退去の際の対応をお願いする必要がないため、費用の滞納などが発生しなければ退去になる心配がなく、安心して過ごせます。

ただし、病気・ケガなどにより長期的に入院する必要がある場合は、特別養護老人ホーム内で必要な医療行為が行えないため、病院への入院または介護医療院などへ転院の可能性があります。

※入院を3ヶ月以内に終えられる場合は再入居が可能ですが、入院を3ヶ月以上にわたって継続しなければならない場合は、老人福祉法第十二条の二に基づき、病院または介護医療院・介護老人保健施設(特別養護老人ホーム)などを紹介され、転居を検討することになります。※

厚生労働省「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」 

特別養護老人ホームのデメリット

特別養護老人ホームへの入居には、入居までに時間がかかる可能性・入居条件が厳しいといった2つのデメリットが考えられます。それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。

デメリット①入居までに時間がかかる

特別養護老人ホームへの入居は、原則として要介護3以上の方と決められています。要介護度が低い場合は在宅介護や他の介護施設を検討することになります。

制度が改正された平成27年までは要介護度が低かったために入居希望者が殺到し、長期の待機時間が発生していましたが、制度が改正され待機時間が解消されました。しかし特別養護老人ホームの設置数が少ない地域などでは現在も待機時間が長く、入居までに数年程度時間がかかる場合があります。

デメリット②入居条件が厳しい

厚生労働省の「介護保険3施設の概要」では、特別養護老人ホームは要介護高齢者のための生活施設と定義されています。具体的には、65歳以上の高齢者であり、身体や精神に著しい障がいがあるために常時の介護を必要とする方です。※1

要介護度は5段階に分かれており、そのうち介護を必要とする要介護3の状態からが入居の対象となります。新たに入所する要介護1・2の方も、やむを得ない理由がある場合以外は利用できません。

※1参照元:厚生労働省「介護保険3施設の概要」 

※2参照元:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「どんなサービスがあるの? - 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」 

特別養護老人ホームのサービス

特別養護老人ホームでは、食事や入浴といったサービスが受けられます。サービスの内容は以下のとおりです。

【特別養護老人ホームのサービス】

食事 体調や好みに合わせて栄養士が
考案したメニューが提供される
入浴 最低週に2回以上の入浴介助または清拭を行う
排せつ 定期的なタイミングで排泄の介助や
トイレへの誘導を行う
健康管理・緊急対応 常勤の医師や看護師による健康管理
リハビリテーション

生活に必要な機能を維持回復させるための
リハビリテーションを施す

生活支援 居室・共有部の清掃や洗濯サービス、
買い物や送迎など
レクリエーション・イベント リハビリや脳トレーニングに
役立つイベントなどを行う
看取り 施設内のスタッフが連携し、
特別養護老人ホーム内で看取りを行う
その他 外部サービス(介護・訪問理美容・訪問診療) 

特別養護老人ホームでは、衣食住に関わる幅広いサービスを実施しています。自力で歩行できない方には介助を行いますが、ベッドの上での食事介助や排泄なども実施します。

高齢者向け分譲マンションなどの住居にはない、医療サービスの提供も特徴のひとつです。介護保険法では、必要数の医師(非常勤も可)を配置すると決められており、入居者への健康管理および療養上の指導を行います。※

ただし、患者さんの既往症や緊急の状況によっては配置医師以外の外部医師が診察を行うケースもあります。看取りについても、非常勤の医師が配置されている場合は外部から医師を呼んで実施します。

日常生活では、簡単な柔軟運動、手先や頭を使う簡単なイベント・レクリエーションを中心に実施し、入居者の体調にも配慮しながら健康維持を行います。季節のイベントとして誕生会やお花見、散歩などの外出イベントも行われます。

