施設に入った親の通帳はどう管理する?介護施設の通帳預かりと家族ができること

「親が老人ホームに入居することになったけど、通帳やお金の管理はどうすればいいんだろう?」
「施設に全部預けても大丈夫なのか、それとも家族が管理すべきか…」
親御様の施設入居に伴い、避けて通れないのが「お金の管理」の問題です。実は、適切な準備をせずに管理を始めると、銀行口座が凍結されて施設代が払えなくなったり、親族間で横領を疑われたりするといった深刻なトラブルに発展するケースが少なくありません。
結論から言うと、管理方法は以下の3つです。
- 介護施設に任せる(手間を減らしたい方)
- 家族が管理する(自由度とコストを優先する方)
- 専門家に依頼する(透明性と確実性を求める方)
この記事では、施設に入った親の通帳や印鑑、現金などを管理する3つの主な方法と、それぞれのメリット・デメリット、銀行に口座を止められないための具体的対策を解説します。
ご家族にとって最適な方法を見つけるために、ぜひ参考にしてください。
施設に入った親の通帳、管理方法は3つ
親御様が施設に入居した後、通帳などを管理する方法は、大きく分けて以下の3つです。
- 介護施設に預ける(金銭管理サービスを利用する)
- 家族が管理する
- 成年後見制度など外部の専門家に依頼する
どの方法が最適かは、親御様本人の意思や心身の状態、ご家族の状況によって異なります。それぞれの特徴を理解し、ご家族で話し合って決めることが大切です。
選択肢①:親の通帳を介護施設に預ける
まずは、入居する介護施設に通帳などを預ける方法です。多くの施設では「金銭・預貯金等管理サービス」といった名称で、入居者のお金の管理を代行しています。
施設に預ける必要性はある?
法律で通帳や印鑑を預けるように定められているわけではないため、預けることは必須ではありません。ご自身でしっかり管理ができる場合は、本人が行うのが基本です。
しかし、認知症の進行や身体的な理由でご自身での管理が難しくなった場合や、ご家族が遠方に住んでいる場合などは、施設の管理サービスを利用する価値は高いでしょう。施設の利用料の支払いや、日用品の購入などをスムーズに行うことができます。
手続きと管理方法
施設に金銭管理を依頼する場合、一般的に「金銭等管理サービス契約書」といった書類を取り交わします。契約内容は施設によって異なりますが、主に以下の点が定められています。
- 預かるもの(通帳、印鑑、現金、キャッシュカードなど)
- 管理方法(金庫での保管など)
- 利用料(月額数千円程度が一般的)
- お金の出し入れに関するルール(使途の記録、定期的な報告など)
契約時には、どのようなルールで管理されるのか、報告はどのくらいの頻度で行われるのかを必ず確認しましょう。
施設に預けるメリット・デメリット
メリット
- 支払いや現金の引き出しを代行してもらえる
- 家族の負担が軽減される
- 専門のスタッフが管理するため、紛失のリスクが低い
- お金の出入りが記録されるため、使途が明確
デメリット
- 管理手数料がかかる
- 自由にお金を引き出せない場合がある
- 万が一の不正やトラブルのリスクがゼロではない
選択肢②:親の通帳を家族が管理する
ご家族、特に子どもが親の通帳を預かり、金銭管理を代行する方法です。多くのご家庭で自然に行われている方法ですが、思わぬトラブルを避けるための注意点があります。
家族が管理するメリット・デメリット
メリット
- 管理手数料がかからない
- 柔軟にお金の出し入れができる
- 本人の状況に合わせてきめ細やかな対応ができる
デメリット
- 家族の負担が大きい(特に遠方の場合)
- 銀行窓口で出金トラブルが起こる可能性がある
- 親族間での金銭トラブルに発展しやすい
注意点①:銀行での出金トラブル(口座凍結リスク)
最も注意すべき点の一つが、銀行との関係です。
親本人の認知能力の低下を銀行が把握した場合、詐欺被害などを防ぐために口座が凍結され、たとえ家族であっても窓口での出金や手続きが一切できなくなることがあります。
こうなると、施設の利用料や医療費の支払いが滞ってしまい、大変な事態になりかねません。
【対策】
- 本人の判断能力がしっかりしているうちに「代理人カード」を作成しておく
- 「家族信託」の契約を結び、財産を管理する権限を正式に得ておく
注意点②:親族間での金銭トラブル
「親のお金を使い込んでいるのではないか」と、他の兄弟姉妹から疑いをかけられるなど、親族間でのトラブルは少なくありません。
良かれと思って管理していても、それが原因で家族関係に亀裂が入ってしまうこともあります。
【対策】
- お金の管理を始める前に、兄弟姉妹など親族全員の同意を得ておく
- お金の出し入れは必ず記録し、領収書はすべて保管する
- 定期的に収支報告を行い、いつでも開示できるようにしておく
選択肢③:成年後見制度など外部の専門家に依頼する
本人の判断能力が不十分な場合に、家庭裁判所が選んだ後見人(弁護士や司法書士など)が本人に代わって財産を管理する制度です。
家族が管理するのは不安、でも施設に任せるのも…という場合に有効な選択肢となります。
①厚生労働省の支援事業
厚生労働省では支援事業として「日常生活自立支援事業」と呼ばれるものを行っています。 これは、福祉サービスの利用援助を行うための事業です。
認知症の方など、判断能力が十分ではない方が自立した生活を送れるようにさまざまな支援を行っています。
金銭関係だと、預金の払戻や解約といったもののほか、その他預金関連の手続き、日常生活費の管理などの支援を受けることが可能です。
利用を希望する方は実施主体である市町村の社会福祉協議会等に対して相談と申請を行いましょう。利用するにあたり、実施主体によって定められている利用料を負担します。
②弁護士・司法書士
弁護士や司法書士と契約し、預ける方法もあります。この場合、第三者が正当な権限を持って財産管理をするため、財産管理委任契約を結びます。
自身で弁護士や司法書士を探す方法もありますが、誰に相談すればよいか分からない場合は入居予定の老人ホームの相談窓口に問い合わせてみるのがおすすめです。適した専門家を紹介してくれることもあります。
③成年後見制度
成年後見制度とは、本人に代わって必要な契約に同意したり取り消したりするほか、財産を適切に管理するための制度です。
支援を受ける人は「被後見人」、支援する人は「成年後見人」と呼ばれます。
成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。
関連記事:老人ホームの入居に保証人・身元引受人が必要となる理由とその役割
法定後見制度
本人の判断能力が低下した場合に申立てによって家庭裁判所が後見開始等の決定を行い、成年後見人等が本人の財産管理などを行う方法です。
申立人として、認められるのは以下の人です。
【申立てができる人】
- 本人
- 配偶者
- 4親等内の親族
- 成年後見人等
- 任意後見人
- 成年後見監督人等
- 市区町村長
- 検察官
なお、申立時に申立人が成年後見人等の候補者を推薦は可能ですが、必ずしもその人が選ばれるとは限りません。家庭裁判所によって適していると認められた人が選ばれることになります。
任意後見制度
判断能力が低下したときのことを考え、本人が公正証書を用いて代理人にどのような支援を委任するか決めておくものです。
判断能力が低下したときは家庭裁判所によって任意後見監督人が選ばれ、任意後見人が公正証書で決めておいた支援を委任されて行う形になります。
起こりうる金銭トラブルと回避策
どの管理方法を選んだとしても、金銭トラブルのリスクをゼロにすることはできません。特に起こりやすいトラブルと、その回避策を知っておきましょう。
①盗まれたと誤解するケース
認知機能の低下により、ご自身でお金を使ったことを忘れたり、財布の置き場所を勘違いしたりして「お金がなくなった、盗まれた」と話されることがあります。
【回避策】
- 管理を施設や家族に任せる場合でも、本人に一定額の現金(お小遣い)を持ってもらう
- お金の出し入れは必ず本人に確認し、記録を見せながら説明する
- 高額な現金や貴重品は施設に持ち込まない
②認知症による他の入居者とのトラブル
認知症の症状として、他の入居者のものを自分のものだと思い込み、部屋に持っていってしまうことがあります。
【回避策】
- 持ち物にはすべて名前を書く
- トラブルが起きた際は、本人同士で解決しようとせず、すぐに施設のスタッフに相談する
関連記事:認知症でも入居できる老人ホームはある?施設選びのポイントも確認
通帳預かりは必要に応じて検討しよう
施設に入った親の通帳管理は、①施設に預ける、②家族が管理する、③専門家に依頼する、という3つの方法があります。
どの方法にもメリット・デメリットがあるため、一番大切なのは「親御様本人の意思」を尊重し、ご家族全員で話し合って決めることです。特に、ご家族で管理される場合は、口座凍結のリスクや親族間トラブルの可能性を理解し、事前に対策を講じておくことが重要です。
他に老人ホームへの入居で不安に感じていることなどがあれば、老人ホーム探しの専門家である「笑がおで介護紹介センター」までご相談ください。施設探しはもちろんのこと、入居にあたり不安なことがあれば無料で相談に応じています。

監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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