その他、介護サービスや訪問理美容、訪問診療といった外部サービスも利用できます。

※参照元:内閣府 健康管理・療養上の指導「介護老人保健施設における医療の提供について」 

特別養護老人ホームへの入所に必要な費用の相場

特別養護老人ホームの費用相場は以下のとおりです。

【特別養護老人ホームの費用相場】

項目 費用 内容
家賃(居住費) 5万円前後〜 月々の入居にかかる家賃
(要支援・要介護度に応じて異なる)
光熱費 1万円〜 水道・光熱の使用にかかる料金
食費 2.5〜4万円程度 1日の食事にかかる料金。
おやつが含まれる場合もある
介護サービス費 3万円程度 介護サービスを受ける場合にかかる料金
その他 1万円程度 雑費のこと。おむつなどの消耗品代・理容/美容費など

特別養護老人ホームは公的施設のため、有料老人ホームのように入居一時金と呼ばれる初期費用が発生しません。

入居一時金がかからないため、実際に支払う費用は家賃や光熱費などの固定費、食費や外出にかかる費用など1ヶ月ごとに使用した分のみとなります。

家賃(居住費)や食費、介護サービス費などは「基準額」が決まっており、所得に応じて段階的に変動します。所得の高い方ほど費用が加算されます。また、施設の形態や居室の種類などによって決まる「介護サービス費(介護施設サービス費)」が要介護度に応じて加算されます。

要介護1~5の認定を受けた方が支払う介護サービス費の金額は以下のとおりです。

【介護サービス費の金額】

サービス費用の設定
(1日につき)
利用者負担(1割)
(1日につき)
  従来型個室 多床室 ユニット型個室 ユニット型個室的多床室
要介護1 573円 573円 652円 652円
要介護2 641円 641円 720円 720円
要介護3 712円 712円 793円 793円
要介護4 780円 780円 862円 862円
要介護5 847円 847円 929円 929円

介護が提供される施設では、要介護度に応じてサービスに費用が加算されることがあります。介護福祉士の配置割合による加算、看護師の人数や体制による加算、外泊や看取りを行った際の加算などが挙げられ、サービスを利用するほど費用がかかります。

介護や日常生活の補助といった多様なサービスが提供されている特別養護老人ホームでは、利用者が少しでも負担をかけずにサービスを利用できるように、低所得の方や一定額以下の預貯金の方に対して居住費や食費の負担を軽減する「補足給付」を行っています。

令和3年8月より負担限度額が変わり、対象者を年金収入によって3段階に分け、単身者と夫婦それぞれについて定められた金額が介護保険から給付されます。※

※参照元:厚生労働省「介護保険施設における 負担限度額が変わります」 

関連記事:特別養護老人ホームの費用相場は?入居できない場合の3つの対処法

特別養護老人ホームへの入所条件

改めて、特別養護老人ホームへの入所に必要な条件を確認していきましょう。

【特別養護老人ホームの入所条件】

年齢 65歳以上(40歳から64歳まで(第2号被保険者)の方で、「特定疾病」が原因となって、介護が必要であると認定された場合は入居可)
介護度 要介護3以上(特例の方は要介護1から入居可)

    入所条件にある「特定疾病」は以下の16の病気を指します。※1

【16の特定疾病】

  • がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
  • 関節リウマチ
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 後縦靱帯骨化症
  • 骨折を伴う骨粗鬆症
  • 初老期における認知症
  • 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病※
  • 脊髄小脳変性症
  • 脊柱管狭窄症
  • 早老症
  • 多系統萎縮症
  • 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  • 脳血管疾患
  • 閉塞性動脈硬化症
  • 慢性閉塞性肺疾患
  • 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

要介護3に至っていなくても、以下の症状がある方は要介護1,2の段階で「特例」と認められます。※2

【特養の入所条件の特例について】

  1. 認知症で、日常生活に支障を来すような症状等が頻繁に見られること
  2. 知的障がい・精神障がい等を伴い、日常生活に支障を来すような症状等が頻繁に見られること
  3. 深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難であること
  4. 単身世帯である、同居家族が高齢又は病弱である等により支援が期待できず、地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分であること

上記に当てはまる場合は、特別養護老人ホームに入所の申し込みができます。その際、特別養護老人ホーム以外での生活が困難である事情についての記載が必要です。

※1参照元:厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」 

※2参照元:厚生労働省「特別養護老人ホームの「特例入所」に係る国の指針」 

特別養護老人ホームへ入居するまでの流れ

特別養護老人ホームへ入居する際、資料請求・申し込みを行い、審査を経て面談・契約となります。まずは入居したい施設、入居できる施設を探すところからスタートし、順に検討していくことになります。

ここからは、入居までの流れを詳しくチェックしていきましょう。

資料請求・申し込み

入居を考える場合、自宅から近い施設を探して情報を確認します。施設の入居条件と空室状況を確認し、気になる施設についてはホームページを確認し、資料請求・申し込みを行います。

資料を確認のうえ、質疑応答があれば施設の職員に質問しましょう。入居説明会と併せて見学会が開かれる場合もあります。

気になる施設が見つからなければ、地域包括支援センターやケアマネジャー、役所や役場の福祉課へ相談しながら、候補先の施設を相談してみてください。

事前審査

特別養護老人ホームを希望し、候補先の施設に申し込みを行った後は、事前審査が行われます。

多くの応募者が集まる特別養護老人ホームでは、評価基準にしたがって応募者ごとに評価します。介護者の年齢・要介護度・障害や疾病の有無・介護を助けてくれる人がいるか否かといった点で加点し、在宅介護サービスを利用している場合はさらに加点されます。

面談

審査に通過すると、健康診断書や検査の結果によって施設側が入居希望者の健康状態や病状を確認します。要介護認定を受けている際には申し込み者に加えてケアマネジャーが面接に同席することがあります。

施設への応募が殺到しており、すぐに入居できる可能性が低い場合でも、入居を強く希望していること・将来的に介護度が上がる可能性や家庭環境の変化、認知症の症状などについてアピールを行いましょう。

契約

施設は、優先度の高い希望者から順番に入居を決定します。審査に通り、面談を経て入居が可能と判断され、さらに居室に空きがあれば入居の許可がおり、契約となります。

入居日を調整し、重要事項の説明と契約書の取り交わしを行って、入居日当日を迎えます。

特別養護老人ホーム探しのポイント

特別養護老人ホームを探す際、以下のポイントを確認してみてください。

【特別養護老人ホーム探しのポイント】

  • 自宅からの距離を確認する
  • 空き状況をチェックする
  • 探す地域を拡げてみる

施設を見つける際には、インターネットで地域の特別養護老人ホームを検索し、空室状況や施設の立地、設備を確認します。住まいのある地域に見つからなければ、探す地域を拡げて検索をかけます。

特別養護老人ホームは地域によって開設数、入居待ちの人数に差があります。数年ほど待機しなければならない地区もあるため、施設探しは早い段階から始めましょう。

地域密着型の特養はエリアを限定しますが、「広域型」と呼ばれるタイプは広く入居者を受け入れています。地域密着型が見つからなければ、広域型にすることで比較的早期に候補が見つかるかもしれません。

関連記事:働きながら入れる老人ホームはある?施設探しの注意点を徹底解説

入居前の注意点

施設に入居する前には、いくつかの注意点を確認しておきましょう。

【入居前の注意点】

  • 施設を見学し雰囲気を確認する
  • 入居者の状況を適宜伝える
  • 施設に提出する書類を揃える

入居前の注意点として、施設をよく見学して雰囲気をチェックしましょう。スタッフ同士のコミュニケーションや連携を確認し、スタッフと入居者の関係性も確認することをおすすめします。

面談の前には診療情報提供書や健康診断書が、印鑑・印鑑証明・連帯保証人・身元引受人の印鑑・連帯保証人・身元引受人の印鑑証明・戸籍謄本や住民票といった必要書類を揃えてください。

契約が完了したあとは健康保険証の原本・介護保険証のコピー・健康診断書・身体障害者手帳などが必要になります。

全国的な特別養護老人ホームの空き状況(入居待機の状況)

厚生労働省では、特別養護老人ホームの空き状況を公表しています。

地域密着型を含む、令和4年度の「特別養護老人ホームの入所申込者の状況」では、3年前の平成31年(令和元年)時点で要介護3以上の方の入居申込が29.2%だったのに対し、令和4年は25.3%となり、3.9%減少していました。25.3%の入居希望者のうち、在宅の方は10.6%という結果でした。※1

政府以外にも地方自治体ごとに、特別養護老人ホームの申込状況を公表しています。

施設の空き状況や待機状況が公表されていない場合は、お住まいの自治体の役所・役場の福祉課へ問い合わせのうえ、確認してください。

※1参照元:厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)」 

特別養護老人ホームに関するFAQ

ここからは、特別養護老人ホームについて多く寄せられるFAQについて紹介します。

Q1.入居までどれくらい待てばよいのですか?

特別養護老人ホームへの入居は、定員割れをしている自治体ではほとんど待ち時間なく入居できます。一方、満員状態や応募が集中している自治体については数ヶ月〜数年の待ち時間が一般的です。

ただし、入居希望者の要介護度が上がった場合は入所の優先度が高まり、待ち時間が短縮になる可能性があります。

Q2.費用を抑える方法はありますか?

入居にかかる費用を抑える方法には、以下の方法が挙げられます。

【費用を抑える方法】

  • 減免制度を利用する
  • 多床室を利用する
  • 地域サポート型を選ぶ

特別養護老人ホームの利用では、居住費や食費のほか、介護サービスにかかる自己負担額を抑えられる制度が用意されています。※

【特養利用者が申請できる減免制度】

制度名 特徴 申請先
特定入所者介護サービス費 特養利用中の居住費・食費を抑える 市区町村に申請
高額介護サービス費 介護サービスにかかる自己負担額を抑える 市区町村に申請
高額医療・高額介護合算療養費制度 医療保険と介護保険の自己負担額を抑える 市区町村に申請
利用者負担軽減制度事業  介護サービスの自己負担額、居住費および食費を抑える 市区町村に申請
医療費控除 介護サービスの自己負担額・居住費・食費を抑える  税務署に確定申告書と
医療費控除の明細書を提出 

※2024年1月時点の情報

申請可能な減免制度を確認し、申請します。また、特別養護老人ホームの居室は個室ではなく多床室と呼ばれる相部屋がもっとも安いため、環境によっては個室以外も選択肢に入れたいところです。

施設利用の費用そのものを抑えるためには、在宅で介護を受ける方法もあります。地域サポート型は24時間体制で利用者への見守りを行うため、施設への入居が難しい場合におすすめです。

Q3.入居できなかった場合に他の選択肢はありますか?

入居できなかった場合は、ショートステイや在宅介護の利用、または有料老人ホームへの入居といった選択肢があります。

費用面が気になる方は軽費老人ホームのように、民間施設ではなく公的施設を選ぶ方法もあります。

自治体ごとの特別養護老人ホームの情報を確認しよう

今回は、特別養護老人ホームとはどのような施設なのか、タイプやメリット・デメリット、契約の流れや施設探しのポイントについて紹介しました。

自治体によって入居希望者の割合や人数には差があり、月ごとに応募の状況が変わることもあります。入居希望者の優先度に変更があると入居の順番が変わることも頭に入れておきたいポイントです。

まずは特別養護老人ホームの仕組みや利用できる制度を確認し、お住まいの自治体のホームページで最新の情報をチェックして施設選びを進めてください。

笑がおで介護紹介センターでは、エリアや予算、医療と看護の体制などさまざまな条件で絞り込んで施設をお探しいただけます。

「そうは言っても、結局どれに絞り込めばいいのかわからない」
「たくさん施設があって、わからなくなってきた……」

そんな場合は、相談員への無料相談もご活用ください!
年間約6,120件の紹介実績のあるスタッフが、ご希望にピッタリの施設をすべて無料でご紹介いたします。

介護施設選びのパートナーとして、私たちにぜひご相談ください。

監修者

花尾 奏一(はなお そういち)

保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

有料老人ホームにて介護主任を10年 
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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